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第三章 勇者と聖女様、神話級の相手のパシリにされる
EP 2
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聖女アリアと勇者カイル、農場へ進軍す
大陸の中央に位置する、最大の宗教国家「聖教国ルミナリス」。
その白亜の大聖堂にて、一人の男が報告書を握りつぶしていた。
「……死者が蘇る薬草だと? 老婆が若返る泥の温泉だと?」
男の名はボルジア枢機卿。
聖教国の実権を握る最高権力者であり、神の教えを「集金システム」としか考えていない強欲な聖職者だ。
「馬鹿な。そんな奇跡、我が教会の聖女ですら不可能だぞ」
彼はカイト農場の噂を聞きつけ、焦りと同時に強烈な欲望を抱いていた。
もしその農場の「秘宝」を独占できれば、教会への寄付金は桁違いに跳ね上がるだろう。逆に、放置すれば教会の権威は地に落ちる。
「異端だ。あの農場は悪魔の力を使っているに違いない」
ボルジアは歪んだ笑みを浮かべ、控えていた二人の男女に振り返った。
「出番だぞ。聖女アリア、勇者カイルよ」
†
「お任せください、枢機卿猊下(げいか)」
優雅に礼をしたのは、金髪を縦ロールにした美女、聖女アリアだ。
見た目は美しいが、その瞳には選民思想という名の濁りがある。
「辺境の農民ごときが奇跡を語るなど、神への冒涜ですわ。わたくしの聖魔法で、その薄汚い土地ごと浄化して差し上げます」
「フン、大げさなんだよアリア」
尊大な態度で剣の柄に手をかけたのは、整った顔立ちの青年、勇者カイル。
彼が腰に帯びているのは、バチバチと紫色の火花を散らす異形の剣だった。
伝説の武具――『雷霆(らいてい)』。
太古の遺跡より発掘された、意思を持つ神造兵装である。
「俺にはこの最強の武器がある。農民風情が何人いようが、俺と『雷霆』の敵じゃねえよ」
カイルは自信満々に雷霆の柄を撫でた。
だが、雷霆の刀身から放たれる稲妻は、どこか不規則で、主人の手にすら牙を剥くような不安定さを見せていた。
カイルはそれを「力が溢れている証拠」だと思っているが、実際は武器の方が**『(……貴様の魂はぬるい。退屈だ)』**と拒絶反応を示していることに、彼は気づいていない。
「よかろう。聖騎士団500名を率い、直ちにその『アナステシア・ファーム』とかいうふざけた場所を制圧せよ!」
「「御意!」」
こうして、聖教国による「異端審問」という名の略奪部隊が出発した。
彼らはまだ知らない。
向かう先にいるのが、自分たちが崇める「神」そのものであるという致命的な事実を。
†
一方、カイト農場。
迫りくる危機など露知らず、カイトはピザ窯の前で腕組みをしていた。
「うーん……。マルゲリータは完璧だったけど、やっぱりバリエーションが欲しいよな」
「カイト様、次はどうなさいますの?」
隣でエプロン姿のルナが、つまみ食いをしながら尋ねる。
彼女の口元にはトマトソースがついている。
「そうだなあ。やっぱり『テリヤキチキンピザ』とか、『シーフードピザ』が食べたいな」
「テリヤキ? シーフード?」
「うん。テリヤキソースは醤油と砂糖で作れるとして……問題はシーフードだ。うちは内陸だから、新鮮な魚介類がないんだよね」
カイトが悩んでいると、屋台の準備をしていた竜神デュークが口を挟んだ。
「魚介か。……そういえば、ここから南へ行った海岸に『リヴァイアサン(海竜)』が住み着いて漁師が困っていると聞いたぞ」
「リヴァイアサン?」
カイトの目が輝いた。
「それって、すごく大きな魚ってことだよね? もしかして、イカとかタコもいるかな?」
「まあ、クラーケンくらいなら掃いて捨てるほどいるが……」
「よし! じゃあ、今度みんなで海へ行こう! 海水浴ついでに食材調達だ!」
カイトは能天気に次のレジャー計画を立て始めた。
その時、庭の警備をしていた狼王フェンリルが、ピクリと耳を動かした。
「……あ? なんか臭うな」
フェンリルは鼻をひくつかせ、東の方角――聖教国がある方向を睨みつけた。
「魔物じゃねえ。人間だ。……それも、妙に気取った、鼻につく魔力の塊がこっちに来やがる」
「あら、お客さんかしら?」
洗濯物を干していた不死鳥フレアが首を傾げる。
フェンリルはニヤリと笑い、鋭い牙を剥いた。
「いや……ありゃあ『敵』の匂いだぜ。しかも、俺の鼻が正しければ……面白いオモチャ(雷霆)を持ってやがる」
縁側で寝ていたポチも、その言葉に片目だけを開けた。
金色の瞳が、楽しげに細められる。
「きゅぅ(ほう。……少しは退屈しのぎになるか)」
カイトだけが、何も気づかずにピザ生地をこね続けている。
「さーて、お客さんが来るなら、たくさん焼いておかないとな!」
