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第7話 2人きりのティータイム
目の前に置かれるのは、とても上質な紅茶です。バラノン家に居た頃も、それなりに上等な紅茶を飲んでいましたが……そのさらに上を行きます。さすが、王家と言った所でしょうか。
「ユリナ様」
「あ、あの、レオルド様」
「どうされましたか?」
「その、私のことはそんな風に『様』付けする必要はありませんよ?」
「ですが、偉大なる聖女さまですから……」
「かもしれませんが、まだなったばかりですし、元は伯爵令嬢でしたから、どうしても目上の方にそんな風に接してもらうのは……」
私がおずおずとしながら申し上げると、
「……では、2人きりの時は、ユリナと呼んでも良いかな?」
「へっ?」
「ダメかな?」
スッと、手の甲に触れられて、ドキリとしてしまいます。ああ、ダメよ、私。殿方に対して免疫が無いからって、そんな生娘みたいな反応を……
「そ、それでお願いします」
「ありがとう、ユリナ」
その爽やかな風が吹き抜けるような微笑みに、私は軽くノックダウンされそうになりました。イケメンとは、げに恐ろしき生き物です。でも、同じイケメンでもブリックス様に対しては、こんな風にトキめいたことがありません。まあ、レオルド様の方が、ブリックス様の100倍はイケメンな訳ですけど。ていうか、私ってば、イケメン、イケメンって言い過ぎでわ……
「ユリナ」
「あ、はい」
「休日は何をしているんだい?」
「え、えっと……聖女になる前は、あまり休みらしい休みが無くて。ずっと、家の仕事をしていました」
「そうか……やはり、苦労して来たんだね」
きゅっ、と今度は両手で私の手を包んでくれる。非常にありがたく有頂天になりそうなのだけど、私の心臓が持ちそうにないから、少し手加減をしていただきたい。
「そ、そうですね」
「でもそのおかげで、君はこんなにも聡明で、美しい」
「う、美しいって……地味な女ですわ」
「そんなことはないよ」
頬に手を添えられて、くいと顔を向けられる。間近でレオルド様の顔を見た。心拍数が急上昇してしまいます。
「レ、レオルド様……」
「あまり化粧をせずにこの美しさなら、きちんと化粧を覚えればもっと素晴らしい美女になるだろうね」
「そ、そんなことは……」
「ああ、でも、それだと困るな」
「こ、困る? 誰がですか?」
「僕がだよ、ユリナ」
「レ、レオルド様が? なぜですか?」
きゅっ、とまた手を握られる。
「まだ会ったばかりで、こんなことを言ったら軽薄な男と思われてしまうかもしれないけど……僕はもう、君に夢中のようだ」
開いた口が塞がらなかった。
「そ、それは……」
「もちろん、今すぐに返事をしてくれとは言わない。ただ、これだけは分かって欲しい。僕は君が聖女だからではなく、君が君だからひとめぼれしたんだ……ユリナ」
もう、限界だった。すぐ目の前で、甘く良い香りがずっと私の鼻腔をくすぐるから。
「レ、レオルド様。その、恥ずかしながら、私は今まで殿方と接した経験に乏しくて……」
「そうなのかい? けど、婚約者はいたんだろう?」
「はい。ですが、彼も私のことを女ではなく、使える駒くらいにしか思っていなかったでしょうし」
その頃のことを思い出して、少し苦い笑みを浮かべてしまう。すると、レオルド様の手がそっと優しく私の頭に置かれた。
「君のそんな顔は見たくない」
「レ、レオルド様」
「約束する。僕なら、きっとずっと、君を笑顔にして見せる」
「で、ですが、あなたは王太子で……」
「さっきの言葉と矛盾するかもしれないけど、君が聖女になってくれたおかげで、君と結婚できるかもしれない。父上も母上も、君が相手なら大歓迎さ」
もはや、私の矮小な度量では受け止めきれない。既にパニック状態に陥っていた。レオルド様もそれを察してくれたのか、
「名残惜しいが、今日の所はこれくらいにしておこう」
レオルド様は私から手を話し、淡く微笑んで下さいます。
「ユリナ、お互いに忙しい身だけど、また時間を作って会ってくれないか?」
「あ、はい……とは言っても、恥ずかしながら、私の仕事は基本的に1日3回のお祈りだけですから……給料泥棒でごめんなさい」
「あはは、そんなことないよ……じゃあ、思ったよりもたくさん、会えそうだね」
耳元で囁かれて、魂が抜けそうになった。くらっと倒れそうになった私を支えながら、レオルド様は立ち上がる。
「すまない、聖女さまを送ってあげてくれ」
「かしこまりました」
命じられた使者の方が、私のそばに寄ります。
「聖女さま、参りましょう」
私は無言のまま頷くと、チラとレオルド様を見た。
彼もまた無言のまま、けど暖かな微笑みを浮かべて下さいます。
そして、口パクの動きで『また会おう』と伝えて下さいます。
