17 / 22
本編
14 仲間と甘い宣言
しおりを挟む
お医者さまはそこまで時間を空くことなく到着され、額に滲む汗からは大急ぎで駆けつけてくれたことを察する。
すぐさま診察に取り掛かることになる。
「では、イザークさまから」
「いや私は問題ない。アイリスから診てくれ」
本来であれば立場が上の者から診察を施さなければならないが、何十年とアンスリウム家に縁あるお医者さまは迷いなく頷かれた。
「診察を受けてくださるのなら宜しいですよ」
「お待ちください。アダンがずっと間に入ってくれていたので心配です。まだ幼いですし先に彼を」
焦りを隠せず、そう言う私の頭にイザークさまは手を置き、首を横に振った。
「アイリス。アダンは幼いが、騎士団に入ったのだ。守らなければならない存在より自分を優先させることは、騎士のプライドを傷つける」
静かに話を聞いていたアダンも近づいて私に声をかけてきた。
「大丈夫だよ。僕強いから!それよりアイリスさまが心配だよ」
お姉ちゃんと呼んでいたアダンはいつの間にか、アイリスさまと呼ぶようになっていた。
そのことに寂しさを感じつつ、心底心配そうにこちらを見つめるアダンを早く安心させようと思った。
「では……宜しくお願いいたします」
私の怪我は逃げた時にぶつけた痣と、花瓶を投げつけた時にできた掌の軽い傷程度だった。
しかしイザークさまをはじめ、アダンもエマも悲しい顔をするのだ。
「みんな心配なさらないでください。怪我といってもこの程度よ」
「大切な人を誰かによって傷つけられたら、心配して犯人を許せないのは当然だ」
ガーゼで覆われた私の怪我をそっと触れて呟かれた。
「アイリスさまは怪我は軽いですが、心身に負担がかかったでしょうからゆっくり休んでくださいな」
お医者さまの優しい顔と声は、亡くなった祖父を彷彿とさせる。
次にアダン、エマ、イザークさまの順で診察が行われた。
イザークさまは無傷という強さを見せ、アダンとエマは同じく軽い怪我を負っていた。
(つい先ほど心配しないでと言ったばかりだけれど、大切な人が傷ついたり酷い思いをしたらとても辛いわ。こんな辛い思いをもうみんなにさせたくない)
お医者さまが「お大事に」という言葉を残して帰られると、私たちはやっと一息つくことができた。
そこで気になっていたことを聞く。
「アダンは何故ここにいたの?」
「私が招待した。つまり偶然居合わせた。……アダンがいてくれて助かった、感謝する」
イザークさまがまだ幼い上に自らの部下であるアダンに頭を下げた。
「ううん……結局僕だけじゃ守れなかったもん……」
診ていただいている時も様子が違って見えたけれど、それは疲労や怪我によるものだと思っていた。
しかしそのようなことではなかったのだ。
(イザークさまのおっしゃる通り、彼はもう騎士なのね)
「アダンがいなかったら私とエマは危なかったわ。本当にありがとう」
「そうですよ。私にはお嬢さまを守る力があまりありませんでしたから、そこは私の改善しなければならないことです。ありがとうございます」
エマもそう続けると、やっとアダンに可愛らしい笑顔が戻る。
将来のアンスリウム家と自分の主人に願った。
「イザークさま、アダンは命をかけて私を守ろうとしてくれました。成長した時、専属騎士をお願いしたいのです」
その言葉に一瞬だけ時が止まった。
イザークさまはしばらく考えたあと口を開かれた。
「アダンはどう考える?」
「僕は……アイリスさまの専属騎士になりたい!アイリスさまは僕を助けてくれた方だし、騎士団長も僕を助けてくれた人だ」
力強いアダンを見ていると、向日葵のように真っ直ぐだと感じるのだ。
「ならば良いだろう。ただし、強くなくては専属騎士になる資格がない。より一層精進しろ」
「はい!」
騎士の礼をとる二人を見ると、師弟関係のようなものを感じた。
「嬉しいわ!そうだ、アダンが騎士団に合格したお祝いもきちんとしないとね!」
舞い上がる私に、イザークさまは呆れたような目をしながらも微笑む。
「それも良いがしばらくは安静にしてくれ。その後は結婚式の準備もある」
以前の私であれば、たいしたことない怪我なのだからすぐに準備に取りかかれると言ってしまっていただろう。
けれど、大切な人が傷つくとどれだけ悲しいかわかったのだ。
「そうですね。では、落ち着いたら」
これで一件落着かと思いきや、イザークさまが衝撃的な宣言をしたのだ。
「やはり夜は特に危険だ。目を離したがために君を危険に晒したくない。これから夜は必ず共にする」
────納得したばかりだけれど、これはさすがに宜しくないのでは……!?
すぐさま診察に取り掛かることになる。
「では、イザークさまから」
「いや私は問題ない。アイリスから診てくれ」
本来であれば立場が上の者から診察を施さなければならないが、何十年とアンスリウム家に縁あるお医者さまは迷いなく頷かれた。
「診察を受けてくださるのなら宜しいですよ」
「お待ちください。アダンがずっと間に入ってくれていたので心配です。まだ幼いですし先に彼を」
焦りを隠せず、そう言う私の頭にイザークさまは手を置き、首を横に振った。
「アイリス。アダンは幼いが、騎士団に入ったのだ。守らなければならない存在より自分を優先させることは、騎士のプライドを傷つける」
静かに話を聞いていたアダンも近づいて私に声をかけてきた。
「大丈夫だよ。僕強いから!それよりアイリスさまが心配だよ」
お姉ちゃんと呼んでいたアダンはいつの間にか、アイリスさまと呼ぶようになっていた。
そのことに寂しさを感じつつ、心底心配そうにこちらを見つめるアダンを早く安心させようと思った。
「では……宜しくお願いいたします」
私の怪我は逃げた時にぶつけた痣と、花瓶を投げつけた時にできた掌の軽い傷程度だった。
しかしイザークさまをはじめ、アダンもエマも悲しい顔をするのだ。
「みんな心配なさらないでください。怪我といってもこの程度よ」
「大切な人を誰かによって傷つけられたら、心配して犯人を許せないのは当然だ」
ガーゼで覆われた私の怪我をそっと触れて呟かれた。
「アイリスさまは怪我は軽いですが、心身に負担がかかったでしょうからゆっくり休んでくださいな」
お医者さまの優しい顔と声は、亡くなった祖父を彷彿とさせる。
次にアダン、エマ、イザークさまの順で診察が行われた。
イザークさまは無傷という強さを見せ、アダンとエマは同じく軽い怪我を負っていた。
(つい先ほど心配しないでと言ったばかりだけれど、大切な人が傷ついたり酷い思いをしたらとても辛いわ。こんな辛い思いをもうみんなにさせたくない)
お医者さまが「お大事に」という言葉を残して帰られると、私たちはやっと一息つくことができた。
そこで気になっていたことを聞く。
「アダンは何故ここにいたの?」
「私が招待した。つまり偶然居合わせた。……アダンがいてくれて助かった、感謝する」
イザークさまがまだ幼い上に自らの部下であるアダンに頭を下げた。
「ううん……結局僕だけじゃ守れなかったもん……」
診ていただいている時も様子が違って見えたけれど、それは疲労や怪我によるものだと思っていた。
しかしそのようなことではなかったのだ。
(イザークさまのおっしゃる通り、彼はもう騎士なのね)
「アダンがいなかったら私とエマは危なかったわ。本当にありがとう」
「そうですよ。私にはお嬢さまを守る力があまりありませんでしたから、そこは私の改善しなければならないことです。ありがとうございます」
エマもそう続けると、やっとアダンに可愛らしい笑顔が戻る。
将来のアンスリウム家と自分の主人に願った。
「イザークさま、アダンは命をかけて私を守ろうとしてくれました。成長した時、専属騎士をお願いしたいのです」
その言葉に一瞬だけ時が止まった。
イザークさまはしばらく考えたあと口を開かれた。
「アダンはどう考える?」
「僕は……アイリスさまの専属騎士になりたい!アイリスさまは僕を助けてくれた方だし、騎士団長も僕を助けてくれた人だ」
力強いアダンを見ていると、向日葵のように真っ直ぐだと感じるのだ。
「ならば良いだろう。ただし、強くなくては専属騎士になる資格がない。より一層精進しろ」
「はい!」
騎士の礼をとる二人を見ると、師弟関係のようなものを感じた。
「嬉しいわ!そうだ、アダンが騎士団に合格したお祝いもきちんとしないとね!」
舞い上がる私に、イザークさまは呆れたような目をしながらも微笑む。
「それも良いがしばらくは安静にしてくれ。その後は結婚式の準備もある」
以前の私であれば、たいしたことない怪我なのだからすぐに準備に取りかかれると言ってしまっていただろう。
けれど、大切な人が傷つくとどれだけ悲しいかわかったのだ。
「そうですね。では、落ち着いたら」
これで一件落着かと思いきや、イザークさまが衝撃的な宣言をしたのだ。
「やはり夜は特に危険だ。目を離したがために君を危険に晒したくない。これから夜は必ず共にする」
────納得したばかりだけれど、これはさすがに宜しくないのでは……!?
33
あなたにおすすめの小説
二年後、可愛かった彼の変貌に興ざめ(偽者でしょう?)
