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第四章 学園生活と地下アイドル
EP 3
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学食革命! 鬼神のカレーライス
校庭をジャングル化した実技試験の後。
カイト一行は、昼食をとるために学園の大食堂を訪れていた。
高い天井、シャンデリア、大理石の床。
さすが王立学園、設備は一流ホテル並みだ。だが、そこに漂う空気はどこか淀んでいた。
「……静かだね」
カイトがトレーを持って呟く。
数百人の生徒が食事をしているはずなのに、話し声ひとつない。皆、死んだ魚のような目で、黙々と皿の中身を口に運んでいる。
カイトは「本日のランチ(A定食)」を受け取り、席についた。
メニューは、薄い色のスープと、パサパサのパン、そして茹でただけの野菜。
「い、いただきます……」
カイトはスープを一口飲んだ。
……。
「……お湯?」
味がしない。いや、微かに塩の味がするが、出汁の深みも野菜の旨味も皆無だ。
野菜も噛んでみる。……苦い。筋張っている。
「なんだこれはァァッ!!」
ガシャンッ!
隣で竜神デュークがスプーンを投げ捨てた。
「貴様ら、これを『食事』と呼ぶのか!? ただの『栄養補給作業』ではないか! ラーメンの残り汁の方がまだマシだぞ!」
「同感ね……。これじゃあ、魔界の囚人食の方が豪華よ」
魔王ラスティアもパンをちぎりながら溜息をつく。
どうやらこの学園では、「食事は勉学の妨げにならないよう、質素かつ簡素に」という古い伝統が支配しているらしい。
「許せない……」
カイトが震える声で呟いた。
「育ち盛りの学生さんたちに、こんな悲しいご飯を食べさせるなんて……! これじゃあ勉強も魔法も頑張れないよ!」
カイトはバッと振り返り、背後に控えていた黒スーツの男を見た。
「龍魔呂さん!」
「……御意」
鬼神龍魔呂は、サングラスを外しながら静かに頷いた。
彼の目にも、料理人としての怒りの炎が宿っていた。
「食材への冒涜だ。……俺が厨房(シマ)を奪る」
†
厨房。
気難しい顔をした料理長が、スープをかき混ぜていたところへ、黒い影が侵入した。
「な、なんだ貴様は! ここは関係者以外……」
「……どけ」
ドッ!!
龍魔呂が放った『威圧』だけで、料理長とスタッフ全員が壁際まで吹き飛んだ。
龍魔呂は無言でエプロンを締め、冷蔵庫を開けた。
「……肉の質は悪くない。野菜も新鮮だ。調理法が最悪なだけだな」
彼は食材を見定めると、懐から愛用の包丁を取り出した。
「カイト。何人前だ?」
「全校生徒分! ガツンと元気が出るやつをお願い!」
「承知した。……デューク、手伝え」
「フン、我を助手扱いか? ……まあよい、あの泥水を飲まされるよりはマシだ」
最強の料理人(鬼神)と、最強のスープ職人(竜神)による、前代未聞の調理が始まった。
ダダダダダダダダッ!!!!
龍魔呂の包丁が閃く。
肉塊が一瞬で一口大に切り分けられ、タマネギが原子レベルで微塵切りにされていく。
『鬼神流・千切り』。その速度は、摩擦熱で野菜が炒められるほどだ。
「スープは任せろ! 『ヘブンズ・ブレス(強火)』!」
デュークが寸胴に炎を吐き、牛骨と鶏ガラを一瞬で白濁させる。
そこへ、龍魔呂が独自に調合した数十種類のスパイスを投入した。
ジュワァァァァ……!
爆発的な香りが立ち昇る。
クミン、コリアンダー、カルダモン。刺激的なスパイスの嵐。
そして最後に、龍魔呂は懐から「白い結晶」を取り出した。
「隠し味だ」
カイトから貰った『特製角砂糖』。
これを焦がしてキャラメリゼし、コクと深みを与える。辛さの中に潜む、悪魔的な甘み。
「完成だ。……『特製・鬼神カレー(煉獄仕立て)』」
†
食堂に異変が起きたのは、その直後だった。
「くんくん……。なんだ、この匂いは?」
「スパイシーで……甘くて……ヨダレが止まらない……」
死んだ目をしていた生徒たちが、次々と顔を上げた。
厨房から漂ってくる黄金色の香気。それが脳髄を直撃し、眠っていた野性を呼び覚ます。
「腹が……減った……!」
「肉だ……美味いものが食いたい……!」
ガタッ! ガタタッ!
生徒たちが席を立ち、フラフラと厨房へ吸い寄せられていく。その姿はまるで、生気を求めるゾンビの群れだ。
「お待たせしましたー! 特製カレーですよー!」
カイトがカウンターに大鍋をドンと置いた。
蓋を開けた瞬間、黄金の輝きと共に、暴力的な食欲の匂いが爆散した。
「うおおおおおおッ!!」
「くれぇぇぇ! 俺にくれぇぇぇ!」
エリート学園の品位など消え失せた。
生徒たちは我先にと皿を突き出し、カレーを奪い合った。
一口食べた生徒会長レオンが絶叫する。
「辛い! でも甘い! 旨味が爆発してるぅぅ! なんだこれは、魔法薬(ポーション)か!?」
龍魔呂のスパイス配合と、デュークの神スープ、そしてカイトの角砂糖。
これらが融合したカレーは、一口で体力を全回復させ、二口で理性を溶かす魔性の味だった。
「おかわりだ! 鍋ごとよこせぇ!」
「先生も並んでるんだぞ! 割り込み禁止だ!」
食堂は阿鼻叫喚の坩堝(るつぼ)と化した。
龍魔呂は腕組みをして、その光景を満足げに見下ろしていた。
「……フン。よく食う」
カイトも自分の分のカレー(大盛り)を頬張りながら笑った。
「やっぱり、ご飯はこうでなくちゃね! みんな元気になってよかった!」
†
食後。
満腹で幸せそうに倒れている生徒たちの横で、マーリン学園長がカイトと龍魔呂に泣きついていた。
「お願いです! どうか我が校の給食室を乗っ取ってください! 報酬は弾みますからぁ!」
「いやいや、僕たちには農場がありますから」
カイトはやんわりと断りつつ、レシピを書き留めたメモを渡した。
「これ、カレーのレシピです。うちの野菜を使えば、似た味は出せると思いますよ」
「おお……! ありがとうございます! 直ちに『農場直送コース』を契約させていただきます!」
こうして、王立魔法学園の学食は革命を迎えた。
不味いスープは消え、カイト農場の野菜を使ったカレーや定食が大人気となり、学園の偏差値(と生徒の体重)は急上昇することになる。
そして――。
腹ごなしに校内を散策していたカイトは、立ち入り禁止の地下図書館で、運命の一冊を見つけることになる。
次回、カイトのルーツに迫る!?
「転生者の痕跡と、海への誘い」へ続く!
校庭をジャングル化した実技試験の後。
カイト一行は、昼食をとるために学園の大食堂を訪れていた。
高い天井、シャンデリア、大理石の床。
さすが王立学園、設備は一流ホテル並みだ。だが、そこに漂う空気はどこか淀んでいた。
「……静かだね」
カイトがトレーを持って呟く。
数百人の生徒が食事をしているはずなのに、話し声ひとつない。皆、死んだ魚のような目で、黙々と皿の中身を口に運んでいる。
カイトは「本日のランチ(A定食)」を受け取り、席についた。
メニューは、薄い色のスープと、パサパサのパン、そして茹でただけの野菜。
「い、いただきます……」
カイトはスープを一口飲んだ。
……。
「……お湯?」
味がしない。いや、微かに塩の味がするが、出汁の深みも野菜の旨味も皆無だ。
野菜も噛んでみる。……苦い。筋張っている。
「なんだこれはァァッ!!」
ガシャンッ!
隣で竜神デュークがスプーンを投げ捨てた。
「貴様ら、これを『食事』と呼ぶのか!? ただの『栄養補給作業』ではないか! ラーメンの残り汁の方がまだマシだぞ!」
「同感ね……。これじゃあ、魔界の囚人食の方が豪華よ」
魔王ラスティアもパンをちぎりながら溜息をつく。
どうやらこの学園では、「食事は勉学の妨げにならないよう、質素かつ簡素に」という古い伝統が支配しているらしい。
「許せない……」
カイトが震える声で呟いた。
「育ち盛りの学生さんたちに、こんな悲しいご飯を食べさせるなんて……! これじゃあ勉強も魔法も頑張れないよ!」
カイトはバッと振り返り、背後に控えていた黒スーツの男を見た。
「龍魔呂さん!」
「……御意」
鬼神龍魔呂は、サングラスを外しながら静かに頷いた。
彼の目にも、料理人としての怒りの炎が宿っていた。
「食材への冒涜だ。……俺が厨房(シマ)を奪る」
†
厨房。
気難しい顔をした料理長が、スープをかき混ぜていたところへ、黒い影が侵入した。
「な、なんだ貴様は! ここは関係者以外……」
「……どけ」
ドッ!!
