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『法具店アマミ』再出発編 第十章 店主が背負い込んだもの
『法具店アマミ』の休暇の日 皆さん、大人の言うことをよく守って始めましょうねー
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「痛いやら悲しいやらの気持ちは分からんでもねえけど、場所とか周りを考えろ、脳筋」
「の、脳筋は言い過ぎと思うけど、わ、私もそうは思うかなぁ。人の目気にしないで、好きな人に飛び込むのはちょっと……」
店主からの冷たいなどと言うレベルではない、そんな言葉をくらったせいもあるし、シエラからもやや店主に同調する意見もあり、普段通りにならない涙目のセレナを中心としたドタバタとした朝ご飯の時間になった。
そして朝ご飯の時間が終わり、洞窟へ出発の準備も完了する。
浮浪児、元浮浪児の集団なので、一日中自由の時間を持っていた彼ら。
しかし国が定めた立ち入り禁止の所へは足を踏み入れたことはない。
何らかの魔力がかかり、冒険者とその関係者以外は立ち入り禁止になるからだ。
子供達にとっては未知の世界。目を輝かせながら大人達からの注意に耳を傾ける。
普通なら楽しみで仕方がない子供達ならば、人からの注意をなかなか聞かないもの。だがどこにどんな危険が待ち構えているか分からないことを日常の中で身についている彼らは、むしろ冒険者達の経験談の方にも興味が湧いている。
「ほら、早くいこー? ぼくたちがなぐさめてあげるから、ね? セレナおねえちゃん」
「あたしはおねえちゃんのみかただよー、ねー、みんなー」
小さな援軍に囲まれた、次第に気持ちが落ち着いてきたセレナを中心にして、一人テントの留守番をする店主に見送られながら洞窟に向かって出発した。
彼らの姿が店主の詰めの大きさくらいまでに小さくなった当たりで独り言。
「ウルヴェス。昨日言った通り、ガキ共のお守り、しっかりやってくれよ」
姿ばかりではなく気配まで消している彼女がそばにいるを、彼女の持つ力の存在が自分の近くにあることで感じ取った店主。自分の能力の応用を効かせるのはお手の物である。
「……テンシュ殿も気を付けるようにな」
姿を見せないまま返事をした彼女はその集団の方に移動する。
ウルヴェスも立ち去ったと思われた後の店主は呟いた。
「気を付けるような事態なんかそうそう起きるかよ。巨塊や権力闘争みたいなもん、そうザラに起きるようなら日本に引きこもりっぱなしだってぇの。無理やりここに引っ張られることがない限りな」
そのことも手に取るように分かった店主は、朝ご飯のテーブルのそばに座る。
暇つぶしのために持ってきた本を一冊手に取り適当にページをめくる。
彼らと共に行動し、そこで危機が訪れた際間違いなく店主は何の力にもなれない。
セレナが意識不明に陥った時も、対策本部のような役割を果たしていた店の方にいて頭を働かせたからこそ救出劇は成り立った。
テントでの留守番は、冷静に自分を分析した結果の決断である。
しかしそんな店主は呟いた言葉とは裏腹に、開いた本ではなく洞窟の方に神経を向けた。
一方洞窟に到着した子供達は気楽なものである。
セレナとシエラは当然だが、冒険者達とも初対面ではない。
冒険者達は『法具店アマミ』の開店前から店の前にいることがある。
勉強会が終わって店から出る子供達は入れ違いざまにそんな彼らと会話をしたり少し遊んでもらったりすることもあり、互いに名前を知る前から顔見知りだった。
昨日の夕食の時にはすっかり打ち解け、互いに全員が仲良しになっていた。
洞窟の中に入り、冒険者達は等間隔に照明の魔法を使う。
明るさばかりではなく、洞窟の内部の色もそのまま見分け出来るような日光に近い性質になるように気を配る。
「はい、男の方は十二人、女の方は十一人、全員揃ってますねー。じゃあ今から、テンシュさんの道具作りに役に立ちそうな物を採集しまーす」
「その前に、ほら、外を見てごらん。テンシュさんがあんなに小さくなってるけど分かるかなー? 僕たちがみんなを守ってあげるけど、外からはあんな風に店主さんが見ててくれるから、安心してくださいねー」
子供達への呼びかけに、全員が素直に返事をする。
その返事を受け、目当ての物の見分け方を子供達に教える冒険者達。
そして採掘最終作業に夢中になってもその範囲の内外の区別がつけられる目立った目印を作り説明する。
これで冒険者側が子供達を見失うこともなく、子供達も冒険者達のそばにすぐに近寄ることが出来る。
そしてウルヴェスも全員を見逃すことなく、そして彼らから見られることなく見守ることが出来る。
子供達にとって、いよいよ本命の楽しい時間が始まった。
「の、脳筋は言い過ぎと思うけど、わ、私もそうは思うかなぁ。人の目気にしないで、好きな人に飛び込むのはちょっと……」
店主からの冷たいなどと言うレベルではない、そんな言葉をくらったせいもあるし、シエラからもやや店主に同調する意見もあり、普段通りにならない涙目のセレナを中心としたドタバタとした朝ご飯の時間になった。
そして朝ご飯の時間が終わり、洞窟へ出発の準備も完了する。
浮浪児、元浮浪児の集団なので、一日中自由の時間を持っていた彼ら。
しかし国が定めた立ち入り禁止の所へは足を踏み入れたことはない。
何らかの魔力がかかり、冒険者とその関係者以外は立ち入り禁止になるからだ。
子供達にとっては未知の世界。目を輝かせながら大人達からの注意に耳を傾ける。
普通なら楽しみで仕方がない子供達ならば、人からの注意をなかなか聞かないもの。だがどこにどんな危険が待ち構えているか分からないことを日常の中で身についている彼らは、むしろ冒険者達の経験談の方にも興味が湧いている。
「ほら、早くいこー? ぼくたちがなぐさめてあげるから、ね? セレナおねえちゃん」
「あたしはおねえちゃんのみかただよー、ねー、みんなー」
小さな援軍に囲まれた、次第に気持ちが落ち着いてきたセレナを中心にして、一人テントの留守番をする店主に見送られながら洞窟に向かって出発した。
彼らの姿が店主の詰めの大きさくらいまでに小さくなった当たりで独り言。
「ウルヴェス。昨日言った通り、ガキ共のお守り、しっかりやってくれよ」
姿ばかりではなく気配まで消している彼女がそばにいるを、彼女の持つ力の存在が自分の近くにあることで感じ取った店主。自分の能力の応用を効かせるのはお手の物である。
「……テンシュ殿も気を付けるようにな」
姿を見せないまま返事をした彼女はその集団の方に移動する。
ウルヴェスも立ち去ったと思われた後の店主は呟いた。
「気を付けるような事態なんかそうそう起きるかよ。巨塊や権力闘争みたいなもん、そうザラに起きるようなら日本に引きこもりっぱなしだってぇの。無理やりここに引っ張られることがない限りな」
そのことも手に取るように分かった店主は、朝ご飯のテーブルのそばに座る。
暇つぶしのために持ってきた本を一冊手に取り適当にページをめくる。
彼らと共に行動し、そこで危機が訪れた際間違いなく店主は何の力にもなれない。
セレナが意識不明に陥った時も、対策本部のような役割を果たしていた店の方にいて頭を働かせたからこそ救出劇は成り立った。
テントでの留守番は、冷静に自分を分析した結果の決断である。
しかしそんな店主は呟いた言葉とは裏腹に、開いた本ではなく洞窟の方に神経を向けた。
一方洞窟に到着した子供達は気楽なものである。
セレナとシエラは当然だが、冒険者達とも初対面ではない。
冒険者達は『法具店アマミ』の開店前から店の前にいることがある。
勉強会が終わって店から出る子供達は入れ違いざまにそんな彼らと会話をしたり少し遊んでもらったりすることもあり、互いに名前を知る前から顔見知りだった。
昨日の夕食の時にはすっかり打ち解け、互いに全員が仲良しになっていた。
洞窟の中に入り、冒険者達は等間隔に照明の魔法を使う。
明るさばかりではなく、洞窟の内部の色もそのまま見分け出来るような日光に近い性質になるように気を配る。
「はい、男の方は十二人、女の方は十一人、全員揃ってますねー。じゃあ今から、テンシュさんの道具作りに役に立ちそうな物を採集しまーす」
「その前に、ほら、外を見てごらん。テンシュさんがあんなに小さくなってるけど分かるかなー? 僕たちがみんなを守ってあげるけど、外からはあんな風に店主さんが見ててくれるから、安心してくださいねー」
子供達への呼びかけに、全員が素直に返事をする。
その返事を受け、目当ての物の見分け方を子供達に教える冒険者達。
そして採掘最終作業に夢中になってもその範囲の内外の区別がつけられる目立った目印を作り説明する。
これで冒険者側が子供達を見失うこともなく、子供達も冒険者達のそばにすぐに近寄ることが出来る。
そしてウルヴェスも全員を見逃すことなく、そして彼らから見られることなく見守ることが出来る。
子供達にとって、いよいよ本命の楽しい時間が始まった。
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