しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥

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ステラ回想す

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 訓練通りだ。
 俺は手のひらから流れる電力を一段階、強めた。
 通常なら制限されている電流値を、直接制御してモーターに流し込む。
 すると、キックボードのモーターが唸るように加速を始め、地面を滑る音が変わった。
 電力量を増やし過ぎると制御回路が焼けてしまうことも実践済み。機体の限界ギリギリまで電力を流し、一気にGクラスを突き放す。
 「大丈夫かステラっ、振り落とされるなよ」
 「……痛いくらいに掴まれているので……大丈夫です」
 「おお、すまん」
 電力を流し過ぎて、アシストスーツのパワーも上がっていたみたいだ。

 だいぶ進んだところで、目の前に灰色の霧が広がってきた。
 「ひっ……」
 俺の背中で、彼女の体がぴくりと震え、小さな悲鳴が聞こえた。
 「どうしたステラ? 力は弱めたハズだけど……」
 振り返ると、ステラの顔色が真っ青なのが分かった。目を瞑ってうなされている……この霧ってもしかして、精神干渉ゾーンってやつか?

 次の瞬間、胸の奥がざらつくような、何かが──流れ込んできた。

 熱い空気。
 焼け焦げる木と肉の臭い。
 赤黒く染まった泥と、泣き叫ぶ声。
 「なんで、こんなことに……」
 「わたしらが何をしたっていうの?」
 「戦争に巻き込まないで……」

 悲痛な言葉の後、場面が変わった。
 小さな小屋の中……
 その部屋の隅で、震える小さな女の子がいた。服が泥だらけの少女。誰かに似ている……これは、幼いころのステラか?

 小屋の外で悲鳴が聞こえ、視線を移すと、兵士のような恰好をした男達が、死体を踏み歩き我が物顔で家々を物色し、火をつけている。
 そして、ステラが居る小屋にも入ってきた。
 年配の女性が叫ぶ。「この子だけは……!」
 次の瞬間、女性は剣で斬られ、少女の前に倒れた。
 「お母さん……」そのステラの声は、俺の背中から聞こえてくる。

 「へへへ、上モノのガキじゃねぇか」「高く売れるぞ」「髪も綺麗だ」
 粗野な声が飛び交い、一人の男が幼いステラの髪を引っ張り上げた。
 【やめろっ、何をするんだ!】ダメだ。俺の声は届かない、これは幻覚なのか?
 「起きろステラっ、これは幻覚だ。起きろっ」
 俺は背中に感じるステラの体温に向かって叫ぶ。
 だが、幻覚は消えない。
 
 「さぁ嬢ちゃん、これから楽しい人生の始まりだ」
 少女の髪を掴んだ男がそう言い終えると──その手首が、音もなく宙を舞った。

 ──誰かが、現れた。

 「ゲス野郎どもめ、戦争に負けた腹いせにしては趣味が悪すぎる」
 白衣をまとい、戦場に似つかわしくないほど静かな瞳をした女性。
 その瞳には、感情がなかった。怒りも、憐れみも。
 「逃亡兵だ。全員逃がすなよ、殺しても構わん」
 女性は、そう叫ぶと、今度は手首を切られて慌てている男の首を刎ねた。

 そして、そのまま震えるステラへと視線を移した瞬間、微かに眉が動いた。
 「ふむ……魔力濃度、異常数値。興味深い」
 この女性もどこかでみたことが……。

 ……ライオネット先生?
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