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第四章 学園生活と地下アイドル
EP 4
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転生者の痕跡と、海への誘い
鬼神カレーによる学食革命から数時間後。
生徒や教師たちが満腹で幸せな夢を見ている頃、カイトは腹ごなしに学園内を散策していた。
「へえ、さすが魔法学園。図書館も迷路みたいだなぁ」
カイトが迷い込んだのは、校舎の地下深くにある『禁書図書館』だった。
本来なら厳重な結界で封印されている場所だが、引率の女神ルチアナが「あー、ここ埃っぽいわね。換気しとくわ」と結界ごとドアを吹き飛ばしていたため、カイトはフリーパスで入ってしまったのだ。
「うーん、読めない字ばっかりだ」
棚には、古びた魔道書や歴史書が並んでいる。
カイトが適当に一冊の本を手に取った時だった。
ピリッ。
指先に静電気が走ったような感覚があった。
その本は、他の豪華な装丁の本とは違い、ボロボロの革表紙で、背表紙には何も書かれていない。
だが、カイトの本能が「これを読め」と告げていた。
「なんだろう……。懐かしい感じがする」
カイトはページを開いた。
そこに書かれていた文字を見て、彼は息を呑んだ。
『4月1日。 今日から異世界生活が始まる。マジでスマホが圏外だ。詰んだ』
「――!!」
見間違えるはずがない。
ひらがな。カタカナ。漢字。
それは、この世界には存在しないはずの「日本語」だった。
「これ、日本人が書いた日記だ……!」
カイトは夢中でページをめくった。
筆跡は乱れており、書いた人物の苦悩が滲んでいる。
『5月。魔法が使えるようになった。でもウォシュレットがないのが辛い』
『8月。魔王を倒せと言われた。ブラック企業かよ。帰りたい』
『12月。勇者と呼ばれてチヤホヤされ始めた。でも、飯が不味い。味噌汁が飲みたい。米が食いたい』
「わかる……! わかるよ、先輩……!」
カイトは激しく同意した。
この手記の主は、数百年前、あるいは数千年前の「勇者」なのだろう。
伝説に残る偉業の裏で、彼は故郷の味と文明の利器を求めて孤独に戦っていたのだ。
「苦労したんだなぁ……」
カイトの目頭が熱くなった。
俺にはポチや龍魔呂さん、みんながいる。美味しい野菜も作れた。
でも、この先輩はたった一人で……。
しんみりとした気持ちで、カイトは最後のページを開いた。
そこには、震える文字でこう記されていた。
『勇者を引退したら、南の海へ行きたい。
新鮮な魚が食いたい。
刺し身。寿司。海鮮丼。
あぁ……醤油とワサビで、脂の乗ったマグロを腹いっぱい食いたい……』
日記はそこで終わっていた。
彼が海に行けたのか、寿司を食べられたのかは分からない。
カイトは本を閉じた。
そして、静かに目を閉じた。
……。
…………。
グゥゥゥゥ~~~~ッ。
盛大な腹の虫が、静寂を破った。
「……海鮮」
カイトの脳内から「先輩への同情」が消え去り、代わりに巨大な文字が浮かび上がった。
【 シ ー フ ー ド 】
「そ、そういえば! ピザのバリエーションを増やすなら、シーフードピザだよな!」
カイトの口の中に、幻の味が広がる。
プリプリのエビ。弾力のあるイカ。濃厚なホタテ。
それがチーズと絡み合い、こんがりと焼けたピザ生地の上で踊る光景。
「やばい、ヨダレが出てきた……! 先輩の無念(食欲)、俺が晴らすしかない!」
カイトは本を棚に戻し(一礼してから)、猛ダッシュで地上へと駆け上がった。
†
地上では、神々が退屈そうに待っていた。
「遅いなカイトの奴。迷子にでもなったか?」
「あら、カイト様ならあそこで走ってきますわよ」
ルナが指差す先から、カイトが息を切らして戻ってきた。
