実は安倍晴明は五つ子で互いの功績をひとりの者として扱い後世にはひとりの人物として語られた/時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で

牛馬走

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チャプタ―11

ダメな安倍晴明11

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 引っかかりをおぼえながら、晴明は邸で見聞きしたことを語る。
「ほう、そなたを独り立ちさせる算段か」
 すべてを聞き終えた満利が感心したような声をもらした。
「なにをのんきな」
 晴明にしてみれば一大事だ、もっとうろえたえて欲しかった。
「のんきもなにも、みなに等しく訪れるものがそなたのも訪れるというだけであろうが」
「う、それは」
 満利の指摘に晴明は顔を歪める。
「さように兄弟が互いのことを考えてくれるとはありがたいことではないか。北家藤原家など惨憺たるものぞ」
「これ、大きな声で北家がどうのともうすでない」
 それどころか、満利が重ねた言葉に晴明はさらに表情を歪めることになった。
「たは、妖の血を引いておる癖に小心者め」
 だが、満利はこちらの狼狽など意に介さず声を大にして笑う。
 相談する相手を間違えた――思ったものの、他にそんな相手の心得がないのが晴明の実情だった。
「そなたがまこと都に聞こえし陰陽師となれば、それがしも鼻高々よ」
 満利が盃を空にして上機嫌に言う。
 まったく――晴明は満利のように能天気にはなれず表情を昏くした。
「まあ、物は考え物よ。今のままでは兄弟にも悪かろう」
「兄弟にも?」
 満利の言葉が理解できず晴明は聞き返した。
「考えてもみよ、そなたの支えとなって生きるということは一生、日陰者として生きるということよ。それはむなしかろう」
「それは」
 晴明は考えたこともなかった。父と母の願うままに、自分が盛り立てられていきるのが当たり前と思っていた。
「兄弟たちとて、官位官職は得たかろうて」
「それは」
 やはり、考えてことがなかった。晴明は段々とうなだれる。
「ましてや、そなたを支えるのは父、母の考えがあってのこと。みずからの意思ではないのだ」
「それは」
 もちろん、一度として考えたことがなかった。晴明は完全に打ちひしがれる。そして、
「そういうことだ、兄弟の考えも汲んでやれ、晴明」
 と満利は言葉を結んだ。
 これには返事のせりふが出てこない。
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