ヒ・ミ・ツ~許嫁は兄の親友~(旧:遠回りして気付いた想い)[完]

麻沙綺

文字の大きさ
103 / 145
高校生編と再婚約の条件

球技大会①…亜耶

しおりを挟む

  あっという間に球技大会の日を迎えた。
  私は登校すると体操服に着替えた。


「鞠山さん、おはよう。あの事、考えてくれた?」
  目の前にこの前脅してきた彼が立ち塞がる。
  あの事?
  って、その前にこの人誰?
  頭の中で疑問符が浮かぶ。
  う~ん。
「亜耶。どうしたの?」
  思い出そうとするしてると、後ろから梨花ちゃんが声をかけてきた。
「……ん。ちょっと……。」
  私が困ってると。
「何? 細川。亜耶にちょっかいかけてるの?」
  梨花ちゃんが、彼に文句を言う。
  へぇー、細川くんって言うんだ。
  まぁ、余り関わりたいとは思わないけど。
  あんな事言ってたんだから、会社絡みだろうか?
  だけど、思い出せない。って事は、最近伸ばしてきてる企業の方なのだろう。
「相沢……。チッ、出直すか。」
  そう言うと何処かに行ってしまった。
  う~ん、お兄ちゃんに聞いた方がいいかなぁ……。

「変なのに目つけられたね。」
  梨花ちゃんが言う。
「……って言うか、彼何者なの?」
  未だに良く解らなくて、梨花ちゃんに質問していた。
「あぁ。細川修平。細川商事の御曹子。何かと金で片付けようとする奴だよ。中学が一緒だったからさ、余りいい噂は聞かないかな。」
  呆れたように言う梨花ちゃん。
  へぇー。
  細川商事の御曹司ねぇ……。
  あの人、私の私情を知ってる一人なんだ。
  私の裏事情も知ってるかも……。
  気を付けないと……。
  厄介な相手になりそうだ。
「亜耶?」
  梨花ちゃんが心配そうに見てくる。
  心配かけたくなくて。
「何でもないよ。教室に行こう。」
  梨花ちゃんを促して教室に向かった。



  試合前に委員の雑用を済ませて、試合に集中した。

  トーナメントでの勝ち上がり戦。
「亜耶。応援に来たよ。」
  梨花ちゃんの陽気な声。
「ありがとう。」
  笑顔でお礼を言う。
「彼は?」
  彼?
  あぁ。
  梨花ちゃんが言う彼は、悠磨くんの事だね。
「試合中だと思うよ」
  淡々と答える私。
  自分の試合の前に確認しておいたから……。
「だったら、応援しにいこうよ。まだ、試合始まらないでしょ?」
  梨花ちゃんが、嬉しそうに言う。
  まぁね。
「ユキ。亜耶、借りてくね。始まりそうになったら呼びに来て。グランドに居るから。」
  梨花ちゃんが、ユキちゃんに言うと私の腕を引っ張った。



  グランドには、学年関係なく女子が終結していた。
  クラスの応援の人も居れば、男子の物色してる子も居る。
「亜耶。ここなら直ぐにわかると思う。」
  テニスコートからわかりやすくグランドが見える場所を陣取る。
「うん。」
  試合も盛り上がっている。
「亜耶、応援しないの?」
  梨花ちゃんが不思議そうな顔をして私を見てくる。
「うん、するよ。」
  悠磨くんの姿グランド内で探す。
  いた、グランド中央にスペースを陣取って。
「悠磨くん、頑張れ!!」
  声を張り上げて応援する。
  その声に他の子が振り向いた気がするが気にしない。
  だって、彼は中学の時からそうだったから……。
  私の声でスイッチが入ったのか、動きがよくなった。

  ザッシュ!

  ボールがゴールに吸い込まれた。

  周りが、彼を称える声をあげてるなか。
「すごーい。悠磨くん!」
  って、同じように声をあげていた。
「亜耶の彼、凄いね。」
  梨花ちゃんまでも、悠磨くんを褒め称えてくれる。
「うん!」
  思わず満面の笑みを浮かべてしまった。

  本当は、遥さんの方がカッコいいよって言いたい。
  だけど、今は封印しておかないと……。


「亜耶ちゃん、試合始まるよ。」
  ユキちゃんが呼びに来た。
「はーい。」
  私は、テニスコートに足を向けた。
「亜耶、頑張って。」
  梨花ちゃんが私にエールをくれたのだった。



  久し振りにラケットを握った。
  この感触、懐かしい。
  軽く素振りをする。
  しっくりくる。
  よし。
  今日は、クラスの為に頑張ろう。
  そう思って何度か素振りを繰り返してた。

