イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。

文字の大きさ
159 / 177
第25章 無人島でも、俺の胃は休まらない!?〜Vtuberたちのサバイバルアイランド漂流記〜

エピローグ そして伝説へ、胃袋と共に

しおりを挟む
満天の星の下で交わした、言葉にならない約束。

焚き火の温もりと、仲間たちの寝息。そんな、どこか詩的で、穏やかな夜が明けた。



俺たちが砂浜で目を覚ますと、水平線の向こうから、文明の象徴である一隻のクルーザーが、朝日を浴びてこちらへ向かってくるのが見えた。船首には、大きく見慣れた「LinkLive」のロゴ。



そして、甲板の先頭では、我らがマネージャー・神代カオルが、まるで凱旋将軍を迎えるかのように、満面の笑みで手を振っていた。



「おっはよー!みんな、最高のサバイバルだったわね!最高の“画”が撮れたわよー!」



メガホン越しの、悪魔のように明るい声。

どうやら、この地獄のような遭難(?)は、すべて神代さんの計算通りだったらしい。

俺たちが本当に野生に還る寸前に、救助に来る手筈になっていたのだ。



「……神代さん、あんた、悪魔か……」



俺の掠れた呟きに、彼女は船の上から優雅なウィンクで返した。



「ふふ、最高の“画”が撮れたから、オールオッケーよ。視聴者アンケートも、過去最高の満足度を記録したわ。さあ、帰りましょう、私たちの日常へ!」



救助船に乗り込み、久々の文明の味――温かいコンソメスープと、ふわふわのパンを頬張りながら、俺たちは今回のサバイバルの“伝説”を、スマホの画面越しに目の当たりにすることになった。



「うおおお!マジか!『#LinkLive無人島』が世界トレンド1位になってるッス!」



一番に叫んだのは、もちろんメグだった。彼女の指が、興奮で震えながらタイムラインをスクロールしていく。そこには、俺たちの想像を遥かに超える、熱狂の渦が広がっていた。



SNSでは、案の定、俺たちのサバイバル生活が、様々な切り抜き動画として、光の速さで拡散されていた。



『#夜々様のクリーパー調教』

『#みなとの無人島三ツ星キッチン』

『#とんかつちゃんは家族です』

『#メグのボタンRTA』

そして、なぜか『#レイの胃袋は宇宙』。



どれもこれも、凄まじい再生数を記録している。



「ちょ、見てくださいよこれ!夜々先輩のクリーパー調教シーン、『女王様の気品にクリーパーも心酔』ってコメントついてるッス!」

「……ふん。わたくしのカリスマにかかれば、原生生物の一匹や二匹、手懐けるのは造作もないことですわ」



夜々先輩は、スープをすすりながら涼しい顔で言うが、その耳はほんのり赤い。まんざらでもないらしい。



「あ、わたしのも……。『みなとの無人島三ツ星キッチン、レシピ公開はまだですか?』ですって。……データ、取っておけばよかったですね」



みなとさんが、少しだけ悔しそうに呟く。彼女の職人魂は、まだ燃え尽きていなかった。



「見て見て!『とんかつちゃんは家族です』が、動物愛護団体の人にもリポストされてる!とんかつちゃん、スターなの!」



るるが、自分のことのように嬉しそうに飛び跳ねる。



「アタシのボタンRTA動画、『人類史上、最も美しい自爆』って言われてるんスけど!これ、褒められてるんスかね!?」

「たぶん、褒められてるんじゃないか……?」



俺が苦笑すると、ひよりが俺の袖をくいっと引っ張った。



「お兄ちゃん、見て!ひよりのツリーハウス、『兄妹の愛の巣、設計図だけでも欲しい』ってコメントが殺到してるよ!」

「いのりちゃんの『カニ語翻訳ニキ』まで現れてる……。『彼女の神託は、実はカニとの交信だった!?』って考察されてるよ……」

「ルイ先輩のサンドアート、海外のファンが『聖地巡礼したい』って……だから、島、どこですか?って聞かれてる」



失敗だらけで、脱出もできなかったのに。

俺たちの、ぐちゃぐちゃで、泥だらけの冒険は、たくさんの人の心に届いていたらしい。

その事実が、疲れた俺たちの心を、温かいスープ以上に、じんわりと温めてくれた。



事務所に戻ると、社長から直々に「最高のエンターテイメントだった」と、労いの言葉と共に、金一封(という名の、都内最高級焼肉店のプラチナコース食事券)が贈られた。



その夜。俺たちは、個室の焼肉店で、祝杯を上げた。もちろん、全員メロンソーダで。



じゅうじゅうと音を立てる網の上で、美しいサシの入ったカルビが焼けていく。

その香ばしい匂いだけで、無人島での空腹の記憶が蘇り、全員の喉がごくりと鳴った。



「いやー、でもマジで楽しかったッスね!」



最初に口火を切ったのは、やっぱりメグだった。彼女は、山盛りの白米を片手に、熱く語り始める。



「次は、雪山でサバイバルとかどうです?遭難して、かまくら作って、暖を取り合ううちに芽生える恋……!最高のシチュじゃないですか!?」



「いいね!かまくら作って、お兄ちゃんと二人きりで……♡」



ひよりが、とろけるような瞳で俺を見つめる。その手はすでに、焼きあがった一番大きな肉をトングで掴み、俺の皿へと運ぼうとしていた。



「あら、雪山ですって?ならばわたくしは、氷の城を築いて、新たな氷雪の女王となりましょう。天城くん、あなたはその玉座の隣に侍る、最初の騎士にしてあげるわ」



夜々先輩が、優雅に肉を裏返しながら言う。その言葉に、ひよりの眉がぴくりと動いた。



「……雪ウサギ、食べられますかね」



みなとさんが、真剣な顔で呟く。



「雪だるまさんと、お友達になるの!」



るるは、もう次の友達を見つけているようだった。



「星は……『白銀の世界に、新たな伝説が生まれる』と……告げています」



いのりの神託は、もはや鉄板のオチと化していた。



ヒロインたちの尽きない冒険譚を聞きながら、俺は熱々のカルビを頬張った。

タレの甘みと、肉の旨味が口いっぱいに広がる。



ああ、幸せだ。無人島でも、都会の真ん中でも。

この、どうしようもなく愛おしい仲間たちと一緒なら、きっとどこだって最高のステージになる。



俺は、全員の笑顔を見渡しながら、ぽつりと呟いた。



「……なあ、俺たち、次はどこに行くんだっけ」



その一言に、全員が、悪戯っぽくニヤリと笑った。

物語は、まだ終わらない。



俺の胃袋が、そして俺の心が、平和な休息を得られる日は、まだ、当分先のようだ。

この騒がしくて、甘くて、どうしようもなく幸せな日々こそが、俺たちの、最高の物語なのだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?

宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。 栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。 その彼女に脅された。 「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」 今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。 でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる! しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ?? 訳が分からない……。それ、俺困るの?

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

処理中です...