4 / 24
第2章 学園編
第4話
しおりを挟む
オーグランド王国の王宮内にある王太子執務室で素っ頓狂な声が響く。
「はいぃぃぃぃぃ!? 今なんておっしゃりやがりましたか? 殿下」
素っ頓狂な声の主はこの国の王太子エドワルドの侍従であるトームスだった。彼は王太子と瓜二つなので、エドワルドが時々お忍びで城下に行く時に影武者としてこき使われている。
1ヶ月前の王宮舞踏会で「王太子に影武者がいました事件」で子爵位を継承し、今は王太子付き侍従として王宮で働いている。真相は庶民として育った元マルク子爵家子息のトームスが、王太子に瓜二つなのを良いことに王城で盗みを働こうとして捕まったのだが。ちょうどマルク子爵家の後継者を探していた王太子と宰相によって、罪がもみ消されたのはトームスにとって幸だったのか。不幸だったのか。
「来月からウィンド・ウォール学園に入学することにしたと言ったのだ。私と其方、そしてフィルミナとエレナ嬢の入学手続きを頼む」
その耳は飾りものかとでも言いたげなエドワルドである。
ウィンド・ウォール学園とはオーグランド王国の貴族や富裕層の子息、令嬢が通う学校のことだ。王都の南部に位置する。15歳から18歳の間の1年~4年の間に決められた単位を取れば、めでたく卒業である。1年だけで卒業する優秀な者もいれば、のんびり4年在籍して卒業する者もいる。
「本当にうるさい男ですわね。姿は殿下に瓜二つでも品位が違いますわね(あとつむじが決定的に違います)」
ソファでゆっくりくつろいで読書をしているエドワルドの婚約者フィルミナがトームスを蔑むような目で見つめる。
「相変わらず本音がだだ漏れ女だな。それとつむじで人を見分けるのはやめろ」
最近は食生活がしっかりとしているので、気にしていた頭頂部の薄さがなくなってきたトームスである。
「フィルミナ様は本音が漏れるところが可愛いのです。貴方は見る目がありませんね」
フィルミナの隣でお茶を飲んでいるエレナがフィルミナと同じ蔑みの目でトームスを見る。
「最初は大人しいご令嬢だと思ってたけど、お前、実は腹黒令嬢だろう」
エレナにジト目を向けるトームスにフィルミナが反論する。
「エレナは見た目も性格も可愛いですわ(本当に見る目がありませんね)」
「フィルミナ様こそ麗しいお姿ですわ。フィルミナ様に並ぶご令嬢はこの国にはおりませんわ」
フィルミナとエレナは手を握りあってお互いを褒めたたえる。傍目から見れば、可憐な令嬢2人が友情を温めていると微笑ましく思うことだろう。そうではないことを知っているのはエドワルドと自分くらいではないだろうか。
「私はフィルミナが一番可愛いが、エレナ嬢もフィルミナとはまた違う可愛らしさだと思うぞ」
トームスの心を読んだかのようにエドワルドが2人に視線を向ける。
「殿下はまだ学園を卒業していなかったのか? 意外だな」
引きこもりのフィルミナとフィルミナの唯一の友人であるエレナが学園に行っていなかったというのは意外と思わなかった。しかし、女2人を敵に回す気はないので、悪態は飲み込む。
「これでも王太子なのでな。いろいろと勉強することが多かったのだ。視察に行ったり、フィルミナに会いに行ったり、フィルミナに会いに行ったりしていたからな」
大事なことだから2回言ったのはわざとだろうか。あえて突っ込むのはやめておく。
「父上はまだお若いので、私が即位するまでには時間があるだろう。学園に行ってみるのも社会勉強になると思ってな」
それにと、フィルミナを愛し気に見つめる。
「フィルミナには一生引きこもりでもいいと言ったが、将来王妃になるのだ。人脈を作るのも妃教育の1つだ」
フィルミナはぷうと頬を膨らませる。
「わたくしの友人は本とエレナだけで良いと申し上げておりますのに」
エドワルドはフィルミナの向かい側のソファに座り、彼女の手をとると包み込むようにふわりと握る。
「学園にいる間は私がずっとそばにいる。フィルミナを守るために」
「殿下(それなら構いません)」
しばし2人の世界に浸るエドワルドとフィルミナ。この2人がいちゃつき出すときりがないとトームスはゴホンと咳払いをする。
「それでは殿下。入学の手続きに行ってまいります」
一礼して執務室を出ようとするトームスをエドワルドが呼び止める。
「4人が一緒のクラスになれるように手配しておけよ」
「承知いたしました」
やれやれと肩をすくめると執務室を出ていくと、なぜかエレナもついてきた。
「お二人の邪魔をしてはいけませんものね。馬車までエスコートしてくださる?」
可愛らしいが、どこか妖艶さもある笑みを浮かべてエレナが手を差し出す。
「気が利くな。そういう女は好きだぜ」
「貴方に好かれてもうれしくありませんけどね」
トームスはにやりと笑うとエレナの手をとり自らの腕に絡めて歩き出した。
「はいぃぃぃぃぃ!? 今なんておっしゃりやがりましたか? 殿下」
素っ頓狂な声の主はこの国の王太子エドワルドの侍従であるトームスだった。彼は王太子と瓜二つなので、エドワルドが時々お忍びで城下に行く時に影武者としてこき使われている。