  フと視線を感じて、その方を向いた。
  そこには、体操服姿の生徒に混じって、スーツ姿で教師のごとく振る舞う遥さんの姿が……。
  何でいるの?
  遥さんが、私の視線に気付いたのか、左腕を持ち上げて、時計を見せてきた。
  あっ、使ってくれてるんだ。
  それだけで、顔がほころんだ。
『あ・り・が・と・う。がんばれ』
  ゆっくりと口を動かして私に解るようにしてくれた。
  私は、それにゆっくりと頷くと彼は立ち去った。
  見て行ってはくれないんだね。
  それは仕方ないよね。彼は、今忙しいんだから……。
  でも、少しは観ていって欲しかったなぁ……、何て私の我が儘だよね。
  私は、自分の腕に着けている時計を触った。
  この時計が彼と繋がってると思うと胸が熱くなる。
  よし、頑張ろう。遥さんも応援してくれてるんだから……。


  団体戦で、コートが4つあり、2コートづつで、試合が進められていく。
  私は、シングルなのでダブルスの後。
  ベンチに座って、試合を応援する。
  フと顔をあげると視線があった。
  私は、彼のところに行く。
「悠磨くん。来てくれたんだ。」
  私は、笑顔で言う。
「うん。俺らも時間が空いたから、応援に来た。」
  悠磨くんも笑顔で返してくれる。
「鞠山さん。試合頑張って。」
  悠磨くんの隣に居る男の子が言ってきた。
  確か……湯川財閥のご子息だったよね。
  頭の隅に各財閥のご子息を引っ張り出して、確認してから。
「ありがとう、湯川くん。じゃあ、そろそろ始まるから、後でね。」
  私は、そう言って二人に背を向けてコートに向かった。


  う~ん。対になってる。
  これは、気合いを入れて頑張るしかないか……。
  クラスの為に。
  自分の頬を両手で叩き、気合いを入れ直して、エンドラインについた。



  ラリーが続き、緊張感が増していく。
  こんなところで負けたくない。
  私は、甘く打ち上がったボールをスマッシュで打ち返した。
  それを見越して、その場に居た相手が打ち返してきたけど、エンドラインを越えアウトになった。
「やった!!」
  つい、ガッツポーズして仕舞った。
  う~ん、気持ち良い。
「凄い、鞠山さん。一回戦突破だよ。」
  クラスのメンバーも大喜び。
  うん、私も嬉しい。
  そうだ、悠磨くんたちにお礼言わなきゃ。
  彼らのところに向かう。
「悠磨くん、応援ありがとう」
  笑顔でそう伝えた。
「いや。オレも亜耶が応援してくれたから、ゴールできたようなものだし……。」
  そう言って、私の頭を撫でる。
  なんか、違和感が……。
  気付かない振りしよ。
「この次の試合、亜耶のクラスと当たるんだけど、応援してくれるか?」
  悠磨くんの不安そうな顔。
「うん。ちゃんと応援してるよ。声援はできるかは、難しいけど、ね。」
  って、自分のクラス応援しなきゃね。
「そうだよな。まぁ、心の内でいいから、応援宜しくな。」
  少し寂しそうな顔を見せる。
  これって、もう一度見る事になるのかなぁ。
「悠磨。そろそろグランドに戻らないと。」
  湯川くんが、悠磨くんを呼びに来た。
「あぁ、わかってるって……。じゃあ、またな。」
  私の頭をポンと軽く叩いた。
「うん。」
  どうしよう……。
  実は、梨花ちゃんの応援しに行くって約束してるんだよね。
  悠磨くんの方は、これからだよね。
  じゃあ、先に梨花ちゃんの応援しに行こう。
  
  私は、体育館に移動した。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

先生

藤谷 郁
恋愛
薫は28歳の会社員。 町の絵画教室で、穏やかで優しい先生と出会い、恋をした。 ひとまわりも年上の島先生。独身で、恋人もいないと噂されている。 だけど薫は恋愛初心者。 どうすればいいのかわからなくて…… ※他サイトに掲載した過去作品を転載(全年齢向けに改稿)

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

お嬢様は地味活中につき恋愛はご遠慮します

縁 遊
恋愛
幼い頃から可愛いあまりに知らない人に誘拐されるということを何回も経験してきた主人公。 大人になった今ではいかに地味に目立たず生活するかに命をかけているという変わり者。 だけど、そんな彼女を気にかける男性が出てきて…。 そんなマイペースお嬢様とそのお嬢様に振り回される男性達とのラブコメディーです。 ☆最初の方は恋愛要素が少なめです。

出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜

泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。 ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。 モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた ひよりの上司だった。 彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。 彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

お嬢様は新婚につき誘惑はご遠慮します

縁 遊
恋愛
初恋の人との恋を実らせて結婚したお嬢様の高宮 菫(たかみや すみれ)。 新婚の菫奥様には悩みがいっぱい。 旦那様には溺愛されてどう対応して良いかも分からないし、結婚してから地味な化粧を止めたらいろんな人から誘われる様になってしまって…こちらも対応に困ってしまう。 天然で憎めないお嬢様(新婚奥様)の何気ない日常のお話です。 溺愛いえ…激甘にする予定です。 苦手な方はご遠慮下さい。 作品は不定期更新になります。 これは『お嬢様は地味活中につき恋愛はご遠慮します』の続編です。

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

処理中です...