【完結】幼馴染から離れたい。

June

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もう知られてしまった。Ωになったこと。αはわかってしまうんだ。でもただそれだけ。


『運命』なんて─────


「次はなんで泣いてるの?」


いつの間にか部屋の朔が水の入ったコップと薬を手にし、戻って来ていた。

優希は涙を拭うと、キリッと朔を睨む。


「・・・もういい、早く帰れ、出てけよ、」

「あれ、調子戻って来た?」


机に水の入ったコップと薬を置くと、またこちらへやってくる。


「だから、来るな、って、」


前に出した手は避けられ、両手で顔を掴まる。


「そんなツンツンしないでよ。優希。もう─────本当かわいいんだからさ。発情してるからかな、可愛さ増してるよ。」

「・・・お前、何言ってんだよ、キモい、」


急にキモイ事を言い出した朔に心の底から思った事を口にする。


「本当のこと言ってるんだけどね」


意味がわからない。朔がわからない。考えてること思っている事。

だから、朔が言う事全てが、胸に刺さる。

朔は平然としている。

俺は、所詮運命などではない、βで幼馴染だった、Ωだ。


「優希?」


名前を呼ぶなよ。



「・・・出てけ、早く帰れ。・・・本当に最悪なんだよ。お前には、知られたくなかったのに・・・、俺のことはもう放っとけよっ、だって、朔には───」


『運命の番がいるんだろ。』


朔にそう言おうとした優希の口を、朔は唇で口を塞いだ。


「っ!」


しっとりした唇から暖かな感触が伝わる。


「───さ、く、っ」


朔を押し除けようと、手をつけば、腰に腕を回され、体は密着し、片手で、頭を押されられる。

息を吸おうと、少し口を開ければ、それを見逃さず、朔が優希の口に侵入してきた。


「っん、っふ、ぁっ、ゃ、さ、くっ」


上顎を撫でられ、舌を絡められる。口の端から涎が垂れていく。

苦しい。

息や体は熱を増していく。

再び朔を押し返そうとするが、そもそも腕には力が入らず、朔もびくともしない。


もぅ、やだ、


朦朧とする意識の中で、朔の舌を少し噛む。

朔の動きは止まる。その隙ををついて、優希はベットの上を後退り、朔から離れ、息を整える。


「・・・っ、はぁっ、はぁ、おまえ、なに、すんだ、なんで、き、すなんかっ」

「優希が好きだからだよ」

「ふざけてんじゃ、」

「ふざけてない」



「ふざけてないよ」


真っ直ぐとした真剣な目を優希に向けられる。


「俺は、優希が好きだ。」


ふざけてない。だから、否定しないで、と言わんばかりの目で、いつの間にか握られていた手をギュッとされる。


「優希が好きだよ。今も昔も、愛おしくて、好きで、可愛くて、だからキスもするよ。
幼馴染なんて関係じゃ物足りないんだ。俺はそれ以上の関係を望んでるんだよ。」


驚いて言葉が出づらい。


「・・・いみわかんない」

「だから、好きなんだって。ずっと前から。」

「そんなの、無理だ。おれはβだから、」

「今はΩでしょ?俺はずっと待ってた。

香水のこと聞いたあの時から、微かに優希からフェロモンの匂いがしてたから。俺嬉しかった。」


あの日から、朔は知ってたのか。


「『運命』っていうのかな。これで優希と正式に番になれる。」

「・・・そんなの、運命じゃない。番うとか、朔にはまだこれからがあって、あの子みたいな、綺麗なΩと・・・」

「『運命』は優希だってこと、俺は感じてたよ。出会った時から。

俺はさ、優希がいいよ。綺麗ってだけなΩより、俺と対等に接してくれて、ちょっぴり毒舌で、ツンツンとした可愛い優希と番になりたい。」


俺は朔に初めて出会った時のこと、覚えていない。

その時、もしかして、俺は運命を感じていたりしたのだろうか。


「ねぇ、優希。優希は俺のこと、どう思ってる?」


朔に問われる。

朔は俺を好きだと言った。

幼馴染以上に思っているとも言っていた。

綺麗なΩにつり合わない、元βの俺でいいと。


幼馴染で、βでありたかった。そう思っていたのに。

俺を好きだと、求めてくれている。

もう気づいてしまった感情を認めてしまおう。

こんな朔から離れるなんて、今の俺には無理に思える。


───離れたくない


「・・・俺も、朔が好きだよ」


だから朔の『運命』にさせて。

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