ヒ・ミ・ツ~許嫁は兄の親友~(旧:遠回りして気付いた想い)[完]

麻沙綺

文字の大きさ
29 / 145
中学生と婚約解消

食事にて2…遥

しおりを挟む


「亜耶には、少し早かったか?」
 雅斗が苦笑しながらそう言葉を告げる。
「そんなこと無いよ。今から覚えておけば、将来役に立つって」
 沢口が珍しくまともな事を言う。
 確かに一理あるよなぁ。普段の生活だと必要ないだろうけど、これから否が応でも増えるだろうしなぁ。
 チラリと横を見れば、そんな会話をキョトンとした顔をして見ている亜耶。
 当の本人がこれじゃあ、意味無いと思うが、な。
 う~ん、どうしたものか……。
「先輩がもう少し色んな所に連れ出せば、自然と亜耶ちゃんも覚えますって……」
 沢口のニコニコした顔が自棄にうざい。
 お前、もしかして勘違いしてる?
 確かに俺と亜耶は婚約してるが、俺の一方通行なの。   
 簡単にどこそこに連れ廻せる立場じゃないんだ。
 俺は雅斗に視線を送るが、軽く首を振るだけで何も言わない。
 訂正するつもり無いらしい。
 ハァ~~。

「先輩、何暗い顔をしてるんですか?もっと楽しみましょうよ」
 って、明るく言ってくる沢口。
 人の気も知らないで……。
「はいはい」
 俺は、どうでも良いような返事を返す。
 すると。
「遥さん?」
 心配そうな顔で俺を見てくる亜耶。
「大丈夫だよ。亜耶が行きたいのなら連れてってやるから……」
 俺は、亜耶の頭にポンと手をやる。
「本当!!」
 上目遣いで、嬉しそうに俺を見てくる亜耶。
 何時、そんな技を覚えてきたんだ。俺を惑わせるきか。
「その時は、あたしもお供しまーす」
 って、沢口が言い出す。
「誰が連れてくか!」
 俺はすかさずそう返した。
 亜耶との時間をコイツに取られるのは癪だ。
「由華、飲みすぎ。遥をからかうのも良い加減にしろ」
 と雅斗の注意が飛ぶ。
 よく見れば、一人でボトルワインを開けていた。
「遥さん。本当に連れてってくれる?」
 横から亜耶の声。
「ん?亜耶が行きたいと思えば何時でも連れて行くが……」
 仕事の合間にだから、時間調整が大変かもしれないが……。
「ヤッター!約束だよ」
 満面な笑みで言う亜耶。
 ハァ~、この笑顔最高だ。写真に納めたい。

 そんなやり取りを沢口がニタニタと見ていた。
 ええい、その笑いやめろ。仮にもお前は女だろうが……。
 そう突っ込みたいのを抑えた俺って、凄いと思う。まぁ、言えば何かしらの返しが待ってるだけだしな。

「よかったね、亜耶ちゃん」
「はい、由華さん」
 二人は、目線を会わせて笑っていた。
 ったく……、何だか嵌められた気分だ。
 だが、亜耶と堂々とデートできるんだ、良しとしないとな。
 
「亜耶?勉強の方は捗っているのか?」
 突然雅斗が話を切り替えた。
「ん?なんとかね」
 難しそうな顔をして言う亜耶。
「そっか。亜耶ちゃん、受験生だったね。もし解らないところがあったら、先輩に聞けば良いからね。先輩、何気に教免持ってるし。全教科教えてくれると思うよ」
 って、お前自分では教えないのかよ。
 呆れ顔で沢口を見てれば。
「そうなの?遥さん」
 亜耶が、興味津々で此方を見てくる。
「うん。まぁ、一様持ってはいるよ」
 無理矢理伯父に取らされたようなもんだが、な。
「凄いなぁ」
 って、亜耶が目を輝かせて俺を見てくる。
 この目は、直視できない。
「亜耶は知らなかったんだな。遥は、文武両道だから出来ないものをあげた方が早いくらいだ」
 雅斗が余計なことを言い出す。
 それを聞いた亜耶の顔が、尊敬の眼差しに変わった。

「何時も、あんなにふざけてばかりなのに?」
 ちょ……ちょっと亜耶さん。それは、どういう意味合いですかねぇ。って言うか、俺、ふざけてた覚えないんだが……。
「へぇ~。亜耶ちゃんの前ではふざけるんですか?先輩」
 沢口の目が細められ、良いこと聞いたと言わんばかりに樮笑んでる。
 あっ、もう……。俺、コイツの前では積んだわ。
「由華、その顔はやめたほうがいい」
 静かに雅斗が嗜めるが。
「だって、普段冷酷な仮面しか被らない先輩が、亜耶ちゃんの前では破顔するんですよ。見てみたいじゃないですか」
 余計な事を口にするなと言いたい。亜耶はそんな俺を知らないんだからな。
 俺たちのやり取りを我感せずって顔をして、黙々と食べる亜耶。
 何に対しても一生懸命な亜耶が愛しい。

「成る程、その顔ですね。これがあの先輩だとすると別人ですね」
 って、どの顔だよ。それに別人って、同じ人物なんだが……。
 これ以上、コイツに見せるわけにいかねぇ。

「そろそろ行くか」
 雅斗の言葉に。
「そうだね」
 満足いったのか、沢口が同意する。
 亜耶を見れば、コクコクと頷いている。
「ここは俺が出すよ。遅れた詫びに」
 俺は伝票を手にし、席を立った。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

先生

藤谷 郁
恋愛
薫は28歳の会社員。 町の絵画教室で、穏やかで優しい先生と出会い、恋をした。 ひとまわりも年上の島先生。独身で、恋人もいないと噂されている。 だけど薫は恋愛初心者。 どうすればいいのかわからなくて…… ※他サイトに掲載した過去作品を転載(全年齢向けに改稿)

俺様系和服社長の家庭教師になりました。

蝶野ともえ
恋愛
一葉 翠(いつは すい)は、とある高級ブランドの店員。  ある日、常連である和服のイケメン社長に接客を指名されてしまう。  冷泉 色 (れいぜん しき) 高級和食店や呉服屋を国内に展開する大手企業の社長。普段は人当たりが良いが、オフや自分の会社に戻ると一気に俺様になる。  「君に一目惚れした。バックではなく、おまえ自身と取引をさせろ。」  それから気づくと色の家庭教師になることに!?  期間限定の生徒と先生の関係から、お互いに気持ちが変わっていって、、、  俺様社長に翻弄される日々がスタートした。

出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜

泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。 ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。 モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた ひよりの上司だった。 彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。 彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……

お嬢様は地味活中につき恋愛はご遠慮します

縁 遊
恋愛
幼い頃から可愛いあまりに知らない人に誘拐されるということを何回も経験してきた主人公。 大人になった今ではいかに地味に目立たず生活するかに命をかけているという変わり者。 だけど、そんな彼女を気にかける男性が出てきて…。 そんなマイペースお嬢様とそのお嬢様に振り回される男性達とのラブコメディーです。 ☆最初の方は恋愛要素が少なめです。

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

イケメンエリート軍団??何ですかそれ??【イケメンエリートシリーズ第二弾】

便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC” 謎多き噂の飛び交う外資系一流企業 日本内外のイケメンエリートが 集まる男のみの会社 そのイケメンエリート軍団の異色男子 ジャスティン・レスターの意外なお話 矢代木の実(23歳) 借金地獄の元カレから身をひそめるため 友達の家に居候のはずが友達に彼氏ができ 今はネットカフェを放浪中 「もしかして、君って、家出少女??」 ある日、ビルの駐車場をうろついてたら 金髪のイケメンの外人さんに 声をかけられました 「寝るとこないないなら、俺ん家に来る? あ、俺は、ここの27階で働いてる ジャスティンって言うんだ」 「………あ、でも」 「大丈夫、何も心配ないよ。だって俺は… 女の子には興味はないから」

処理中です...