【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香

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本編

強制力ってやつですか

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「考えられない」

 どういう事だそれ。
 だって名前呼びイベントだって、ゲームのイベントじゃ無い。
 川島君はすでに名前を呼んでいたから別として、佐々木様と谷崎様がその状況で名前呼びを決めたのなら、どちらもイベントはクリアしていない事になる。
 谷崎様は攻略対象者の中で一番賤民意識が強い人で、平民なんて家畜レベルの考えしかないんだ。
 一つ違いの長男が病弱な為、時期当主と言われている谷崎様は次男という立場ででも当主の可能性がとても強い人でもある故に色々歪んだ考え方をしている。
 自分の誕生日、兄が熱を出し両親が兄の傍から離れず一人で祝いの料理が並んだテーブルで食事をした記憶。兄は体が弱いながらも優秀で自分が必死にクリアした課題を難無く解いてしまう。そしてそれを両親は大袈裟に褒める。そんな幼い頃の記憶を持ったまま学園に通い始め、平民ながら奨学金を得て学園に転入してきた転校生に惹かれるんだ。

『信也君は凄いですね。努力して実力を付けて自分の道を開いてるんですもん。僕そういうの凄いと思います。あ、僕みたいな平民が凄いって思うの失礼ですね』

 申し訳なさそうに笑う主人公を谷崎様は何故か可愛いと思う。そして、皆が呼ぶ谷崎ではなく信也と名前で呼んで欲しいと思うんだ。

「考えられない?」
「だって、名前を呼ぶ許可を下の者に与えるのは信頼や友愛の情があるから。だからこそ名前を呼ぶ事が出来るのを僕達は喜ぶし、栄誉だと思うんです。ですが、あなたは転校生の彼の考え方が珍しいから受け入れた。そして彼の事しか考えられず昼休みに舞を探すのを忘れた」

 イベントをクリアしてるわけじゃないのに、主人公は攻略対象者である佐々木様と谷崎様の好感度を上げている。そして、友達エンドを回避しそうな程親密になっている。

「佐々木様、あなたが問題視をしていないたった二日間の食堂での行為、舞はとても傷付いていますよ。あなたが舞を探さず転校生に夢中になっている様子を見る事で、そしてあなたを名前を彼が呼ぶ事で、舞はあなたがしてくれた約束を忘れたのだと思っています。いつか美空というあなたが舞に与えてくれた名前を、公のものとするという約束を忘れてしまったのだと、あの約束が大切なものだと思っていたのは自分だけだったのだと舞はそう思っています」

 僕が今日舞の傍にいなければ、舞は家に連絡し退学の話を進めてしまっていただろう。舞の性格なら佐々木様に自分の気持ちを伝えるなんてしない。
 平民とは違う舞の家の立ち位置、佐々木様の家との立場の差を気にしてなのか舞は消極的過ぎる位に消極的だ。
 奇跡的に今日一緒にいたから舞は家に連絡するのを踏みとどまった。でも、主人公と佐々木様の親密な様子を今後見続けて同じ様にいられるかは微妙だ。

「約束は絶対だ。私は舞を私の妻にする」
「今のままなら、舞は退学して家に帰ってしまうでしょう。そして父親よりも年上の相手の世話になる」

 それってどんなBLだと思うけれど、昼休みの舞は本気だった。

「父親よりも上の相手。ああ、そうだな」
「相手が誰かご存知なのですか」

 驚いて僕が聞くと、佐々木様は当り前の話をする様に頷いた。

「それは私の祖父だろう。舞の弟達はすべて私の親族が世話しているからな」

 それってなんていうBLですか。
 話を聞いた僕の意識が遠くなっても、誰も責めないと思う。
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