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2章
糸口
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僕は、父と話した時に思い当たったその人が犯人で間違いないだろうと考えていた。
そしてそれを伝えるため、協力者であるレオス様とルドルフ様のいる騎士団宿舎まで来ていた。
「良かった、無事復帰できたんですね!」
レオス様は、あの事件から数日経ってやっと騎士団の仕事に復帰できた。今日も訓練に参加していたようで、運動後の汗が光っているのではないかと思うほど爽やかな笑顔を振りまいている。
「カナのおかげだよ、ありがとう」
「ふふ、レオス様のお役に立てて嬉しいです」
「…あの、イチャイチャするなら私は仕事に行きたいのですが」
労いをしただけのつもりだったのだが、ルドルフ様は呆れたようにそう言った。
「す、すみません!お話始めましょう!」
「チッ」
「おいそこ、上司に舌打ちはアウトですよ。全く…カナリエ殿、あの馬鹿をしつけるのは大変でしょうが、頑張っていただきたい」
「は、はい…?」
「ここの者たちは王族だろうが本当に遠慮がないな!?…まぁいい、カナ、話ってなんだ?」
なんだかとっても仲がよろしいようで、僕は少し羨ましくなってしまった。
けれど今はそんな話ではなく、シアの話をしに来たのだ。僕は真剣に話を始めた。
「父に話を聞いたところ、先日のあの魔獣は召喚により呼び出されていたことがわかりました。そして、そこにシアの魔力が残っていた、と」
「そこまでは俺も聞いた。正直なところ、その証拠が出てしまっている時点で勝算はかなり低いぞ」
レオス様の言う通り、魔力の痕跡が残っている時点で犯人が確定されてしまうのが常識だ。魔力というのは血と同じで、遺伝的な面もあるが完全に一致することは無いからである。
「普通でしたらそうでしょう。ですが、僕には魔力の捏造を可能にする人物に心当たりがあります」
「何ですって?!そんなの聞いたことがありません!」
「…それが、秘匿性の高い禁術なんです」
僕は一度、学院でその禁術の話をしているところに遭遇したのだ。
ある家系で代々護り続けてきた禁術書に、特定の個人の魔力を創造する術が載っているのだという。
他人の魔力を『創る』だなんて、存在するだけで犯罪そのものだ。
「その家のご子息は、異常にシアを目の敵にしていたんです」
「…動機がある、ってわけか」
僕がその話を聞いたのは、閉館間際の図書館。借り忘れた本があって探していると、そのご子息の声と、聞き馴染みのない男の声が会話しているのが聞こえた。出るに出れず立ち尽くしたまま、その話を聞いてしまったのだ。
「それでその家というのは?」
「…ヴァレンタイン伯爵家です」
家名を聞いた二人が息を飲んだ。それもそうだろう、ヴァレンタイン伯爵家は警察隊の指揮権を委ねられた家なのだ。
「…なるほど、犯罪に使われないようヴァレンタイン家が禁術書を…」
「そうだろうな。しかしその結果ヴァレンタインの者がそれを使って犯罪を、なんて皮肉なものだ」
「推測の範囲を出ませんが、それしか考えられません」
僕が父に頼んだのは、その禁術書が持ち出された形跡がないか、ヴァレンタイン伯爵へ調査を依頼してほしいということだ。
「父に頼んだ調査の結果が推測通りに出れば、シアの判決はおそらくさらに先送りが可能です。そして、僕たちが決定的な証拠を掴む」
「どうやって?犯人に直接アタックしてもまず何も話さないと思うぞ」
「はい。なので、動かぬ証拠を突きつけます」
「…あぁ、そういうことか」
魔獣が召喚されたあの場所に、あの方呼んでくるのだ。
「そうと決まれば、すぐ出発しよう。ルドルフはこの国に残って、リュードリア公爵の方に協力してくれ」
「それは了解しましたけど、その…全く話が見えないのですが」
訳が分からないといった様子のルドルフ様に、少し口角を上げたレオス様が答えた。
