27 / 96
実物はやっぱり凄い!!
しおりを挟む
獣人の国までは馬車で3日揺られて到着した。
途中、宿屋に2泊して、なかなかの長距離移動。
まさかこんなに遠いとは思ってなくて、正直、辛かった。
どんなに馬車が豪華でも、座席がフカフカでも、長時間馬車に揺られるのは辛いんだってことを学んだ。
「サイラス様、ユーカ。到着しました。」
メイソンさんに言われ、もたれ掛かっていたサイラスから体を起こす。
もう馬車に乗っているのが辛くって、最後らへんはサイラスにずっともたれ掛かっている状態だった。
開いた扉から、クレイブさん、メイソンさんが馬車から降りる。
そして降りたメイソンさんはクルッと振り返り、私に手を差し出してくれた。
馬車酔い?でヘロヘロな私は、有り難くその手を取らせてもらう。
すると、体を持ち上げられ、メイソンさんに抱っこされた状態になった。
ーーおお、至近距離にクールなイケメンのお顔が。イケメンはお肌もスベスベなんですね。
「大丈夫か?少し顔色が悪いな。辛いんだったら、このまま抱いて移動してもいいんだぞ?」
心配そうに私の顔を覗き込むメイソンさん。
メイソンさん、クレイブさん、他3人の人達とは、この3日間でかなり打ち解けたと思う。
5人に対して、サイラスが無愛想な上に結構な悪態を吐きまくるから、すぐにその場の雰囲気が悪くなっちゃうんだよね。
サイラスの、この状況を受け入れられない気持ちが分からなくもない私は、間に入って色々お喋りしたりして、中和剤的な役割を自ら進んで買って出ていた。
そのお陰でか、5人の、私に接する態度が柔らかく、優しくなったように思う。
今も、私の体調を心配し気遣ってくれているのが、とっても嬉しい。
皆、良い人達なのだ。
「ありがとう。大丈夫です。」
皆を心配させないように、ニコッと笑うと、メイソンさんは眉尻を下げながら頭を撫でてくれた。
「ユーカを離せ。抱っこなら俺がする。」
私に次いで馬車から降りてきたサイラスが、ちょっと強引に私をメイソンさんから奪って抱き上げる。
「ちょっと、危ないよサイラス!!メイソンさんは心配してくれてるのに……」
私は落ちないように、必死にサイラスの首に手を回してしがみ付き、サイラスをキッと睨み上げた。
ーーあらら。
サイラスがムスッと不貞腐れちゃってる。
もう、しょうがないなぁと、サイラスの両頬を手で挟んでムニムニして表情をほぐしていると、メイソンさんに笑われてしまった。
「行きましょうか。」
メイソンさんに案内された方を見て、私は驚愕して目を見開く。
馬車移動の辛さと、サイラスの態度の悪さに気を取られ過ぎて、周りが全然見えていなかった。
目の前に広がる景色は、いつも絵本で見ていた光景、そのものだったのだ。
……いや、それ以上かもしれない。
私は興奮して、抱っこしてくれているサイラスの背中をバシバシと叩いた。
「お城っ!!お城だよ~、サイラスッ!!」
「痛っ!痛いよ、ユーカ!」
「だって、だって~!!絵本のお城と同じなんだもん!!ううん、それ以上にカッコいいかも!!」
バシバシとサイラスの背中を叩き続けて大興奮している私を、5人は微笑ましそうに見ている。
「ふふっ。今からあの中へ入るんだよ。」
「やったー!!サイラス、凄いね!!」
メイソンさんにそう言われて、私のテンションはますます上がってしまってヤバかった。
ハッと我に返り、そんなヤバい私に皆が引いちゃってないか、周りをキョロキョロと見て確認する。
と、テンション高めなヤバい私を見て、サイラスがクスクスと笑っていた。
……久しぶりにサイラスの笑顔を見れた気がする。
こんな私を見てサイラスが笑ってくれたのなら、…………まぁ、いっかぁ。
途中、宿屋に2泊して、なかなかの長距離移動。
まさかこんなに遠いとは思ってなくて、正直、辛かった。
どんなに馬車が豪華でも、座席がフカフカでも、長時間馬車に揺られるのは辛いんだってことを学んだ。
「サイラス様、ユーカ。到着しました。」
メイソンさんに言われ、もたれ掛かっていたサイラスから体を起こす。
もう馬車に乗っているのが辛くって、最後らへんはサイラスにずっともたれ掛かっている状態だった。
開いた扉から、クレイブさん、メイソンさんが馬車から降りる。
そして降りたメイソンさんはクルッと振り返り、私に手を差し出してくれた。
馬車酔い?でヘロヘロな私は、有り難くその手を取らせてもらう。
すると、体を持ち上げられ、メイソンさんに抱っこされた状態になった。
ーーおお、至近距離にクールなイケメンのお顔が。イケメンはお肌もスベスベなんですね。
「大丈夫か?少し顔色が悪いな。辛いんだったら、このまま抱いて移動してもいいんだぞ?」
心配そうに私の顔を覗き込むメイソンさん。
メイソンさん、クレイブさん、他3人の人達とは、この3日間でかなり打ち解けたと思う。
