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『法具店アマミ』再出発編 第十章 店主が背負い込んだもの
『法具店アマミ』の休暇の日 この二人、朝から何してんだろ
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セレナが後をついてくる店主は全員と合流。
食事は進んでいるが酒も進んでいる。しかし我を失うものは誰もいない。
無報酬であっても仕事であり与えられた役割があるならそこはプロ。自制心もある彼らは腹八分目になるとあたりを片付けそれぞれテントに入る。
夜も更け、そして日が昇る時間を迎える。
新たな一日のはじまりの朝日はテントの幕を透過し、全員が清々しい気持ちで目覚めた。
大人たちは、昨夜の酒はすっかり消えている。
そして朝ごはんの準備の前に、店主とウルヴェスの分を抜いた昼食の弁当作りに取り掛かる。
予定としては、道具屋で売られている装備品の素材になるようなものの採集を、ほぼ日中をかけて行う。
目的地とテントの位置は遠くない距離だが、誰の手を煩わせることのないように職を手にするため、就く職業の一つである冒険者の現場を体験させるのも、目的地をここに定めた理由の一つ。
逃げ場がない場所ということで、力のない者達の立ち入り禁止場所となっている。しかしそれなりに装備を整えた者であれば、この区域に現れる魔物になら問題なく対処できる。
寄宿舎付きの冒険者養成所に入る子供がいるなら、冒険者の仕事の現場を入所前に体験するのとしないのとではその差は大きい。
少しでも本職の職場の環境をなるべく多く体感させるため、テントが現場の目と鼻の先にあったとしても休憩時間にはそこに戻るようなことをしない方針を立てた。弁当作りはその一環である。
「……そう。だからみんなは目につく食べられるものがあればすぐに手に入れて口に入れなきゃだめかもしれないけど、栄養を体の中に取り入れやすくする仕掛けも必要なの。それが料理ってわけ」
「たくさん食わなきゃ体も大きくなれない。味が悪いとたくさん体の中に入れられない。食い物の中には、苦い物や渋い物もあるけど体にいいものもある。その手伝いが味付けってことだ」
子供達の誰もが、その目を輝かせて彼らの話を熱心に聞く。冒険者達は子供達にレクチャーしながら、子供達と一緒にどんどん弁当を完成させていく。
こんなときには、出る幕がない店主にまとわりつく子供はいない。、
そして冒険者達の話を聞こうとしない子供もいない。
その集団から離れている店主も、疎外感を持っていそうな子供もいないことを確認する。
その様子を見て、目的の一つは達成できた実感を得た。
だがこの一日はこれから始まる。
さらに大切なものを子供達に得てもらいたいとは思うが、こればかりは店主の思い通りにはいかない。
積極的に取る気はなかった休暇。その期間を無駄にしてもらいたくはないと願うばかりである。
いつの間にか彼らはなし崩しに弁当作りから朝食作りに移行している。
これは冒険者の仕事上の仕事とは限らない。
野外での日常の作業の一つでもある。その区別は出来ている店主は、ゆっくりとその集団に近寄る。
「あれ? テーブル出来てる。あ、テンシュさんやってくれたの? ありがとう」
「テンシュのおじちゃん、力持ちだったんだねー」
「おー。テンシュおじちゃんすごーい」
「いいからとっとと朝飯の準備しろよ」
短めの丸太を六つほど。そして全員が囲って座れるくらい広い、厚めの木の板をその上に乗せて朝食用のテーブルを作る。何とか一人で用意できる重さだが、朝目覚めて間もない時間の肉体労働は、店主には少しきつすぎた。
フィールドワークや力仕事が苦手と思われた店主。子供達からの人気の高さは店主から冒険者達に移っていったが、ここでまた店主が盛り返す感じになる。しかし人気よりも、子供達にとって重要なことを身につけさせたい店主は、まとわりつかれるのを邪険にあしらう。
ところがその対応が子供達には、格好の遊び相手のように受け止められてしまう。
「テンシュー、遊んでないで、配膳してくださいよー」
「テーブル用意してくれるのはありがたいんですが、まだ終わってないんですよー。無理しないでくださーい」
「はぁ、はぁ……。あいよ……っていうか、俺にじゃれついてねぇで、それくらいお前ら手伝え!」
子供達に怒鳴る店主。逃げるように店主から去り、朝ご飯の準備の手伝いにかかる。
「いっそのこと、こいつら全員のお父さんになったらどうだ? テンシュ」
「じゃあお母さんはセレナさんということで」
『ホットライン』のエンビーとヒューラーに冷やかされる。
店主の顔が赤いのはそんな状況で力仕事をしたためであるが、周りはそうは受け止めない。
特に子供達は蜂の巣を突いたように歓声を上げる。
えっ? と二人と店主の方を振り返ったセレナはその様子を見て、店主との間に障害はないと確信。
手にしている朝ご飯を作るための道具を放り投げ、店主に抱き付くために駆け寄る。
が、店主に簡単に避けられる。
飛びついたセレナの先にいる店主が躱したことで、地面に顔を打ち地面にうつ伏せになるセレナ。
その彼女を見て店主が一言。
「人生最高の勘違いしてんじゃねえ」
痛みを堪える「あうぅ」と言う呻き声を上げながら店主に向けるセレナは涙目。
更に店主は追い打ちをかける。
「セレナー、遊んでないで朝ご飯の準備してくださいよー」
しかし冒険者達からは不評をかった。
「セレナもセレナだけどさ、テンシュももう少し対応考えなよ」
「セレナに気がないからあたしにもチャンスあるかなって考えるけど、甘えさせてくれない相手は嫌だなー」
そんな声の方に向けて、店主は口を尖らせる。
「同じこと言われたのに、何だよこの差は」
「テンシュおじさんつめたーい」
「テンシュさんひどーい」
子供達からもそんな声が出る。
「お前らも、とっとと準備終わらせて飯食えや」
付き合いきれんとばかりにセレナから離れる店主。
店主とセレナには踏んだり蹴ったりの朝の時間帯であった。
食事は進んでいるが酒も進んでいる。しかし我を失うものは誰もいない。
無報酬であっても仕事であり与えられた役割があるならそこはプロ。自制心もある彼らは腹八分目になるとあたりを片付けそれぞれテントに入る。
夜も更け、そして日が昇る時間を迎える。
新たな一日のはじまりの朝日はテントの幕を透過し、全員が清々しい気持ちで目覚めた。
大人たちは、昨夜の酒はすっかり消えている。
そして朝ごはんの準備の前に、店主とウルヴェスの分を抜いた昼食の弁当作りに取り掛かる。
予定としては、道具屋で売られている装備品の素材になるようなものの採集を、ほぼ日中をかけて行う。
目的地とテントの位置は遠くない距離だが、誰の手を煩わせることのないように職を手にするため、就く職業の一つである冒険者の現場を体験させるのも、目的地をここに定めた理由の一つ。
逃げ場がない場所ということで、力のない者達の立ち入り禁止場所となっている。しかしそれなりに装備を整えた者であれば、この区域に現れる魔物になら問題なく対処できる。
寄宿舎付きの冒険者養成所に入る子供がいるなら、冒険者の仕事の現場を入所前に体験するのとしないのとではその差は大きい。
少しでも本職の職場の環境をなるべく多く体感させるため、テントが現場の目と鼻の先にあったとしても休憩時間にはそこに戻るようなことをしない方針を立てた。弁当作りはその一環である。
「……そう。だからみんなは目につく食べられるものがあればすぐに手に入れて口に入れなきゃだめかもしれないけど、栄養を体の中に取り入れやすくする仕掛けも必要なの。それが料理ってわけ」
「たくさん食わなきゃ体も大きくなれない。味が悪いとたくさん体の中に入れられない。食い物の中には、苦い物や渋い物もあるけど体にいいものもある。その手伝いが味付けってことだ」
子供達の誰もが、その目を輝かせて彼らの話を熱心に聞く。冒険者達は子供達にレクチャーしながら、子供達と一緒にどんどん弁当を完成させていく。
こんなときには、出る幕がない店主にまとわりつく子供はいない。、
そして冒険者達の話を聞こうとしない子供もいない。
その集団から離れている店主も、疎外感を持っていそうな子供もいないことを確認する。
その様子を見て、目的の一つは達成できた実感を得た。
だがこの一日はこれから始まる。
さらに大切なものを子供達に得てもらいたいとは思うが、こればかりは店主の思い通りにはいかない。
積極的に取る気はなかった休暇。その期間を無駄にしてもらいたくはないと願うばかりである。
いつの間にか彼らはなし崩しに弁当作りから朝食作りに移行している。
これは冒険者の仕事上の仕事とは限らない。
野外での日常の作業の一つでもある。その区別は出来ている店主は、ゆっくりとその集団に近寄る。
「あれ? テーブル出来てる。あ、テンシュさんやってくれたの? ありがとう」
「テンシュのおじちゃん、力持ちだったんだねー」
「おー。テンシュおじちゃんすごーい」
「いいからとっとと朝飯の準備しろよ」
短めの丸太を六つほど。そして全員が囲って座れるくらい広い、厚めの木の板をその上に乗せて朝食用のテーブルを作る。何とか一人で用意できる重さだが、朝目覚めて間もない時間の肉体労働は、店主には少しきつすぎた。
フィールドワークや力仕事が苦手と思われた店主。子供達からの人気の高さは店主から冒険者達に移っていったが、ここでまた店主が盛り返す感じになる。しかし人気よりも、子供達にとって重要なことを身につけさせたい店主は、まとわりつかれるのを邪険にあしらう。
ところがその対応が子供達には、格好の遊び相手のように受け止められてしまう。
「テンシュー、遊んでないで、配膳してくださいよー」
「テーブル用意してくれるのはありがたいんですが、まだ終わってないんですよー。無理しないでくださーい」
「はぁ、はぁ……。あいよ……っていうか、俺にじゃれついてねぇで、それくらいお前ら手伝え!」
子供達に怒鳴る店主。逃げるように店主から去り、朝ご飯の準備の手伝いにかかる。
「いっそのこと、こいつら全員のお父さんになったらどうだ? テンシュ」
「じゃあお母さんはセレナさんということで」
『ホットライン』のエンビーとヒューラーに冷やかされる。
店主の顔が赤いのはそんな状況で力仕事をしたためであるが、周りはそうは受け止めない。
特に子供達は蜂の巣を突いたように歓声を上げる。
えっ? と二人と店主の方を振り返ったセレナはその様子を見て、店主との間に障害はないと確信。
手にしている朝ご飯を作るための道具を放り投げ、店主に抱き付くために駆け寄る。
が、店主に簡単に避けられる。
飛びついたセレナの先にいる店主が躱したことで、地面に顔を打ち地面にうつ伏せになるセレナ。
その彼女を見て店主が一言。
「人生最高の勘違いしてんじゃねえ」
痛みを堪える「あうぅ」と言う呻き声を上げながら店主に向けるセレナは涙目。
更に店主は追い打ちをかける。
「セレナー、遊んでないで朝ご飯の準備してくださいよー」
しかし冒険者達からは不評をかった。
「セレナもセレナだけどさ、テンシュももう少し対応考えなよ」
「セレナに気がないからあたしにもチャンスあるかなって考えるけど、甘えさせてくれない相手は嫌だなー」
そんな声の方に向けて、店主は口を尖らせる。
「同じこと言われたのに、何だよこの差は」
「テンシュおじさんつめたーい」
「テンシュさんひどーい」
子供達からもそんな声が出る。
「お前らも、とっとと準備終わらせて飯食えや」
付き合いきれんとばかりにセレナから離れる店主。
店主とセレナには踏んだり蹴ったりの朝の時間帯であった。
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