実は安倍晴明は五つ子で互いの功績をひとりの者として扱い後世にはひとりの人物として語られた/時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で

牛馬走

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チャプタ―10

ダメな安倍晴明10

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 晴明は聞いてしまった。兄弟たちの会話を。

 夕餉までの時間、兄弟たちは東の対へと引き上げた。それを追って建物に歩み寄ったところ、
「忠行様のもうす最善の道とは」
 という晴足の言葉が聞こえたのだ。つづいて晴秀の、
「あの痴れ者を陰陽師として独り立ちさせることであろう」
怒ったような口調で応じるせりふも聞こえた。
「したが、さようなことできるのか」
「やらぬうちから、できぬともうすのもいかがなものか」
 晴俊、晴足と言葉を発するのを聞いて、晴明は事情を理解した。
 兄弟たちは言葉の通りを自分を独り立ちさせようとしているのだ。

 悟ったとたん、その場から逃げ出していた。
 父に物忌みのことで知り合いの武士、平満利のもとに行ってくると言い置いて邸を飛び出した。
 言った通りに満利のもとに向かった。
 満利は依頼で縁ができて以降、唯一の友人といっていい人間だ。
 都人にとって外れに当たる場所にその邸はあった。
 雑人に声をかけて訪いを告げる。
 しばらくすると、決して大きいとはいえない寝殿に招かれた。
「よくぞ、参った我が友よ」
 心もとなくなっている晴明にはその言葉は子が親から受ける抱擁ほどの力があった。
 早くも酒を飲みながら満利は晴明を迎える。盃を口に運んでいるのは美しいかんばせをした若武者だ。
「呑むか、晴明」
 屈託のない表情で彼は聞いてくる。
「手前が下戸なのは存じておろう」
 それに苦笑しながら向き合う形で腰をおろした。
「つまらぬ奴よ」
 言葉面は冷たいが、その胸のうちにある思いた伝わるため晴明は笑みを浮かべる。
「ところで、忠明はどうした」
 晴明は何気なくたずねた。
 こういうとき、郎党の忠明が大抵、酌をしているのだが今日は見当たらないのが奇異に思えたのだ。
「あやつには暇を出した(クビにした)」
「なに、暇をか」
 信じられなかった。満利と忠明はまるで兄弟のように仲のいい主従だったからだ。
「それより、かような刻限に参ったのは何か事由があってのことだあろう、いかがした」
「それがな」
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