田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一

文字の大きさ
55 / 100
第五章 最凶ダンジョン天魔窟

EP 5

しおりを挟む
決戦! トラクター VS 超兵器
​ 地下闘技場の照明が一点に集中する。
 実況のキュルリンが絶叫した。
​「さあ、いよいよ決勝戦だよ! ドワーフの誇りをかけた最強兵器『アイアン・カイザー』! 対するは、カイトの謎の黄色い機体『耕運丸(こううんまる)』だーっ!」
​ 観客席のボルテージは最高潮だ。
 鋼鉄の巨人と、黄色いトラクター。見た目の勝負なら、どう見てもアイアン・カイザーの圧勝である。
​ コックピットの中、ドワーフ王ガンテツは不敵に笑った。
​「フン、黄色い農機具ごときが。ワシの『アイアン・カイザー』は、ミスリル合金の装甲と、ドラゴンすら貫くドリルを持っておる! 一撃でスクラップにしてくれるわ!」
​ 一方、耕運丸のカイトは、のんきに操作パネル(とハンドル)を握っていた。
​「よし、エンジンの調子はいいぞ。……このリング、ちょっと土が硬そうだな。しっかり耕さないと」
​ カイトにとって、対戦相手のロボットは「畑にある大きな岩」程度の認識だった。
​ カーンッ!
 ゴングが鳴り響く。
​「いくぞ若造! 必殺! 『ギガ・ドリル・ブレイク』!!」
​ アイアン・カイザーの右腕にある巨大ドリルが高速回転し、唸りを上げて突進してきた。
 空気を裂く音。直撃すれば、城壁すら粉砕する威力だ。
​「危ない! ……あんな大きな岩が転がってきたら、鍬(くわ)が欠けちゃう!」
​ カイトは瞬時に反応した。
 彼は操縦桿を倒し、機体の左腕を展開した。
​「どいてくれ! 『超振動・雑草カッター』!」
​ ブォンッ!
 耕運丸の腕から、目に見えないほどの速度で振動するブレードが繰り出された。
 本来は強靭な雑草の根を断つための機能だが、ポチの魔力でブーストされたその刃は、分子結合すら切断する高周波ブレードと化していた。
​ スパァァァァァァンッ!!
​ 乾いた音が響く。
 次の瞬間、ガンテツの自慢の巨大ドリルが、根本から綺麗に切断されて宙を舞った。
​「な、なんじゃとォォォッ!?」
​ ガンテツが目を剥く。
 最高硬度のミスリル・ドリルが、まるでダイコンのようにスライスされた。
​「次はこれだ! 喰らえ、『ドラゴン・バスター・ミサイル』!」
​ ガンテツは距離を取り、背中のポッドから無数のミサイルを発射した。
 熱追尾式の高性能弾頭が、耕運丸に殺到する。
​「うわっ、害虫(ハチ)の大群だ!」
​ カイトには、ミサイルが「畑を荒らす虫」に見えた。
​「消毒しなきゃ! 『高圧・農薬(水)散布』!」
​ プシューーーーーッ!!
​ 耕運丸の胸部ハッチが開き、凄まじい勢いで白い霧が噴射された。
 それはただの水ではない。
 冷却炉に使われているフェンリルの『氷精霊石』から抽出された、絶対零度の冷気(ドライアイス)だ。
​ カチカチカチッ!
 迫りくるミサイル群が、空中で一瞬にして凍りつき、機能を停止してバラバラと地面に落ちた。
​「ば、馬鹿な……! 熱源反応が消えたじゃと!?」
​ ガンテツは戦慄した。
 近接も遠距離も通じない。あの黄色い悪魔は何なんだ。
​「よし、害虫駆除完了! あとは仕上げだ!」
​ カイトはギアをトップに入れた。
 ポチの鱗(エンジン)が咆哮を上げる。
​「このリング、全部まとめて耕すぞ! いけ、『全方位・脱穀(だっこく)ハリケーン』!!」
​ 耕運丸がコマのように高速回転を始めた。
 両腕のオリハルコン製・耕運爪が、竜巻のような衝撃波を生み出す。
​ ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!
​ 「う、うわぁぁぁぁ! 吸い込まれるぅぅ!」
​ アイアン・カイザーの巨体が、耕運丸の回転に引き寄せられる。
 そして、接触した瞬間。
​ ガリガリガリガリガリッ!!!!
​ 装甲が剥がれる音が、まるで「麦の殻」を剥く音のように軽快に響いた。
 ドワーフの国宝級の装甲板が、紙切れのように削ぎ落とされていく。
​「ひぃぃぃ! ワシのアイアン・カイザーが! 裸にされていくぅぅ!」
​ そして、回転が止まった時。
 リングの上には、装甲をすべて剥がされ、骨組みだけになったアイアン・カイザー(と、呆然とするガンテツ)が立ち尽くしていた。
 そして足元の地面は、深さ3メートルまで均一に耕され、最高の黒土の畑になっていた。
​「ふぅ。いい土になったね!」
​ カイトは汗を拭い、爽やかな笑顔を見せた。
​「……ま、参った」
​ ガンテツはコックピットから這い出し、その場に崩れ落ちた。
 完敗だ。
 技術力も、出力も、そして何より「目的(土作り)」への執念が違いすぎた。
​「わ、ワシの負けじゃ……。約束通り、この施設は認めよう」
​ ガンテツはカイトを見上げ、目を潤ませた。
​「なぁ、若造……いや、師匠。その『脱穀アタック』の技術、ワシに教えてくれんか? あれがあれば、鉱山の掘削効率が100倍になる……!」
​「え? 弟子? いいですよ!」
​ カイトは快諾した。
​「農業に興味を持ってくれるなんて嬉しいなぁ! 一緒にいい野菜を作りましょう!」
​「(……いや、野菜じゃなくてロボットの話なんじゃが)」
​ ガンテツはツッコミを飲み込んだ。
 この青年の下で学べば、ドワーフの技術は新たな次元へ行ける気がしたからだ。
​ こうして、マグナギア・トーナメントはカイトの優勝で幕を閉じた。
 観客席からは「農業最強!」「トラクター万歳!」のコールが巻き起こる。
​ 激闘の後は、男たちの休息の時間だ。
 汗を流し、裸の付き合いをするために、彼らは地下の奥深くへと向かった。
​ 次回、サウナで整う中間管理職!
 「サウナで整う中間管理職」へ続く!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