聖女と勇者の進軍まで、あとわずか。
農場(神々の巣窟)と教会(勘違い勢力)の衝突は、避けられない運命にあった。
大陸の中央に位置する、最大の宗教国家「聖教国ルミナリス」。
その白亜の大聖堂にて、一人の男が報告書を握りつぶしていた。
「……死者が蘇る薬草だと? 老婆が若返る泥の温泉だと?」
男の名はボルジア枢機卿。
聖教国の実権を握る最高権力者であり、神の教えを「集金システム」としか考えていない強欲な聖職者だ。
「馬鹿な。そんな奇跡、我が教会の聖女ですら不可能だぞ」
彼はカイト農場の噂を聞きつけ、焦りと同時に強烈な欲望を抱いていた。
もしその農場の「秘宝」を独占できれば、教会への寄付金は桁違いに跳ね上がるだろう。逆に、放置すれば教会の権威は地に落ちる。
「異端だ。あの農場は悪魔の力を使っているに違いない」
ボルジアは歪んだ笑みを浮かべ、控えていた二人の男女に振り返った。
「出番だぞ。聖女アリア、勇者カイルよ」
†
「お任せください、枢機卿猊下(げいか)」
優雅に礼をしたのは、金髪を縦ロールにした美女、聖女アリアだ。
見た目は美しいが、その瞳には選民思想という名の濁りがある。
「辺境の農民ごときが奇跡を語るなど、神への冒涜ですわ。わたくしの聖魔法で、その薄汚い土地ごと浄化して差し上げます」
「フン、大げさなんだよアリア」
尊大な態度で剣の柄に手をかけたのは、整った顔立ちの青年、勇者カイル。
彼が腰に帯びているのは、バチバチと紫色の火花を散らす異形の剣だった。
伝説の武具――『雷霆(らいてい)』。
太古の遺跡より発掘された、意思を持つ神造兵装である。
「俺にはこの最強の武器がある。農民風情が何人いようが、俺と『雷霆』の敵じゃねえよ」
カイルは自信満々に雷霆の柄を撫でた。
だが、雷霆の刀身から放たれる稲妻は、どこか不規則で、主人の手にすら牙を剥くような不安定さを見せていた。
カイルはそれを「力が溢れている証拠」だと思っているが、実際は武器の方が**『(……貴様の魂はぬるい。退屈だ)』**と拒絶反応を示していることに、彼は気づいていない。
「よかろう。聖騎士団500名を率い、直ちにその『アナステシア・ファーム』とかいうふざけた場所を制圧せよ!」
「「御意!」」
こうして、聖教国による「異端審問」という名の略奪部隊が出発した。
彼らはまだ知らない。
向かう先にいるのが、自分たちが崇める「神」そのものであるという致命的な事実を。
†
一方、カイト農場。
迫りくる危機など露知らず、カイトはピザ窯の前で腕組みをしていた。
「うーん……。マルゲリータは完璧だったけど、やっぱりバリエーションが欲しいよな」
「カイト様、次はどうなさいますの?」
隣でエプロン姿のルナが、つまみ食いをしながら尋ねる。
彼女の口元にはトマトソースがついている。
「そうだなあ。やっぱり『テリヤキチキンピザ』とか、『シーフードピザ』が食べたいな」
「テリヤキ? シーフード?」
「うん。テリヤキソースは醤油と砂糖で作れるとして……問題はシーフードだ。うちは内陸だから、新鮮な魚介類がないんだよね」
カイトが悩んでいると、屋台の準備をしていた竜神デュークが口を挟んだ。
「魚介か。……そういえば、ここから南へ行った海岸に『リヴァイアサン(海竜)』が住み着いて漁師が困っていると聞いたぞ」
「リヴァイアサン?」
カイトの目が輝いた。
「それって、すごく大きな魚ってことだよね? もしかして、イカとかタコもいるかな?」
「まあ、クラーケンくらいなら掃いて捨てるほどいるが……」
「よし! じゃあ、今度みんなで海へ行こう! 海水浴ついでに食材調達だ!」
カイトは能天気に次のレジャー計画を立て始めた。
その時、庭の警備をしていた狼王フェンリルが、ピクリと耳を動かした。
「……あ? なんか臭うな」
フェンリルは鼻をひくつかせ、東の方角――聖教国がある方向を睨みつけた。
「魔物じゃねえ。人間だ。……それも、妙に気取った、鼻につく魔力の塊がこっちに来やがる」
「あら、お客さんかしら?」
洗濯物を干していた不死鳥フレアが首を傾げる。
フェンリルはニヤリと笑い、鋭い牙を剥いた。
「いや……ありゃあ『敵』の匂いだぜ。しかも、俺の鼻が正しければ……面白いオモチャ(雷霆)を持ってやがる」
縁側で寝ていたポチも、その言葉に片目だけを開けた。
金色の瞳が、楽しげに細められる。
「きゅぅ(ほう。……少しは退屈しのぎになるか)」
カイトだけが、何も気づかずにピザ生地をこね続けている。
「さーて、お客さんが来るなら、たくさん焼いておかないとな!」
聖女と勇者の進軍まで、あとわずか。
農場(神々の巣窟)と教会(勘違い勢力)の衝突は、避けられない運命にあった。
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