ヒ・ミ・ツ~許嫁は兄の親友~(旧:遠回りして気付いた想い)[完]

麻沙綺

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高校生編と再婚約の条件

理事長と遭遇…悠磨

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   廊下に出た途端、オレは蹲った。
  
  どうしよう。
  オレ……守れなかった。
  高橋あの人と約束守れなかった。
  まさか、泉が亜耶を陥れようとするとは、思ってもいなかった。
  昨日のあの時に亜耶は、予感めいたものがあったんだ。
  女の感というやつなにだろうか。兎に角、亜耶は昨日の内に泉の事を警戒を意味してオレに聞いてきたのだと今になって気付くとは……。

  あ~~。
  何で、もっと早く気付けなかったんだ。
  オレって、ホント鈍感だと思う。
  自分の事ばかりで、周りの事全然見えていなかったんだと改めて思い知らされた。

  そうだ、こんなことしてられない。亜耶の家に電話……は、先生が入れるか、じゃあ、お兄さんに……って、オレ番号知らないや……。
  
  つくづく使えないヤツだと、自嘲する。
  保健室の入り口での賜っていたからだろう。
「君、ちょっと退いてくれるか?」
    声がして顔を上げると目の前にまだ二回しか顔を見たことの無い、理事長が立っていた。
  でも、何で理事長が?
  亜耶と面識があるのか?
  普通なら、一生徒に理事長自ら会うことなんて滅多にないと思うんだが……。
  オレが考え込んでいると。
「聞こえてるか? そこ、退いてくれないか?」
  二度目の言葉で、オレは慌てて入り口からずれた。
  理事長は、何事もなかったように中に入って行く。
  仕舞った。
  亜耶は着替えてる途中では……。
  理事長でも通してはいけなかったのでは……。
  と考え声を掛けようとした。
「もも、亜耶ちゃんの容体は?」
  って亜耶の事を馴れ馴れしく言う理事長。
  亜耶と知り合いなのか?
「熱が高いようで、肺炎になりかけてるかも……」
  養護教諭が言う。
  肺炎……。
  まさか、そこまで酷いのか……。
「そっか。ヤツに電話してるんだが、繋がらないんだ。亜耶ちゃんには、悪いが携帯を勝手に使わせてもらい。雅斗くんに電話した方が早いか……」
  理事長は、そう言うと亜耶の鞄の中を探り携帯を取り出し、電話を掛ける。
  理事長が言ってる"ヤツ"って、誰の事だろう?
  疑問に思ってると。
  電話が繋がったのか。
「雅斗くん。亜耶ちゃんが倒れた。迎えにきてくれ。ヤツに連絡したんだが繋がらないんだよ。」
  声が漏れ聞こえてくる。
  盗み聞きしてるみたいで、罪悪感が芽生える。
  理事長の言ってるヤツって、もしかして……。
「はぁ! 今、日本に居ないって……。兎に角、一度病院に連れて行った方がいい。高熱で魘されてる。あぁ、わかった。ももにもそう伝えておく。」
  そう言って、電話を切った。
  日本に居ないって事は、やっぱり高橋あの人の事だった。
「さっきから、そこで話を聞いてる君は、亜耶ちゃんのボディーガードかな? 一体、彼女に何があったのか教えてくれないか?」
  理事長が、オレに向き直りそう聞いてきた。
  オレは、今日の亜耶の体調やら、プールに突き落とされた事を全て話した。
  すると理事長の顔色が一気に青くなった。
  それは、理事長だけではなく、養護教諭もだ。

「アイツにばれたら、俺がヤバイことになる。」
  何て言葉が理事長の口から出てる。
「雅斗くんなら、寛容だし多目に見てくれるだろうが、遥にバレたら、その突き落とした女生徒に何するか、わからん。」
  って、怯えたように言う理事長。
  理事長らしからぬ言葉にオレは、首を傾げる。
  理事長の怯えようにオレは、益々訳がわからなくなる。
  あの人が、何かするのか?
「遥さんの耳に入らなければいいんです。幸い、遥さんは日本に居ないみたいですし。」
  養護教諭の言葉に。
「あっ、そうか。俺から言わなければいいんだ。雅斗くんにも口止めしておけばいい。うん、そうしよう。」
  って、勝手に納得して解決している理事長。
「あぁ、君。ありがとうな。えっと……一年の渡辺悠磨くん」
  って、理事長がオレの名前を言い当てる。
  オレは驚いて理事長をまじまじと見る。
「それから、彼女のお兄さんが来たら、さっきの話をもう一度してくれるか。当事者からの方が、分かりやすいだろうからな。」
  オレから説明するんだ。
  それって、仕事放棄じゃ……。
  と思ってると。
「俺、ちょっと出掛けてくる。もも、後よろしくな。」
  理事長はそう言って踵を返し、慌てて部屋を出て行く。
  何か、嵐みたいな人だな理事長って……。
  
「ゴメンネ、渡辺くん。迷惑掛けるわね。あの人、今から鞠山財閥の本社まで行って謝罪しに行くのよ。」
  もも先生が言う。
  何で、理事長自ら出向く必要があるんだ?
  ただの一生徒の事なのに……。
  そこまでしないといけない事なのか?
  オレが疑問に思っていると。
「そっか、君はまだ何も知らないのか……。理事長である彼は、遥さん……知ってる?」
  養護教諭の言葉にオレは頷いた。
「そう、知ってるのね。遥さんの伯父に当たるの。で、遥さんの婚約者である亜耶ちゃんを危険な目に遭わせたのは、うちの学校の一生徒。彼は、学校を取り仕切っている長だから、向こうに出向いて、謝りに行くことに決めた。それは、生徒の為であり甥っ子遥さんの今後の為でもあるから……。」
  もも先生は、憂いのある顔で言う。
  そっか。学校内で起きた事とはいえ、一番の長が何もしないわけにはいかない。だから、直接会って事情を話し、謝りに行ったんだ。

  暫くして。
  ガラッ。
  保健室の入り口が開いた。
「もも先生。お久し振りです。どういういきさつで、亜耶は熱を出したんですか? って、その前に理事長先生は?」
  亜耶のお兄さんが、もも先生に聞いてる。
「本当に久し振りね。彼なら、会社の方に出向いて行きました。事の経緯は、こちらに居る渡辺くんが話してくれるから。」
  もも先生が、オレに話を振ってくる。
「久し振りだね悠磨くん。話、聞かせてくれるか?」
  お兄さんは、オレの方に向き直り聞いてきた。
  オレは、事のあらましを全て話した。

「そうか。それは、迷惑をかけた。だが、突き落とした女生徒の理由が知りたい。悠磨くん、誰か知ってるよね。教えて欲しい。」
  お兄さんに懇願されるように聞かれれば、答えるしかない。
「小林泉さんです」
  オレがそう答えると。
「じゃあ、校内放送で彼女を保健室に呼び出すわね。」
  もも先生はそう言うと保健室を出て行った。








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