『しろくま通りのピノ屋さん 〜転生モブは今日もお菓子を焼く〜』

miigumi
ファンタジー
前世では病弱で、病室の窓から空を見上げることしかできなかった私。 そんな私が転生したのは、魔法と剣があるファンタジーの世界。 ……とはいえ、勇者でも聖女でもなく、物語に出てこない“モブキャラ”でした。 貴族の家に生まれるも馴染めず、破門されて放り出された私は、街の片隅―― 「しろくま通り」で、小さなお菓子屋さんを開くことにしました。 相棒は、拾ったまんまるのペンギンの魔物“ピノ”。 季節の果物を使って、前世の記憶を頼りに焼いたお菓子は、 気づけばちょっぴり評判に。 できれば平和に暮らしたいのに、 なぜか最近よく現れるやさしげな騎士さん―― ……って、もしかして勇者パーティーの人なんじゃ?! 静かに暮らしたい元病弱転生モブと、 彼女の焼き菓子に癒される人々の、ちょっと甘くて、ほんのり騒がしい日々の物語。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

最強陛下の育児論〜5歳児の娘に振り回されているが、でもやっぱり可愛くて許してしまうのはどうしたらいいものか〜

楠ノ木雫
ファンタジー
 孤児院で暮らしていた女の子リンティの元へ、とある男達が訪ねてきた。その者達が所持していたものには、この国の紋章が刻まれていた。そう、この国の皇城から来た者達だった。その者達は、この国の皇女を捜しに来ていたようで、リンティを見た瞬間間違いなく彼女が皇女だと言い出した。  言い合いになってしまったが、リンティは皇城に行く事に。だが、この国の皇帝の二つ名が〝冷血の最強皇帝〟。そして、タイミング悪く首を撥ねている瞬間を目の当たりに。  こんな無慈悲の皇帝が自分の父。そんな事実が信じられないリンティ。だけど、あれ? 皇帝が、ぬいぐるみをプレゼントしてくれた?  リンティがこの城に来てから、どんどん皇帝がおかしくなっていく姿を目の当たりにする周りの者達も困惑。一体どうなっているのだろうか?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

追放された公爵令息、神竜と共に辺境スローライフを満喫する〜無敵領主のまったり改革記〜

たまごころ
ファンタジー
無実の罪で辺境に追放された公爵令息アレン。 だが、その地では神竜アルディネアが眠っていた。 契約によって最強の力を得た彼は、戦いよりも「穏やかな暮らし」を選ぶ。 農地改革、温泉開発、魔導具づくり──次々と繁栄する辺境領。 そして、かつて彼を貶めた貴族たちが、その繁栄にひれ伏す時が来る。 戦わずとも勝つ、まったりざまぁ無双ファンタジー!

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

処理中です...