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第十七章 金塊、、そしてヤニ、、海鮮鍋へ
EP 5
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エルフの姫君ルナの「親切な提案」が、経済崩壊のトリガーを引く
嵐のような一夜が明け、カイト農場に再び朝が来た。
納屋の軒先には、相変わらず「数億円の金塊」が鎮座し、白菜を押し潰している。
昨夜のルーベンスは、手に入れた金塊を抱きしめたまま「……レースは終わった……夢も消えた……」と燃え尽き、結局カイトに「じゃあ、漬け直すね」と回収されたのだ。
「うーん、やっぱりみんな、この石が気になるのかなぁ」
カイトが腕組みをして首を傾げていると、そこへ優雅な足取りでエルフの少女がやってきた。
次期女王候補にして、天魔窟の新オーナー、ルナ・シンフォニアだ。
「ごきげんよう、カイトさん。……あら? その石、泥だらけで汚いわね」
ルナは金塊を見て、眉をひそめた。
「せっかくの農場の景観が台無しよ。……そうだわ! 私が良いものと交換してあげる!」
ルナがおもむろに足元の「ただの砂利」を拾い上げ、ふわりと微笑む。
世界樹の杖を振るい、彼女は禁断の魔法を詠唱した。
「――エレメンタル・コンバージョン(物質変換)・ゴールド!」
カッ!!
まばゆい光が収まると、ルナの手のひらにあった砂利は、不純物ゼロ、純度100%の「超・金塊」へと変貌していた。
しかも、カイトの持っている掘り出し物の金塊よりも、遥かに形が整っており、芸術的な輝きを放っている。
「はい、どうぞ! これならピカピカで、お野菜も喜ぶと思うわ!」
ルナの無邪気な声が響いた瞬間。
茂みの中から、ハイエナのような速さで女性陣が飛び出した。
「ちょ、ちょっとルナ! 今それ、魔法で作ったの!?」
「本物の金なの!? 錬金術の領域を超えてるわよ!?」
リーザとルチアナが、ルナの生成した金塊に食らいつく。
ルナはキョトンとして答えた。
「ええ。エルフの秘儀よ。分子構造を組み替えたから、鑑定しても本物と区別はつかないわ。……あら、そんなに欲しいの? じゃあ、みんなの分も作ってあげるわね」
ルナは「庭の草むしり」をするような感覚で、地面の石ころを次々と杖で叩いた。
ポン、ポン、ポン。
石が金塊へ。
岩が金の延べ棒へ。
数秒後。
農場の庭には、国家予算数年分に匹敵する「金の山」が築かれていた。
「「「ヒィィィィィッ!!!」」」
リーザが泡を吹いて倒れ、ラスティアが震え上がり、ルチアナですらドン引きする。
これはもはや富ではない。経済テロだ。
これだけの量が市場に出回れば、金の価値は暴落し、ハイパーインフレでパン一つ買うのにリアカー一杯の札束が必要になる。
「さあカイトさん! この綺麗な金塊を使って! その汚い石は私が処分(消滅)してあげるから!」
ルナは善意100%の笑顔で、カイトの漬物石(オリジナル)に手を伸ばそうとした。
しかし。
「うーん……ありがとうルナちゃん。でも、遠慮しておくよ」
カイトは、ルナの差し出した「超・金塊」を受け取ると、少し手の中で弄(まさぐ)り、すぐに返してしまった。
「え? どうして? 私の金塊の方が綺麗でしょ?」
「うん、綺麗だね。でもね……軽すぎるんだ」
カイトは真剣な顔で解説を始めた。
「ルナちゃんの金塊は、純度が高すぎて密度が均一すぎるんだよ。対して、僕が掘り出したこの石は、土の精霊の魔力が詰まっているからか、見た目以上に『重み』があるんだ。この絶妙な重さが、白菜の繊維を壊さずに水分だけを抜くのに最適なんだよ」
「そ、そんな……物理法則を超えた『重み』だなんて……」
「それに、錬金術で作った金属って、特有の『金属臭』がなくて無機質なんだよね。漬物に大地の香りが移らないのは致命的だよ」
カイトの「農業的こだわり(ガチ勢の理論)」により、ルナの魔法金塊はあえなくリジェクト(不採用)された。
「むぅ……カイトさんのわからず屋」
ルナが頬を膨らませた、その時だ。
庭に積み上げられた金の山が、シュワシュワと音を立てて煙になり始めた。
「あ、いけない。この魔法、長持ちしないんだったわ」
「えっ!?」
リーザが金塊の山にダイブするが、その指先から金塊は砂利へと戻っていく。
「ルナぁぁぁ! 時間制限付きなら先に言いなさいよぉぉ!!」
「あら、だって『本物』と交換するつもりだったもの。……まあいいわ。カイトさんがいらないなら、元に戻しちゃいましょ」
ルナが杖を一振りすると、すべての金塊はただの石ころに戻った。
一瞬にして億万長者の夢を見せられ、そして叩き落とされた女性陣。
「……はぁ、はぁ。心臓に悪いわ……」
「危うく世界経済が崩壊するところでしたわ……」
安堵と脱力感が広がる中、カイトだけが変わらぬ笑顔で呟いた。
「やっぱり、自然のままが一番だね。……さて、そろそろ漬かり具合を見てみようかな」
カイトの手元には、唯一無二の「汚い(が高価な)漬物石」だけが残った。
ルナの暴走は未遂に終わったが、農場の住人たちの精神はすり減る一方であった。
嵐のような一夜が明け、カイト農場に再び朝が来た。
納屋の軒先には、相変わらず「数億円の金塊」が鎮座し、白菜を押し潰している。
昨夜のルーベンスは、手に入れた金塊を抱きしめたまま「……レースは終わった……夢も消えた……」と燃え尽き、結局カイトに「じゃあ、漬け直すね」と回収されたのだ。
「うーん、やっぱりみんな、この石が気になるのかなぁ」
カイトが腕組みをして首を傾げていると、そこへ優雅な足取りでエルフの少女がやってきた。
次期女王候補にして、天魔窟の新オーナー、ルナ・シンフォニアだ。
「ごきげんよう、カイトさん。……あら? その石、泥だらけで汚いわね」
ルナは金塊を見て、眉をひそめた。
「せっかくの農場の景観が台無しよ。……そうだわ! 私が良いものと交換してあげる!」
ルナがおもむろに足元の「ただの砂利」を拾い上げ、ふわりと微笑む。
世界樹の杖を振るい、彼女は禁断の魔法を詠唱した。
「――エレメンタル・コンバージョン(物質変換)・ゴールド!」
カッ!!
