女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます

ノッポ

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3. こだわり強い侯爵令嬢とのお茶会

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大きな窓から差し込む光が、磨き上げられた床に揺らめいていた。

私は深呼吸をひとつした。

(……今日は、侯爵令嬢とのお茶会)

今年デビューした高位令嬢の一人。
金髪碧眼に強いこだわりを持つ――リュシエンヌ侯爵令嬢。

噂では、少しでも趣味が合わない相手とはすぐ言い争いになるらしい。

扉が開く。

「……あなたが伯爵令嬢?」

澄んだ声とともに、彼女が現れた。

流れるような金髪。
美しく澄んだ碧眼。

まるで絵本の中の王女様みたいだった。

「本日はお招きありがとうございます」

私が礼をすると、彼女は椅子に座りながらじっとこちらを見る。

「あなた、一応金髪なのね」

いきなり髪色の話。

私は少しだけ笑った。

「そうですね。リュシエンヌ様のような輝く金色ではなく、淡い金色ですが」

「私、幼い頃から物語が好きでしたの。理想の王子様は――金髪碧眼。だから、将来の相手も絶対にそうでなければ嫌。色にもこだわりがあって、輝く金髪と澄んだ濃い碧眼でないとね」

はっきりとした宣言。

普通ならここで反論なり、相手が否定して空気がピリつくのかもしれない。

(……でも)

私は心の中で、前世の仕事を思い出した。

――営業先のお客様だと思えばいい。

相手の“好き”を尊重する。

それだけ。

「素敵ですね」

私がそう言うと、侯爵令嬢の目が少しだけ丸くなった。

「……否定しないの?」

「どうしてですか? 好きなものを大事にできるって、すごく素敵だと思います」

紅茶が運ばれる。

彼女は無言でカップを手に取った。

「皆、わがままだと言いますのよ。理想が限定的すぎるって」

「理想があるからこそ、ぶれないんじゃないでしょうか」

私がそう言うと、彼女の指先が止まる。

「……あなた、面白いわね」

少しだけ口元が緩んだ。

「でも、あなたの髪の色は私の理想とする金髪ではないですわ」

「そうですね」

素直にうなずく。

「でも、髪色はそれぞれ素敵ですよね」

「え?」

「輝く金髪が似合う人も素敵。でも、違う色でもその人に似合っていたら素敵だと思います」

しばらく沈黙。

窓の外で風が木々を揺らした。

侯爵令嬢はゆっくりと私を観察するように見つめる。

「……あなた、不思議な人」

「よく言われます」

「私の考えに言い返さないし、でも私に賛成しないし」

思わず笑ってしまう。

「好きなものを否定しないのと、自分を偽るのは違うと思うんです」

彼女はふっと小さく息を吐いた。

「なるほどね……だからあなた、周囲と揉めないのかしら」

紅茶を一口。

そして、まっすぐ私を見て言った。

「あなたなら――髪色は合格ですわ」

「……合格、ですか?」

「ええ。私の美学に反しないという意味で」

ほんの少しだけ、意地悪そうな笑み。

「仲良くしてあげてもよろしくてよ」

思わず胸が暖かくなる。

「はい。ぜひ、よろしくお願いします」

初対面とは思えないほど、空気はやわらいでいた。

――こうして、強い理想を持つ侯爵令嬢とのお茶会は、思っていたよりずっと穏やかに終わったのだった。
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