ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました

たぬきち

文字の大きさ
22 / 26

22

しおりを挟む
「う、うそでしょ!?」

 透明だった水晶が赤、黄色、緑、青の4色に染まった。ステラは何もわからず、水晶を見ながら「きれい」と見とれていた。4色の色が混ざり合うのは確かにきれいだった。これは何の意味があるのだろう?ターニャは目を見開いて口元が小刻みに震えていた。その光を見ていた他の受付嬢や冒険者たちも急に静かになった。

四大元素エレメンタルマスター…」

「・・・?」

 ターニャが言った言葉の意味が分からず、ステラは首をかしげていた。エレメンタルマスター…。前世でも聞いたこともないジョブだ。魔術師とは違うのか?

「ちょ、ちょっと。あなた。…魔法はなにが使えるの?」

「魔法ですか?何でもいいなら、風魔法と火魔法、水も、土も使えますけど」

「ほ、本気で言ってるの!?」

 ターニャは勢いよく立ち上がるとはずみで水晶が床に落ちてコロコロと転がっていく。
 ステラは驚いて一瞬ビクッと体を揺らしていた。

「ターニャさん、落ち着いてください。ステラは嘘をいうような子ではないです」

「ステラ?…あなたの名前って…もしかして!!」

 ターニャはステラの書いた申込書を見て、小刻みに震えていた。

「ステラ…ブランシュです…」

「きたーーー!!!!あなた、魔導研究の名門、ブランシュ家のステラちゃん!?」

「??…は、はい。多分…」

「よっしゃぁぁぁ!!エレメンタルマスターなんてSランクジョブじゃん!!マジか!今日の賭場は勝てる気しかしねぇ!!さいっこーーについてる!!まさかこんな女の子がブランシュ家の令嬢だったなんて!!」

(と、賭場って…賭けに行くんだ)

 ギャンブル中毒、というさっきの男の言葉を思い出して、確かに重症かもしれない。と思ったけど、今喜びにあふれてテーブルの周りを飛び回っているターニャになにか言える雰囲気ではなかったから黙っていた。その様子に他の受付嬢も自分の仕事に手が付かなくなり、ただ開いた口がふさがらず俺たちを見ていた。周りの冒険者たちも水晶の色が4色に光ったのを見てさっきまでのざわめきが嘘のように静かになった。喜び回るターニャにヤジを飛ばすものも、俺たちになにかちょっかいを出してくる冒険者もいなかった。

「あんなガキがエレメンタルマスターだって!?何かの間違いだろ?」

「水晶が光ってたじゃない。しかもあのブランシュ家の子供って言うからあながち嘘じゃないんじゃない?」

「貴族の子供って言うのは才能もチートなのかよ!気に入らねぇなぁ」

「それじゃあ、もう1人のガキもSランクジョブだって言うのかよ!」

 う”…。最後のヤツ。誰だ言ったの。こんなにお祭り騒ぎな所言うのも嫌だけど、僕は何も取り柄がない。ただ毎日のようにミアに稽古はつけてもらっているけど、それはちょっと他の人よりも強いミアに稽古してもらっているだけでステラのように特別な何かを持っているわけではない。
 僕らに不満のある冒険者はゾロゾロとギルドから出ていくと、数人の冒険者のみが静かに僕らのことを見ていた。

「え、エレメンタルマスターってそんなにすごいんですか?」

「すごいなんてもんじゃないわ!魔術師って言うのは才能で、生まれた時に素質があるかどうかで決まるの!ある程度熟練度が高くなれば一部の人は2種類の魔法を扱うことはできるけど、基本となる火、水、風、土魔法のどれか1つしか使えないのが普通なの!2種類の属性魔法が使える段階で天才と言われるわ。そのさらに上が4元素を使う事ができるエレメンタルマスターよ!!大国に1人いるかいないか。ってレベルなんだから!!」

 ターニャがものすごい勢いでしゃべり、ただでさえ大きな声なのに、興奮気味にさらに大きな声で言った。
 そんなすごいジョブなのか…。どうりで前世の世界では聞いたこともないわけだ。そう言えばミアが昨日言ってたな。ステラ1人で一個小隊を倒せるって…。あれ、冗談じゃなくて本当だったんだ。

「いや、すごい。…これはすごかった。すいません。興奮しすぎてしまいました。次は、え~と、…アレン君。アレン…ロザーク…さま!!?」

 青ざめていくターニャは悲鳴にも似た声を上げて俺を見た。冒険者ギルドの中は一瞬ざわめいたものの、すぐに静かになった。受付嬢たちも完全に動きを止めていた。

「あ、あの。ターニャ?」

「おおおおお許しください!領主様のご子息とは知らなかったんです!何卒!何とぞ寛大なお心でご容赦ください!アレン様に対して申し訳ございません!申し訳ございません!」

 テーブルに頭をこすりつけて謝る彼女に驚いて、俺とステラは言葉を失った。

「マジかよ…ブランシュ家と領主の息子だぜ…あんなのに絡んだらこの町にいらんなくなっちまう」

「あの受付終わったな」

 周囲の言葉どおり、ターニャの怖がり方は尋常じゃなかった。ステラが心配そうに俺を見ているが、俺も困っているんだ。何か気の利いた言葉が思いつかない。

「ターニャさん、落ち着いて。僕は別に偉ぶりたいわけじゃないんです。まだ何も知らない子供だし、ここにはステラが来たいと言うから今日来たんです。領主の息子だから偉いとは思っていません。誰かを守る力がまだ僕にはないし、これから本当の意味で尊敬される人になりたいんです。だから、今は普通の冒険者として対等に接してもらえないでしょうか?」

「対等にって…そ、そんなことして私、処刑されたり追放されたり、暗殺されたりしませんか?」

 涙を浮かべて、赤くなったおでこと顔をこっちに見せてくる。まだ疑っている素ぶりはあるが、それでもさっきの発狂寸前という事はなさそうだ。

「そんなことしませんよ。父上にも、従者にもそんな命令しません。もちろん僕自身もしません。そんなことを言うとステラがまた怖がるし、楽しいお出かけが台無しになっちゃうので本当に気にしないでください。ねぇ?ステラもそう思うでしょ?」

「うん!アレン君は優しいし、私の一番のお友達だから大丈夫だよ!今日は私たちの相手をしてくれて本当に楽しかったし、ターニャさんとお話しできてよかったよ!」

「ステラさまぁ」

「次は僕の番ですよね?ステラの後にやるのが本当に嫌なんですけど…。自分の職業適性には興味もあるので、お願いできませんか?」

 ボロボロと涙を流したターニャは袖で涙を拭くと、床に落ちた水晶を探し出した。

「そ、そうですね!お二人がそう言ってくださるのであれば、私もステラちゃんとアレン君の冒険者活動を全力でサポートさせていただきます!…っと、それじゃあ、次はアレン君ですね!ステラちゃんと同じようにお願いできますか?」

 テーブルの脚部分に転がっていた水晶を拾い上げると、ターニャは笑顔で俺の前に水晶を差し出してきた。俺はゆっくりと手を伸ばし、水晶の上に手をかざしたときだった。一つの疑問が浮かび上がった。

「これ、必ず光るんですか?」

「え?ええ。…多分。私が今まで使ってきた限りでは、必ず光っていましたけど…何でですか?」

 俺は前職で特技なんかなかったし、日雇いやバイトみたいなその日暮らしが多かったから、職業適性で無職とか、不明とかになったらどうなるんだろう。

「もし、…もし光らなかったらどうなるんですか?」

「そんなことないですって!領主様のご子息なんだから、自信持ってくださいよ!」

『信じてます!』みたいな笑顔でこっちを見られても困るんだが…。ステラも目を丸くして水晶を見ているが、その気になってます!みたいな空気はやめてほしい。俺は答えを知っているんだ。何も特技がなかった未来を…。
 はあ。
 俺はため息をつくと同時に、諦めて水晶の上に手を乗せた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

落ちこぼれ職人、万能スキルでギルド最強になります!

たまごころ
ファンタジー
ギルド最弱の鍛冶師レオンは、仲間に「役立たず」と笑われて追放された。 途方に暮れる彼の前に現れたのは、伝説の鍛冶書と、しゃべる鉄塊(?)。 鍛冶・錬金・料理・魔道具――あらゆるクラフトスキルを吸収する《創精鍛造》を極め、万能職人へと覚醒! 素材採取から戦闘まで、すべて自作で挑む“ものづくり異世界成り上がり譚”が今、始まる。 裏切った元仲間? 今さら後悔しても遅いぞ!

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

yukataka
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。 流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。 しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。 同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。 ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。 新たな生活は異世界を満喫したい。

処理中です...