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おっさん疾走す
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大会四日──競技はポータルラン。
魔導障壁や精神干渉領域を含む、学園最大級の体力・知力・運を試すコース。誰が考えたのか知らんが、完全に命がけのアスレチックだ。参加メンバーは俺とステラ。
観客席の喧騒の中、ステラが落ち着かない様子で呟いた。
「……本当に、出るんですか?」
誘拐事件の翌日……不安になるのも仕方がない。俺だって、やっぱり出場は辞退して姫様のケアに専念すべきだと提案したけど──
「わたくしは大丈夫です。おじさまとステラさんの応援をしているほうが気が紛れます」と、想像していたよりも大人し目な応えが返ってきた。やっぱり結構滅入っているみたいだ。
けど、他のみんなが付いていてくれているし、捜査が進むまで複数の先生方が見張っていてくれているらしいから安心だ。
ここで勝てれば辞退した競技分の評価も稼げるかもしれん……ここは皆の胸を借りるつもりで頑張ろう。
「勝つぞステラ!」
「……あまり自信がありませんが……」
俺とステラの入場で観客席からは「Zクラス!?」と驚きの声が上がっている。
初日の全勝とライミの活躍で、ちょっとは注目されているみたいだな。
隣のステラは爪を噛むしぐさをしていて乗り気じゃないみたいだけど。
対戦相手はGクラスの褐色エルフと虎系の獣人ペア……強そうだけど、この競技は先に2人目がゴールした方が勝ち、つまり妨害されなければ個人の能力に左右される。
この日のために使えそうな電化製品もピックアップしておいた。準備は万端だ。
──そして、スタートの合図が鳴った。
「行くぞ!」
俺が先陣を切って駆け出したその直後、
「──あっ!」
振り返ると、ステラが膝を抱えてうずくまっていた。足首を押さえている。
「どうした? 捻ったか?」
俺が駆け寄ろうとした瞬間、ステラは「……ごめんなさい、走れないかも……」と小さく呟いた。
マジか……最悪、俺一人だけでも完走して評価点を稼ぐことも考えたが、この競技はゴールを目指す以外はルール無いようなもん……だったら。
「乗れ」
「え……?」
「足が使えないなら、おんぶでいくぞ」
なりふり構ってなんかいられない。俺は嫌がるステラを無理矢理背負って走り出した。
「なんだあれ? おい、Zクラス見てみろよ」
「は? おんぶして走ってんだけど」
「まぁアリっちゃアリだな。軽い奴を背負って走り、背中の奴は魔法に専念すれば……」
「むちゃくちゃだろ……流石、意外性のZクラス」
「目が離せませんね」
盛り上がる観客席の声が聞こえてきた。そんな作戦じゃねぇけど、最後まで走り切ってみせるぜ……って、軽いとはいえ流石にキツイか?
「……下してください。……恥ずかしいです。それにゴールまで持たないですよ」
ステラが背中で抵抗するから体力を奪われる……そうだ、こんなときの為の家電。
俺は電動アシストスーツを取り出して装着し、ステラを再びおんぶした。よく近所のおばあちゃんが腰をやっちまったときに、これで世話したな。
ついでに電動キックボードも出し、颯爽と乗りこなす。まだ地面が舗装されている区間だから有効だ。
「なんか見たことのない魔道具だな」
「ああ、噂は本当だったのか」
「訳の分からない魔道具を広めているってZクラスの奴らだったのか」
「便利そうね」
「今度、使わせてもらおうかな」
家電の注目度も抜群だ。
このまま突っ走るぞ。
魔導障壁や精神干渉領域を含む、学園最大級の体力・知力・運を試すコース。誰が考えたのか知らんが、完全に命がけのアスレチックだ。参加メンバーは俺とステラ。
観客席の喧騒の中、ステラが落ち着かない様子で呟いた。
「……本当に、出るんですか?」
誘拐事件の翌日……不安になるのも仕方がない。俺だって、やっぱり出場は辞退して姫様のケアに専念すべきだと提案したけど──
「わたくしは大丈夫です。おじさまとステラさんの応援をしているほうが気が紛れます」と、想像していたよりも大人し目な応えが返ってきた。やっぱり結構滅入っているみたいだ。
けど、他のみんなが付いていてくれているし、捜査が進むまで複数の先生方が見張っていてくれているらしいから安心だ。
ここで勝てれば辞退した競技分の評価も稼げるかもしれん……ここは皆の胸を借りるつもりで頑張ろう。
「勝つぞステラ!」
「……あまり自信がありませんが……」
俺とステラの入場で観客席からは「Zクラス!?」と驚きの声が上がっている。
初日の全勝とライミの活躍で、ちょっとは注目されているみたいだな。
隣のステラは爪を噛むしぐさをしていて乗り気じゃないみたいだけど。
対戦相手はGクラスの褐色エルフと虎系の獣人ペア……強そうだけど、この競技は先に2人目がゴールした方が勝ち、つまり妨害されなければ個人の能力に左右される。
この日のために使えそうな電化製品もピックアップしておいた。準備は万端だ。
──そして、スタートの合図が鳴った。
「行くぞ!」
俺が先陣を切って駆け出したその直後、
「──あっ!」
振り返ると、ステラが膝を抱えてうずくまっていた。足首を押さえている。
「どうした? 捻ったか?」
俺が駆け寄ろうとした瞬間、ステラは「……ごめんなさい、走れないかも……」と小さく呟いた。
マジか……最悪、俺一人だけでも完走して評価点を稼ぐことも考えたが、この競技はゴールを目指す以外はルール無いようなもん……だったら。
「乗れ」
「え……?」
「足が使えないなら、おんぶでいくぞ」
なりふり構ってなんかいられない。俺は嫌がるステラを無理矢理背負って走り出した。
「なんだあれ? おい、Zクラス見てみろよ」
「は? おんぶして走ってんだけど」
「まぁアリっちゃアリだな。軽い奴を背負って走り、背中の奴は魔法に専念すれば……」
「むちゃくちゃだろ……流石、意外性のZクラス」
「目が離せませんね」
盛り上がる観客席の声が聞こえてきた。そんな作戦じゃねぇけど、最後まで走り切ってみせるぜ……って、軽いとはいえ流石にキツイか?
「……下してください。……恥ずかしいです。それにゴールまで持たないですよ」
ステラが背中で抵抗するから体力を奪われる……そうだ、こんなときの為の家電。
俺は電動アシストスーツを取り出して装着し、ステラを再びおんぶした。よく近所のおばあちゃんが腰をやっちまったときに、これで世話したな。
ついでに電動キックボードも出し、颯爽と乗りこなす。まだ地面が舗装されている区間だから有効だ。
「なんか見たことのない魔道具だな」
「ああ、噂は本当だったのか」
「訳の分からない魔道具を広めているってZクラスの奴らだったのか」
「便利そうね」
「今度、使わせてもらおうかな」
家電の注目度も抜群だ。
このまま突っ走るぞ。
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