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「え~っと…黒。ですね」
「うん、真っ黒です」
黒に染まる水晶玉を2人が覗き込みながら言った。
ステラのように4色に光、とまでは思っていなかったが、せめて何か色が付いたり、悪くても透明のまま、と思ったのだが、まさか黒に染まってしまうとは思わなかった。
「ターニャさん、その…黒って…なんですか?」
「黒はちょっとレアな感じなんですが、テイマーになります!」
「テイマー?」
悪くても商人とかで収まると思っていたから聞き慣れない名前に驚いた。もし俺の素質がテイマーという事であれば、ミアに稽古をつけてもらっていてもいくらやっても勝てないわけだ。
「はい!テイマーはそもそも魔獣やモンスターなんかを手なずけるためのスキル、という事で昔からかなりのレアスキルとして重宝されていたんですけどね。…最近は農作業とかの単純労働とかを奴隷の代わりに行うような、そういうイメージが強いですね」
「そ、そうですか…。農作業か…」
知り合いにテイマーがいるわけでもないし、今まで自分が経験したり、見たことがあるわけでもないこのスキルは使いようがなさそうに思えて、思いっきり肩を落としてしまった。
実際にギルドの受付嬢も、奴隷の代わり、農作業のような単純作業の労働向け、という事では、あまり勝手がよくなさそうだ。
まぁ、生まれ変わったからと言って特別な能力が手に入るわけではない、という事だな。
「そ、そうだアレン君、上の図書室に来ませんか?」
「上?図書室があるんですか?」
「はいっ!冒険者登録をされた方しか入れないのですが、ギルドに貯蔵されている本を自由に閲覧することができます。もしかしたらテイマーの本もあるかもしれませんよ?アレン君とステラちゃんは将来有望な冒険者なので、私の生活費のためにも一杯頑張ってもらわないと!テイマーは私もこのあたりのギルドではアレン君以外見たことないですから、誰かに聞くこともできないでしょうからおすすめですよ!」
「アレン君。私も図書室に行ってみたい。おもしろそうな魔導書があるかもしれない」
ステラにも促され、俺はターニャの提案を受けることにした。せっかく自分の適性がわかったのに使い方がわからないんじゃしょうがない。
「ありがとうございます、ターニャさんのいう通り、図書室に行ってみたいです」
「はい!お任せください!階段を上ってすぐなんです!どうぞこちらへ!」
俺たちは案内されるがまま、近くにあった大きな階段を上り始めた。下の喧騒が嘘のように、2階は静かだった。
階段を登りきったところのカウンターに職員の人がいて、ターニャが何か話すとすぐに中へ通してくれた。
「おぉ!!すごいねアレン君!なんか、すごい本がありそうな気がする!」
目を大きく見開きながら見ているステラはまた探求心魂に火が付いたのだろう。普段は見ることができないような魔導書がないか気になって仕方がない様子だ。
「ここに入るのに冒険者ランクは関係ありません、誰でも冒険者の身分証となるネックレスを入口の職員に見せればいつでも入れますよ!今日は私がいるので一緒に入れちゃいましたが、明日以降に二人の身分証を用意しておきますのでそしたら二人だけでも出入り自由ですからね!」
「うん、ありがとうターニャさん。でも、まだそのネックレスは預かっていてくれないかな…父上たちに説明して許可を取ってから持って帰りたいんだ。…多分、ステラも同じだと思う」
うんうん!とステラは横でうなずいていた。まさか冒険者登録をする、なんて思ってなかったし、そんなお土産を持って帰ってしまうとミアや父上たちに見つかるとよくない。
「わかりました!そう言う事なら私が預かっておきますから、欲しくなったら言ってくださいね?このフロアにある本はどれも読み放題ですが持ち出しはできないのでそこだけ注意してくださいね」
「アレン君、私向こうから見てきたいんだけど、いい?」
ステラが俺の服の裾を引っ張りながら奥の方を指さした。
「ターニャさん、テイマーの本って、どのあたりになりますか?」
「え~と…、確か職業適性別にあったのでそのあたりにあったと思うのですが…」
ターニャが指さしたのは入口入ってすぐ右側の本棚だった。ステラは左の奥の方を指さして、ぐるっと一回り見てきたい様子だった。俺たちとは逆方向だけど、同じ2階にいるんだ。迷子になることもないだろうし別行動でも問題ないだろう。
「ターニャさん、ステラは向こうから本を見たいって言ってるんだけど、問題ないかな」
「えぇ。ここのフロアは基本的にこの階段以外で入り口もないですし、なにより下のロビーと違って知的好奇心をお持ちの方や慎重派な方が多いので、ステラちゃんやアレン君に突っかかってくるような輩もいないでしょう。私もアレン君と本探ししていますので、何かあったらすぐに戻ってきてくださいね!」
「うん、ありがとうターニャさん」
軽くお辞儀をすると、ステラは満面の笑みで歩いていった。
「いい子ですよねぇ。ステラちゃん。素直だし可愛いし、エレメンタルマスターだなんてSランクジョブだし文句なしですよねぇ」
「うわぁぁ!!きゅ、急に何ですか!?驚かさないでください!」
「ふふふ、好きなんでしょ?ステラちゃんのこと」
ステラの姿が見えなくなると、急に耳元でねっとりとした声が聞こえた。慌てて振り向くといたずらっぽく笑っているターニャがいた。
「す、好きっていうか憧れって言うか…僕みたいな男じゃステラと釣り合いませんよ」
前世でホームレスの落ちこぼれだった自分の姿と伯爵家に嫁入りしたステラの姿が頭に浮かんだ。不意な出来事で、心がチクっとしたのもあり、少しきつい言い方をしてしまった。
「まぁまぁ、むきになっちゃって可愛いじゃないですか。ブランシュ家と領主様が釣り合わないなら他の誰がブランシュ家と釣り合うって言うんですか?アレン君のテイマーだって、レアなジョブなんですから、彼女がエレメンタルマスターだからってあまり落ち込んだりしないで自信もってくださいね!」
「そ、そうじゃなくて!!」
喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。ターニャは俺がステラのエレメンタルマスターというジョブに対し嫉妬してひねくれているように思ったらしい。気にしていない、というと嘘だけど、全くの無能ではないんだから前世より進歩している。それだけでそっちは一応自分の中では満足しているんだ。
まさかターニャに、ステラは伯爵とか貴族と結婚するんだ!なんて言っても仕方ないし、どうしたらいいのか。
「・・・?」
え?って顔で首をかしげているターニャに弁明する言葉が見当たらない。ムキになるなんて、俺らしくないな…。
「いや、ステラは器量もいいし、僕みたいな人間よりも伯爵や階級が高い身分の人と結婚する方が幸せですよ。僕は…」
『特技なんて何もないし、誰も幸せにできない。』と続けそうになったが言葉を飲み込んだ。
僕はターニャの顔を直視できなくなり、下を向いたまま黙っていた。
「っえい!!」
急にターニャが僕の頭を無理やり上に向けると、頬っぺたにキスをしてきた。
「私は庶民だし、貴族のことも、身分が高い人のことも、何にも知らないし、これから先もきっと知らないんだと思う。きっとここで死ぬまで働いて、ギャンブルやって、面白おかしく生きていくんだと思う。大人のわたしがこんなだよ!?まだ子供のアレン君がそんなんでどーするの!大人になったら、もっと自由がなくなるし、好きなことを好きって言う事もできなくなっちゃうんだよ!?私の初めてのチューをアレン君にしたんだから、アレン君は冒険者としてステラちゃんとこれからも一生懸命冒険して、活躍して、私のお給料をあげて頂戴!わかった?!」
口早にまくしたてられて、最後のほうになんかよくわからない理屈をねじ込まれた気がしたけど、前世から数えて生まれて約40年、女の人からキスされたことがない俺には頬っぺたに残った感触が生々しく記憶された。
「アレン君お返事は?」
「う、うん…はい」
「よろしい!それじゃあテイマーの本を探しにいこっか」
衝撃で何を言われたのかはっきり覚えていない部分も多いけど、理屈っぽく考えるな、ってことなのかな。
