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第5章
108,vs巨狼
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「ともかく、来てしまったものは仕方ありませんわ。わたくしもお手伝いしてあげてもよろしくってよ?」
とっても上から目線のお言葉を頂いてしまったが正直このお貴族様に何の手伝いが出来るのだろうか。
今回の作戦は遠距離攻撃主体であり、遠距離攻撃用のスキルがあるとしてもスタミナが問題となる。
かき集めたスタミナ回復ポーションはレーネさん用で分けてあげる分はとてもじゃないがない。むしろ足りない可能性すらある。
「えっと……アリアローゼさんは遠距離攻撃スキルを習得してます?」
「ありませんわ」
「じゃあ魔法は?」
「ありませんわ」
「えっと……何ができますか?」
「この清流のシルバーレイピアで穴だらけにして差し上げますわ!」
腰に履いていた銀に薄く青が混ざっている刺突剣を抜き放ち、天に向かって突き上げると高々と言い放つドリルさん。
あの特殊進化個体を相手に接近戦?
これは所謂お貴族様ジョークというやつだろうか。うん、きっとそうだろう。……そうであってくれ。
「えっと……私達は距離を取って結界を盾にしながら遠距離攻撃のみで討伐する予定なんですが」
「ではわたくしに出番はありませんわね」
「そうですね」
「でもそれでは手伝えませんわ」
「えっと……」
大人しくしているという選択肢はないのだろうか。
悪い人ではないのだろうけど、どうにもマイペースすぎる。
「あぁそうだ。じゃあアリアローゼさんはここでユーウイトさんを護衛するというのはどうでしょう?」
「護衛……ですの?」
「えぇ、ほら。何かと危ないですし」
周りを適当に見ながら言ってみる。
ここは位相がずれていて精霊の住処でもあるし、そうそう魔物なんてよってこないとは思うけど魔物が出てくるかもしれないですよ~と匂わせてみる。
まぁ実際に特殊進化個体が侵入して荒らしているわけだし、無きにしも非ずだ。
「それにほら、ユーウイトさんは戦闘能力がないそうですので」
「ユーちゃん戦えないんですの?」
「戦いとか無理~」
「では仕方ありませんわ。その役目引き受けますわ」
「そうですか。よかったよかった」
「でも大丈夫ですの? あなたたちだけでアレを倒すのなんて」
ドリルさんが心配そうに2つのドリルを揺らしている。
まぁたった2人で挑むのだから心配されるのも頷ける。あ、でもドリルさん的にはアルも人数に入っているのかな? それでも3人だけど。
まぁかなりの安全策をとってやるわけだし、だめなら違う方法を試せばいい。怪我する前に見切りはつけるつもりだ。
「とりあえず安全策でいきますけど、だめそうなら人数を動員する感じになりますかねぇ」
「その時にはわたくしも力を貸すことが出来ますわ。我がウィシュラウ家の精鋭を貸して差し上げますわ。
もちろんわたくしも戦いますわよ」
しかしこのドリルさん特殊進化個体と戦うのが怖くないのだろうか。
マッドベアーを取り逃がしてしまうような程度で遥かに上位の相手と戦いたがっている。もしかしてバトルジャンキー系ドリルの方ですかね?