5人に対して、サイラスが無愛想な上に結構な悪態を吐きまくるから、すぐにその場の雰囲気が悪くなっちゃうんだよね。
サイラスの、この状況を受け入れられない気持ちが分からなくもない私は、間に入って色々お喋りしたりして、中和剤的な役割を自ら進んで買って出ていた。
そのお陰でか、5人の、私に接する態度が柔らかく、優しくなったように思う。
今も、私の体調を心配し気遣ってくれているのが、とっても嬉しい。
皆、良い人達なのだ。
「ありがとう。大丈夫です。」
皆を心配させないように、ニコッと笑うと、メイソンさんは眉尻を下げながら頭を撫でてくれた。
「ユーカを離せ。抱っこなら俺がする。」
私に次いで馬車から降りてきたサイラスが、ちょっと強引に私をメイソンさんから奪って抱き上げる。
「ちょっと、危ないよサイラス!!メイソンさんは心配してくれてるのに……」
私は落ちないように、必死にサイラスの首に手を回してしがみ付き、サイラスをキッと睨み上げた。
ーーあらら。
サイラスがムスッと不貞腐れちゃってる。
もう、しょうがないなぁと、サイラスの両頬を手で挟んでムニムニして表情をほぐしていると、メイソンさんに笑われてしまった。
「行きましょうか。」
メイソンさんに案内された方を見て、私は驚愕して目を見開く。
馬車移動の辛さと、サイラスの態度の悪さに気を取られ過ぎて、周りが全然見えていなかった。
目の前に広がる景色は、いつも絵本で見ていた光景、そのものだったのだ。
……いや、それ以上かもしれない。
私は興奮して、抱っこしてくれているサイラスの背中をバシバシと叩いた。
「お城っ!!お城だよ~、サイラスッ!!」
「痛っ!痛いよ、ユーカ!」
「だって、だって~!!絵本のお城と同じなんだもん!!ううん、それ以上にカッコいいかも!!」
バシバシとサイラスの背中を叩き続けて大興奮している私を、5人は微笑ましそうに見ている。
「ふふっ。今からあの中へ入るんだよ。」
「やったー!!サイラス、凄いね!!」
メイソンさんにそう言われて、私のテンションはますます上がってしまってヤバかった。
ハッと我に返り、そんなヤバい私に皆が引いちゃってないか、周りをキョロキョロと見て確認する。
と、テンション高めなヤバい私を見て、サイラスがクスクスと笑っていた。
……久しぶりにサイラスの笑顔を見れた気がする。
こんな私を見てサイラスが笑ってくれたのなら、…………まぁ、いっかぁ。
88
あなたにおすすめの小説
忘れられた幼な妻は泣くことを止めました
帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。
そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。
もちろん返済する目処もない。
「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」
フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。
嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。
「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」
そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。
厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。
それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。
「お幸せですか?」
アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。
世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。
古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。
ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。
華都のローズマリー
みるくてぃー
ファンタジー
ひょんな事から前世の記憶が蘇った私、アリス・デュランタン。意地悪な義兄に『超』貧乏騎士爵家を追い出され、無一文の状態で妹と一緒に王都へ向かうが、そこは若い女性には厳しすぎる世界。一時は妹の為に身売りの覚悟をするも、気づけば何故か王都で人気のスィーツショップを経営することに。えっ、私この世界のお金の単位って全然わからないんですけど!?これは初めて見たお金が金貨の山だったという金銭感覚ゼロ、ハチャメチャ少女のラブ?コメディな物語。
新たなお仕事シリーズ第一弾、不定期掲載にて始めます!
