大好きな獅子様の番になりたい

あまさき

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2章

僕の親友

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レオス様が目覚めて、僕とレオス様は想いを伝えあった。僕はその余韻に浸るばかりで、大事なことを忘れていた。

「れ、レオス様、騎士団の皆さんに報告しないと!」

 僕が意識を保っていられたのが確か23時頃まで。
 今はまだ夜中の3時あたりだろう。誰もレオス様が起きたことに気づいてないはずだ。

 レオス様はなぜか僕を引き止めるように腕を掴んでいたが、みなさんも心配してたんですよ、と説得すると手を離してくれた。

 クリス様とルドルフ様、そしてシア。皆報告しに行くと急いで飛び起きて、レオス様の病室はとても騒がしくなった。

「レオスぅぅ!!お前、心配かけやがって!!」
「団長、病人の前で大声出さないでください!」
「よかったね、カナ…!」

 がやがやとした部屋の中心にレオス様がいるこの現実を噛み締めた。

 しばらくそんな幸せな時間が続いていたが、突然開かせた扉によって空気は一変された。

 入ってきたのは、レオス様が怪我をした時に庇われたと言っていたあの隊員だった。あのときと同じくらい顔を青くして、僕たちを見ている。
 なんだか嫌な予感がした。

「た、大変です…!」
「そんなに焦って…どうしましたか?」
「それが…今宿舎に警察隊の者が来て、至急シア様の身柄を拘束すると…!」

 心臓が凍りついたような感覚になった。
 なんでシアが、何をしたって言うんだ、と色々な考えが頭をめぐって動けないうちに、警察隊の者が部屋に入ってきた。

 代表者らしき人物がシアの腕を掴んで、連れていこうとする。

「ま、待ってください!!シアが何をしたって言うんですか!!」
「アリエスタ殿には今、今回の騎士団出動の原因となった魔獣を誘導し、騎士団の壊滅を目論んだ嫌疑がかかっています。至急身柄を拘束し、王城での幽閉が命じられております」
「シアがそんなことするわけない…!シアは僕と一緒にレオス様をっ」
「ここで何をおっしゃろうと、私たちのすることは変わりません。罪状を覆したいのでしたら、嫌疑が晴れるように上に掛け合ってください」

 事務的な発言しかしない警察に、これ以上何を言っても無駄だと悟った。

 シア本人は、すごく戸惑っているようだがこんなときでも冷静な風貌を崩さない。
一瞬だけ合った瞳が「心配しないで」と言っているような、そんな気がした。

 そしてシアは暴れたり抗議したりすることなく、警察隊に連行されていってしまった。

 怒涛の展開の末シアだけがいなくなった部屋で、僕は呆然とすることしか出来なかった。

 レオス様はそんな僕の背中を支えながら、優しく問いかけた。

「カナリエ…シア殿は、こんなことしないと信じてるんだな」
「当たり前です!シアは僕とレオス様のために、危ない任務にも着いてきてくれたんです…!」
「なら俺もシア殿を信じる」
「レオス様…」

 レオス様の温かい言葉に、僕も冷静さを取り戻してきた。

 (…シアを助けなきゃ)

 あの優しい親友を、僕をいつも助けてくれる大事な人を、今度は僕が助けるんだ。そう誓った。

 すると、今まで呆然と見ていたクリス様が焦ったように口を開いた。

「ちょ、ちょっと待ってくれ!信じるったって…これからどうにかしようってのか?」
「おう。おそらくだが、今回俺が怪我したことも罪状を重くする要因になっている。責任がないわけではないからな」

 レオス様の言葉に、確かにそうかもしれないと戦慄とした。
 町外れの森での犯行は愉快犯とも取れるため、通常はそれほど罪が重くならない。しかし、今回は王国の第三王子であるレオス様が瀕死の大怪我を負われた。
 国家を揺るがしかねない事件として、重い罰が下る可能性が高い。

「…私も、協力させてください」
「ルドルフ様…ありがとうございます」

 何を思っているのか、表情からは読み取れない。
 けれどきっとシアのことを助けたいと思ってくれたのだろう。固く握られた拳からは、強い想いが感じられた。


 ◇◇◇


 あれから、一度実家に帰っていた。
 僕より詳しく状況を知っているであろう父に話を聞くためだ。

「父上、シアが疑われている件について知っていることを聞かせてください」
「…やはり、そのために帰ってきたのだな。すまないが、私が知ることは少ない。それでもいいか?」
「はい、もちろんです」

 父が話してくれたのは、今回シアがやったとされる犯行の詳細だった。

 まず、騎士団が出動した魔獣に関して。
 討伐後に騎士団員の一人が、魔獣召喚の痕跡を発見した。そのことによって、この魔獣は誰かの手によって召喚されたと判明した。
 召喚は魔法陣を使って行われており、その魔方陣にシアの魔力の痕跡があったのだという。

「…となると、警察隊はもう」
「あぁ、シア殿の犯行だと確信を持っている様子だった」

 事態は思ったより深刻だ。僕は自然と眉間に皺が寄るのが分かった。

「私もお前と同じように、シア殿の犯行ではないと考えている。まるで見つけてくれとでも言うように、痕跡が明瞭すぎてな…シア殿がやったとは思えん」

 その通りだ。シアがやったにしては、犯行の全てが迂闊すぎる。

「アリエスタ伯爵も、そのように抗議した。よって今は判決が延期されている」
「そうなのですね!よかった…!」

 まだ何とかできる時間がある。
 そして、僕には一つこの犯行シアの冤罪を可能にする術に心当たりがあった。

「父様、少し調べていただきたいことがあります」

 僕のお願いを聞いた父様は、少し驚いた顔をしてから頷いた。

「出来るだけ早く準備をしよう。…カナリエ、私たちの可愛い息子よ。危ないことだけはしないでくれ」
「はい、父上」

温かい父の言葉に笑顔で頷いた。

(ごめんなさい、父上)

僕は、何としてもシアを助ける。そう決めてしまったのだ。

__________たとえどんな悲劇が起ころうとも。
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