もちろん、とても嬉しいのですが、やはり私のキャパオーバーなので、恥ずかし過ぎて顔を背けてしまいました。
「ユリナ様」
「あ、あの、レオルド様」
「どうされましたか?」
「その、私のことはそんな風に『様』付けする必要はありませんよ?」
「ですが、偉大なる聖女さまですから……」
「かもしれませんが、まだなったばかりですし、元は伯爵令嬢でしたから、どうしても目上の方にそんな風に接してもらうのは……」
私がおずおずとしながら申し上げると、
「……では、2人きりの時は、ユリナと呼んでも良いかな?」
「へっ?」
「ダメかな?」
スッと、手の甲に触れられて、ドキリとしてしまいます。ああ、ダメよ、私。殿方に対して免疫が無いからって、そんな生娘みたいな反応を……
「そ、それでお願いします」
「ありがとう、ユリナ」
その爽やかな風が吹き抜けるような微笑みに、私は軽くノックダウンされそうになりました。イケメンとは、げに恐ろしき生き物です。でも、同じイケメンでもブリックス様に対しては、こんな風にトキめいたことがありません。まあ、レオルド様の方が、ブリックス様の100倍はイケメンな訳ですけど。ていうか、私ってば、イケメン、イケメンって言い過ぎでわ……
「ユリナ」
「あ、はい」
「休日は何をしているんだい?」
「え、えっと……聖女になる前は、あまり休みらしい休みが無くて。ずっと、家の仕事をしていました」
「そうか……やはり、苦労して来たんだね」
きゅっ、と今度は両手で私の手を包んでくれる。非常にありがたく有頂天になりそうなのだけど、私の心臓が持ちそうにないから、少し手加減をしていただきたい。
「そ、そうですね」
「でもそのおかげで、君はこんなにも聡明で、美しい」
「う、美しいって……地味な女ですわ」
「そんなことはないよ」
頬に手を添えられて、くいと顔を向けられる。間近でレオルド様の顔を見た。心拍数が急上昇してしまいます。
「レ、レオルド様……」
「あまり化粧をせずにこの美しさなら、きちんと化粧を覚えればもっと素晴らしい美女になるだろうね」
「そ、そんなことは……」
「ああ、でも、それだと困るな」
「こ、困る? 誰がですか?」
「僕がだよ、ユリナ」
「レ、レオルド様が? なぜですか?」
きゅっ、とまた手を握られる。
「まだ会ったばかりで、こんなことを言ったら軽薄な男と思われてしまうかもしれないけど……僕はもう、君に夢中のようだ」
開いた口が塞がらなかった。
「そ、それは……」
「もちろん、今すぐに返事をしてくれとは言わない。ただ、これだけは分かって欲しい。僕は君が聖女だからではなく、君が君だからひとめぼれしたんだ……ユリナ」
もう、限界だった。すぐ目の前で、甘く良い香りがずっと私の鼻腔をくすぐるから。
「レ、レオルド様。その、恥ずかしながら、私は今まで殿方と接した経験に乏しくて……」
「そうなのかい? けど、婚約者はいたんだろう?」
「はい。ですが、彼も私のことを女ではなく、使える駒くらいにしか思っていなかったでしょうし」
その頃のことを思い出して、少し苦い笑みを浮かべてしまう。すると、レオルド様の手がそっと優しく私の頭に置かれた。
「君のそんな顔は見たくない」
「レ、レオルド様」
「約束する。僕なら、きっとずっと、君を笑顔にして見せる」
「で、ですが、あなたは王太子で……」
「さっきの言葉と矛盾するかもしれないけど、君が聖女になってくれたおかげで、君と結婚できるかもしれない。父上も母上も、君が相手なら大歓迎さ」
もはや、私の矮小な度量では受け止めきれない。既にパニック状態に陥っていた。レオルド様もそれを察してくれたのか、
「名残惜しいが、今日の所はこれくらいにしておこう」
レオルド様は私から手を話し、淡く微笑んで下さいます。
「ユリナ、お互いに忙しい身だけど、また時間を作って会ってくれないか?」
「あ、はい……とは言っても、恥ずかしながら、私の仕事は基本的に1日3回のお祈りだけですから……給料泥棒でごめんなさい」
「あはは、そんなことないよ……じゃあ、思ったよりもたくさん、会えそうだね」
耳元で囁かれて、魂が抜けそうになった。くらっと倒れそうになった私を支えながら、レオルド様は立ち上がる。
「すまない、聖女さまを送ってあげてくれ」
「かしこまりました」
命じられた使者の方が、私のそばに寄ります。
「聖女さま、参りましょう」
私は無言のまま頷くと、チラとレオルド様を見た。
彼もまた無言のまま、けど暖かな微笑みを浮かべて下さいます。
そして、口パクの動きで『また会おう』と伝えて下さいます。
もちろん、とても嬉しいのですが、やはり私のキャパオーバーなので、恥ずかし過ぎて顔を背けてしまいました。
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