【完結】婚約者と仕事を失いましたが、すべて隣国でバージョンアップするようです。
鋼雅 暁
ファンタジー
聖女として働いていたアリサ。ある日突然、王子から婚約破棄を告げられる。
さらに、偽聖女と決めつけられる始末。
しかし、これ幸いと王都を出たアリサは辺境の地でのんびり暮らすことに。しかしアリサは自覚のない「魔力の塊」であったらしく、それに気付かずアリサを放り出した王国は傾き、アリサの魔力に気付いた隣国は皇太子を派遣し……捨てる国あれば拾う国あり!?
他サイトにも重複掲載中です。
婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!
山田 バルス
ファンタジー
王宮大広間は春の祝宴で黄金色に輝き、各地の貴族たちの笑い声と音楽で満ちていた。しかしその中心で、空気を切り裂くように響いたのは、第1王子アルベルトの声だった。
「ローゼ・フォン・エルンスト! おまえとの婚約は、今日をもって破棄する!」
周囲の視線が一斉にローゼに注がれ、彼女は凍りついた。「……は?」唇からもれる言葉は震え、理解できないまま広間のざわめきが広がっていく。幼い頃から王子の隣で育ち、未来の王妃として教育を受けてきたローゼ――その誇り高き公爵令嬢が、今まさに公開の場で突き放されたのだ。
アルベルトは勝ち誇る笑みを浮かべ、隣に立つ淡いピンク髪の少女ミーアを差し置き、「おれはこの天使を選ぶ」と宣言した。ミーアは目を潤ませ、か細い声で応じる。取り巻きの貴族たちも次々にローゼの罪を指摘し、アーサーやマッスルといった証人が証言を加えることで、非難の声は広間を震わせた。
ローゼは必死に抗う。「わたしは何もしていない……」だが、王子の視線と群衆の圧力の前に言葉は届かない。アルベルトは公然と彼女を罪人扱いし、地下牢への収監を命じる。近衛兵に両腕を拘束され、引きずられるローゼ。広間には王子を讃える喝采と、哀れむ視線だけが残った。
その孤立無援の絶望の中で、ローゼの胸にかすかな光がともる。それは前世の記憶――ブラック企業で心身をすり減らし、引きこもりとなった過去の記憶だった。地下牢という絶望的な空間が、彼女の心に小さな希望を芽生えさせる。
そして――スキル《引きこもり》が発動する兆しを見せた。絶望の牢獄は、ローゼにとって新たな力を得る場となる。《マイルーム》が呼び出され、誰にも侵入されない自分だけの聖域が生まれる。泣き崩れる心に、未来への決意が灯る。ここから、ローゼの再起と逆転の物語が始まるのだった。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします
タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。
悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。
騎士団の繕い係
あかね
ファンタジー
クレアは城のお針子だ。そこそこ腕はあると自負しているが、ある日やらかしてしまった。その結果の罰則として針子部屋を出て色々なところの繕い物をすることになった。あちこちをめぐって最終的に行きついたのは騎士団。花形を譲って久しいが消えることもないもの。クレアはそこで繕い物をしている人に出会うのだが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる