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第8話 あの女よりも、ずっと良いはず……
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~ブリックス視点~
そもそもあの女、ユリナと婚約したのは、親に言われて仕方なくだった。
「父上、私はあのような地味な女が結婚相手だなんて、嫌気が差してしまいます。それよりも、妹のアメリアの方が華やかで愛らしいし、公爵子息たる私の妻としてふさわしいと思います」
「確かに、ユリナは地味な女かもしれない。しかし、元の顔立ちは決して悪くないし、あくまでも一歩引くつつましやかな姿勢が良い。何よりも、長いこと家の仕事をほぼ1人でこなすくらい優秀な女だ。だから、結婚すればお前と共に我が家を発展させてくれるだろう。ただそうなると、あちらの仕事を回す人材が必要になるかもしれないから、いっそのこと業務提携をするのもありだな」
と、父上は勝手に未来予想図を描いている。正直、そんなのまっぴらごめんだ。もちろん、生活して行くために必要な仕事はするつもりだ。けれども、そんな仕事、仕事ばかりの日々ではつまらない。俺はもっと可愛い女と、楽しく明るい生活を送りたい。だからこそ、ちょっと学は足りないかもしれないけど、愛嬌が良くてねだればエロいことをさせてくれそうなアメリアと結婚したいんだ。そう思って……
「ユリナ、お前に婚約破棄を言い渡す」
あの女にそう言ったのだ。元より、あの女がバラノン家において、さほど愛されていないことは分かっていた。だから、事前にバラノン家の者たちに根回しをしておいて、婚約破棄、さらには家からの追放をすることが出来たのだ。そして、俺は晴れてアメリアと婚約することが出来た。父上を初め、家族のみんなには色々と言われたが、これはあくまでも俺の結婚だ。家の名誉があるとか、知ったことではない。
「はぁ……ブリックス。そこまで言うのなら、お前に当主の座も譲ろう。そして、私たちは隠居をすることにしたよ。元より、その予定だった」
「えっ? あ、そうですか……」
それは少し、不安だったが……俺はそれなりに仕事がデキる男だ。それに、父上の時代の優秀な部下たちも残ってくれるし、まあ何とかなるだろう。
「これからはせいぜい、可愛らしいお嬢さんと一緒に、家を存続させてくれ」
「ええ、父上。今よりもさらに利益を上げて、のんびり隠居中のあなた方に、たんまりと仕送りをさせていただきますよ」
「あまり期待はしてないがな」
何だと、このクソオヤジ……っと、いけない。俺は由緒正しきオメルダ公爵家の息子、いやこれからオメルダ公爵その人になるのだ。こんな下らない戯言くらいで、心を乱している場合ではない。
「父上、結婚パーティーには出席していただけますね?」
「ああ、もちろん。息子の最後の勇姿を拝むためにもな」
は? 最後? このクゾジジイ、もうろくしてんじゃねえぞ?
「あはは、楽しみにしております」
俺は笑いながら、心の奥底でざわつきを感じていた。けど、きっと気のせいに違いない。俺は自分の信念に従って生きて行く。親の用意したレールなんて必要ない。あの地味で面白味のない女、ユリナを捨てて、華やかで愛嬌のあるアメリアを選んだことは、正解なのだ。絶対に、絶対に……
そもそもあの女、ユリナと婚約したのは、親に言われて仕方なくだった。
「父上、私はあのような地味な女が結婚相手だなんて、嫌気が差してしまいます。それよりも、妹のアメリアの方が華やかで愛らしいし、公爵子息たる私の妻としてふさわしいと思います」
「確かに、ユリナは地味な女かもしれない。しかし、元の顔立ちは決して悪くないし、あくまでも一歩引くつつましやかな姿勢が良い。何よりも、長いこと家の仕事をほぼ1人でこなすくらい優秀な女だ。だから、結婚すればお前と共に我が家を発展させてくれるだろう。ただそうなると、あちらの仕事を回す人材が必要になるかもしれないから、いっそのこと業務提携をするのもありだな」
と、父上は勝手に未来予想図を描いている。正直、そんなのまっぴらごめんだ。もちろん、生活して行くために必要な仕事はするつもりだ。けれども、そんな仕事、仕事ばかりの日々ではつまらない。俺はもっと可愛い女と、楽しく明るい生活を送りたい。だからこそ、ちょっと学は足りないかもしれないけど、愛嬌が良くてねだればエロいことをさせてくれそうなアメリアと結婚したいんだ。そう思って……
「ユリナ、お前に婚約破棄を言い渡す」
あの女にそう言ったのだ。元より、あの女がバラノン家において、さほど愛されていないことは分かっていた。だから、事前にバラノン家の者たちに根回しをしておいて、婚約破棄、さらには家からの追放をすることが出来たのだ。そして、俺は晴れてアメリアと婚約することが出来た。父上を初め、家族のみんなには色々と言われたが、これはあくまでも俺の結婚だ。家の名誉があるとか、知ったことではない。
「はぁ……ブリックス。そこまで言うのなら、お前に当主の座も譲ろう。そして、私たちは隠居をすることにしたよ。元より、その予定だった」
「えっ? あ、そうですか……」
それは少し、不安だったが……俺はそれなりに仕事がデキる男だ。それに、父上の時代の優秀な部下たちも残ってくれるし、まあ何とかなるだろう。
「これからはせいぜい、可愛らしいお嬢さんと一緒に、家を存続させてくれ」
「ええ、父上。今よりもさらに利益を上げて、のんびり隠居中のあなた方に、たんまりと仕送りをさせていただきますよ」
「あまり期待はしてないがな」
何だと、このクソオヤジ……っと、いけない。俺は由緒正しきオメルダ公爵家の息子、いやこれからオメルダ公爵その人になるのだ。こんな下らない戯言くらいで、心を乱している場合ではない。
「父上、結婚パーティーには出席していただけますね?」
「ああ、もちろん。息子の最後の勇姿を拝むためにもな」
は? 最後? このクゾジジイ、もうろくしてんじゃねえぞ?
「あはは、楽しみにしております」
俺は笑いながら、心の奥底でざわつきを感じていた。けど、きっと気のせいに違いない。俺は自分の信念に従って生きて行く。親の用意したレールなんて必要ない。あの地味で面白味のない女、ユリナを捨てて、華やかで愛嬌のあるアメリアを選んだことは、正解なのだ。絶対に、絶対に……
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