ミア以外の年上の女の人とこういう話をすることがほとんどなくて驚いた。大人の社交っていうのは結構大胆なんだな…。まだ胸がドキドキしているけど、今は落ち着いてとりあえず俺も本を探すことにしよう…。
「うん、真っ黒です」
黒に染まる水晶玉を2人が覗き込みながら言った。
ステラのように4色に光、とまでは思っていなかったが、せめて何か色が付いたり、悪くても透明のまま、と思ったのだが、まさか黒に染まってしまうとは思わなかった。
「ターニャさん、その…黒って…なんですか?」
「黒はちょっとレアな感じなんですが、テイマーになります!」
「テイマー?」
悪くても商人とかで収まると思っていたから聞き慣れない名前に驚いた。もし俺の素質がテイマーという事であれば、ミアに稽古をつけてもらっていてもいくらやっても勝てないわけだ。
「はい!テイマーはそもそも魔獣やモンスターなんかを手なずけるためのスキル、という事で昔からかなりのレアスキルとして重宝されていたんですけどね。…最近は農作業とかの単純労働とかを奴隷の代わりに行うような、そういうイメージが強いですね」
「そ、そうですか…。農作業か…」
知り合いにテイマーがいるわけでもないし、今まで自分が経験したり、見たことがあるわけでもないこのスキルは使いようがなさそうに思えて、思いっきり肩を落としてしまった。
実際にギルドの受付嬢も、奴隷の代わり、農作業のような単純作業の労働向け、という事では、あまり勝手がよくなさそうだ。
まぁ、生まれ変わったからと言って特別な能力が手に入るわけではない、という事だな。
「そ、そうだアレン君、上の図書室に来ませんか?」
「上?図書室があるんですか?」
「はいっ!冒険者登録をされた方しか入れないのですが、ギルドに貯蔵されている本を自由に閲覧することができます。もしかしたらテイマーの本もあるかもしれませんよ?アレン君とステラちゃんは将来有望な冒険者なので、私の生活費のためにも一杯頑張ってもらわないと!テイマーは私もこのあたりのギルドではアレン君以外見たことないですから、誰かに聞くこともできないでしょうからおすすめですよ!」
「アレン君。私も図書室に行ってみたい。おもしろそうな魔導書があるかもしれない」
ステラにも促され、俺はターニャの提案を受けることにした。せっかく自分の適性がわかったのに使い方がわからないんじゃしょうがない。
「ありがとうございます、ターニャさんのいう通り、図書室に行ってみたいです」
「はい!お任せください!階段を上ってすぐなんです!どうぞこちらへ!」
俺たちは案内されるがまま、近くにあった大きな階段を上り始めた。下の喧騒が嘘のように、2階は静かだった。
階段を登りきったところのカウンターに職員の人がいて、ターニャが何か話すとすぐに中へ通してくれた。
「おぉ!!すごいねアレン君!なんか、すごい本がありそうな気がする!」
目を大きく見開きながら見ているステラはまた探求心魂に火が付いたのだろう。普段は見ることができないような魔導書がないか気になって仕方がない様子だ。
「ここに入るのに冒険者ランクは関係ありません、誰でも冒険者の身分証となるネックレスを入口の職員に見せればいつでも入れますよ!今日は私がいるので一緒に入れちゃいましたが、明日以降に二人の身分証を用意しておきますのでそしたら二人だけでも出入り自由ですからね!」
「うん、ありがとうターニャさん。でも、まだそのネックレスは預かっていてくれないかな…父上たちに説明して許可を取ってから持って帰りたいんだ。…多分、ステラも同じだと思う」
うんうん!とステラは横でうなずいていた。まさか冒険者登録をする、なんて思ってなかったし、そんなお土産を持って帰ってしまうとミアや父上たちに見つかるとよくない。
「わかりました!そう言う事なら私が預かっておきますから、欲しくなったら言ってくださいね?このフロアにある本はどれも読み放題ですが持ち出しはできないのでそこだけ注意してくださいね」
「アレン君、私向こうから見てきたいんだけど、いい?」
ステラが俺の服の裾を引っ張りながら奥の方を指さした。
「ターニャさん、テイマーの本って、どのあたりになりますか?」
「え~と…、確か職業適性別にあったのでそのあたりにあったと思うのですが…」