「みんな! 大変だ!」
「どうしたカイト殿! 敵襲ですか!?」
ルーベンスが身構える。
カイトは真剣な眼差しで、拳を突き上げた。
「海へ行くぞ!!」
「……は?」
「海だよ、海! ここから南へ行けば港町があるはずだ! そこで新鮮な魚介類をゲットして、シーフードピザを作るんだ!」
カイトの熱意に、全員がキョトンとした。
だが、すぐにそれぞれの思惑が動き出す。
「海か……。フン、塩ラーメンの出汁を探すのも悪くない」
竜神デュークがニヤリとする。
「海鮮……。刺し身に合う日本酒でも造るか」
龍魔呂が渋く頷く。
「海! 水着! カイトとのビーチデート! 行くに決まってるでしょ!」
魔王ラスティアと不死鳥フレアがハイタッチする。
「きゅぅ!(魚!)」
ポチも尻尾を振って賛成だ。
「決まりだね! 学園長先生に挨拶して、すぐに出発だ!」
†
数分後。
正門で見送りに来たマーリン学園長は、涙を流してカイトの手を握っていた。
「カイト様……! 本当に、もう行かれるのですか? もっと滞在して、カレーの作り方を……」
「あはは、長居すると迷惑かけちゃいますから。それに、海が僕を呼んでいるんです!」
カイトは爽やかに笑った。
学園長は内心で(助かった……これ以上いたら校舎が消滅するところだった……)と安堵しつつも、深々と頭を下げた。
「どうかご武運を! 貴方様が蒔いてくださった『農業の種』、大切に育てますぞ!」
「はい! 期待してます!」
カイト一行を乗せた馬車が、砂煙を上げて出発する。
その背後には、ジャングル化した演習場と、カレーの匂いが染み付いた校舎、そして「農業こそ最強の魔法である」と洗脳されたエリート生徒たちが残された。
目指すは南。
潮風香る港町「ルナミス」。
そこには、新鮮な魚介類だけでなく、一人の貧乏な歌姫と、過保護な海の女王が待ち構えている。
カイト農場の勢力拡大(と宴会)の旅は、まだ終わらない。
次回、待望の水着回!
「海だ! 水着だ! 密漁だ!?」へ続く!
鬼神カレーによる学食革命から数時間後。
生徒や教師たちが満腹で幸せな夢を見ている頃、カイトは腹ごなしに学園内を散策していた。
「へえ、さすが魔法学園。図書館も迷路みたいだなぁ」
カイトが迷い込んだのは、校舎の地下深くにある『禁書図書館』だった。
本来なら厳重な結界で封印されている場所だが、引率の女神ルチアナが「あー、ここ埃っぽいわね。換気しとくわ」と結界ごとドアを吹き飛ばしていたため、カイトはフリーパスで入ってしまったのだ。
「うーん、読めない字ばっかりだ」
棚には、古びた魔道書や歴史書が並んでいる。
カイトが適当に一冊の本を手に取った時だった。
ピリッ。
指先に静電気が走ったような感覚があった。
その本は、他の豪華な装丁の本とは違い、ボロボロの革表紙で、背表紙には何も書かれていない。
だが、カイトの本能が「これを読め」と告げていた。
「なんだろう……。懐かしい感じがする」
カイトはページを開いた。
そこに書かれていた文字を見て、彼は息を呑んだ。
『4月1日。 今日から異世界生活が始まる。マジでスマホが圏外だ。詰んだ』
「――!!」
見間違えるはずがない。
ひらがな。カタカナ。漢字。
それは、この世界には存在しないはずの「日本語」だった。
「これ、日本人が書いた日記だ……!」
カイトは夢中でページをめくった。
筆跡は乱れており、書いた人物の苦悩が滲んでいる。
『5月。魔法が使えるようになった。でもウォシュレットがないのが辛い』
『8月。魔王を倒せと言われた。ブラック企業かよ。帰りたい』
『12月。勇者と呼ばれてチヤホヤされ始めた。でも、飯が不味い。味噌汁が飲みたい。米が食いたい』
「わかる……! わかるよ、先輩……!」
カイトは激しく同意した。
この手記の主は、数百年前、あるいは数千年前の「勇者」なのだろう。
