イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。

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第25章 無人島でも、俺の胃は休まらない!?〜Vtuberたちのサバイバルアイランド漂流記〜

エピローグ そして伝説へ、胃袋と共に

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満天の星の下で交わした、言葉にならない約束。

焚き火の温もりと、仲間たちの寝息。そんな、どこか詩的で、穏やかな夜が明けた。



俺たちが砂浜で目を覚ますと、水平線の向こうから、文明の象徴である一隻のクルーザーが、朝日を浴びてこちらへ向かってくるのが見えた。船首には、大きく見慣れた「LinkLive」のロゴ。



そして、甲板の先頭では、我らがマネージャー・神代カオルが、まるで凱旋将軍を迎えるかのように、満面の笑みで手を振っていた。



「おっはよー!みんな、最高のサバイバルだったわね!最高の“画”が撮れたわよー!」



メガホン越しの、悪魔のように明るい声。

どうやら、この地獄のような遭難(?)は、すべて神代さんの計算通りだったらしい。

俺たちが本当に野生に還る寸前に、救助に来る手筈になっていたのだ。



「……神代さん、あんた、悪魔か……」



俺の掠れた呟きに、彼女は船の上から優雅なウィンクで返した。



「ふふ、最高の“画”が撮れたから、オールオッケーよ。視聴者アンケートも、過去最高の満足度を記録したわ。さあ、帰りましょう、私たちの日常へ!」



救助船に乗り込み、久々の文明の味――温かいコンソメスープと、ふわふわのパンを頬張りながら、俺たちは今回のサバイバルの“伝説”を、スマホの画面越しに目の当たりにすることになった。



「うおおお!マジか!『#LinkLive無人島』が世界トレンド1位になってるッス!」



一番に叫んだのは、もちろんメグだった。彼女の指が、興奮で震えながらタイムラインをスクロールしていく。そこには、俺たちの想像を遥かに超える、熱狂の渦が広がっていた。



SNSでは、案の定、俺たちのサバイバル生活が、様々な切り抜き動画として、光の速さで拡散されていた。



『#夜々様のクリーパー調教』

『#みなとの無人島三ツ星キッチン』

『#とんかつちゃんは家族です』

『#メグのボタンRTA』

そして、なぜか『#レイの胃袋は宇宙』。



どれもこれも、凄まじい再生数を記録している。



「ちょ、見てくださいよこれ!夜々先輩のクリーパー調教シーン、『女王様の気品にクリーパーも心酔』ってコメントついてるッス!」

「……ふん。わたくしのカリスマにかかれば、原生生物の一匹や二匹、手懐けるのは造作もないことですわ」



夜々先輩は、スープをすすりながら涼しい顔で言うが、その耳はほんのり赤い。まんざらでもないらしい。



「あ、わたしのも……。『みなとの無人島三ツ星キッチン、レシピ公開はまだですか?』ですって。……データ、取っておけばよかったですね」



みなとさんが、少しだけ悔しそうに呟く。彼女の職人魂は、まだ燃え尽きていなかった。



「見て見て!『とんかつちゃんは家族です』が、動物愛護団体の人にもリポストされてる!とんかつちゃん、スターなの!」



るるが、自分のことのように嬉しそうに飛び跳ねる。



「アタシのボタンRTA動画、『人類史上、最も美しい自爆』って言われてるんスけど!これ、褒められてるんスかね!?」

「たぶん、褒められてるんじゃないか……?」



俺が苦笑すると、ひよりが俺の袖をくいっと引っ張った。



「お兄ちゃん、見て!ひよりのツリーハウス、『兄妹の愛の巣、設計図だけでも欲しい』ってコメントが殺到してるよ!」

「いのりちゃんの『カニ語翻訳ニキ』まで現れてる……。『彼女の神託は、実はカニとの交信だった!?』って考察されてるよ……」

「ルイ先輩のサンドアート、海外のファンが『聖地巡礼したい』って……だから、島、どこですか?って聞かれてる」



失敗だらけで、脱出もできなかったのに。

俺たちの、ぐちゃぐちゃで、泥だらけの冒険は、たくさんの人の心に届いていたらしい。

その事実が、疲れた俺たちの心を、温かいスープ以上に、じんわりと温めてくれた。



事務所に戻ると、社長から直々に「最高のエンターテイメントだった」と、労いの言葉と共に、金一封(という名の、都内最高級焼肉店のプラチナコース食事券)が贈られた。



その夜。俺たちは、個室の焼肉店で、祝杯を上げた。もちろん、全員メロンソーダで。



じゅうじゅうと音を立てる網の上で、美しいサシの入ったカルビが焼けていく。

その香ばしい匂いだけで、無人島での空腹の記憶が蘇り、全員の喉がごくりと鳴った。



「いやー、でもマジで楽しかったッスね!」



最初に口火を切ったのは、やっぱりメグだった。彼女は、山盛りの白米を片手に、熱く語り始める。



「次は、雪山でサバイバルとかどうです?遭難して、かまくら作って、暖を取り合ううちに芽生える恋……!最高のシチュじゃないですか!?」



「いいね!かまくら作って、お兄ちゃんと二人きりで……♡」



ひよりが、とろけるような瞳で俺を見つめる。その手はすでに、焼きあがった一番大きな肉をトングで掴み、俺の皿へと運ぼうとしていた。



「あら、雪山ですって?ならばわたくしは、氷の城を築いて、新たな氷雪の女王となりましょう。天城くん、あなたはその玉座の隣に侍る、最初の騎士にしてあげるわ」



夜々先輩が、優雅に肉を裏返しながら言う。その言葉に、ひよりの眉がぴくりと動いた。



「……雪ウサギ、食べられますかね」



みなとさんが、真剣な顔で呟く。



「雪だるまさんと、お友達になるの!」



るるは、もう次の友達を見つけているようだった。



「星は……『白銀の世界に、新たな伝説が生まれる』と……告げています」



いのりの神託は、もはや鉄板のオチと化していた。



ヒロインたちの尽きない冒険譚を聞きながら、俺は熱々のカルビを頬張った。

タレの甘みと、肉の旨味が口いっぱいに広がる。



ああ、幸せだ。無人島でも、都会の真ん中でも。

この、どうしようもなく愛おしい仲間たちと一緒なら、きっとどこだって最高のステージになる。



俺は、全員の笑顔を見渡しながら、ぽつりと呟いた。



「……なあ、俺たち、次はどこに行くんだっけ」



その一言に、全員が、悪戯っぽくニヤリと笑った。

物語は、まだ終わらない。



俺の胃袋が、そして俺の心が、平和な休息を得られる日は、まだ、当分先のようだ。

この騒がしくて、甘くて、どうしようもなく幸せな日々こそが、俺たちの、最高の物語なのだから。
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