ターニャが指さしたのは入口入ってすぐ右側の本棚だった。ステラは左の奥の方を指さして、ぐるっと一回り見てきたい様子だった。俺たちとは逆方向だけど、同じ2階にいるんだ。迷子になることもないだろうし別行動でも問題ないだろう。
「ターニャさん、ステラは向こうから本を見たいって言ってるんだけど、問題ないかな」
「えぇ。ここのフロアは基本的にこの階段以外で入り口もないですし、なにより下のロビーと違って知的好奇心をお持ちの方や慎重派な方が多いので、ステラちゃんやアレン君に突っかかってくるような輩もいないでしょう。私もアレン君と本探ししていますので、何かあったらすぐに戻ってきてくださいね!」
「うん、ありがとうターニャさん」
軽くお辞儀をすると、ステラは満面の笑みで歩いていった。
「いい子ですよねぇ。ステラちゃん。素直だし可愛いし、エレメンタルマスターだなんてSランクジョブだし文句なしですよねぇ」
「うわぁぁ!!きゅ、急に何ですか!?驚かさないでください!」
「ふふふ、好きなんでしょ?ステラちゃんのこと」
ステラの姿が見えなくなると、急に耳元でねっとりとした声が聞こえた。慌てて振り向くといたずらっぽく笑っているターニャがいた。
「す、好きっていうか憧れって言うか…僕みたいな男じゃステラと釣り合いませんよ」
前世でホームレスの落ちこぼれだった自分の姿と伯爵家に嫁入りしたステラの姿が頭に浮かんだ。不意な出来事で、心がチクっとしたのもあり、少しきつい言い方をしてしまった。
「まぁまぁ、むきになっちゃって可愛いじゃないですか。ブランシュ家と領主様が釣り合わないなら他の誰がブランシュ家と釣り合うって言うんですか?アレン君のテイマーだって、レアなジョブなんですから、彼女がエレメンタルマスターだからってあまり落ち込んだりしないで自信もってくださいね!」
「そ、そうじゃなくて!!」
喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。ターニャは俺がステラのエレメンタルマスターというジョブに対し嫉妬してひねくれているように思ったらしい。気にしていない、というと嘘だけど、全くの無能ではないんだから前世より進歩している。それだけでそっちは一応自分の中では満足しているんだ。
まさかターニャに、ステラは伯爵とか貴族と結婚するんだ!なんて言っても仕方ないし、どうしたらいいのか。
「・・・?」
え?って顔で首をかしげているターニャに弁明する言葉が見当たらない。ムキになるなんて、俺らしくないな…。
「いや、ステラは器量もいいし、僕みたいな人間よりも伯爵や階級が高い身分の人と結婚する方が幸せですよ。僕は…」
『特技なんて何もないし、誰も幸せにできない。』と続けそうになったが言葉を飲み込んだ。
僕はターニャの顔を直視できなくなり、下を向いたまま黙っていた。
「っえい!!」
急にターニャが僕の頭を無理やり上に向けると、頬っぺたにキスをしてきた。
「私は庶民だし、貴族のことも、身分が高い人のことも、何にも知らないし、これから先もきっと知らないんだと思う。きっとここで死ぬまで働いて、ギャンブルやって、面白おかしく生きていくんだと思う。大人のわたしがこんなだよ!?まだ子供のアレン君がそんなんでどーするの!大人になったら、もっと自由がなくなるし、好きなことを好きって言う事もできなくなっちゃうんだよ!?私の初めてのチューをアレン君にしたんだから、アレン君は冒険者としてステラちゃんとこれからも一生懸命冒険して、活躍して、私のお給料をあげて頂戴!わかった?!」
口早にまくしたてられて、最後のほうになんかよくわからない理屈をねじ込まれた気がしたけど、前世から数えて生まれて約40年、女の人からキスされたことがない俺には頬っぺたに残った感触が生々しく記憶された。
「アレン君お返事は?」
「う、うん…はい」
「よろしい!それじゃあテイマーの本を探しにいこっか」
衝撃で何を言われたのかはっきり覚えていない部分も多いけど、理屈っぽく考えるな、ってことなのかな。
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