神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです

珂里

文字の大きさ
66 / 73

なんとしてでも 〜テック〜

しおりを挟む
穏やかに晴れた空の下、パルラの結婚式が盛大に行われた。

俺の双子の妹は、とても幸せそうに笑っている。
政略結婚ではあるが、婚約中お互いに信頼関係を築くことが出来た妹夫婦は、これからも仲睦まじく暮らしていくだろう。

これで俺の心配事が1つ減り、もう1つの心配事へ目を向ける。

アヤナは、ウエディングドレス姿のパルラを見て泣きながらも微笑んでいた。

腰まで伸びた綺麗な黒髪を編み込んで後ろに纏め、お祖母様から貰ったという髪留めをしている。

いつもキラキラと輝いているパッチリと大きな黒い瞳が、今は涙に濡れてより一層輝いて見えた。


俺は、この可愛らしいアヤナに恋をしている。
片方ずつ色が違い気味悪がられた俺達の目を、真っ直ぐに見つめて「綺麗だ」と言ってくれた。

いつも笑顔で楽しそうに教会へ来てくれるアヤナを好きになるのに、時間はかからなかった。
婚約者がいると分かっても諦められないくらい、アヤナに会う度にどんどん好きになっていく。


だから、コトネオールに無理矢理連れて来てしまった。
自分の気持ちを抑えられなかったから。
2度と会えなくなるのは耐えられなかったから。

両親や婚約者と離れて辛そうなアヤナを、俺が沢山愛して忘れさせようとしているのに、リュートさんがそれを妨害してくる。

リュートさんも、俺達の目に偏見を持たず、教会の子供達と分け隔て無く普通に接してくれた貴重な存在だった。

俺達親子が散々酷い目に遭わされた貴族のスビルツが、これまでの悪事がバレて捕まり、お家取り潰しになったと聞いた時、俺はリュートさんが何かしたのだと思った。そして、多分それは当たっているのだろう。

だからリュートさんもコトネオールに来てくれたのは嬉しかったし有り難かったのだけれど……。

アヤナと友達以上に距離を縮めようとすると、邪魔をされる。
いつもいつも邪魔をされ、「アヤナはリスターのだからな?」と度々釘を刺されれば、いくら大好きなリュートさんでも少しイライラしてしまう。

アヤナは常にリュートさんと一緒にいる為、一向にアヤナとの関係が進展しないままできてしまった。

そして、俺とパルラが成人し、パルラの結婚式を1年後に行うと決定した後、リュートとアヤナから帰りたいと申し出があった。
パルラの結婚式が終わったら帰りたいと。

今までも何度か、もう大丈夫だろう、帰りたいと言われていたが、その度に何かと理由をつけて拒否してきた。

しかし、俺達が成人した事と、パルラが結婚して城を出る事で、もう十分だろうと言われてしまえば、引き留める理由はもう出てこなかった。




「このままでは、パルラ様の結婚式が行われる前に、アヤナ様が国へ帰ってしまうのは間違いないでしょう。」

俺が思い悩んでいると、ルイスが1通の手紙を差し出す。

そこには、アヤナの従兄が結婚式を挙げるのでアヤナを出席させたいと書いてあった。


冗談じゃない。今、国へ帰る事を許してしまえば2度と会えなくなる。

そんなのは絶対に嫌だ。


「パルラ様の結婚式を、従兄殿の結婚式に近い日へ変更しては如何ですか。」

青ざめている俺に、ルイスが表情を変えることなく言った。

「で、でも、従兄殿の結婚式となればパルラの結婚式と日にちが近くても、そちらに行きたいと言うのではないか?」

「あちらへ断る口実として、パルラ様の式を変更するのです。アヤナ様には、従兄殿の結婚式はお伝えしません。」

「な……」

「隠し通せば良いのです。ここには口の堅い者しかおりませんので。パルラ様の結婚式が終わり、お披露目パーティーの時にアヤナ様との婚約を皆の前で発表してしまいましょう。」

「こ、婚約!?俺はまだアヤナに何も……」

慌てふためく俺にも、ルイスは表情を変えずに、しれっとしている。

「アヤナ様の側には常にリュートがいるので、これ以上の進展を望むのは難しいでしょう。ならば皆の前で先に発表し、逃げ道を塞いでしまえばいいのです。もう、手段を選んでいる場合ではありませんよ。」

「そうだな……。」

無理矢理にでも結婚してしまわなければ、アヤナは手に入らない。

結婚してから、ゆっくりアヤナの心を自分のモノにしていけば……。



「そうだよな……そうしよう。ルイス、頼んだぞ。」

「はい。お任せ下さい。」



アヤナは誰にも渡さない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。 本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。 …………私も消えることができるかな。 私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。 私は、邪魔な子だから。 私は、いらない子だから。 だからきっと、誰も悲しまない。 どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。 そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。 異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。 ☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。 彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。

婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします

タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。 悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました

言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。 貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。 「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」 それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。 だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。 それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。 それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。 気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。 「これは……一体どういうことだ?」 「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」 いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。 ――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。

【完結】パパ、私は犯人じゃないよ ~処刑予定の私、冷徹公爵(パパ)に溺愛されるまで~

チャビューヘ
ファンタジー
※タイトル変更しました。 「掃除(処分)しろ」と私を捨てた冷徹な父。生き残るために「心を無」にして媚びを売ったら。 「……お前の声だけが、うるさくない」 心の声が聞こえるパパと、それを知らずに生存戦略を練る娘の物語。 ----- 感想送っていただいている皆様へ たくさんの嬉しい言葉や厳しい意見も届いており一つ一つがすごく嬉しいのと頑張ろうと感じています。ご意見を元に修正必要な部分は随時更新していきます。 成長のため感想欄を閉じませんが公開はする予定ありません。ですが必ず全て目を通しています。拙作にお時間を頂きありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

【コミカライズ決定】愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
【コミカライズ決定の情報が解禁されました】 ※レーベル名、漫画家様はのちほどお知らせいたします。 ※配信後は引き下げとなりますので、ご注意くださいませ。 愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

処理中です...