1ヶ月前の王宮舞踏会で「王太子に影武者がいました事件」で子爵位を継承し、今は王太子付き侍従として王宮で働いている。真相は庶民として育った元マルク子爵家子息のトームスが、王太子に瓜二つなのを良いことに王城で盗みを働こうとして捕まったのだが。ちょうどマルク子爵家の後継者を探していた王太子と宰相によって、罪がもみ消されたのはトームスにとって幸だったのか。不幸だったのか。
「来月からウィンド・ウォール学園に入学することにしたと言ったのだ。私と其方、そしてフィルミナとエレナ嬢の入学手続きを頼む」
その耳は飾りものかとでも言いたげなエドワルドである。
ウィンド・ウォール学園とはオーグランド王国の貴族や富裕層の子息、令嬢が通う学校のことだ。王都の南部に位置する。15歳から18歳の間の1年~4年の間に決められた単位を取れば、めでたく卒業である。1年だけで卒業する優秀な者もいれば、のんびり4年在籍して卒業する者もいる。
「本当にうるさい男ですわね。姿は殿下に瓜二つでも品位が違いますわね(あとつむじが決定的に違います)」
ソファでゆっくりくつろいで読書をしているエドワルドの婚約者フィルミナがトームスを蔑むような目で見つめる。
「相変わらず本音がだだ漏れ女だな。それとつむじで人を見分けるのはやめろ」
最近は食生活がしっかりとしているので、気にしていた頭頂部の薄さがなくなってきたトームスである。
「フィルミナ様は本音が漏れるところが可愛いのです。貴方は見る目がありませんね」
フィルミナの隣でお茶を飲んでいるエレナがフィルミナと同じ蔑みの目でトームスを見る。
「最初は大人しいご令嬢だと思ってたけど、お前、実は腹黒令嬢だろう」
エレナにジト目を向けるトームスにフィルミナが反論する。
「エレナは見た目も性格も可愛いですわ(本当に見る目がありませんね)」
「フィルミナ様こそ麗しいお姿ですわ。フィルミナ様に並ぶご令嬢はこの国にはおりませんわ」
フィルミナとエレナは手を握りあってお互いを褒めたたえる。傍目から見れば、可憐な令嬢2人が友情を温めていると微笑ましく思うことだろう。そうではないことを知っているのはエドワルドと自分くらいではないだろうか。
「私はフィルミナが一番可愛いが、エレナ嬢もフィルミナとはまた違う可愛らしさだと思うぞ」
トームスの心を読んだかのようにエドワルドが2人に視線を向ける。
「殿下はまだ学園を卒業していなかったのか? 意外だな」
引きこもりのフィルミナとフィルミナの唯一の友人であるエレナが学園に行っていなかったというのは意外と思わなかった。しかし、女2人を敵に回す気はないので、悪態は飲み込む。
「これでも王太子なのでな。いろいろと勉強することが多かったのだ。視察に行ったり、フィルミナに会いに行ったり、フィルミナに会いに行ったりしていたからな」
大事なことだから2回言ったのはわざとだろうか。あえて突っ込むのはやめておく。
「父上はまだお若いので、私が即位するまでには時間があるだろう。学園に行ってみるのも社会勉強になると思ってな」
それにと、フィルミナを愛し気に見つめる。
「フィルミナには一生引きこもりでもいいと言ったが、将来王妃になるのだ。人脈を作るのも妃教育の1つだ」
フィルミナはぷうと頬を膨らませる。
「わたくしの友人は本とエレナだけで良いと申し上げておりますのに」
エドワルドはフィルミナの向かい側のソファに座り、彼女の手をとると包み込むようにふわりと握る。
「学園にいる間は私がずっとそばにいる。フィルミナを守るために」
「殿下(それなら構いません)」
しばし2人の世界に浸るエドワルドとフィルミナ。この2人がいちゃつき出すときりがないとトームスはゴホンと咳払いをする。
「それでは殿下。入学の手続きに行ってまいります」
一礼して執務室を出ようとするトームスをエドワルドが呼び止める。
「4人が一緒のクラスになれるように手配しておけよ」
「承知いたしました」
やれやれと肩をすくめると執務室を出ていくと、なぜかエレナもついてきた。
「お二人の邪魔をしてはいけませんものね。馬車までエスコートしてくださる?」
可愛らしいが、どこか妖艶さもある笑みを浮かべてエレナが手を差し出す。
「気が利くな。そういう女は好きだぜ」
「貴方に好かれてもうれしくありませんけどね」
トームスはにやりと笑うとエレナの手をとり自らの腕に絡めて歩き出した。
0
あなたにおすすめの小説
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
家出を決行した結果
棗
恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。
デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。
自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。
※なろうさんにも公開しています。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる