ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました

たぬきち

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「未来の輝かしい冒険者よ!ようこそ!私はターニャ!このギルドの受付嬢よ!私がお二人の担当になるわ。これからなにか困ったことがあったら私を頼って頂戴!」

ギルドの隅っこにあるテーブルに俺とステラ、そしてターニャというこの受付嬢の3人はいた。

「おい…ターニャのやつがなんかやってるぜ」

「可哀そうに…あんな子供がカモにされるなんてな…」

ギルドの中にいる冒険者たちの何人かはターニャをよく思っていないのか、ヒソヒソと小声で何か話しニタニタと嫌な笑みを浮かべている。他に数名いる受付嬢もターニャの行動に口をはさむわけでもなく、自分の業務を行っているように見える。
それにしても、『カモ』とは?

「よ、よろしくお願いします!ターニャさん!」

ステラは深々と頭を下げる。純粋…という点では前世のステラと同じらしい。人を疑ることをしないのは前世のイメージと同じだ。ただ、この人は信用できるのだろうか?俺が慎重に見極めてやらねば!

「うんうん!素直でよろしい!けどね、冒険者っていうのはね、騙したり騙されたり、汚い人間も多いのよ。モンスターの群れの中に囮としてわざと置き去りにしたり、装備品やアイテムを盗んだりする冒険者も残念なことにいるわ…誰でも信じるんじゃなくて、ちゃんと相手を見て決めるのよ!」

「そ、そんなひどい事する人がいるんですか!?わ、私知りませんでした…。もっとみんなで協力して戦うのが冒険者だと思ってました!」

「な、なんていい子なのかしら!そうよね。みんなそうやって助け合っていけたら怪我することも少ないし、魔宝殿の攻略なんかも進むのに、みんな手柄や宝を独占したくて協力しないから…あなたはそこにいるボーイフレンドと協力してお姉さんに魔宝殿の攻略!って夢を見せてね!そうしたらお姉さんも借金がなくなるから!」

「そ、そんな俺がステラのボーイフレンドだなんて」

「ぼ、ボーイフレンドって、アレン君はそんなんじゃありませんっ!」

ちょっとムキになって否定するステラの声に心をえぐられる俺…。そんな全力で否定しなくてもいいのに…。今日もデートだって、さっき手も繋いでたのに…。

「そんな生やしいもんじゃねぇんだよ。この冒険者って仕事は」

「甘っちょろいガキだな」

「どうせいいとこの子供でしょ。あんたたちの生活の為にあたしらが犠牲になってやってるってのにさ。ふざけた世の中だよ」

ステラとターニャの会話を聞いて外野がざわつき始める。確かに、世の中汚い仕事は多い。それは俺も十分知っている。騙されることも、騙して奪う事もある。生きるために仕方がないとはいえ、それは許される行為ではない。ホームレスになって孤独に死んだ俺はお前たち冒険者なんかよりもずっと底辺で生きてきたんだ。気持ちはわかる。ただ、それがステラに向けられることが気に入らなかった。

「お嬢ちゃんとそっちの彼氏、よかったらこのまま冒険者登録してみない?規約とかには年齢条件は10歳以上としか書いてないからさ。将来冒険者になるもよし、記念に登録だけするもよし。どう?」

「そ、そんな悪いですよ。余計な業務が増えるだけですし」

「いいのよ子供がそんなこと気にしないでも!せっかく今日は2人でお出かけしたんでしょ?記念になるわよ?」

「き、記念って言われても…」

俺は必死にやんわりと断るような流れを作るも、このターニャという受付嬢はなにがなんでも離してくれなそうだ。冒険者登録をしたことがミアやフェリシアにバレたらどうなるのか…。あまり想像はしたくなかった。断らないかとステラに声をかけようとしたが、彼女は目を大きく開けてターニャの方を黙って見つめていた。

「…お願いします」

ステラの顔を見ると断るという選択肢はなくなった。俺の未来は地獄ルートに固定されたらしい。帰るのが今から嫌になる。最悪フェリシアからも呼び出しが来る…。

「そうこなくっちゃ!それじゃ、名前とジョブをこの紙に書いてね。あと年齢も!担当は私、ターニャにしておくからこの先困ったことがあったら何でも言ってね!」

俺とステラはターニャから紙を受け取ると、名前、年齢を書き進めた。

「あ、あの。ジョブがわからなくて…」

「私は魔術師でいいのかな…。剣とか無理だし」

「あ、あぁ!そっか。職業適性とかまだ知らないよね。そうだよね。ちょっと待っててね」

ターニャは笑いながら立ち上がると受付の方へ走っていった。ステラは足をパタパタと揺らしながらすごく楽しそうにしていた。記入していた紙をのぞき込むと、ジョブのところには魔術師。と記入してあった。俺がのぞいていることに気が付くとステラは恥ずかしそうに紙を裏返した。

「だ、だめ!勝手に見ちゃダメだよ!」

「ご、ごめん」

顔を赤くして怒りながら照れるステラに驚いて反射的に謝ってしまった。すごく幸せな空間だったのに、一人の人間が壊しに来た。

「おい、ここはガキの遊び場じゃないんだ。あんな中毒ヤローに捕まってお前らも残念だな」

「中毒ヤロー?ですか?」

魔術師のローブをまとった20代半ばの男が俺たちに声をかけてきた。弱者をあざ笑う、俺が前世でよく見てきた下衆なタイプの笑い方だ。ステラは驚いてしまったようで俺の後ろに隠れて様子を見ている。

「あぁ。あの女は嫌われ者でな。担当している冒険者が何人も大けがをしたり引退しなくちゃならねぇような目に遭ってばかりでな。それもこれもアイツがギャンブル中毒なせいだ」

「そんな、あの人が何をしたっていうんですか?」

でな、俺らの活躍はあいつ等受付の給料に反映されんだよ。俺ら冒険者が難易度の高い依頼をこなせばこなすほどあいつら受付は給料が増える。アイツからしたら俺らなんて働き蟻でしかないんだよ。まぁボロ雑巾のように使われてゴミみてぇに捨てられて終わりだな!」

耳障りな汚い声で笑い飛ばすと男はギルドの外へ出ていった。周囲の人間たちは俺たちが絡まれていても誰も助けようとしては来ないし、それどころかヤジを飛ばすやつもいる始末だ。

(あぁ。これが冒険者ってやつだったな。そうだ、こいつらは自分さえよければいいんだ)

俺は自分の心に黒い渦のようなものが生まれる感覚を覚えた。前世でもよくあった。仲間に裏切られて金を失ったり、職場のものを壊した罪を擦り付けられたり、仕事で失敗したからと酔っぱらった冒険者に殴られたこともあった。思い出すと前世では冒険者なんてロクなことがなかった。ステラの嬉しそうな顔が俺も嬉しくて、すっかり忘れていたらしい。

「あ、アレン君。…だいじょうぶ?」

「あぁ、もう大丈夫。ステラはいつものステラでいてくれたらそれでいいんだ。フェリシアほどではないけど、俺もステラのことを守るから」

「う、うん…ありがと」

よほど怖かったのか、男が去った後も下を向いたままのステラを見ると、ターニャが急いで戻ってきた。

「ご、ごめんなさい!遅くなっちゃって。…だいじょうぶ?なにか‥あった?」

「いえ、大丈夫です。特に何もないです。それよりも、、説明を受けた方がいいと言われたんですが、仕組みって何ですか?」

「あぁ!すごく簡単な事よ。冒険者が活躍すると私もお給料があがる!ってこと!」

「あ、あの…それじゃいまいちわからなくて…」

ターニャはなにも隠すような素振りがなく、むしろ堂々と言い放った。なにか後ろめたいことがあるならもう少し隠したりオドオドしたりしそうなものだけど…。

「簡単に言いすぎたか、ごめんごめん!…つまりは!冒険者が活躍すると、活躍度合いによって、私たち受付嬢にもボーナスが入るのよ。特に大口スポンサーの人、例えば領主や王都・大商人・貴族やなんかが出した依頼の場合はとくにね。
冒険者がいてこその冒険者ギルド!つまり冒険者はギルドの宝!だからこそ私たちはあなたたち冒険者のレベルや能力を適正に把握して、依頼を選ぶ手伝いをしないといけないの!」

すごくまともな事言ってる。特に怪しいところはないと思うけど…。

「その逆で、冒険者が死んだり、失踪とかになると大問題!受付は責任を取らないといけないから給料は大幅ダウンだし、あんまり続くと停職、解雇、なんてこともあり得るわ。
私たちは、冒険者が適度に怪我するくらいでまた次も頑張ろう!って感じならいいんだけど、大きな怪我や死亡なんてことがないように、自分が担当した冒険者のマネージャー的な事をするのが仕事ね。
もちろん、冒険者の報酬から私たちへ還元ではなくて、あくまでもギルドのお財布から還元だから、あなた達の報酬から手数料を取る、なんてことはしないからあんしんして頂戴」

「そ、そうなんですか…」

言っている事はすごくまともだ。別に、怪しいところもないし、なにがこの人を嫌っているのかがわからない。

「じ、実はさっき、ターニャさんがギャンブル中毒だって言ってきた人がいて…その…」

俺は正直に言うことにした。変に隠すと話がこじれるし、これ以上駆け引きは無駄だと思ったからだ。この人は多分嘘入っていないし、嘘を言うほど頭がいいというか、計算高い人ではない。

「あぁ。みんな言うのよね。でもそれはホントのことだから仕方ないかなぁ。ギルドのお給料じゃちょっと生活キツクてさ。子供に言っても難しいかもしんないけど、汚い事とかしたくないし、ちょ~っとギャンブルにハマってるのは本当かなぁ」

多分、この人が言っている事は本当だと思う。恥ずかしそうに笑うターニャの笑顔は無邪気というか、素直というか…。怖がっていたステラもいつの間にか顔をあげてターニャのことを見ていた。

「すいません、言いにくい話を聞いて」

「い、いいのよ!私が最初に言うべきだったんだから。なんかごめんね。私のせいでなにか嫌な気持ちにさせてたら…他に質問はない?大丈夫そう?」

「はい、大丈夫です。続きをお願いします」

「よしきた!それじゃあ次はいよいよ2人の職業適性を調べるわ!…じゃじゃーん!この水晶!ここに手をのせてみて!」

ターニャは満足そうに笑うと小さな箱をテーブルの上に出し、中から手のひらサイズの水晶玉を取り出した。

「はいっ!お願いします!」

ステラは待ちきれず自分の手を水晶の上にポンっと乗せた。

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