イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。

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第25章 無人島でも、俺の胃は休まらない!?〜Vtuberたちのサバイバルアイランド漂流記〜

最高の宝物は、腹ペコの思い出

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爆発の轟音が遠い残響となって消えた後、島を支配したのは、あまりにも残酷な静寂だった。

夕陽が空を茜色に染め上げ、ゆっくりと舞い落ちる木の葉のような塵が、その光を浴びてキラキラと輝いている。

美しい。まるで、世界の終わりを描いた一枚の絵画のように、それはどうしようもなく美しかった。



そして、その美しい光景の真ん中に広がっていたのは、見事なまでの更地だった。

俺たちの二日間の努力の結晶――ひよりが「お兄ちゃんとの愛の巣♡」と夢見ていたツリーハウスも、みなとさんがプロの意地をかけて作り上げた三ツ星キッチンも、そして、俺たちの唯一の希望だったはずのイカダも。

そのすべてが、等しく、美しい木屑となって、夕暮れの穏やかな風に舞っていた。



「……終わった……」



ひよりが、膝から崩れ落ちる。その瞳から、ぽろりと涙がこぼれ落ち、砂浜に小さな染みを作った。

彼女が建てていたのは、ただの建物じゃない。

お兄ちゃんとの、甘い未来の設計図だったのだから。



「アタシの……アタシのせいッス……」



メグが、頭を抱えてその場にうずくまる。良かれと思って押したボタンが、すべての仲間たちの努力を、夢を、文字通り爆破してしまった。

その罪悪感は、どんなレアアイテムよりも重く、彼女の肩にのしかかる。



「……星は……何も、告げてくれません……」



地下遺跡から生還したいのりは、ただ空を見上げていた。

彼女の未来視の瞳にも、この絶望的な状況を打開する答えは、もう映っていなかった。



爆心地から少し離れた場所にいた食料調達チームも、言葉を失っていた。

夜々先輩の美学の結晶であるハーブ農園も、ルイ先輩の魂の傑作だった砂の城も、情け容赦ない爆風によって無に帰してしまったのだから。



しばらく、誰も動けなかった。ただ、寄せては返す波の音と、頬を撫でる風の音、そして――



ぐぅぅぅぅぅ……きゅるるるる……。



……全員の腹の虫が、あまりにも正直に、そして盛大に鳴り響く音だけが、静かな島にこだましていた。



その、あまりにも間抜けで、あまりにも人間らしい音。それを聞いた瞬間、最初に口を開いたのは、意外にも夜々先輩だった。



「……ふふっ」



彼女は、顔を煤で汚しながら、静かに笑い出したのだ。

最初は、か細い、忍び笑いのような声だった。だが、それはやがて、抑えきれない感情の奔流となって、彼女の唇から溢れ出た。



「あはははは!何よこれ!最高に滑稽じゃない!」



(ここから、夜々視点)



何なのよ、本当に……。

わたくしの完璧な計画も、女王としての威厳も、あのブタ一匹と、そそっかしいオタクの指一本で、全部めちゃくちゃ。



……ふふ、滑稽だわ。でも……こんなに必死になって、泥だらけになって、感情を剥き出しにしたのなんて、いつ以来かしら……。悪くないじゃない。ええ、ちっとも、悪くない。



夜々先輩の、すべてを諦めたような、それでいて心の底から楽しそうな笑い声。

それは、張り詰めていた島の空気を、ふっと緩ませる魔法のようだった。



その笑い声につられるように、一人、また一人と、笑い声が重なっていく。



「ほんとだ……!なんか、もう、どうでもよくなっちゃった!」



ひよりが、涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、えへへと笑う。



「アタシのせいなのに……みんな笑ってくれて……うぅ、ありがとうございますッス……!」



メグが、しゃくりあげながら、それでも嬉しそうに笑う。



俺も、思わず笑ってしまった。そうだ、もうどうでもいい。

イカダなんてなくたっていい。食料がなくたっていい。



こんなにもめちゃくちゃで、こんなにもダメダメで、でも、こんなにも愛おしい仲間たちと、今、この島で、一緒に笑っている。それだけで、十分じゃないか。



俺は、全員が見渡せる砂浜の中央に立ち、大きく息を吸って、言った。



「……なあ、俺たち、何しに来たんだっけ……」



その一言に、全員の笑い声が、ひときわ大きく、夕暮れの空に響き渡った。



その夜。俺たちは、みなとさんが最後の気力で釣り上げた一匹の大きな魚と、るるととんかつちゃんが(和解の証として)見つけてきてくれた木の実を、焚き火で分け合って食べた。

人生で一番、質素な夕食だった。でも、人生で一番、美味しかった。



みなとさんが、ほとんど無言のまま、しかし完璧な手際で魚を捌き、串に刺して焼いていく。

その横顔は、真剣で、美しかった。

彼女は、言葉ではなく、行動で俺たちの空腹と心を温めてくれる。



「……はい、レイくん。一番、身が厚いところ」



彼女が最初に串を差し出したのは、俺だった。

その小さな気遣いに、胸の奥がじんわりと温かくなる。



火を囲みながら、俺たちは今日の“戦い”を語り合った。

夜々先輩の芸術的なクリーパーへの爆発指導。



メグの華麗な(そして命懸けの)ボタン押し。ひよりの夢とロマンだけが詰まった愛の巣建築計画。

そのすべてが、今となっては最高の笑い話だ。



「……それにしても、メグ。あのボタンは、本当にすごかったわね。わたくしの計算された美学を、あんな原始的な方法で破壊するなんて」



「うぅ……本当に、すみませんでしたッス……!」



メグが深々と頭を下げると、いのりがその肩をそっと叩いた。



「大丈夫です。……星は、『失敗は、新たな物語の始まり』と……そう、告げていましたから」



「ひよりこそ、ごめんなさい。とんかつちゃんのことで、つい……」



ひよりが、もじもじしながら夜々先輩に謝ると、彼女はふいっと顔をそむけた。



「……別に。あんな家畜、どうでもいいわ。……でも、あなたのあのツリーハウス、少しだけ……センスは悪くなかったわよ」



その言葉は、彼女なりの、最高の賛辞だったに違いない。



「……でも、ほんとにどうするんですか?脱出」



いのりの冷静な一言に、全員が現実に引き戻される。

焚き火の火が、ぱちぱちと音を立てる。

その時、ルイ先輩が、夜空を指さした。



「見てごらん。星が、流れている」



俺たちが見上げると、そこには、無数の流星群が、漆黒の夜空をキャンバスに、幾筋もの光の軌跡を描いていた。



「……きれい……」



ひよりの、吐息のような声が漏れる。その美しさに、誰もが言葉を失う。

それは、どんなCGエフェクトよりも、どんな配信演出よりも、圧倒的にリアルで、感動的な光景だった。



「脱出なんて、しなくてもいいのかもしれないな」



ルイ先輩が、静かに言った。



「僕たちはいつも、登録者数や、再生数や、イベントの成功……そんな“結果”ばかりを追いかけている。

でも、本当に大切なのは、こうして、どうしようもない失敗をして、泥だらけになって、それでも一緒に笑い合える……そんな“過程”そのものなんじゃないかな。この島で、君たちと過ごす時間こそが、本当の宝物だったのかもしれない」



その少しキザなセリフに、誰もツッコミを入れなかった。

なぜなら、ここにいる全員が、心の底から、同じ気持ちだったからだ。

空腹も、失敗も、仲間割れも。その全部が、俺たちを一つにしてくれた。



最高の思い出という、何物にも代えがたい宝物を、俺たちはこの島で見つけたのだ。

俺は、隣に座るひよりの横顔を、そっと盗み見た。



焚き火の炎に照らされたその頬は、ほんのり赤くて、その瞳は、星空と同じくらい、きらきらと輝いていた。

この瞬間を、絶対に忘れたくない。そう、心から思った。
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