ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました

たぬきち

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「うわぁ~…」

 ステラは目を大きく見開いて冒険者ギルドの中を見渡していた。彼女の昔からのクセで、興味があるものに対して目を丸くして観察することがある。好奇心旺盛な所は昔から変わらない。だからこそフェリシアやルシアンさんたちが集中してしまうと周りが見えなくなるステラのことを危なっかしくて過保護気味になってしまうのだろうけど…。

 田舎町の冒険者ギルドだけど、中はそこそこににぎわっていた。依頼書が貼ってある壁の前には数人の冒険者が立っていて、ギルド内にある飲食店の小さなカウンター席では飲み食いしている人、正面の奥には受付カウンターと書いてあるところに数人の女の人…女の…ひと…。向かって一番左の人。あの人には絶対にかかわりたくない。可能な限り建物の右側から回るようにしよう…。
 若い女の人…。というところまではミアと一緒だ。長い赤い髪を三つ編みにして横に垂らし、背は低め、猫のような釣り目と、なにやらブツブツと動いている口元…。なにをやっているんだ?ここからだとわからないけど、正直あまり関わらない方がよさそうだ。

「ステラ、まずはゆっくりと見て回ろうよ」

「そうだね!なんかこういうところってワクワクしちゃう!」

 ステラを自然に右の壁の方へ誘導し、ゆっくりとギルドの中を見て歩く。
 前世ではここに来たことがないから、新鮮だ。中にいる冒険者の人も思っていたよりも乱暴そうな人はいなくて穏やかそうな人が多い。田舎町特有の雰囲気なのかもしれない。
 魔術師、剣士のような定番職はもちろん、探魔師や治癒術師のような人たちまでいるのは意外だった。
 俺が冒険者の人たちを観察していると、ステラが壁に貼られている何かの記事を見て目を丸くしていた。なにか興味があるものがあったらしい。

「どうしたの?なにか気になるものがあったの?」

 ステラが見ている物に視線を向けると、俺も一瞬呼吸をすることを忘れて見入ってしまった。

『冒険者の夢!魔宝殿の頂きをめざせ!!』

 壁に貼られたポスターは俺が今回の人生で目指している魔宝殿のポスターだった。前世にはなかったモンスターが徘徊する迷宮。中にはお宝がある。そういう夢や期待を込めていつの間にか呼ばれるようになったのが魔宝殿だ。
 前世よりも冒険者としての職業がメジャーになっているのは、この魔宝殿の出現が影響しているに違いない。

「アレン君は、魔宝殿ってどういうところだと思う?」

「そりゃあ、きっとものすごく強いモンスターがいっぱいいて、見たこともないような宝がある場所…なんじゃないかな。中に何があるのかなんて誰もわからないんだろうけど、俺はいつかこの魔宝殿に行って冒険したいんだ!」

 ステラが驚いたような顔をして俺のことを見ていた。不意打ちを受けたような顔でしばらく俺の方を見ていると今度は急に笑いだした。

「あははは!アレン君もそんな子供っぽいこと言ったりするんだ?いつもちょっと私たちより大人っぽいところがあるから、まさかそんな子供っぽい言い方をしてくると思わなかったからびっくりしちゃった!」

「お、俺だって…ステラと同い年なんだ…別にいいじゃないか…」

 ステラに子ども扱いされたようで、急に恥ずかしさが込み上げてきて耳まで熱くなる感覚があった。

「私も、もっと魔法覚えたら魔宝殿の攻略に挑めないかな…アレン君と一緒に、いつか行けないかな」

 真剣な顔をしてポスターを見るステラの横顔を見ながら、俺は言葉を失った。
 前世では伯爵だか何だかの嫁になる、ということしか覚えていないステラの将来だけど、ここで俺が一緒に冒険に行こう!と誘ったら彼女の運命はどう変わるのだろうか?伯爵と結婚しないで、違う相手との結婚になるのか?その相手は…俺の可能性も出てくるのか!?

 ゴクリっ…

 ステラの横顔を見ながら喉が鳴った。言葉をかけようかと思ったとき、ソレは唐突に背後から忍び寄ってきていた。

「なぁ~に~?ここは子供の遊び場じゃないのよ?こわ~い大人がたくさんいるんだから!」

 急に声をかけられて驚いた俺とステラが振り向くと、そこにはさっきなるべく関わらないようにしようと決めたばかりの赤い髪の女の人が立っていた。

「ご、ごめんなさい!どうしても中が気になっちゃって…将来冒険者になってみたいなぁって思ってるんですけど、今日は下見というか、どんなところか見学したくて」

「え”ぇ””!?」

 驚いて叫んでしまった。
 将来冒険者になりたい!?そんな夢聞いたことないし、初めて聞くんだが!!いや、そもそもステラは将来ふつうのお嫁さんになるはずなのに、冒険者になりたい!?しかも魔宝殿という訳の分からないダンジョンに挑みたいとかいってるし、魔法なんて使えなかったはずなのに今じゃ魔術師みたいなことしているし、ミアが言うには物凄く強いらしいし…俺の知っている未来がものすごく変わり始めている…。

「あら、お嬢ちゃんすごいわねぇ。冒険者になりたい!だなんて見る目があるわぁ。魔宝殿…気になっちゃう?」

「はい!気になります!」

「ん~!いい子!なんていい子なのかしら!お姉さんあなたみたいないい子はとっても好きよ!せっかく来たんだから、冒険者登録のこととか、もっと知りたくない?」

「知りたい、…知りたいです!教えてください!」

 大きな丸い目を輝かせてステラはこのなれなれしい赤い髪の受付嬢と意気投合している様子だった。
 まぁ、実際に魔宝殿のことは俺も知りたいし、何か情報があるのなら知りたい。それに冒険者ギルドなら今自警団でも問題の切り裂き魔の情報があるかもしれないし、ここは黙ってステラについていった方が最善だろう…。
 しかし…。ステラって、前世の世界ではもう少しおとなしくて、礼儀正しくて、物静かなお嬢様タイプの女の子だとばかり思っていたけど…実はけっこうやんちゃなタイプなのかな。
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