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薬は飲んだけれど、本当はあまり効果はなくて、気怠い調子のまま。
食欲もあまり無くて、朝も昼もあまり食べれていない。
これは後天性Ωで、まだ体が完全ではないからだとか。
このままβに戻ってくれないだろうか。
そうして、自室で寝ていたところ、インターホンが鳴る。
誰だろうか。少し話すくらいならいいだろう。
気怠い体を起こし、階段を降りる。
・・・もし、外にいる人が、朔だったら。
そう思うけど、そんなわけない。今日は月曜日、今は授業中の筈だ。
用事があると連絡はしたから、来るはずもない。
玄関についた優希は、ドアノブを捻り、確認程度に少し開けた。
「どちらさま、──っ」
少し開けたドアの隙間から、薫る香り。
「───優希」
扉の向こうから呼ぶ声に、ドクンと胸がなり、ブワッと体の熱が上がる。
この声は、朔だ。
「な、んで」
まずい、体が、頭がなんかおかしい。熱い。息が荒くなる。
突然の体の異変に頭が追いつかない。
こんな姿見せられない、朔にどう接していいかもわからない。
直ぐ扉を閉めようとするが、隙間から伸びた手が、ドアを引っ張り開けた。
「っ!」
そして優希は、開いたドアに体ごと持っていかれ、朔の方に抱きつくような形となってしまう。
「優希、会いたかった。心配した。」
退けようとする優希を逃さないように、朔は強く抱きしめた。
「さ、朔、離せよっ」
「やだ」
朔は優希を抱きしめたまま玄関に入り込んできた。
距離が近くなったことで、匂いが鮮明になり、更に体が熱くなる。
αと接触し、Ωの症状が、発情、したのだろうか。
だとしたら、本当にまずい。
このままじゃ─────
「───やっとだ。この日を待ってたよ。」
「なに、いって、」
「優希、Ωになったんでしょ」
「っ」
なんで、知って、
思考停止していると、急に横抱きにされ、視界が高くなる。
「取り敢えず、部屋に行こっか。」
「っ、降ろせよっ、」
「動かないで、危ないから。」
そう言い、2階の部屋に連れてかれる。
その最中、朔を見るが、平然としたその姿に、胸が痛んだ。
部屋に着くと、朔は優しく優希をベットに座らせる。
「薬あるよね。抑制剤。持って来るから。」
そう言って部屋を出て行こうとする朔。優希はボソリと言う。
「・・・お前、なんとも、ないんだな・・・」
優希の言葉を聞いた朔はポカンとする。そして困った表情をした。
「そんな顔、しないでよ。」
朔は優希の座るベットのそばにしゃがみ込み、不安げな優希の頭を優しく撫でると、朔は下へと降りていった。
朔がいなくなり、1人になった部屋。
「っ、」
悔しさを感じ、涙が出てくる。
困った顔、するなよ。
最初から相手しなきゃいいのに、放っておいて欲しかった。来て欲しくなかったのに。
朔はなんともない。
俺は今発情しているんだ。けれど、朔はきっと何も感じてない。
『運命』なんて俺にはない。
最悪。こんなみっともない姿見せたくなかったのに。
食欲もあまり無くて、朝も昼もあまり食べれていない。
これは後天性Ωで、まだ体が完全ではないからだとか。
このままβに戻ってくれないだろうか。
そうして、自室で寝ていたところ、インターホンが鳴る。
誰だろうか。少し話すくらいならいいだろう。
気怠い体を起こし、階段を降りる。
・・・もし、外にいる人が、朔だったら。
そう思うけど、そんなわけない。今日は月曜日、今は授業中の筈だ。
用事があると連絡はしたから、来るはずもない。
玄関についた優希は、ドアノブを捻り、確認程度に少し開けた。
「どちらさま、──っ」
少し開けたドアの隙間から、薫る香り。
「───優希」
扉の向こうから呼ぶ声に、ドクンと胸がなり、ブワッと体の熱が上がる。
この声は、朔だ。
「な、んで」
まずい、体が、頭がなんかおかしい。熱い。息が荒くなる。
突然の体の異変に頭が追いつかない。
こんな姿見せられない、朔にどう接していいかもわからない。
直ぐ扉を閉めようとするが、隙間から伸びた手が、ドアを引っ張り開けた。
「っ!」
そして優希は、開いたドアに体ごと持っていかれ、朔の方に抱きつくような形となってしまう。
「優希、会いたかった。心配した。」
退けようとする優希を逃さないように、朔は強く抱きしめた。
「さ、朔、離せよっ」
「やだ」
朔は優希を抱きしめたまま玄関に入り込んできた。
距離が近くなったことで、匂いが鮮明になり、更に体が熱くなる。
αと接触し、Ωの症状が、発情、したのだろうか。
だとしたら、本当にまずい。
このままじゃ─────
「───やっとだ。この日を待ってたよ。」
「なに、いって、」
「優希、Ωになったんでしょ」
「っ」
なんで、知って、
思考停止していると、急に横抱きにされ、視界が高くなる。
「取り敢えず、部屋に行こっか。」
「っ、降ろせよっ、」
「動かないで、危ないから。」
そう言い、2階の部屋に連れてかれる。
その最中、朔を見るが、平然としたその姿に、胸が痛んだ。
部屋に着くと、朔は優しく優希をベットに座らせる。
「薬あるよね。抑制剤。持って来るから。」
そう言って部屋を出て行こうとする朔。優希はボソリと言う。
「・・・お前、なんとも、ないんだな・・・」
優希の言葉を聞いた朔はポカンとする。そして困った表情をした。
「そんな顔、しないでよ。」
朔は優希の座るベットのそばにしゃがみ込み、不安げな優希の頭を優しく撫でると、朔は下へと降りていった。
朔がいなくなり、1人になった部屋。
「っ、」
悔しさを感じ、涙が出てくる。
困った顔、するなよ。
最初から相手しなきゃいいのに、放っておいて欲しかった。来て欲しくなかったのに。
朔はなんともない。
俺は今発情しているんだ。けれど、朔はきっと何も感じてない。
『運命』なんて俺にはない。
最悪。こんなみっともない姿見せたくなかったのに。
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