神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです

珂里

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盗賊さんに遭遇しちゃいました

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その日から、リスターは宣言通り、寝る時以外はずっと私の側にいてくれた。

カールさんとダナンさんも、どちらかは必ず私の側についてくれている。
ずっと取っていなかったお休みを纏めてもらえたから、のんびりしてるって設定になってるみたい。
私のせいで嘘つかせちゃってごめんなさい。

とーさまは私を狙う?盗賊さんの足取りを調べる為に忙しくしてるけど、夜は絶対に帰ってきて、かーさまととーさまで私を挟んで寝てくれた。

盗賊さんに狙われているかもしれないと思うとやっぱり怖いけど、私は何も知らないことになってるから元気でいないとね!! 


今日も私は午後からのお勉強をしっかり頑張って、気分転換に庭をリスターと散歩していた。
勿論、後ろには護衛を兼ねてダナンさんがいる。
ダナンさんは私とリスターに気を遣ってか、いつも少しだけ離れて歩いてくれるんだ。

「アヤナ、今日も頑張ってえらかったね。」

「うん!リスターがずっとそばにいてくれるから、いっぱいいっぱいがんばれるよ!」

褒められて嬉しくなった私は、リスターと繋いだ手をブンブンと振る。
手をブンブンしながらリスターを見ると、真っ赤になった顔を抑えて何やら悶えていた。

「リスター?」

「あ、ごめんね。アヤナが可愛いこと言うからつい……。でも、そんな可愛いこと、僕にしか言わないでね?」

うん?可愛いことなんて言ったかな?思ったことしか言ってないんだけどな。

「よくわかんないけど、わかった!」

私は繋いだ手をまたブンブンさせながら、庭をゆっくり歩き始めた。

天気も良いし、花壇のお花も綺麗だし、隣にはリスターもいるし、今日も平和でなによりです!

「きょうも、ぶじにいちにちがおわれそうでよかったなぁ。」

私がニコニコ笑うと、リスターもニッコリと微笑み返してくれる。

「そうだね。」

「本当にそうかな?」

私の後ろから声がしたかと思うと、私の視界がグラリと揺れて、あっという間に誰かに抱きかかえられた。

「「アヤナ!!」」

リスターとダナンさんが青ざめて剣を構える。

「おっと。それ以上近づくと、この子の身が危なくなるだけだぜ?」

「「!!」」

私は声の主を恐る恐る振り返ると、その男はフードを深く被っていて顔がよく見えない。

「どうやって中へ入った?」

ダナンさんが鋭く男を睨む。

家の門には門番を2人設置して、家の周囲は騎士団が常に巡回していた。
家を囲む塀もかなりの高さで、並大抵の人では簡単によじ登る事さえ出来ないと思う。

「ふっ。俺にしてみてら、あんな塀の高さなんて超えるのは簡単なんだよ。」

言いながら、男はニヤッと笑った。

私は背筋がゾクリとした。

あの塀の高さを簡単に超えられるって、どんだけ超人なんですか!?

「アヤナを離せ!!」

リスターが怒りを露わにして叫ぶ。

「悪いけど、それはまだ出来ないね。やっと捕まえたんだ。この子と色々話したい。」

うわーん!!盗賊さんと話すことなんて私にはありません!!

私が逃れたくてジタバタ手足を動かして必死に抵抗すると、盗賊さんは私を抱え直し手足をガッシリと固定して動けなくしてしまった。

「暴れると危ないだろ。俺はただ、お前と話したいだけなんだ。大人しくしろよ。」

だから話すことなんて無いってば!!

更に体をよじって抵抗していると、男は私の耳に顔を近づけて口を開く。

『お前、日本人だろ?』

ぼそっと小声で囁かれた言葉に、私は驚いて目を見張った。

私が驚きのあまり固まっていると、男はまたニヤッと笑い、私を抱きかかえる力を強める。

と、次の瞬間、男が勢いよく地面を蹴ると瞬く間に宙へ飛び、三階建ての家の屋根へと軽々飛び移った。

「キャーッ!」

「「アヤナー!!」」

私の叫び声と、リスターとダナンさんの叫ぶ声が辺りに響き、2人の周りには警備してくれたいた騎士団の人達が一斉に集まる。




……これって、もしかしなくても、とってもヤバイ状況じゃないのだろうか。





私は今、お家の屋根の上に盗賊さんと2人きりという状況になってしまいました。





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