【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香

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本編

美味しいものを食べて眠ったら元気になる

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「うわぁ」

 お腹は全然空いてないけど、出てきたお昼御飯に歓声をあげた。

 薄い食パンに生ハムとうずらの卵とプチトマト等が可愛いピンチョス。小さなオムライスはくまの顔の形に作られていて、小さなカップにはミネストローネ。
 デザートにはプリン。
 可愛いけどこれって、男子生徒が食べるもの?
ピンチョスのピックなんて、摘まむところがお花とか星とかの形になってて可愛いすぎるし、オムライスのくまはケチャップで顔が描かれてるんだけど。

「お子様ランチ?」

 舞が人差し指を口元に当て、首をコテンと傾げてる。
うわぁ、ここに可愛い子がいます。

「舞、お子様ランチって?」
「そういうものがあると陽子さんが教えてくれたんです。子供が食べやすい様に小さく作ったものを一つのプレートに盛り付けるそうです」
「へえ、そうなんだ。子供……」

 ちらりと雅を見れば、面白そうにこっちを見ている。

「子供向け?」
「ハルの食欲は子供以下だけどな、小鳥か幼児だ」
「そこまで酷くないよ」
「なら、全部食べられるな」

 言われて、うっと口ごもる。
 全部は無理そうな気がする。

「プリンとオムライスなら、何とか」
「舞は食べるよな」
「え、僕ですか」
「僕ですかじゃない。食べろ、ほら」

 ピンチョスのピックをつまみ、佐々木様が舞の口に運ぶ。

「ほら、ハルも」

 雅がオムライスにぐさりとフォークを刺し、一口大のオムライスを取ると僕の口に運ぶ。可愛かったくまの顔が無惨だ。

「えー」

 舞と二人で抗議の声をあげると、開いた口に食べ物を入れられてしまう。

「むぐっ」

 口に入った食べ物を仕方なく咀嚼する。
 美味しいけど、かなりこってりだ。

「旨いだろ?」
「美味しいけど、後はプリンがいい」

 用意してくれた雅には申し訳ないけれどやっぱり食欲がないんだと、実感してしまったらもう食べられそうにない。体が食べ物を拒否してる感じなんだ。

「こっちならどうだ?」
「うん……」

 なんだろう。昔もこういうのあった気がする。
 雅じゃなくて、父様だったかな。
 食べられなくなって、父様が食べさせてくれて一口食べるごとに頭を撫でられた。そんな記憶が朧気にある。

「もう一口だけどうだ?『美味しいものを食べると幸せな気持ちになる』……だろ?」

 雅が微笑みながら、キュウリとプチトマトと食パンのピンチョスを差し出してくる。
 雅は昨日も言ってた? あれ、いつもそうだったかな?
 分からないけど、そう言われると食べられる気がしてくる。

「ほら、『美味しいものを食べると幸せな気持ちになる』……」

 雅がそう言うと、自然と口が開いていく。
けれど、頭の奥が痺れた様なそんな感覚が僕を支配し始めるんだ。

「ほら、ハーブティー」
「うん」

 何口か食べると、雅がハーブティーのカップを手渡してくれる。

「少し眠った方がいいな『美味しいものを食べて眠ったら元気になる』……だろ?」

 体を引き寄せられて髪を撫でられたら、僕の瞼は段々重くなっていく。

「雅……」

 なんで急に眠くなっちゃうの?
 さっきも僕寝てたのに。
 どうして僕はこんなに眠くなっちゃうの?

「お休み、ハル」

 髪を撫でる手を感じながら、僕は眠りの中に落ちていった。
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