岬 空弥
恋愛
二歳年下のユーレットに人目惚れした侯爵家の一人娘エリシア。自分の気持ちを素直に伝えてくる彼女に戸惑いながらも、次第に彼女に好意を持つようになって行くユーレット。しかし大人になりきれない不器用な彼の言動は周りに誤解を与えるようなものばかりだった。ある日、そんなユーレットの態度を誤解した幼馴染のリーシャによって二人の関係は壊されてしまう。
エリシアの卒業式の日、意を決したユーレットは言った。「俺が卒業したら絶対迎えに行く。だから待っていてほしい」
二年の時は、彼らを成長させたはずなのだが・・・。
しつこい公爵が、わたしを逃がしてくれない
千堂みくま
恋愛
細々と仕事をして生きてきた薬師のノアは、経済的に追い詰められて仕方なく危険な仕事に手を出してしまう。それは因縁の幼なじみ、若き公爵ジオルドに惚れ薬を盛る仕事だった。
失敗して捕らえられたノアに、公爵は「俺の人生を狂わせた女」などと言い、変身魔術がかけられたチョーカーを付けて妙に可愛がる。
ジオルドの指示で王子の友人になったノアは、薬師として成長しようと決意。
公爵から逃げたいノアと、自覚のない思いに悩む公爵の話。
※毎午前中に数話更新します。
恐怖侯爵の後妻になったら、「君を愛することはない」と言われまして。
長岡更紗
恋愛
落ちぶれ子爵令嬢の私、レディアが後妻として嫁いだのは──まさかの恐怖侯爵様!
しかも初夜にいきなり「君を愛することはない」なんて言われちゃいましたが?
だけど、あれ? 娘のシャロットは、なんだかすごく懐いてくれるんですけど!
義理の娘と仲良くなった私、侯爵様のこともちょっと気になりはじめて……
もしかして、愛されるチャンスあるかも? なんて思ってたのに。
「前妻は雲隠れした」って噂と、「死んだのよ」って娘の言葉。
しかも使用人たちは全員、口をつぐんでばかり。
ねえ、どうして? 前妻さんに何があったの?
そして、地下から聞こえてくる叫び声は、一体!?
恐怖侯爵の『本当の顔』を知った時。
私の心は、思ってもみなかった方向へ動き出す。
*他サイトにも公開しています
悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?
いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー
これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。
「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」
「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」
冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。
あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。
ショックで熱をだし寝込むこと1週間。
目覚めると夫がなぜか豹変していて…!?
「君から話し掛けてくれないのか?」
「もう君が隣にいないのは考えられない」
無口不器用夫×優しい鈍感妻
すれ違いから始まる両片思いストーリー
新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました
ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」
政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。
妻カレンの反応は——
「それ、契約不履行ですよね?」
「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」
泣き落としは通じない。
そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。
逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。
これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。
【完結】鈍感令嬢は立派なお婿さまを見つけたい
楠結衣
恋愛
「エリーゼ嬢、婚約はなかったことにして欲しい」
こう告げられたのは、真実の愛を謳歌する小説のような学園の卒業パーティーでも舞踏会でもなんでもなく、学園から帰る馬車の中だったーー。
由緒あるヒビスクス伯爵家の一人娘であるエリーゼは、婚約者候補の方とお付き合いをしてもいつも断られてしまう。傷心のエリーゼが学園に到着すると幼馴染の公爵令息エドモンド様にからかわれてしまう。
そんなエリーゼがある日、運命の二人の糸を結び、真実の愛で結ばれた恋人同士でいくと幸せになれると噂のランターンフェスタで出会ったのは……。
◇イラストは一本梅のの様に描いていただきました
◇タイトルの※は、作中に挿絵イラストがあります
私を簡単に捨てられるとでも?―君が望んでも、離さない―
喜雨と悲雨
恋愛
私の名前はミラン。街でしがない薬師をしている。
そして恋人は、王宮騎士団長のルイスだった。
二年前、彼は魔物討伐に向けて遠征に出発。
最初は手紙も返ってきていたのに、
いつからか音信不通に。
あんなにうっとうしいほど構ってきた男が――
なぜ突然、私を無視するの?
不安を抱えながらも待ち続けた私の前に、
突然ルイスが帰還した。
ボロボロの身体。
そして隣には――見知らぬ女。
勝ち誇ったように彼の隣に立つその女を見て、
私の中で何かが壊れた。
混乱、絶望、そして……再起。
すがりつく女は、みっともないだけ。
私は、潔く身を引くと決めた――つもりだったのに。
「私を簡単に捨てられるとでも?
――君が望んでも、離さない」
呪いを自ら解き放ち、
彼は再び、執着の目で私を見つめてきた。
すれ違い、誤解、呪い、執着、
そして狂おしいほどの愛――
二人の恋のゆくえは、誰にもわからない。
過去に書いた作品を修正しました。再投稿です。
王太子妃クラリスと王子たちの絆【完】
mako
恋愛
以前の投稿をブラッシュアップしました。
ランズ王国フリードリヒ王太子に嫁ぐはリントン王国王女クラリス。
クラリスはかつてランズ王国に留学中に品行不良の王太子を毛嫌いしていた節は
否めないが己の定めを受け、王女として変貌を遂げたクラリスにグリードリヒは
困惑しながらも再会を果たしその後王国として栄光を辿る物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる