田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一

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第四章 学園生活と地下アイドル

EP 2

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実技試験? いえ、開墾です
 王立魔法学園の広大な演習場。
 普段は攻撃魔法の訓練が行われるその場所に、数百人の生徒たちが集められていた。
 彼らは皆、仕立ての良いローブや制服を着た、各国の貴族や有力者の子供たちだ。
 その視線の先にある教壇には、麦わら帽子を被った青年――カイトが立っていた。
「えー、今日は特別授業ということで、野菜の育て方を教えます。土作りはとっても大事で……」
 カイトがニコニコと話し始めた時、生徒の一人が声を荒げて遮った。
「馬鹿馬鹿しい! 帰らせてもらう!」
 立ち上がったのは、派手な金髪をかき上げた男子生徒だった。
 胸には公爵家の紋章。この学園の生徒会長にして、筆頭魔術師のレオンだ。
「僕たちはエリート魔術師だぞ? なぜ泥にまみれて、下民の仕事である『農業』など学ばねばならんのだ!」
 レオンの言葉に、取り巻きの生徒たちも同調する。
 「そうだそうだ!」「土いじりなんて汚らわしい!」
 カイトは困ったように眉を下げた。
「うーん……。農業は大事だよ? 美味しいご飯がないと、魔法を使う元気も出ないでしょ?」
「黙れ! どうしても授業をしたいなら、僕たちを納得させる『魔法』を見せてみろ! それが出来なければ即刻退場だ!」
 レオンが杖を突きつける。
 典型的な「噛ませ犬」ムーブである。
 後ろで見ていた龍魔呂がサングラスの奥で目を光らせ、竜神デュークが指を鳴らそうとしたが、カイトが手で制した。
「わかったよ。じゃあ、まずは『土作り』の実演を見てもらうね」
 カイトは演習場の真ん中へと歩き出した。
 そこは魔法の演習で踏み固められ、岩のように硬くなった荒れ地だ。
「土を耕すには、いい道具が必要なんだ。……おいで、『雷霆(らいてい)』」
 カイトが右手をかざす。
 シュンッ!
 空間転移で彼の手元に現れたのは、かつて勇者カイルが持っていた伝説の神造兵装だった。
 バチバチと紫電を放つ禍々しい剣。
「なっ……あれは、伝説の聖剣『雷霆』!? なぜ農夫が持っている!?」
 レオンが驚愕する。
 だが、次の瞬間、さらに信じられないことが起きた。
「よし、『耕しモード』!」
 ガシャン、ガガガッ!
 カイトの呼びかけに応じ、聖剣が変形した。
 刀身が折れ曲がり、柄が伸び、先端が幅広の刃へと変わる。
 一瞬にして、聖剣は神々しい輝きを放つ「万能鍬(くわ)」へと姿を変えたのだ。
 『(主よ! いつでも掘れます! 土を! 大地を!)』
 雷霆の喜びの振動が伝わってくる。
「いくよー! 『鬼神流・天地開墾(グランド・ティリング)』!」
 カイトは龍魔呂から見様見真似で教わった型で、鍬を振り下ろした。
 ドガァァァァァァァァァンッ!!!!
 轟音。
 そして、衝撃波。
 カイトが鍬を地面に突き立てた瞬間、演習場全体……いや、学園の敷地そのものが激しく揺れた。
「じ、地震かぁぁ!?」
「結界が割れるぞぉぉ!」
 生徒たちが悲鳴を上げてしがみつく。
 土煙が晴れた後。
 そこには、信じられない光景が広がっていた。
 カチカチだった荒れ地が、まるで高級羽毛布団のようにフカフカの黒土に変わっていたのだ。
 しかも、深さ2メートルまで完璧に耕され、空気を含み、石ころ一つない理想的な土壌になっている。
 所要時間、わずか一振り(1秒)。
「……は?」
 レオンは口をパクパクさせた。
 これは農業ではない。地形変動魔法(テラフォーミング)だ。
 土属性の最上級魔法使いが100人掛かりで数日かかる工事を、この男は鍬一本で終わらせた。
「ふぅ。いい土になったね! 次は種まきだ!」
 カイトは爽やかな笑顔で汗を拭った。
「ルナちゃん、肥料と水やりをお願いできるかな?」
「はいな! お任せくださいまし!」
 次に進み出たのは、銀髪の美少女ルナだ。
 彼女はカイトが蒔いた「ラディッシュの種(早生種)」に向かって、世界樹の杖を構えた。
「生徒の皆さんに、エルフ流の『成長魔法』をお見せしますわ! ……あ、ちょっと魔力込めすぎちゃったかも?」
 ドクンッ。
 嫌な音がした。
 ルナの杖から放たれた緑色の閃光が、種に着弾する。
「大きく、美味しくな~れ☆ 【超・豊穣の森(ギガ・フォレスト)】!」
 ズゴゴゴゴゴゴゴッ……!!!!
 地面が裂け、種が発芽した。
 だが、それは可愛い双葉ではなかった。
 直径1メートルはある極太のツルが、触手のようにのたうち回りながら天空へ昇っていく。
「ギャアアアアッ!? なんだこれぇぇぇ!?」
「しょ、植物が襲ってくるぅぅ!」
 演習場は一瞬にして、熱帯雨林……いや、「魔界樹の原生林」と化した。
 ラディッシュの葉は屋根より高く茂り、その実は家ほどの大きさになって地面から突き出している。
 さらに、過剰な魔力変異により、ラディッシュが「キシャーッ!」と鳴いている。
「あわわ……。レオン様! 飲み込まれます!」
「くっ、火魔法で焼き払え……うわぁぁぁ!」
 レオンたちが抵抗しようとするが、魔界ラディッシュの生命力は魔法を吸収してさらに巨大化する。
 生徒たちはツルに巻かれ、空中に吊り下げられた。
「あーあ……。ルナ、またやりすぎだ」
 後ろで見ていた龍魔呂が呆れて呟く。
 だが、カイトの反応は違った。
「すごい! たった数秒で収穫できるサイズになるなんて! 魔法って便利だなぁ!」
 カイトは巨大ラディッシュ(唸り声を上げている)に近づき、ペチペチと叩いた。
「よしよし、元気な子だ! さあ、収穫の時間だよ!」
 カイトが雷霆(鍬モード)を振るうと、暴れていたラディッシュが一瞬でおとなしくなり、綺麗にスライスされて皿の上に落ちた。
 カイトはそれを一切れつまみ、ツルに捕まっているレオンの口に放り込んだ。
「ほら、食べてみて! 採れたてだよ!」
「むぐっ……!?」
 レオンは抵抗しようとしたが、口の中に広がった瑞々しい甘さと辛味に、目を見開いた。
 魔力をたっぷりと吸った野菜。
 それは、彼が今まで食べてきた高級料理が霞むほどの、生命の味だった。
「う……うまい……。なんだこれは……」
 レオンの目から涙がこぼれた。
 完敗だ。
 土作りで地形を変え、育成で魔界を作り、味で魂を震わせる。
 これが……これが「農業」なのか!?
 カイトはニッコリと笑って、生徒たちを見渡した。
「どうかな? 農業って、奥が深くて面白いでしょ?」
 ツルに吊るされた数百人のエリート生徒たちは、首がもげるほど激しく頷いた。
「「「はいぃぃぃッ! 参りましたぁぁぁッ!!」」」
 こうして、王立魔法学園の実技試験は、カイトによる「演習場のジャングル化(および生徒の洗脳)」という形で幕を閉じた。
 この日以降、学園には「園芸部」が新設され、最も人気のあるエリート部活となるのだが、それはまた後の話。
 だが、問題はまだ終わらない。
 カイトはお腹を空かせていたのだ。
「うーん、動いたらお腹空いたな。学食に行ってみようか!」
 次回、カイトが学食の「薄味スープ」に絶望し、鬼神龍魔呂が厨房をジャックする!
 「学食革命! 鬼神のカレーライス」へ続く!
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