【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香

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本編

え、ここゲームの世界で合ってますよね?

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「あの」
「舞の家、宮原家は伝統舞を神殿に奉納する為に存在している家だ。そして我が佐々木家の当主は神殿の大神官を務める」
「ええと、次の当主は佐々木様になるのですよね。では、学園を卒業後は大神官の教育を受けるのですか」

 なんだっけ、この話どこかで聞いた気がする。聞いた? 違う、読んだんだ。
前世僕はこの話を読んだ。ゲームじゃない、これは確か。

「そうだ。私は卒業後は神殿に入り大神官となるべく修行を行なう。舞は私と共に神殿に入る」
「神殿に」

 佐々木様の話を聞きながら、貧血になりそうな気持ちで前世の記憶を辿る。
 なんで忘れてたんだ。佐々木様と幼なじみの話、ゲーム会社公式の二次創作として売り出された小説の薄い本があったじゃないか。
 夏のイベント限定で売られた薄い本。前世の俺は誰かに見られるのが怖くて薄い本をイベントなんかで買ったりするのは出来なかった。
 全部ネット購入で、だからイベント限定発売されたこの小説は買えなくて公式サイトに出てたダイジェスト版を読んだだけだった。
 ゲームでお友達エンドになった場合の佐々木様の卒業後という設定だった。
 幼なじみと共に神殿に入った佐々木様が主役で、ゲームの主人公木村春は佐々木様が忘れられず思いを募らせて神殿にやってくるという話だったと思う。

「佐々木様のお祖父様が舞の世話をするという話は」
「舞は神子舞の名手で、宮原家の次の当主である長男よりも舞の神子舞の方が優れていると言われているんだ。だが次代の印は長男に出ていたから、舞は名を貰えなかった」
「次代の印?」

 あれ、小説の設定なんじゃないのか? なんでここだけ二次創作のファンタジー設定そのままなんだろ。疑問に思いながら尋ねると、佐々木様は当り前の様に自分の家は竜の血筋だとか言い出した。
 それって小説の設定そのまんまじゃないか。

「竜、ですか」
「ああ、竜だ。そして宮原家は竜の番が出やすい家なんだ。私の番は舞だ」

 正直話の展開について行けずに目眩が起きる。
 いや、この世界がゲームの世界だとしたらこういう設定もありなのかもしれないよ。
 そもそも、和の国以外が世界に存在しないのに経済が成り立ってるとか、文明は前世並だっていうのに平民と貴族と王族なんてものが存在してるとか。
 それってどんなファンタジーって奴だ。

「宮原の家の当主になるには神子舞の才ともう一つ、次代の印と言われるアザだ。生まれ直後ではなく、七つの歳に初めて神殿に神子舞を奉納した際に神から与えられるものだ」
「舞を奉納した時に神から与えられる」
「そうだ、宮原家の子供は生まれた時は皆同じ舞という仮の名だけを与えられ、次代の印が与えられなければ佐々木の家に引き取られるまで仮の名で呼ばれる。兄弟が何人いてもバラバラに育てられるから、彼らは何人兄弟なのかも把握してはいないだろうな」
「何人兄弟かも把握していない」
「ああ、そもそも顔を合わせたことがあるかどうかも怪しいな」
「顔を合わせたこと」

 あまりに現実離れしていて、驚いたままオウム返しに言葉を吐く。
 もう、理解の限界を超えるから帰っていいかな。
 佐々木様が舞を思っていると分れば僕は、詳しい事はどうでもいいんだし。

「申し訳ありませんが、あまり詳しい話を伺える立場ではないかと思います。僕は舞が泣かずにいられるならそれでいいんです」
「そうか? まあ、佐々木家と宮原家の関係は周知の事実だからな」
「周知の事実なのかもしれませんが、舞は不安に思っていますし本気であなたの前から消えようとしてたんですよ。そんな呑気にしていないで下さい」

 余裕綽々な態度にむかついてそう言えば、佐々木様は真顔になってしまった。
 やばい、また怒らせたか? 今度こそ本当に処分されるかもしれない。

「佐々木様?」
「それで、舞は今晩食事に来なかったのか」
「食事ですか?」
「いつも夕食は舞と部屋で食べているんだが、今日は具合が悪いからと断ってきたんだ。だから後で様子を見に行こうと思っていた」
「誤解してますからね、あなたと木村春君の事を」
「私が舞以外を必要とする筈が無いと言うのに。馬鹿な奴だな」

 何だろうこのむかつく発言。
 この人の考え無しの行動が舞を泣かせたのに、なんとう上から目線な発言。

「宮原家の庭で舞と初めて出会った日、私は舞が自分の番だと思った。狭い庭で神子舞を練習する舞が籠に閉じ込められた小鳥の様で、私は自分の手で舞を外に出してやりたいと思った。だから美空という名を舞に贈ったんだ」
「だったらその気持ちを舞にちゃんと伝えて下さい。卒業後の話もちゃんと伝えて、木村君の事はなんとも思って無いとはっきり言って下さい」

 これだけ言えばこの二人は大丈夫だろう。
 佐々木様ルートはきっとこれで友達エンドに変わる。
 ゲームの「気になっている幼なじみ」じゃなく「将来を誓った相手」になるかもしれないけれど、それはもう今更だろう。

「そうだな。学生の内くらいは舞を自由にしてあげようと思っていたが、舞が不安になって余計な事を考えるのは不本意だ。小姓手続きをしてしまおう」

 立ち上がりかけた僕は、小姓発言にぎょっとして動きを中途半端に止めたまま佐々木様の顔を凝視してしまう。

「舞の承諾は得るんですよね」
「舞が嫌がるわけがないだろうが、学園への提出書類に署名が必要だからな必然的に舞の承諾は得る事になるな」

 署名が不要だったら舞に意思確認しないつもりなんだろうか。
 舞、本当にこの人でいいのか? 僕、本気で余計なお世話しちゃったんじゃないよね?
 不安に思いながら、佐々木様へ曖昧に微笑み僕は部屋を後にしたのだった。
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