「簡単な話だ。シア殿を助けるために、砂竜様の力をお借りする」
そしてそれを伝えるため、協力者であるレオス様とルドルフ様のいる騎士団宿舎まで来ていた。
「良かった、無事復帰できたんですね!」
レオス様は、あの事件から数日経ってやっと騎士団の仕事に復帰できた。今日も訓練に参加していたようで、運動後の汗が光っているのではないかと思うほど爽やかな笑顔を振りまいている。
「カナのおかげだよ、ありがとう」
「ふふ、レオス様のお役に立てて嬉しいです」
「…あの、イチャイチャするなら私は仕事に行きたいのですが」
労いをしただけのつもりだったのだが、ルドルフ様は呆れたようにそう言った。
「す、すみません!お話始めましょう!」
「チッ」
「おいそこ、上司に舌打ちはアウトですよ。全く…カナリエ殿、あの馬鹿をしつけるのは大変でしょうが、頑張っていただきたい」
「は、はい…?」
「ここの者たちは王族だろうが本当に遠慮がないな!?…まぁいい、カナ、話ってなんだ?」
なんだかとっても仲がよろしいようで、僕は少し羨ましくなってしまった。
けれど今はそんな話ではなく、シアの話をしに来たのだ。僕は真剣に話を始めた。
「父に話を聞いたところ、先日のあの魔獣は召喚により呼び出されていたことがわかりました。そして、そこにシアの魔力が残っていた、と」
「そこまでは俺も聞いた。正直なところ、その証拠が出てしまっている時点で勝算はかなり低いぞ」
レオス様の言う通り、魔力の痕跡が残っている時点で犯人が確定されてしまうのが常識だ。魔力というのは血と同じで、遺伝的な面もあるが完全に一致することは無いからである。
「普通でしたらそうでしょう。ですが、僕には魔力の捏造を可能にする人物に心当たりがあります」
「何ですって?!そんなの聞いたことがありません!」
「…それが、秘匿性の高い禁術なんです」
僕は一度、学院でその禁術の話をしているところに遭遇したのだ。
ある家系で代々護り続けてきた禁術書に、特定の個人の魔力を創造する術が載っているのだという。
他人の魔力を『創る』だなんて、存在するだけで犯罪そのものだ。
「その家のご子息は、異常にシアを目の敵にしていたんです」
「…動機がある、ってわけか」
僕がその話を聞いたのは、閉館間際の図書館。借り忘れた本があって探していると、そのご子息の声と、聞き馴染みのない男の声が会話しているのが聞こえた。出るに出れず立ち尽くしたまま、その話を聞いてしまったのだ。
「それでその家というのは?」
「…ヴァレンタイン伯爵家です」
家名を聞いた二人が息を飲んだ。それもそうだろう、ヴァレンタイン伯爵家は警察隊の指揮権を委ねられた家なのだ。
「…なるほど、犯罪に使われないようヴァレンタイン家が禁術書を…」
「そうだろうな。しかしその結果ヴァレンタインの者がそれを使って犯罪を、なんて皮肉なものだ」
「推測の範囲を出ませんが、それしか考えられません」
僕が父に頼んだのは、その禁術書が持ち出された形跡がないか、ヴァレンタイン伯爵へ調査を依頼してほしいということだ。
「父に頼んだ調査の結果が推測通りに出れば、シアの判決はおそらくさらに先送りが可能です。そして、僕たちが決定的な証拠を掴む」
「どうやって?犯人に直接アタックしてもまず何も話さないと思うぞ」
「はい。なので、動かぬ証拠を突きつけます」
「…あぁ、そういうことか」
魔獣が召喚されたあの場所に、あの方呼んでくるのだ。
「そうと決まれば、すぐ出発しよう。ルドルフはこの国に残って、リュードリア公爵の方に協力してくれ」
「それは了解しましたけど、その…全く話が見えないのですが」
訳が分からないといった様子のルドルフ様に、少し口角を上げたレオス様が答えた。
「簡単な話だ。シア殿を助けるために、砂竜様の力をお借りする」
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