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本編
何を知らないのか知らないんです
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「あっ」
「おっと」
雅に塞がれた唇は初めての衝撃が永遠に続きそうに感じる長い時間の後やっと解放され、そして僕は腰が抜けてへなへなと地面に座り込んでしまった。
「あ、あの。あの」
何を言っていいのか分からない。
地面に座り込んだまま、唇を両手で触れながら無意味に辺りを見渡した後雅を見上げる。
「地面冷たいだろ」
しゃがみこみ僕の体に両腕を伸ばす雅を、僕は思わず思い切り力を込めて突き飛ばそうとしてしまった。
「あ、ご、ごめんっ!」
「大丈夫、驚いただけ」
「でも、あっ」
雅はぐらりと一瞬よろめいた後すぐに体勢を立て直して、僕に鞄を持たせて抱き上げた。
「自分で歩くよ」
「いいから」
「でも」
「頼むから怯えるな。すまない怖がらせたか?」
「分からない」
怖かったわけじゃなく、混乱してる。
雅が何をしたかったのか、よく分からない。
さっき、あの人が僕の指を舐めたのもよく分からなかった。
あんな嫌がらせになんの意味があるの?
でも、雅のは違うよね、嫌がらせとか思いつきじゃないよね。
「なんで」
「なんで? あ、あぁ、えーと、それはなんでキスしたかって聞きたいのか?」
戸惑った様に雅が聞いてくるから、こくりと頷いた。
そうか、キス。
そうだよね、あれ、キスだ、そうだよキスって唇を合わせるだけじゃないんだ。
って、ちょっと待て自分、確かに今世の自分はキスって唇を合わせるだけとか思っているみたいだと考えていたけ ど、本当にそうなの?
さすがに自分で自分にビックリなんだけど。
「キス?」
「え」
自分の認識とさっきの体験が違い過ぎて、僕の頭の理解を超えていて僕は困惑して雅に聞き返す。
遡って今世の僕の昔を思い出す。
すると、不自然なほど僕はその手のシーンがあるドラマや映画や漫画に小説、殆んど見たことがなかったんだと気がついた。
よくて頬にキスとか、唇にチュッとかその程度。
だからこその認識だ。
「あれが、キス?」
恥ずかしいのと、驚いたのとでどうしたらいいのか分からない。
なんで雅の舌が僕の口の中をあんな風に舐めるの? とか、誰かに見られるかもしれないのにとか、大混乱してパニックになる。
「ごめん。無理矢理するつもりがないと言ったそばからこんなことしたから怒ったのか、本当にごめん」
「怒ってないよ、ビックリしただけ、あの、あれキス、なの?」
「ハル、何が言いたいのか」
「あの、キスって、唇をあの合わせるだけじゃ、ないの?」
言いながらポッと顔が赤くなる僕は、ガンッという大きな文字が雅の背後に見えた気がした。
「ハル、前に閨教育なにも教えられてないとは言ってたが、本当に何も知らないのか?」
「あの、多分」
「本当に何も、え」
「あの」
「貞操観念の話を以前した時、閨事の類いと言ったら納得していたと思うんだが」
「あの、うん。父様に小姓になったら閨事で旦那様にお仕えするのが一番大事な事だけど、それがどういうものかは旦那様になる雅に教えて貰いなさいって、あの、旦那様にしか習っちゃいけない事って認識はあるよ」
舞と以前話した時は、もう少し僕の前世の記憶がはっきりしてたから、まだマシだったんだと思う。
今は何故かかなりボケてるから、その手の知識は今世の僕の知識がほぼ基礎になってる感じだ。
いや、前世と今世の意識が融合してきたから、前世の記憶が朧気になってきたんだと思ってたけれど、もしかしたら違うのかもしれない。
いつからだろう、このボケ具合は徐々にだったんじゃなく急になった気がする、今日倒れてから? そんなに急な話なのかな?
兎に角今の僕は、以前雅と話した時よりも前世の記憶が抜けてきている、だから会話というかニュアンスに相違が出ているのかもしれない。
だって、僕自身が呆れるレベルで今の僕は何も知らない。
残っている前世の僕の意識が呆れて心配になるレベルで、今の僕は不自然な程無知すぎるんだ。
「そこまでとは思わなかった」
「雅?」
「それじゃ、警戒しろと言っても無理だな」
「あの」
一人で納得して、雅は驚かせてごめんなと謝ってくれた。
「雅」
「ハルが可愛いく好きだと言ってくれたから舞い上がってたんだよ。嬉しくて」
「ええと」
それはなんでキスしたのかの理由なのかな。
「好き」
言ったらもう一度キスしてくれるんだろうか、それともあれ一回きりかな?
びっくりしたけれど、もう一度して欲しいと言ったら雅はそうしてくれるんだろうか。
「俺の理性を試さないでくれ」
疲れたように雅が呟いた。
「おっと」
雅に塞がれた唇は初めての衝撃が永遠に続きそうに感じる長い時間の後やっと解放され、そして僕は腰が抜けてへなへなと地面に座り込んでしまった。
「あ、あの。あの」
何を言っていいのか分からない。
地面に座り込んだまま、唇を両手で触れながら無意味に辺りを見渡した後雅を見上げる。
「地面冷たいだろ」
しゃがみこみ僕の体に両腕を伸ばす雅を、僕は思わず思い切り力を込めて突き飛ばそうとしてしまった。
「あ、ご、ごめんっ!」
「大丈夫、驚いただけ」
「でも、あっ」
雅はぐらりと一瞬よろめいた後すぐに体勢を立て直して、僕に鞄を持たせて抱き上げた。
「自分で歩くよ」
「いいから」
「でも」
「頼むから怯えるな。すまない怖がらせたか?」
「分からない」
怖かったわけじゃなく、混乱してる。
雅が何をしたかったのか、よく分からない。
さっき、あの人が僕の指を舐めたのもよく分からなかった。
あんな嫌がらせになんの意味があるの?
でも、雅のは違うよね、嫌がらせとか思いつきじゃないよね。
「なんで」
「なんで? あ、あぁ、えーと、それはなんでキスしたかって聞きたいのか?」
戸惑った様に雅が聞いてくるから、こくりと頷いた。
そうか、キス。
そうだよね、あれ、キスだ、そうだよキスって唇を合わせるだけじゃないんだ。
って、ちょっと待て自分、確かに今世の自分はキスって唇を合わせるだけとか思っているみたいだと考えていたけ ど、本当にそうなの?
さすがに自分で自分にビックリなんだけど。
「キス?」
「え」
自分の認識とさっきの体験が違い過ぎて、僕の頭の理解を超えていて僕は困惑して雅に聞き返す。
遡って今世の僕の昔を思い出す。
すると、不自然なほど僕はその手のシーンがあるドラマや映画や漫画に小説、殆んど見たことがなかったんだと気がついた。
よくて頬にキスとか、唇にチュッとかその程度。
だからこその認識だ。
「あれが、キス?」
恥ずかしいのと、驚いたのとでどうしたらいいのか分からない。
なんで雅の舌が僕の口の中をあんな風に舐めるの? とか、誰かに見られるかもしれないのにとか、大混乱してパニックになる。
「ごめん。無理矢理するつもりがないと言ったそばからこんなことしたから怒ったのか、本当にごめん」
「怒ってないよ、ビックリしただけ、あの、あれキス、なの?」
「ハル、何が言いたいのか」
「あの、キスって、唇をあの合わせるだけじゃ、ないの?」
言いながらポッと顔が赤くなる僕は、ガンッという大きな文字が雅の背後に見えた気がした。
「ハル、前に閨教育なにも教えられてないとは言ってたが、本当に何も知らないのか?」
「あの、多分」
「本当に何も、え」
「あの」
「貞操観念の話を以前した時、閨事の類いと言ったら納得していたと思うんだが」
「あの、うん。父様に小姓になったら閨事で旦那様にお仕えするのが一番大事な事だけど、それがどういうものかは旦那様になる雅に教えて貰いなさいって、あの、旦那様にしか習っちゃいけない事って認識はあるよ」
舞と以前話した時は、もう少し僕の前世の記憶がはっきりしてたから、まだマシだったんだと思う。
今は何故かかなりボケてるから、その手の知識は今世の僕の知識がほぼ基礎になってる感じだ。
いや、前世と今世の意識が融合してきたから、前世の記憶が朧気になってきたんだと思ってたけれど、もしかしたら違うのかもしれない。
いつからだろう、このボケ具合は徐々にだったんじゃなく急になった気がする、今日倒れてから? そんなに急な話なのかな?
兎に角今の僕は、以前雅と話した時よりも前世の記憶が抜けてきている、だから会話というかニュアンスに相違が出ているのかもしれない。
だって、僕自身が呆れるレベルで今の僕は何も知らない。
残っている前世の僕の意識が呆れて心配になるレベルで、今の僕は不自然な程無知すぎるんだ。
「そこまでとは思わなかった」
「雅?」
「それじゃ、警戒しろと言っても無理だな」
「あの」
一人で納得して、雅は驚かせてごめんなと謝ってくれた。
「雅」
「ハルが可愛いく好きだと言ってくれたから舞い上がってたんだよ。嬉しくて」
「ええと」
それはなんでキスしたのかの理由なのかな。
「好き」
言ったらもう一度キスしてくれるんだろうか、それともあれ一回きりかな?
びっくりしたけれど、もう一度して欲しいと言ったら雅はそうしてくれるんだろうか。
「俺の理性を試さないでくれ」
疲れたように雅が呟いた。
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