神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです

珂里

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綺麗な目をしていました

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「ねえ、なんで2人は今日、勉強したくなかったの?」

テックとパルラに鶴の折り方を教えながら、私は気になっていた事を質問する。

「……貴族が勉強を教えに来るってシスターに聞いたから。俺達が貴族嫌いだからって、直前まで教えてくれなかったんだ。」

テックがムスッとして答えた。

「貴族が嫌いなの?」

そんなぁ。悲しいよ。

私が眉尻を下げて言うと、テックとパルラは暫く顔を見合わせて黙っていたが……今度はパルラが話し始めた。

「私達、この教会に来る前は母と3人で暮らしていたの。父は私達が生まれる前に死んだんだって。母は地方の田舎貴族の屋敷に住み込みで働いていたわ。……でもその貴族が最低な奴で、私達への扱いは本当に酷いものだったの。母はそれでも我慢して働いて働いて……2年前、風邪をこじらせて死んでしまった。あんなに働いていたのに、医者に診てもらうお金も無かったのよ。」

パルラは俯いて肩を震わせる。

それ以上話せなくなってしまったパルラの代わりに、テックが続きを引き継いだ。

お母さんが死んでから、その貴族にパルラと2人で監禁されていたこと。ずっと暴力を振るわれていたこと。ボロボロになりながらも、何とか隙をついて逃げ出したこと。

テックは話しながら昔を思い出したのか、顔を顰めて辛そうにしている。

そんなテックとパルラを見ていると私も悲しくなって、いつの間にか私の隣に来ていた龍斗さんにしがみついていた。


「2人して道で倒れていたのを、神父様が見つけて助けてくれたんだ。」

俯いたままのパルラの背中を、テックが優しく撫でながら私を見る。

「だから俺達にとって、貴族ってのは最悪な印象しか無かった。まさか今日来るのがアヤナ達みたいな変な……じゃなくて、いい奴だなんて思ってなかったから……。」

「うん、そっか、そうだったんだね。……なんかゴメンね?」

「ハハッ。なんでアヤナが謝ってるんだよ。やっぱりお前って変な奴だな。」

テックが声を出して笑い、パルラも顔を上げ私を見て微笑んでくれる。

そんな2人を見ていたら涙が溢れそうになるけど、私が泣いちゃいけないよね。

私は必死に涙を堪えて目をゴシゴシ擦ると、笑ってくれている2人に笑顔を返した。

「エヘヘ。」

きっとブサイクな顔で笑っているであろう私の頭を、2人は優しく撫でてくれた。

「その貴族の名前は分かるか?」

「え?ああ、勿論さ。男爵のスビルツだよ。」

「スビルツねぇ。」

私の頭をポンポンと叩きながら、龍斗さんは男爵の名前を何度も口にしている。

……龍斗さん、その顔は何か企んでいるね?

私がジッと見ているのに気付いた龍斗さんは、とっても悪い顔をしてニヤリと笑った。

……龍斗さん、ほどほどにね?



「でも、その男爵さんは本当に酷いね!2人とも、こんなにいい子なのにどうかしてるよ!」

私がプリプリと怒りながら再び折り紙を折り始めると、2人も苦笑しながら私の折り方を見て鶴を折る。

「……俺達の見た目が不気味だって言ってたからな。どういう人間かなんて、アイツは興味がなかったのさ。」

「不気味?どこが?」

私は首を傾げた。

テックもパルラも綺麗な顔をしていると思う。本当にこの世界は美男美女だらけで眼福です!!
強いて言うなら、2人の前髪が少し長いってことくらいかな。片目が隠れちゃってるからね。

そう言うと、2人は眉尻を下げて悲しそうな顔をした。

「アヤナでも、不気味だと思うかもな。」

「え?なんで……」

「リュート先生!紙ヒコーキが木に引っかかっちゃったよー!」

後ろから紙飛行機で遊んでいた子供達が叫んでいる。

そういえば少し風が強くなってきたかな?

風で飛んでいかないように私が折り紙をまとめ始めた途端、突風が吹いて紙が空に舞う。

そしてその突風によってテックとパルラの前髪もフワッと舞い上がり、今まで隠れていた片目が露わになった。

テックは隠れていた右目が赤く、左目は青い。パルラはその逆で左目が赤く、右目は青かった。

2人は酷く慌てて前髪を元に戻すと赤い目の方を隠してしまった。

「なんで隠しちゃうの?とっても綺麗な目なのに。」

私が心底残念そうに言うと、2人は目を瞠った。

「「……え?」」

「片目の色が違うなんてとっても神秘的で綺麗だね!あ、あれかな?双子だからお互いの目の色を持って生まれたのかな?それはそれで双子感があってカッコイイよね!すごーい!!」

「ああ、それはオッドアイだな。日本では目の虹彩の変異でなるって聞いたような……まあ俺も人では初めて見たけど綺麗じゃん。」

「へえ!オッドアイって言うの?なんか呼び方までカッコイイね!」

私と龍斗さんのやりとりを、2人は目を丸くして聞いていた。

「俺達の目……不気味じゃないのか?」

「えー、なんで?綺麗だとは思うけど、不気味だなんて思うわけないよ。」

私が首を傾げて答えると、パルラの目から涙が溢れた。

「屋敷にいた頃、皆が不気味だって。気持ち悪いから近づくなってずっと言われてて……。」

「ああ……まだまだこの国には馬鹿な奴らが多いからな。そんな場所からお前達が逃げ出せて良かったよ。頑張ったな。」

龍斗さんはテックとパルラの頭をガシガシッと撫でると、子供達に再び呼ばれて紙飛行機を取りに向かった。

「2人は、私と龍斗さんの黒い髪を見てどう思った?気持ち悪い?」

「気持ち悪いはずないだろ!ちょっと珍しい色だとは思うけど、アヤナ達の黒髪の方がよっぽど綺麗だよ!」

テックが力強く言うと、まだ涙の止まらないパルラもそれに深く頷く。

「エヘヘ、ありがとう。でもね、この黒髪も一部の人達にしてみたら、とっても気持ち悪いものなんだって。」

「そんな!!」

「うん、私も最初はね、いっぱい泣いたし、いっぱい落ち込んだけど、今はもう平気だよ。だってね、私の周りには好きだよって言ってくれる人が沢山いるってもう十分過ぎる程分かってるから。2人だってそうでしょ?」

私は2人の手を取ると、思いが届くようにギュッと力を込めて握った。

「2人のお母さんだって、2人が大好きだから一生懸命働いて育ててくれたんでしょ?神父様や、シスター、それにここにいるみんなからだって、2人を嫌ってる感じは全然しないよ。」

2人は揃って頷いた。

「テックもパルラも、私も龍斗さんも不気味なんかじゃない。この国の人達とはちょっと色が違うだけ。それだけなんだよ。だから大丈夫。みんな2人が大好きだから。」

「……アヤナも?」

テックがジッと私を見つめるから、私もニッコリ笑って見つめ返す。

「もちろん!大好きだよ!」

私がそう言うと、テックは嬉しそうに顔を綻ばせ、パルラはまた泣き出した。


日も暮れ始め、家に帰る為に馬車に乗り込もうとしたところでテックとパルラに呼び止められた。

「これ、さっき俺とパルラが作ったツル。アヤナにやるよ。友達の印なんだろ?」

私の手に2羽の鶴が置かれる。それは、形が少し歪でお世辞にも上手とは言えないけど、私にはどの鶴よりも輝いて見えた。

「ありがとう!大切にするね!」



次に来た時には、みんなで一緒に勉強しようねー!



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