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第1330話 晶壁開拓
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多くのエネルギー核を納戒に収めた蕭炎は、笑みを徐々に消し去り、前方の晶壁を見据えた。
その向こう側には蠕動する虫影が肉眼で確認でき、液体エネルギーが晶壁から滲み出て実体化し、粘着質のように表面に付着している。
「二位、両サイドはお任せします」蕭炎が火稚と薬星極の方へ顔を向けた。
その言葉に対し、火稚は僅かに頷き、薬星極は蕭炎を見つめながら無言だった。
明らかに、蕭炎がここで指図する事に少々不満を感じているようだ。
「嗤!」
薬星極の視線を引き戻し、手印を結ぶと掌から淡黒い炎が浮かび上がる。
その炎は風のような音を立て、人々の耳に異様な煩わしさを与えた。
この不快な響きは感情に波紋を生むようだ。
「この*……」
薬星極の手にある異火を見た全員の視線が集まり、その珍奇さに驚く。
異炎は稀少であり、遠古種族でも見慣れない存在だった。
「九幽風炎、異炎ランキング第10位」人々の好奇な目を前に薬星極は笑みを浮かべた。
「九幽風*……」
蕭炎もその黒い炎に視線を留めた。
錬薬師としてその名前は耳馴染みだった。
彼の三千炎焱火が虚空中で成形するように、この九幽風炎は極陰地帯の無限の深淵から生まれた。
そこでは常に強烈な風が吹き荒れ、通常の斗尊級でも侵入をためらう場所だ。
「プ!」
突然微かな音と共に晶壁通路に赤い光が広がり、人々は火稚の手にある深紅色の炎を見やった。
その炎は蓮のような形を成し、妖艶さと威圧感を同時に放ちていた。
その異炎の出現で薬星極の九幽風炎は輝きを失い、風音も弱まった。
自分の炎がこの存在に劣る事実に不満を感じつつも、薬星極は抗えなかった。
紅蓮業火は異炎ランキングで2位上位だったからだ。
「啧啧、これが炎族の紅蓮業火か?」
古青陽が火稚の手にある異炎を観察し、笑みを浮かべた。
「うん」火稚は頷きながらも視線を蕭炎に向け、その目に奇妙な光を宿らせていた。
炎を見た火稚の目は、わずかに挑発的な光を帯びていた。
普段は黙りがちだが、異火という事柄ではその野性さが露わになっているようだ。
息を吐くと同時に、炎の掌がぎゅっと握られた。
指先から様々な色の炎が滲み出て、最終的に紫褐色に白銀の筋が混ざった一塊となった。
その炎は翻騰し、龍のような火の玉が次々と飛び立つ。
その中には龍の鳴き声すら聞こえてくる。
「吼!」
炎を手にした瞬間、火稚の紅蓮業火に浮かぶ蓮の紋様が激しく揺らいだ。
虚ろになりかけているように見えた。
反対側では薬星極の九幽風炎はさらに暗くなり、そのうめき声さえも消え去った。
「あなたの異火のランクは高くないが、融合させた結果は上位六に匹敵する。
しかし異火を融合させるという狂気は、おそらくあなたが初めてだろう」
火稚の目元に波紋が広がり、面差しの奥で低く優しい声が響いた。
その言葉には反応せず、炎を融合させることの非現実性と、伝説の焚決を作った人物も異火を融合させた可能性について考えていた。
時間は待てない。
「よし、今すぐ始めよう」
炎を手にした炎が急膨張し、龍のような炎が爆発的に噴出する。
その紫褐色の巨竜は晶壁に激突し、鋭い爪で巨大な穴を開けた。
「追いかけるぞ!」
炎の尾部と腕を繋ぎながら、炎を踏みつけ地面を蹴り、先へと駆け出す炎。
後ろでは古青陽たちが続く。
「すごい制御力……」
炎の巨竜が晶壁を開く様子を見て火稚は目を見開き、赤い炎で左側の晶壁を覆った。
その高温で合体速度が遅れる。
薬星極も反対側から手を動かし、命に関わる緊張感の中で全力を尽くす。
内部では巨竜が暴れ、遠古の虫を焼き尽くす。
しかし虫は次々と押し寄せてきて、炎にエネルギーを阻害する。
「ドン!ドン!」
晶壁の中で絶え間なく響く爆音の下、蕭炎たちは進む速度を早めた。
「この消耗は恐ろしすぎる……」と彼がつぶやいた瞬間、体中の斗気は洪水のように流れ去り、掌に布袋を取り出す。
中身を見ずに直接取り出し、エネルギー核から吸収した力を火龍へ注ぎ込む。
後方の古青陽たちも深刻な表情で見守る。
遠古の食虫獣が阻む極端に硬い晶壁を突破するためには、蕭炎の異火すらも容易ではないのだ。
「あと30分で光幕突破だ」銀袍の男が静かに告げた。
古青陽は頷きながら、ただ前進を願うばかりだった。
轟音が連続し、空気が震える中、彼らの緊張はさらに高まる。
蕭炎が次々とエネルギー核を吸収する様子を見れば、誰も胸が騒ぐ。
「バキィ!」
火龍が晶壁に衝突すると、その動きがわずかに緩んだ。
彼は重い声で告げた。
「エネルギー核が尽きた」
聞き耳を立てていた古青陽はすぐさま九星核を手渡す。
「これは一枚だけ……」と前置きするが、蕭炎は首を横に振る。
「これも!」
火炫が躊躇しつつも追加した。
彼の言葉に応じて雷族の男や石族の二人もエネルギー核を手渡す。
最後に魂崖が渋々と九星核を投げたのは、彼らが苦労して集めたものだったからだ。
五つの九星核を受け取った蕭炎は深呼吸し、火龍の体にさらに力を注ぐ。
その瞬間、火龍は一閃で晶壁を貫き、後続も続く。
約30分という激戦が終わり、火龍の輝きが薄れ始めた時、蕭炎の視線が晶壁中央部に釘付けになった。
そこには拳大の淡紅色の物体があり、遠目には不気味な虫の巣のように見えた。
その向こう側には蠕動する虫影が肉眼で確認でき、液体エネルギーが晶壁から滲み出て実体化し、粘着質のように表面に付着している。
「二位、両サイドはお任せします」蕭炎が火稚と薬星極の方へ顔を向けた。
その言葉に対し、火稚は僅かに頷き、薬星極は蕭炎を見つめながら無言だった。
明らかに、蕭炎がここで指図する事に少々不満を感じているようだ。
「嗤!」
薬星極の視線を引き戻し、手印を結ぶと掌から淡黒い炎が浮かび上がる。
その炎は風のような音を立て、人々の耳に異様な煩わしさを与えた。
この不快な響きは感情に波紋を生むようだ。
「この*……」
薬星極の手にある異火を見た全員の視線が集まり、その珍奇さに驚く。
異炎は稀少であり、遠古種族でも見慣れない存在だった。
「九幽風炎、異炎ランキング第10位」人々の好奇な目を前に薬星極は笑みを浮かべた。
「九幽風*……」
蕭炎もその黒い炎に視線を留めた。
錬薬師としてその名前は耳馴染みだった。
彼の三千炎焱火が虚空中で成形するように、この九幽風炎は極陰地帯の無限の深淵から生まれた。
そこでは常に強烈な風が吹き荒れ、通常の斗尊級でも侵入をためらう場所だ。
「プ!」
突然微かな音と共に晶壁通路に赤い光が広がり、人々は火稚の手にある深紅色の炎を見やった。
その炎は蓮のような形を成し、妖艶さと威圧感を同時に放ちていた。
その異炎の出現で薬星極の九幽風炎は輝きを失い、風音も弱まった。
自分の炎がこの存在に劣る事実に不満を感じつつも、薬星極は抗えなかった。
紅蓮業火は異炎ランキングで2位上位だったからだ。
「啧啧、これが炎族の紅蓮業火か?」