龍魔呂が放った『威圧』だけで、料理長とスタッフ全員が壁際まで吹き飛んだ。
龍魔呂は無言でエプロンを締め、冷蔵庫を開けた。
「……肉の質は悪くない。野菜も新鮮だ。調理法が最悪なだけだな」
彼は食材を見定めると、懐から愛用の包丁を取り出した。
「カイト。何人前だ?」
「全校生徒分! ガツンと元気が出るやつをお願い!」
「承知した。……デューク、手伝え」
「フン、我を助手扱いか? ……まあよい、あの泥水を飲まされるよりはマシだ」
最強の料理人(鬼神)と、最強のスープ職人(竜神)による、前代未聞の調理が始まった。
ダダダダダダダダッ!!!!
龍魔呂の包丁が閃く。
肉塊が一瞬で一口大に切り分けられ、タマネギが原子レベルで微塵切りにされていく。
『鬼神流・千切り』。その速度は、摩擦熱で野菜が炒められるほどだ。
「スープは任せろ! 『ヘブンズ・ブレス(強火)』!」
デュークが寸胴に炎を吐き、牛骨と鶏ガラを一瞬で白濁させる。
そこへ、龍魔呂が独自に調合した数十種類のスパイスを投入した。
ジュワァァァァ……!
爆発的な香りが立ち昇る。
クミン、コリアンダー、カルダモン。刺激的なスパイスの嵐。
そして最後に、龍魔呂は懐から「白い結晶」を取り出した。
「隠し味だ」
カイトから貰った『特製角砂糖』。
これを焦がしてキャラメリゼし、コクと深みを与える。辛さの中に潜む、悪魔的な甘み。
「完成だ。……『特製・鬼神カレー(煉獄仕立て)』」
†
食堂に異変が起きたのは、その直後だった。
「くんくん……。なんだ、この匂いは?」
「スパイシーで……甘くて……ヨダレが止まらない……」
死んだ目をしていた生徒たちが、次々と顔を上げた。
厨房から漂ってくる黄金色の香気。それが脳髄を直撃し、眠っていた野性を呼び覚ます。
「腹が……減った……!」
「肉だ……美味いものが食いたい……!」
ガタッ! ガタタッ!
生徒たちが席を立ち、フラフラと厨房へ吸い寄せられていく。その姿はまるで、生気を求めるゾンビの群れだ。
「お待たせしましたー! 特製カレーですよー!」
カイトがカウンターに大鍋をドンと置いた。
蓋を開けた瞬間、黄金の輝きと共に、暴力的な食欲の匂いが爆散した。
「うおおおおおおッ!!」
「くれぇぇぇ! 俺にくれぇぇぇ!」
エリート学園の品位など消え失せた。
生徒たちは我先にと皿を突き出し、カレーを奪い合った。
一口食べた生徒会長レオンが絶叫する。
「辛い! でも甘い! 旨味が爆発してるぅぅ! なんだこれは、魔法薬(ポーション)か!?」
龍魔呂のスパイス配合と、デュークの神スープ、そしてカイトの角砂糖。
これらが融合したカレーは、一口で体力を全回復させ、二口で理性を溶かす魔性の味だった。
「おかわりだ! 鍋ごとよこせぇ!」
「先生も並んでるんだぞ! 割り込み禁止だ!」
食堂は阿鼻叫喚の坩堝(るつぼ)と化した。
龍魔呂は腕組みをして、その光景を満足げに見下ろしていた。
「……フン。よく食う」
カイトも自分の分のカレー(大盛り)を頬張りながら笑った。
「やっぱり、ご飯はこうでなくちゃね! みんな元気になってよかった!」
†
食後。
満腹で幸せそうに倒れている生徒たちの横で、マーリン学園長がカイトと龍魔呂に泣きついていた。
「お願いです! どうか我が校の給食室を乗っ取ってください! 報酬は弾みますからぁ!」
「いやいや、僕たちには農場がありますから」
カイトはやんわりと断りつつ、レシピを書き留めたメモを渡した。
「これ、カレーのレシピです。うちの野菜を使えば、似た味は出せると思いますよ」
「おお……! ありがとうございます! 直ちに『農場直送コース』を契約させていただきます!」
こうして、王立魔法学園の学食は革命を迎えた。
不味いスープは消え、カイト農場の野菜を使ったカレーや定食が大人気となり、学園の偏差値(と生徒の体重)は急上昇することになる。
そして――。
腹ごなしに校内を散策していたカイトは、立ち入り禁止の地下図書館で、運命の一冊を見つけることになる。
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