婚約破棄の上に家を追放された直後に聖女としての力に目覚めました。

三葉 空

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第6話 イケメン王子とご対面

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 馬車に揺られている間、私はずっと緊張していました。なぜなら今、王城へと向かっているからです。先日、神官長のオクトレイル様がおっしゃったように、王家から招待状が届き、今こうしてはせ参じようとしている所なのです。ちなみに、訪れるのは私だけです。オクトレイル様は神殿の管理の仕事があるので。王家より来ていただいた馬車に乗り、王家の使者に守られながら、私は王城へと向かいます。

「聖女さま、着きました」

「あ、はい」

 馬車から降りて見ると、王城は思っていたよりもずっと大きく立派でした。神殿とはまた違った意味合いで、厳かなオーラに溢れています。

「参りましょう」

 使者の方に連れられて、私は城の中に入って行きます。途中ですれ違う家臣の方々が、わたしを見る度に、深く礼をしてくれました。恐縮なので、私もぺこぺこしながら歩いて行きます。

「この先が、王室でございます」

「あ、はい」

 目の前に立派で華々しい扉があります。使者の方が、その扉を開きました。

「陛下、聖女さまをお連れしました」

 いよいよ、緊張のご対面である。

「ご苦労だった」

 玉座が2つあり、国王と王妃がそちらに座っていらっしゃった。さらに、1人の清々しいイケメンがいらっしゃった。

「聖女さま、ようこそおいで下さいました」

 国王が会釈をしておっしゃいます。私も慌ててお辞儀をします。

「と、とんでもございません」

「改めて、お名前をお聞かせ願えるかな?」

「あ、はい。ユリナと申します。その、私は……」

 婚約破棄をされた上に、家を追放された事実を伝えるべきか迷った。

「いや、みなまで言う必要はない。事情は手紙にて、既に知っている」

「さ、左様でございますか」

「色々と災難だったようだが、今こうしてそなたが聖女になられたのも、実に運命的なことだ」

「はい。正直、生きる意味を失いかけていた所、こうして新たなその意味を見出すことが出来て、神には本当に感謝しております」

「そなたがこれまで、慎ましく立派に生きて来たおかげだろう。レオルド、お前もそう思うだろう?」

 そう呼ばれて、国王のそばに立っていたイケメンさんが口を開きます。私みたいな地味な女とは違って、輝かしい金髪と碧眼が誠に美しいお方です。

「はい、僕もそう思います。素人目ですが……彼女はきっと、聖女にふさわしい方だと思っております」

 私はつい、照れてしまいます。今まで、殿方に褒められるのは妹のアメリアだけでしたから。まさか、こんな素敵な殿方に私が褒めていただけるなんて……

「聖女さま……いえ、ユリナ様」

 レオルド様が私を呼びます。

「あ、はい」

「よろしければこの後、お茶でもいかがですか?」

「お、お茶ですか?」

「それは良い。若い者同士で、じっくりと話をするが良い」

「ええ、そうですわね」

 国王と王妃もにこっと笑っておっしゃいます。

「え、えっと……」

「あまり気が進みませんか? 無理にとは言いませんが……」

「そ、そんなことはありません。ただ、今までは雲の上の存在だった方とお茶をご一緒するなんて、夢のようで……」

「ははは。自分で申すのもなんだが、このレオルドはよく出来た息子でしてね。容姿、能力ともに抜群のため、方々の貴族から縁談をいただいている。国外からもあったかな?」

「父上、その話は……」

「おっと、失礼」

「ユリナ様。では、参りましょうか」

 レオルド様がこちらに歩み寄って来ると、私の手を取ってくれます。私はひどくドキリとしてしまいます。

「は、はい……」

 私は久しぶりに、乙女としてのさがに目覚めそうでした。
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