まばゆい光が収まると、ルナの手のひらにあった砂利は、不純物ゼロ、純度100%の「超・金塊」へと変貌していた。
しかも、カイトの持っている掘り出し物の金塊よりも、遥かに形が整っており、芸術的な輝きを放っている。
「はい、どうぞ! これならピカピカで、お野菜も喜ぶと思うわ!」
ルナの無邪気な声が響いた瞬間。
茂みの中から、ハイエナのような速さで女性陣が飛び出した。
「ちょ、ちょっとルナ! 今それ、魔法で作ったの!?」
「本物の金なの!? 錬金術の領域を超えてるわよ!?」
リーザとルチアナが、ルナの生成した金塊に食らいつく。
ルナはキョトンとして答えた。
「ええ。エルフの秘儀よ。分子構造を組み替えたから、鑑定しても本物と区別はつかないわ。……あら、そんなに欲しいの? じゃあ、みんなの分も作ってあげるわね」
ルナは「庭の草むしり」をするような感覚で、地面の石ころを次々と杖で叩いた。
ポン、ポン、ポン。
石が金塊へ。
岩が金の延べ棒へ。
数秒後。
農場の庭には、国家予算数年分に匹敵する「金の山」が築かれていた。
「「「ヒィィィィィッ!!!」」」
リーザが泡を吹いて倒れ、ラスティアが震え上がり、ルチアナですらドン引きする。
これはもはや富ではない。経済テロだ。
これだけの量が市場に出回れば、金の価値は暴落し、ハイパーインフレでパン一つ買うのにリアカー一杯の札束が必要になる。
「さあカイトさん! この綺麗な金塊を使って! その汚い石は私が処分(消滅)してあげるから!」
ルナは善意100%の笑顔で、カイトの漬物石(オリジナル)に手を伸ばそうとした。
しかし。
「うーん……ありがとうルナちゃん。でも、遠慮しておくよ」
カイトは、ルナの差し出した「超・金塊」を受け取ると、少し手の中で弄(まさぐ)り、すぐに返してしまった。
「え? どうして? 私の金塊の方が綺麗でしょ?」
「うん、綺麗だね。でもね……軽すぎるんだ」
カイトは真剣な顔で解説を始めた。
「ルナちゃんの金塊は、純度が高すぎて密度が均一すぎるんだよ。対して、僕が掘り出したこの石は、土の精霊の魔力が詰まっているからか、見た目以上に『重み』があるんだ。この絶妙な重さが、白菜の繊維を壊さずに水分だけを抜くのに最適なんだよ」
「そ、そんな……物理法則を超えた『重み』だなんて……」
「それに、錬金術で作った金属って、特有の『金属臭』がなくて無機質なんだよね。漬物に大地の香りが移らないのは致命的だよ」
カイトの「農業的こだわり(ガチ勢の理論)」により、ルナの魔法金塊はあえなくリジェクト(不採用)された。
「むぅ……カイトさんのわからず屋」
ルナが頬を膨らませた、その時だ。
庭に積み上げられた金の山が、シュワシュワと音を立てて煙になり始めた。
「あ、いけない。この魔法、長持ちしないんだったわ」
「えっ!?」
リーザが金塊の山にダイブするが、その指先から金塊は砂利へと戻っていく。
「ルナぁぁぁ! 時間制限付きなら先に言いなさいよぉぉ!!」
「あら、だって『本物』と交換するつもりだったもの。……まあいいわ。カイトさんがいらないなら、元に戻しちゃいましょ」
ルナが杖を一振りすると、すべての金塊はただの石ころに戻った。
一瞬にして億万長者の夢を見せられ、そして叩き落とされた女性陣。
「……はぁ、はぁ。心臓に悪いわ……」
「危うく世界経済が崩壊するところでしたわ……」
安堵と脱力感が広がる中、カイトだけが変わらぬ笑顔で呟いた。
「やっぱり、自然のままが一番だね。……さて、そろそろ漬かり具合を見てみようかな」
カイトの手元には、唯一無二の「汚い(が高価な)漬物石」だけが残った。
ルナの暴走は未遂に終わったが、農場の住人たちの精神はすり減る一方であった。
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