10 / 76
チャプタ―10
ダメな安倍晴明10
しおりを挟む
3
晴明は聞いてしまった。兄弟たちの会話を。
夕餉までの時間、兄弟たちは東の対へと引き上げた。それを追って建物に歩み寄ったところ、
「忠行様のもうす最善の道とは」
という晴足の言葉が聞こえたのだ。つづいて晴秀の、
「あの痴れ者を陰陽師として独り立ちさせることであろう」
怒ったような口調で応じるせりふも聞こえた。
「したが、さようなことできるのか」
「やらぬうちから、できぬともうすのもいかがなものか」
晴俊、晴足と言葉を発するのを聞いて、晴明は事情を理解した。
兄弟たちは言葉の通りを自分を独り立ちさせようとしているのだ。
悟ったとたん、その場から逃げ出していた。
父に物忌みのことで知り合いの武士、平満利のもとに行ってくると言い置いて邸を飛び出した。
言った通りに満利のもとに向かった。
満利は依頼で縁ができて以降、唯一の友人といっていい人間だ。
都人にとって外れに当たる場所にその邸はあった。
雑人に声をかけて訪いを告げる。
しばらくすると、決して大きいとはいえない寝殿に招かれた。
「よくぞ、参った我が友よ」
心もとなくなっている晴明にはその言葉は子が親から受ける抱擁ほどの力があった。
早くも酒を飲みながら満利は晴明を迎える。盃を口に運んでいるのは美しいかんばせをした若武者だ。
「呑むか、晴明」
屈託のない表情で彼は聞いてくる。
「手前が下戸なのは存じておろう」
それに苦笑しながら向き合う形で腰をおろした。
「つまらぬ奴よ」
言葉面は冷たいが、その胸のうちにある思いた伝わるため晴明は笑みを浮かべる。
「ところで、忠明はどうした」
晴明は何気なくたずねた。
こういうとき、郎党の忠明が大抵、酌をしているのだが今日は見当たらないのが奇異に思えたのだ。
「あやつには暇を出した(クビにした)」
「なに、暇をか」
信じられなかった。満利と忠明はまるで兄弟のように仲のいい主従だったからだ。
「それより、かような刻限に参ったのは何か事由があってのことだあろう、いかがした」
「それがな」
晴明は聞いてしまった。兄弟たちの会話を。
夕餉までの時間、兄弟たちは東の対へと引き上げた。それを追って建物に歩み寄ったところ、
「忠行様のもうす最善の道とは」
という晴足の言葉が聞こえたのだ。つづいて晴秀の、
「あの痴れ者を陰陽師として独り立ちさせることであろう」
怒ったような口調で応じるせりふも聞こえた。
「したが、さようなことできるのか」
「やらぬうちから、できぬともうすのもいかがなものか」
晴俊、晴足と言葉を発するのを聞いて、晴明は事情を理解した。
兄弟たちは言葉の通りを自分を独り立ちさせようとしているのだ。
悟ったとたん、その場から逃げ出していた。
父に物忌みのことで知り合いの武士、平満利のもとに行ってくると言い置いて邸を飛び出した。
言った通りに満利のもとに向かった。
満利は依頼で縁ができて以降、唯一の友人といっていい人間だ。
都人にとって外れに当たる場所にその邸はあった。
雑人に声をかけて訪いを告げる。
しばらくすると、決して大きいとはいえない寝殿に招かれた。
「よくぞ、参った我が友よ」
心もとなくなっている晴明にはその言葉は子が親から受ける抱擁ほどの力があった。
早くも酒を飲みながら満利は晴明を迎える。盃を口に運んでいるのは美しいかんばせをした若武者だ。
「呑むか、晴明」
屈託のない表情で彼は聞いてくる。
「手前が下戸なのは存じておろう」
それに苦笑しながら向き合う形で腰をおろした。
「つまらぬ奴よ」
言葉面は冷たいが、その胸のうちにある思いた伝わるため晴明は笑みを浮かべる。
「ところで、忠明はどうした」
晴明は何気なくたずねた。
こういうとき、郎党の忠明が大抵、酌をしているのだが今日は見当たらないのが奇異に思えたのだ。
「あやつには暇を出した(クビにした)」
「なに、暇をか」
信じられなかった。満利と忠明はまるで兄弟のように仲のいい主従だったからだ。
「それより、かような刻限に参ったのは何か事由があってのことだあろう、いかがした」
「それがな」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転
小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。
人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。
防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。
どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる