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もう知られてしまった。Ωになったこと。αはわかってしまうんだ。でもただそれだけ。
『運命』なんて─────
「次はなんで泣いてるの?」
いつの間にか部屋の朔が水の入ったコップと薬を手にし、戻って来ていた。
優希は涙を拭うと、キリッと朔を睨む。
「・・・もういい、早く帰れ、出てけよ、」
「あれ、調子戻って来た?」
机に水の入ったコップと薬を置くと、またこちらへやってくる。
「だから、来るな、って、」
前に出した手は避けられ、両手で顔を掴まる。
「そんなツンツンしないでよ。優希。もう─────本当かわいいんだからさ。発情してるからかな、可愛さ増してるよ。」
「・・・お前、何言ってんだよ、キモい、」
急にキモイ事を言い出した朔に心の底から思った事を口にする。
「本当のこと言ってるんだけどね」
意味がわからない。朔がわからない。考えてること思っている事。
だから、朔が言う事全てが、胸に刺さる。
朔は平然としている。
俺は、所詮運命などではない、βで幼馴染だった、Ωだ。
「優希?」
名前を呼ぶなよ。
「・・・出てけ、早く帰れ。・・・本当に最悪なんだよ。お前には、知られたくなかったのに・・・、俺のことはもう放っとけよっ、だって、朔には───」
『運命の番がいるんだろ。』
朔にそう言おうとした優希の口を、朔は唇で口を塞いだ。
「っ!」
しっとりした唇から暖かな感触が伝わる。
「───さ、く、っ」
朔を押し除けようと、手をつけば、腰に腕を回され、体は密着し、片手で、頭を押されられる。
息を吸おうと、少し口を開ければ、それを見逃さず、朔が優希の口に侵入してきた。
「っん、っふ、ぁっ、ゃ、さ、くっ」
上顎を撫でられ、舌を絡められる。口の端から涎が垂れていく。
苦しい。
息や体は熱を増していく。
再び朔を押し返そうとするが、そもそも腕には力が入らず、朔もびくともしない。
もぅ、やだ、
朦朧とする意識の中で、朔の舌を少し噛む。
朔の動きは止まる。その隙ををついて、優希はベットの上を後退り、朔から離れ、息を整える。
「・・・っ、はぁっ、はぁ、おまえ、なに、すんだ、なんで、き、すなんかっ」
「優希が好きだからだよ」
「ふざけてんじゃ、」
「ふざけてない」
「ふざけてないよ」
真っ直ぐとした真剣な目を優希に向けられる。
「俺は、優希が好きだ。」
ふざけてない。だから、否定しないで、と言わんばかりの目で、いつの間にか握られていた手をギュッとされる。
「優希が好きだよ。今も昔も、愛おしくて、好きで、可愛くて、だからキスもするよ。
幼馴染なんて関係じゃ物足りないんだ。俺はそれ以上の関係を望んでるんだよ。」
驚いて言葉が出づらい。
「・・・いみわかんない」
「だから、好きなんだって。ずっと前から。」
「そんなの、無理だ。おれはβだから、」
「今はΩでしょ?俺はずっと待ってた。
香水のこと聞いたあの時から、微かに優希からフェロモンの匂いがしてたから。俺嬉しかった。」
あの日から、朔は知ってたのか。
「『運命』っていうのかな。これで優希と正式に番になれる。」
「・・・そんなの、運命じゃない。番うとか、朔にはまだこれからがあって、あの子みたいな、綺麗なΩと・・・」
「『運命』は優希だってこと、俺は感じてたよ。出会った時から。
俺はさ、優希がいいよ。綺麗ってだけなΩより、俺と対等に接してくれて、ちょっぴり毒舌で、ツンツンとした可愛い優希と番になりたい。」
俺は朔に初めて出会った時のこと、覚えていない。
その時、もしかして、俺は運命を感じていたりしたのだろうか。
「ねぇ、優希。優希は俺のこと、どう思ってる?」
朔に問われる。
朔は俺を好きだと言った。
幼馴染以上に思っているとも言っていた。
綺麗なΩにつり合わない、元βの俺でいいと。
幼馴染で、βでありたかった。そう思っていたのに。
俺を好きだと、求めてくれている。
もう気づいてしまった感情を認めてしまおう。
こんな朔から離れるなんて、今の俺には無理に思える。
───離れたくない
「・・・俺も、朔が好きだよ」
