【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香

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本編

何がしたかったんだろう?

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「あの人大丈夫かな。木村君のところに行ったりしないかな」

 雅のサロンでくつろきながら、教室に戻っていった安田明の事を考える。 
 木村君のことでだいぶショックを受けたのだろう、よろよろと今にも倒れそうな歩き方で去っていった。

「家への抗議しないと条件をつけたんだ、それでも馬鹿をやるならどうしようもないだろう」
「そうだろうけど、かなり落ち込んでいたみたいだから」

 木村君の詐欺紛いの行いを調べている途中だからと、安田明に説明し、僕と舞への言い掛かりについて安田伯爵に抗議しないのを条件に、暫く木村君に騙されているふりをするよう交渉したのは雅だった。
 佐々木様は不服そうだったけれど、正気に戻った彼が木村君に問いただすと騒いだから仕方がない。
 今の段階では、詐欺と言っても自分からは買って欲しいとは言っていないと言われればそれまでの話。
 むしろ、平民の嘘に騙された馬鹿と笑われて終わりになる可能性もあるらしい。

「百万程度で済んでいるのなら御の字と言ったところですし、千晴様が心配される必要等ありませんよ。裏付けも取らずに千晴様達に言い掛かりをつけてくる様な輩です。お父上である安田伯爵は素晴らしい人格者ですが、彼は駄目ですね」

 一人用のソファーに座った大林君は、きっぱりと言いながら僕を気遣ってくれる。

「好きな人に頼られて嬉しかったんじゃないのかな?冷静にならないといけないのは分かるけど、僕がもし雅に嫌がらせをされてるなんて相談されたら、きっと全面的に雅を信じちゃうと思う。嘘ついてるかもなんて、思えないと思う。まあ雅は、もしそんなことあっても一人で解決しちゃうだろうけど」
「僕も藤四郎様に相談されたら、多分そうなってしまう気がします。藤四郎様を疑うなんて思い付きもしないでしょう。それを思うと彼は気の毒ですね」

 佐々木様の隣に座る舞は、僕と同じ考えみたいだ。
 好きな人疑うのって難しいと思うんだよね。
 そういう気持ちを理解して、あんな風に色んな人を騙している木村君の気持ちが理解できない。

「でも同じ腕時計を幾つも買わせて何がしたかったんだろ?」
「売るんだろうな。島の中では売れないだろうから、春休みに入ってからだろうが」
「腕時計が欲しかったのではないの?」

 雅の話についていけずに尋ねる。

「同じものを幾つもいらないだろう。一つだけ手元に残して残りは売り払うつもりなんだろう」
「売れるの?」
「一度も使っていなくとも、中古扱いにはなるだろうが売るのは出来る。ただ働いていない平民の学生が売ろうとして簡単に売れるかどうかは分からないが」

 説明されてもよく分からない。
 つまり最初から売るつもりで同じものを買わせていたっていうことなのかな?

「一つだけ残す理由は?」
「同じ物を複数の人間から貰ったと知っているのは本人だけ、どの相手も自分が買ったものだと思うだろ?」

 なるほど、そういうつもりだったのか。

「一応彼も考えている様ですね。腕時計を買わせたのは七回。鞄を買わせたのが五回。ノートパソコンを……」
「おい、腕時計だけじゃなかったのか」
「うちの店でかなり大胆な買い物をしていましたから、他でも同様に買わせているのではと調べてみたら、彼が学園に来てから一ヶ月過ぎていないというのに、総額三千万近く貢がせていますね。しかも夕食はほぼ誰かに奢らせて外食している様ですね。これは愚弟から確認しました。寮の食堂は皆に陰口を言われるので、怖くて行けない。誰かと一緒でも陰口を言われていると思うと食欲が無くなる。らしいですよ」

 大林君の説明で、そう言えば食堂で見掛けなかったと思い出す。
 僕と彼が使っている食堂が違うだけだと思っていたけれど、彼が一緒にいたのは川島君達だから僕が使っている方の食堂に来ていてもおかしくないんだ。

「腕時計一つですんでいた彼は、マシな方なんだね。木村君凄いね」

 驚きというより、ここまで来ると呆れてしまう。

「あれは学園に何をしに来ているんだか。真面目に勉強したいと奨学金を希望していた人を押し退け、奨学金と特待生両方受けておきながら、やっていることは詐欺行為ではね」

 多分攻略対象者との逆ハーレム生活をしに来たんだろうな。
 誰にも話せないけれど、僕だけは真実を多分知っているんだ。
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