神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです

珂里

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盗賊さんに試されました

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盗賊さんの顔がフードに隠れて分からないけど、多分、私は今盗賊さんと睨み合っているはず。

睨んでるって言っても、私は顔面真っ青の冷や汗ダラダラの手足ガクガクで、かなりヤバイ状態なのは盗賊さんにはバレバレだと思う。

暫く私と睨み?合った後、盗賊さんはニヤッと笑うと口を開いた。

『そんなに怖がるなよ。俺は日本人だ。』

被っていたフードをバサリと取ると、そこには久しぶりに見る、私以外の黒目、黒髪があった。

私が呆然としていると、盗賊さんは私の目の前で手を振り振りする。

『おーい、聞いてるかー?』

ハッと我に返った私は、まじまじと盗賊さんを見つめた。

黒髪は少しクセがあるのか、ゆるゆるとウェーブがかっていて毛先がはねている。
黒い目は二重で大きく、ちょっと垂れ目な感じがする。鼻筋も通っていて、いわゆるイケメンだ。
年も若いのかな。見た感じだと二十代くらいなような?

「……にほんじん?あやなとおなじ?」

『おう、そうだよ。って言うかお前、日本語忘れちまったのか?久しぶりに日本語で話しが出来ると思って楽しみにしてたのに。』

『は、話せるよ!盗賊さんは、私が日本人だって知ったから色々調べてたの?私を盗賊さんの仲間にする為に連れて行くの?』

勝手に人のこと調べて、勝手に連れて行くなんて、そんなの許さないんだからね!!

私がプルプル震えながら睨むと、盗賊さんは可笑しそうに声を出して笑った。

『だからそんなに怖がるなって。お前が辛い目に遭ってるんだったらここから連れ出してやろうと思ってたけど、すげぇ大切にされてるみたいだからやめとくよ。』

『……盗賊さんは、どうやってへ来たの?』

『ふっ。俺も同じ事が聴きたくて、お前に会いに来たんだ。』

屋根に強制連行されて抱っこから解放された私は、盗賊さんと少し距離をとっていた。
そんな私を手招きすると、自分がドスンと座ったその横をポンポンと叩いて、そこに私に座るよう指示をした。

『もうすぐお前の仲間が屋根まで登って来るだろ。それまで腹を割って話しをしようぜ。』

盗賊さんは日本語で話せて嬉しいからか私に優しくて、なんだか悪い人には思えない。
私は黙って首を縦に振ると、ちょこんと盗賊さんの隣に座った。

盗賊さんを見上げると、盗賊さんは目を細めて私の頭をガシガシと撫でた。

『お前、素直だなー。可愛いじゃねぇか。』

『お前じゃないよ。彩菜だよ。』

『ははっ、悪いな。彩菜だな。俺も、盗賊さんじゃねぇよ。龍斗って言うんだ。よろしくな。』

……盗賊さんとよろしくしていいんだろうか……。

『俺は高校2年の時だな。部活からの帰り道、家まで後少しってところの路地を曲がったら……そこはもう別世界だった。信じられるか?毎日登下校で通る、普通の道だったんだぞ?』

『私もそうだったよ。いつもの公園で、いつもみたいに友達とかくれんぼしてたらにいたの。たまたまとーさまが……騎士団長が私をみつけてくれたから良かったけど、そうじゃなかったらと思うと怖くてたまらないよ。』

膝を抱えて顔を埋める私の頭を、盗賊……龍斗さんはまたガシガシと撫でてくれた。

『俺はこっちに来てからの10年間、この黒髪黒目のおかげで結構大変な目に遭ってきたからな。彩菜がそうなってなくて良かったよ。』

『大変な目って?』

『……子供には聞かせられないような事ばっかりだからなぁ……。まぁ、そのおかげで自分の能力にも気づけたんだけど。』

『能力?あっ!さっきのジャンプ!?あれすごいね!ジャンプっていうより飛んでるくらいの感じだったよ!』

興奮しながら言う私を、龍斗さんは眉尻を下げながら見つめる。

『やっぱり本人はまだ分かんねぇよなぁ……。でも、騎士団長なら何か気付いてんじゃねぇのか?お前、団長によく抱っこされてるだろ?何か言われた事ないのか?』

『とーさまだけじゃなくて、いろんな人が抱っこしてくれるよ。とーさまとかーさまにはいつも可愛いって言われてる~。』

やだ~、恥ずかしい~。

私が照れ照れしていると、龍斗さんが苦笑しながら私の頭をポンポンしてきた。

『彩菜が可愛いのは認めるけど、そうじゃなくて、抱っこした感想……重いとか軽いとかそういうのあるだろ?』

『う~ん……あっ、よく軽いって言われるかも!ちゃんと食べてるかって。いっぱい食べないと大きくなれないぞって。だから最近はご飯おかわりもして頑張って食べてるの!』

『……そうか。偉いな。』

「アヤナから離れろ!!」

私の頭を、龍斗さんが撫でながら褒めてくれているところへ、ダナンさんが息を弾ませながら現れた。すぐ後に続いてリスターも到着する。

「ダナンさん、リスター!」

私が立ち上がって2人に駆け寄ろうとするのを、龍斗さんが私の手首を掴んで阻止する。

『龍斗さん!』

『悪いけど、彩菜の為にももう少し俺に付き合ってもらうぜ。』

龍斗さんはそう言うと私を抱き上げて屋根の端まで移動した。

私の為ってどういうこと!?

「待て!アヤナをどうする気だ!?」

ダナンさんが顔を青くして叫んだ。

「アヤナー!!」

下の方からとーさまの声がする。
龍斗さんに抱っこされたまま下を見ると、とーさまが私の方を見上げながら庭を勢いよく駆け抜けて来るところだった。

「とーさま!!」

叫ぶ私を、龍斗さんが屋根の一番端にそっと下ろす。
龍斗さんを見上げると、申し訳なさそうに眉尻を下げて私を見ていた。

『ごめんな。ちょっと怖い思いをさせるけど許せよ。きっと大丈夫だから。』

そう言うと、龍斗さんは私の肩をグイッと力強く押したのだった。

「えっ……。」

「「「アヤナー!!」」

とーさま、リスター、ダナンさんの声が重なって私の名前を叫んでいる。

私の体は後ろに倒れ、宙へ投げ出された。
落下する直前に目が合ったリスターは……髪を振り乱し、今にも泣き出しそうに顔を歪めて、必死に私に向かって手を伸ばしていた。

私も手を伸ばすけど、リスターの温かな手に届くことはなかった。


私、死んじゃうのかなぁ。


屋根の上から、私の姿が消えた。



ドサッ



「アヤナ!アヤナ!!誰か医者を!!早く!!!」


地面に横たわる私を抱き寄せて叫ぶとーさまの悲痛な声が、騒然とする庭に響いていた。






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