【ワタリさん、特殊進化個体との戦いを名誉とする人は割と多くいます。
騎士なども討伐に参加する事は大変な名誉となります。
街や村に甚大な被害を出す相手ですし、命懸けになりますのでその討伐に参加するというのは英雄視されるものなのですよ。
そして何よりもここは彼女の住む街が近くにあるというのが大きいです。
話を聞く限りでは上位の貴族のようですし】
【にゃるほど】
確かにこんな超強力な相手を放っておくのは被害が計り知れない。その予想される甚大な被害を回避するために命懸けで戦うというのは一般市民から見ればまさに英雄だろう。
そしてこのドリルさんも貴族だ。出来ることならその名誉を得て貴族としての格をあげたい。でもある程度はわかっているんだろう。それもなかなか難しいと。現実は非情だ。
だがここに来て彼女もユーウイトさんの転移に巻き込まれた。本当は帰って欲しいけれどなんだかもう面倒くさくなってきた。
それにユーウイトさん自身も彼女がなぜついてきたのかわからない以上は同じことが起こるかもしれない。
「では護衛よろしくお願いしますね」
「任されましたわ」
体の良い厄介払いが出来てホッとしながらも気持ちを切り替えて当初の作戦通りに回復力強化Lv3と筋力強化Lv3をレーネさんにかけてから配置につくために移動を開始する。
ちなみにオレには回復力強化Lv3と魔力強化Lv3だ。
強化系Lv3を3つも取るのにかなりのスキルを犠牲にする必要があるため、結界があり安全策を講じれる現状でしか出来ないだろうスキル構成だ。
配置は円形の結界の端と端で最大の距離を取る。
結界に近づくにつれて特殊進化個体もこちらをしっかりと認識し、敵であることを理解しているために突撃を敢行してくる。
当然前回の見学の時と同様に結界に阻まれるがそれでも何度も何度も同じことを繰り返している。
結界がなかったらこんなに近寄れてはいないだろう。すごい結界だ。
【ワタリさん、予定の位置につきました。いつでも始められます】
【おっけー。まずはレーネさんの方から先制してターゲットをずらしましょう。
その後、相手の動きを見ながら攻撃を継続。近寄られたり攻撃を受けたらすぐに結界外に退避】
【了解です。では行きます!】
それなりに離れたところにいるレーネさんが朱珠白塵を構える。
一瞬で刀身が真っ赤に輝くと霞むほどのスピードで振り上げられて発生した剣閃が凄まじいスピードで特殊進化個体目掛けて突っ込んできた。
結界に突撃を敢行していた特殊進化個体もレーネさんから膨れ上がった戦意と放たれた剣閃――ブレイズウィングに気づくが……遅い。
開幕の一撃は結界越しでもわかるほどの衝撃を特殊進化個体の腰に発生させてぶち当たり、派手にきりもみしながら吹き飛ばした。
思った以上の威力と見事に直撃した事に少し驚いているとレーネさんの第2撃目がすぐに飛んできた。
きりもみしながらも空中で体勢を立て直そうとしていた特殊進化個体に2撃目がまたもや直撃してあらぬ方向にすっ飛んでいく。
レーネさんまじ半端ねぇ。
あの巨体がきりもみしながらぶっ飛んでいく光景は非現実的で開いた口が塞がらない。
でもブレイズウィングは最大連射数が4発。すでに2発打ち込んでいるし、3発目も飛んできている。
特殊進化個体もさすがに3発目は対応したようで緑色に体が輝いたかと思った時には空中で明らかにおかしな軌道を描いて掠める程度に留めていた。
中級の風魔法と敏捷強化を併用しているのだろうか。空中での明らかにおかしな軌道は風魔法で足場なりなんなりを作ったのだろう。掠める程度に留められたのも移動速度が急に向上したためだ。
レーネさんの4発目が放たれたら次のブレイズウィングまでには少し時間がかかる。
その間はオレの担当だ。
結界の中にアルと一緒に入り、一瞬で構築された速度重視の細身と貫通力重視の螺旋を描く矛をつけた氷の螺旋槍を12本打ち出す。
ブレイズウィングの速度もかなりのものだったが、オレの氷の螺旋槍はそれを超える。
敏捷を強化された特殊進化個体だが反応することすら出来ずに12本全てが着弾し、血飛沫と木の鱗を撒き散らしながら吹き飛んだ。
貫通力を重視していたわりには刺さりこそしたものの突き抜けるものは1本もなく、それどころか割と浅い所で砕け散ってしまったようだ。
ブレイズウィングで傷つけることが出来なかった事から相当硬いとわかっていたがこれはしんどそうだ。