伝説に残る偉業の裏で、彼は故郷の味と文明の利器を求めて孤独に戦っていたのだ。
「苦労したんだなぁ……」
カイトの目頭が熱くなった。
俺にはポチや龍魔呂さん、みんながいる。美味しい野菜も作れた。
でも、この先輩はたった一人で……。
しんみりとした気持ちで、カイトは最後のページを開いた。
そこには、震える文字でこう記されていた。
『勇者を引退したら、南の海へ行きたい。
新鮮な魚が食いたい。
刺し身。寿司。海鮮丼。
あぁ……醤油とワサビで、脂の乗ったマグロを腹いっぱい食いたい……』
日記はそこで終わっていた。
彼が海に行けたのか、寿司を食べられたのかは分からない。
カイトは本を閉じた。
そして、静かに目を閉じた。
……。
…………。
グゥゥゥゥ~~~~ッ。
盛大な腹の虫が、静寂を破った。
「……海鮮」
カイトの脳内から「先輩への同情」が消え去り、代わりに巨大な文字が浮かび上がった。
【 シ ー フ ー ド 】
「そ、そういえば! ピザのバリエーションを増やすなら、シーフードピザだよな!」
カイトの口の中に、幻の味が広がる。
プリプリのエビ。弾力のあるイカ。濃厚なホタテ。
それがチーズと絡み合い、こんがりと焼けたピザ生地の上で踊る光景。
「やばい、ヨダレが出てきた……! 先輩の無念(食欲)、俺が晴らすしかない!」
カイトは本を棚に戻し(一礼してから)、猛ダッシュで地上へと駆け上がった。
†
地上では、神々が退屈そうに待っていた。
「遅いなカイトの奴。迷子にでもなったか?」
「あら、カイト様ならあそこで走ってきますわよ」
ルナが指差す先から、カイトが息を切らして戻ってきた。
「みんな! 大変だ!」
「どうしたカイト殿! 敵襲ですか!?」
ルーベンスが身構える。
カイトは真剣な眼差しで、拳を突き上げた。
「海へ行くぞ!!」
「……は?」
「海だよ、海! ここから南へ行けば港町があるはずだ! そこで新鮮な魚介類をゲットして、シーフードピザを作るんだ!」
カイトの熱意に、全員がキョトンとした。
だが、すぐにそれぞれの思惑が動き出す。
「海か……。フン、塩ラーメンの出汁を探すのも悪くない」
竜神デュークがニヤリとする。
「海鮮……。刺し身に合う日本酒でも造るか」
龍魔呂が渋く頷く。
「海! 水着! カイトとのビーチデート! 行くに決まってるでしょ!」
魔王ラスティアと不死鳥フレアがハイタッチする。
「きゅぅ!(魚!)」
ポチも尻尾を振って賛成だ。
「決まりだね! 学園長先生に挨拶して、すぐに出発だ!」
†
数分後。
正門で見送りに来たマーリン学園長は、涙を流してカイトの手を握っていた。
「カイト様……! 本当に、もう行かれるのですか? もっと滞在して、カレーの作り方を……」
「あはは、長居すると迷惑かけちゃいますから。それに、海が僕を呼んでいるんです!」
カイトは爽やかに笑った。
学園長は内心で(助かった……これ以上いたら校舎が消滅するところだった……)と安堵しつつも、深々と頭を下げた。
「どうかご武運を! 貴方様が蒔いてくださった『農業の種』、大切に育てますぞ!」
「はい! 期待してます!」
カイト一行を乗せた馬車が、砂煙を上げて出発する。
その背後には、ジャングル化した演習場と、カレーの匂いが染み付いた校舎、そして「農業こそ最強の魔法である」と洗脳されたエリート生徒たちが残された。
目指すは南。
潮風香る港町「ルナミス」。
そこには、新鮮な魚介類だけでなく、一人の貧乏な歌姫と、過保護な海の女王が待ち構えている。
カイト農場の勢力拡大(と宴会)の旅は、まだ終わらない。
次回、待望の水着回!
「海だ! 水着だ! 密漁だ!?」へ続く!
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