古青陽が火稚の手にある異炎を観察し、笑みを浮かべた。
「うん」火稚は頷きながらも視線を蕭炎に向け、その目に奇妙な光を宿らせていた。
炎を見た火稚の目は、わずかに挑発的な光を帯びていた。
普段は黙りがちだが、異火という事柄ではその野性さが露わになっているようだ。
息を吐くと同時に、炎の掌がぎゅっと握られた。
指先から様々な色の炎が滲み出て、最終的に紫褐色に白銀の筋が混ざった一塊となった。
その炎は翻騰し、龍のような火の玉が次々と飛び立つ。
その中には龍の鳴き声すら聞こえてくる。
「吼!」
炎を手にした瞬間、火稚の紅蓮業火に浮かぶ蓮の紋様が激しく揺らいだ。
虚ろになりかけているように見えた。
反対側では薬星極の九幽風炎はさらに暗くなり、そのうめき声さえも消え去った。
「あなたの異火のランクは高くないが、融合させた結果は上位六に匹敵する。
しかし異火を融合させるという狂気は、おそらくあなたが初めてだろう」
火稚の目元に波紋が広がり、面差しの奥で低く優しい声が響いた。
その言葉には反応せず、炎を融合させることの非現実性と、伝説の焚決を作った人物も異火を融合させた可能性について考えていた。
時間は待てない。
「よし、今すぐ始めよう」
炎を手にした炎が急膨張し、龍のような炎が爆発的に噴出する。
その紫褐色の巨竜は晶壁に激突し、鋭い爪で巨大な穴を開けた。
「追いかけるぞ!」
炎の尾部と腕を繋ぎながら、炎を踏みつけ地面を蹴り、先へと駆け出す炎。
後ろでは古青陽たちが続く。
「すごい制御力……」
炎の巨竜が晶壁を開く様子を見て火稚は目を見開き、赤い炎で左側の晶壁を覆った。
その高温で合体速度が遅れる。
薬星極も反対側から手を動かし、命に関わる緊張感の中で全力を尽くす。
内部では巨竜が暴れ、遠古の虫を焼き尽くす。
しかし虫は次々と押し寄せてきて、炎にエネルギーを阻害する。
「ドン!ドン!」
晶壁の中で絶え間なく響く爆音の下、蕭炎たちは進む速度を早めた。
「この消耗は恐ろしすぎる……」と彼がつぶやいた瞬間、体中の斗気は洪水のように流れ去り、掌に布袋を取り出す。
中身を見ずに直接取り出し、エネルギー核から吸収した力を火龍へ注ぎ込む。
後方の古青陽たちも深刻な表情で見守る。
遠古の食虫獣が阻む極端に硬い晶壁を突破するためには、蕭炎の異火すらも容易ではないのだ。
「あと30分で光幕突破だ」銀袍の男が静かに告げた。
古青陽は頷きながら、ただ前進を願うばかりだった。
轟音が連続し、空気が震える中、彼らの緊張はさらに高まる。
蕭炎が次々とエネルギー核を吸収する様子を見れば、誰も胸が騒ぐ。
「バキィ!」
火龍が晶壁に衝突すると、その動きがわずかに緩んだ。
彼は重い声で告げた。
「エネルギー核が尽きた」
聞き耳を立てていた古青陽はすぐさま九星核を手渡す。
「これは一枚だけ……」と前置きするが、蕭炎は首を横に振る。
「これも!」
火炫が躊躇しつつも追加した。
彼の言葉に応じて雷族の男や石族の二人もエネルギー核を手渡す。
最後に魂崖が渋々と九星核を投げたのは、彼らが苦労して集めたものだったからだ。
五つの九星核を受け取った蕭炎は深呼吸し、火龍の体にさらに力を注ぐ。
その瞬間、火龍は一閃で晶壁を貫き、後続も続く。
約30分という激戦が終わり、火龍の輝きが薄れ始めた時、蕭炎の視線が晶壁中央部に釘付けになった。
そこには拳大の淡紅色の物体があり、遠目には不気味な虫の巣のように見えた。
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