【完結】幼馴染から離れたい。

June

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薬は飲んだけれど、本当はあまり効果はなくて、気怠い調子のまま。

食欲もあまり無くて、朝も昼もあまり食べれていない。

これは後天性Ωで、まだ体が完全ではないからだとか。

このままβに戻ってくれないだろうか。


そうして、自室で寝ていたところ、インターホンが鳴る。

誰だろうか。少し話すくらいならいいだろう。

気怠い体を起こし、階段を降りる。


・・・もし、外にいる人が、朔だったら。


そう思うけど、そんなわけない。今日は月曜日、今は授業中の筈だ。

用事があると連絡はしたから、来るはずもない。

玄関についた優希は、ドアノブを捻り、確認程度に少し開けた。


「どちらさま、──っ」


少し開けたドアの隙間から、薫る香り。


「───優希」


扉の向こうから呼ぶ声に、ドクンと胸がなり、ブワッと体の熱が上がる。


この声は、朔だ。


「な、んで」


まずい、体が、頭がなんかおかしい。熱い。息が荒くなる。

突然の体の異変に頭が追いつかない。

こんな姿見せられない、朔にどう接していいかもわからない。

直ぐ扉を閉めようとするが、隙間から伸びた手が、ドアを引っ張り開けた。


「っ!」


そして優希は、開いたドアに体ごと持っていかれ、朔の方に抱きつくような形となってしまう。


「優希、会いたかった。心配した。」


退けようとする優希を逃さないように、朔は強く抱きしめた。


「さ、朔、離せよっ」

「やだ」


朔は優希を抱きしめたまま玄関に入り込んできた。

距離が近くなったことで、匂いが鮮明になり、更に体が熱くなる。

αと接触し、Ωの症状が、発情、したのだろうか。

だとしたら、本当にまずい。

このままじゃ─────


「───やっとだ。この日を待ってたよ。」

「なに、いって、」

「優希、Ωになったんでしょ」

「っ」


なんで、知って、


思考停止していると、急に横抱きにされ、視界が高くなる。


「取り敢えず、部屋に行こっか。」

「っ、降ろせよっ、」

「動かないで、危ないから。」


そう言い、2階の部屋に連れてかれる。

その最中、朔を見るが、平然としたその姿に、胸が痛んだ。

部屋に着くと、朔は優しく優希をベットに座らせる。


「薬あるよね。抑制剤。持って来るから。」


そう言って部屋を出て行こうとする朔。優希はボソリと言う。


「・・・お前、なんとも、ないんだな・・・」


優希の言葉を聞いた朔はポカンとする。そして困った表情をした。


「そんな顔、しないでよ。」


朔は優希の座るベットのそばにしゃがみ込み、不安げな優希の頭を優しく撫でると、朔は下へと降りていった。

朔がいなくなり、1人になった部屋。


「っ、」


悔しさを感じ、涙が出てくる。


困った顔、するなよ。


最初から相手しなきゃいいのに、放っておいて欲しかった。来て欲しくなかったのに。

朔はなんともない。

俺は今発情しているんだ。けれど、朔はきっと何も感じてない。

『運命』なんて俺にはない。

最悪。こんなみっともない姿見せたくなかったのに。
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