だから朔の『運命』にさせて。
『運命』なんて─────
「次はなんで泣いてるの?」
いつの間にか部屋の朔が水の入ったコップと薬を手にし、戻って来ていた。
優希は涙を拭うと、キリッと朔を睨む。
「・・・もういい、早く帰れ、出てけよ、」
「あれ、調子戻って来た?」
机に水の入ったコップと薬を置くと、またこちらへやってくる。
「だから、来るな、って、」
前に出した手は避けられ、両手で顔を掴まる。
「そんなツンツンしないでよ。優希。もう─────本当かわいいんだからさ。発情してるからかな、可愛さ増してるよ。」
「・・・お前、何言ってんだよ、キモい、」
急にキモイ事を言い出した朔に心の底から思った事を口にする。
「本当のこと言ってるんだけどね」
意味がわからない。朔がわからない。考えてること思っている事。
だから、朔が言う事全てが、胸に刺さる。
朔は平然としている。
俺は、所詮運命などではない、βで幼馴染だった、Ωだ。
「優希?」
名前を呼ぶなよ。
「・・・出てけ、早く帰れ。・・・本当に最悪なんだよ。お前には、知られたくなかったのに・・・、俺のことはもう放っとけよっ、だって、朔には───」
『運命の番がいるんだろ。』
朔にそう言おうとした優希の口を、朔は唇で口を塞いだ。
「っ!」
しっとりした唇から暖かな感触が伝わる。
「───さ、く、っ」
朔を押し除けようと、手をつけば、腰に腕を回され、体は密着し、片手で、頭を押されられる。
息を吸おうと、少し口を開ければ、それを見逃さず、朔が優希の口に侵入してきた。
「っん、っふ、ぁっ、ゃ、さ、くっ」
上顎を撫でられ、舌を絡められる。口の端から涎が垂れていく。
苦しい。
息や体は熱を増していく。
再び朔を押し返そうとするが、そもそも腕には力が入らず、朔もびくともしない。
もぅ、やだ、
朦朧とする意識の中で、朔の舌を少し噛む。
朔の動きは止まる。その隙ををついて、優希はベットの上を後退り、朔から離れ、息を整える。
「・・・っ、はぁっ、はぁ、おまえ、なに、すんだ、なんで、き、すなんかっ」
「優希が好きだからだよ」
「ふざけてんじゃ、」
「ふざけてない」
「ふざけてないよ」
真っ直ぐとした真剣な目を優希に向けられる。
「俺は、優希が好きだ。」
ふざけてない。だから、否定しないで、と言わんばかりの目で、いつの間にか握られていた手をギュッとされる。
「優希が好きだよ。今も昔も、愛おしくて、好きで、可愛くて、だからキスもするよ。
幼馴染なんて関係じゃ物足りないんだ。俺はそれ以上の関係を望んでるんだよ。」
驚いて言葉が出づらい。
「・・・いみわかんない」
「だから、好きなんだって。ずっと前から。」
「そんなの、無理だ。おれはβだから、」
「今はΩでしょ?俺はずっと待ってた。
香水のこと聞いたあの時から、微かに優希からフェロモンの匂いがしてたから。俺嬉しかった。」
あの日から、朔は知ってたのか。
「『運命』っていうのかな。これで優希と正式に番になれる。」
「・・・そんなの、運命じゃない。番うとか、朔にはまだこれからがあって、あの子みたいな、綺麗なΩと・・・」
「『運命』は優希だってこと、俺は感じてたよ。出会った時から。
俺はさ、優希がいいよ。綺麗ってだけなΩより、俺と対等に接してくれて、ちょっぴり毒舌で、ツンツンとした可愛い優希と番になりたい。」
俺は朔に初めて出会った時のこと、覚えていない。
その時、もしかして、俺は運命を感じていたりしたのだろうか。
「ねぇ、優希。優希は俺のこと、どう思ってる?」
朔に問われる。
朔は俺を好きだと言った。
幼馴染以上に思っているとも言っていた。
綺麗なΩにつり合わない、元βの俺でいいと。
幼馴染で、βでありたかった。そう思っていたのに。
俺を好きだと、求めてくれている。
もう気づいてしまった感情を認めてしまおう。
こんな朔から離れるなんて、今の俺には無理に思える。
───離れたくない
「・・・俺も、朔が好きだよ」
だから朔の『運命』にさせて。
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