まぁレーネさんのブレイズウィングはどちらかというと衝撃波を飛ばしているようなものなので外側よりも内部にダメージがいっている可能性が高い。
それでも大剣スキルであるブレイズウィングは斬撃系なので当たれば多少は切れるはずなのだ。
つまりあの体中を覆っている毛と木の鱗の硬さは常軌を逸している。
普通に斬りつけてもダメージにすらならない可能性があったということだ。
8つ持ちも鋼のような筋肉を持っていたし、特殊進化個体は本当にとんでもない。
氷の螺旋槍の第2射第3射は半分以上を風の壁に阻まれた。
こちらの方が厄介だとターゲットを切り替えて接近を始めている。
レーネさんもスタミナ回復中で攻撃が一旦停止していたのもあるだろう。まぁ予定通りだ。
勢いに乗って駆けてくる特殊進化個体に向かって氷の槍衾を残ったMPを使って、結界の天井付近まで縦に長く展開する。
異常な防御力を誇っていてもオレの攻撃なら通ることはわかっている。そのまま突っ込んでくれるなら大ダメージは避けられないし避けるなら横に回らないといけないので多少の時間を稼げる。
もちろんレーネさんの方に誘導するために逆側に広めに展開している。
【次行きます!】
気合の入った念話と共に補給の終了したレーネさんのブレイズウィングが飛来する。
目標は槍衾を回避するために駆けるスピードを少し緩めた巨狼だ。
カーブを描いて軌道修正してくる相手に狙いすませたように吸い込まれる巨大な衝撃破の斬撃。
軌道修正中であったのも相まってそこから更なる挙動はさすがの特殊進化個体でも不可能であったようだ。
初撃同様に直撃を許し展開されていた槍衾に衝撃で突っ込まされ氷の破片が盛大に撒き散る。
【ワタリ様】
【さんきゅーアル】
2発目、3発目のブレイズウィングが槍衾に突っ込んだ特殊進化個体ごと盛大に破壊され、氷の破片は嵐のように舞い散りまくっている。
キラキラと光を反射する破片が美しい。
戦闘中だというのに、そんなことを思いながらもアルが差し出した最初のMPタンクからMPを根こそぎ回収する。
4発目のブレイズウィングが特殊進化個体の首に直撃して弾かれたように空中に舞い上がる。
光の反射に赤がそれなりに混じり、フライングキャットの特徴である背中の翼のような腕が半ばから千切れかかっているのが見えた。
もう木のような鱗はほとんど残っていない。
瞬間的に射出された12本の槍が翼のような腕の根元に集中するとソレを引き千切る。
翼のような腕を引き千切った反動で斜め上に吹き飛ぶ軌道を強制的に変更されて地面に叩きつけられながら転がっていく特殊進化個体。
3回目のバウンドでなんとか体勢を立て直し、全身に風を纏い始めるがそんなものを待ってやるほど甘くはない。
降り注ぐ氷の巨槍。数は4本。
威力を極限まで重視したため速度がかなり犠牲になっている。これを普通に撃ってもこのすばしっこい巨狼には当たらないだろうが要はタイミングの問題だ。
だが野生の勘とでも言うべきものだろうか。さすがはアサルトウルフという狼を主軸としているだけあり、完全な死角から飛来した巨槍は3本回避された。
だが1本は直撃し、右前足を肩口から抉り飛ばす事に成功した。
魔物は魔力で体内器官や構造なんかを補強しているため、血が少ない。
それでも右前足を抉り飛ばされたために出血している量はそれなりになっている。
その他にも翼のような腕が生えていた部分からも出血しており、体中に氷の螺旋槍が刺さった穴からも出血している。
どうやらこいつに再生能力はないようだ。
最初の怪我すら再生されずに出血が続いているのが良い証拠だろう。
【行きます!】
足の1本を失い機動性が著しく損なわれた特殊進化個体にレーネさんのブレイズウィングが止めとばかりに襲いかかった。
とっても上から目線のお言葉を頂いてしまったが正直このお貴族様に何の手伝いが出来るのだろうか。
今回の作戦は遠距離攻撃主体であり、遠距離攻撃用のスキルがあるとしてもスタミナが問題となる。
かき集めたスタミナ回復ポーションはレーネさん用で分けてあげる分はとてもじゃないがない。むしろ足りない可能性すらある。
「えっと……アリアローゼさんは遠距離攻撃スキルを習得してます?」
「ありませんわ」
「じゃあ魔法は?」
「ありませんわ」
「えっと……何ができますか?」
「この清流のシルバーレイピアで穴だらけにして差し上げますわ!」
腰に履いていた銀に薄く青が混ざっている刺突剣を抜き放ち、天に向かって突き上げると高々と言い放つドリルさん。
あの特殊進化個体を相手に接近戦?
これは所謂お貴族様ジョークというやつだろうか。うん、きっとそうだろう。……そうであってくれ。
「えっと……私達は距離を取って結界を盾にしながら遠距離攻撃のみで討伐する予定なんですが」
「ではわたくしに出番はありませんわね」
「そうですね」
「でもそれでは手伝えませんわ」
「えっと……」
大人しくしているという選択肢はないのだろうか。
悪い人ではないのだろうけど、どうにもマイペースすぎる。
「あぁそうだ。じゃあアリアローゼさんはここでユーウイトさんを護衛するというのはどうでしょう?」
「護衛……ですの?」
「えぇ、ほら。何かと危ないですし」
周りを適当に見ながら言ってみる。
ここは位相がずれていて精霊の住処でもあるし、そうそう魔物なんてよってこないとは思うけど魔物が出てくるかもしれないですよ~と匂わせてみる。
まぁ実際に特殊進化個体が侵入して荒らしているわけだし、無きにしも非ずだ。
「それにほら、ユーウイトさんは戦闘能力がないそうですので」
「ユーちゃん戦えないんですの?」
「戦いとか無理~」
「では仕方ありませんわ。その役目引き受けますわ」
「そうですか。よかったよかった」
「でも大丈夫ですの? あなたたちだけでアレを倒すのなんて」
ドリルさんが心配そうに2つのドリルを揺らしている。
まぁたった2人で挑むのだから心配されるのも頷ける。あ、でもドリルさん的にはアルも人数に入っているのかな? それでも3人だけど。
まぁかなりの安全策をとってやるわけだし、だめなら違う方法を試せばいい。怪我する前に見切りはつけるつもりだ。
「とりあえず安全策でいきますけど、だめそうなら人数を動員する感じになりますかねぇ」
「その時にはわたくしも力を貸すことが出来ますわ。我がウィシュラウ家の精鋭を貸して差し上げますわ。
もちろんわたくしも戦いますわよ」
しかしこのドリルさん特殊進化個体と戦うのが怖くないのだろうか。
マッドベアーを取り逃がしてしまうような程度で遥かに上位の相手と戦いたがっている。もしかしてバトルジャンキー系ドリルの方ですかね?
【ワタリさん、特殊進化個体との戦いを名誉とする人は割と多くいます。
騎士なども討伐に参加する事は大変な名誉となります。
街や村に甚大な被害を出す相手ですし、命懸けになりますのでその討伐に参加するというのは英雄視されるものなのですよ。
そして何よりもここは彼女の住む街が近くにあるというのが大きいです。
話を聞く限りでは上位の貴族のようですし】
【にゃるほど】
確かにこんな超強力な相手を放っておくのは被害が計り知れない。その予想される甚大な被害を回避するために命懸けで戦うというのは一般市民から見ればまさに英雄だろう。
そしてこのドリルさんも貴族だ。出来ることならその名誉を得て貴族としての格をあげたい。でもある程度はわかっているんだろう。それもなかなか難しいと。現実は非情だ。
だがここに来て彼女もユーウイトさんの転移に巻き込まれた。本当は帰って欲しいけれどなんだかもう面倒くさくなってきた。
それにユーウイトさん自身も彼女がなぜついてきたのかわからない以上は同じことが起こるかもしれない。
「では護衛よろしくお願いしますね」
「任されましたわ」
体の良い厄介払いが出来てホッとしながらも気持ちを切り替えて当初の作戦通りに回復力強化Lv3と筋力強化Lv3をレーネさんにかけてから配置につくために移動を開始する。
ちなみにオレには回復力強化Lv3と魔力強化Lv3だ。
強化系Lv3を3つも取るのにかなりのスキルを犠牲にする必要があるため、結界があり安全策を講じれる現状でしか出来ないだろうスキル構成だ。
配置は円形の結界の端と端で最大の距離を取る。
結界に近づくにつれて特殊進化個体もこちらをしっかりと認識し、敵であることを理解しているために突撃を敢行してくる。
当然前回の見学の時と同様に結界に阻まれるがそれでも何度も何度も同じことを繰り返している。
結界がなかったらこんなに近寄れてはいないだろう。すごい結界だ。
【ワタリさん、予定の位置につきました。いつでも始められます】
【おっけー。まずはレーネさんの方から先制してターゲットをずらしましょう。
その後、相手の動きを見ながら攻撃を継続。近寄られたり攻撃を受けたらすぐに結界外に退避】
【了解です。では行きます!】
それなりに離れたところにいるレーネさんが朱珠白塵を構える。
一瞬で刀身が真っ赤に輝くと霞むほどのスピードで振り上げられて発生した剣閃が凄まじいスピードで特殊進化個体目掛けて突っ込んできた。
結界に突撃を敢行していた特殊進化個体もレーネさんから膨れ上がった戦意と放たれた剣閃――ブレイズウィングに気づくが……遅い。
開幕の一撃は結界越しでもわかるほどの衝撃を特殊進化個体の腰に発生させてぶち当たり、派手にきりもみしながら吹き飛ばした。
思った以上の威力と見事に直撃した事に少し驚いているとレーネさんの第2撃目がすぐに飛んできた。
きりもみしながらも空中で体勢を立て直そうとしていた特殊進化個体に2撃目がまたもや直撃してあらぬ方向にすっ飛んでいく。
レーネさんまじ半端ねぇ。
あの巨体がきりもみしながらぶっ飛んでいく光景は非現実的で開いた口が塞がらない。
でもブレイズウィングは最大連射数が4発。すでに2発打ち込んでいるし、3発目も飛んできている。
特殊進化個体もさすがに3発目は対応したようで緑色に体が輝いたかと思った時には空中で明らかにおかしな軌道を描いて掠める程度に留めていた。
中級の風魔法と敏捷強化を併用しているのだろうか。空中での明らかにおかしな軌道は風魔法で足場なりなんなりを作ったのだろう。掠める程度に留められたのも移動速度が急に向上したためだ。
レーネさんの4発目が放たれたら次のブレイズウィングまでには少し時間がかかる。
その間はオレの担当だ。
結界の中にアルと一緒に入り、一瞬で構築された速度重視の細身と貫通力重視の螺旋を描く矛をつけた氷の螺旋槍を12本打ち出す。
ブレイズウィングの速度もかなりのものだったが、オレの氷の螺旋槍はそれを超える。
敏捷を強化された特殊進化個体だが反応することすら出来ずに12本全てが着弾し、血飛沫と木の鱗を撒き散らしながら吹き飛んだ。
貫通力を重視していたわりには刺さりこそしたものの突き抜けるものは1本もなく、それどころか割と浅い所で砕け散ってしまったようだ。
ブレイズウィングで傷つけることが出来なかった事から相当硬いとわかっていたがこれはしんどそうだ。
まぁレーネさんのブレイズウィングはどちらかというと衝撃波を飛ばしているようなものなので外側よりも内部にダメージがいっている可能性が高い。
それでも大剣スキルであるブレイズウィングは斬撃系なので当たれば多少は切れるはずなのだ。
つまりあの体中を覆っている毛と木の鱗の硬さは常軌を逸している。
普通に斬りつけてもダメージにすらならない可能性があったということだ。
8つ持ちも鋼のような筋肉を持っていたし、特殊進化個体は本当にとんでもない。
氷の螺旋槍の第2射第3射は半分以上を風の壁に阻まれた。
こちらの方が厄介だとターゲットを切り替えて接近を始めている。
レーネさんもスタミナ回復中で攻撃が一旦停止していたのもあるだろう。まぁ予定通りだ。
勢いに乗って駆けてくる特殊進化個体に向かって氷の槍衾を残ったMPを使って、結界の天井付近まで縦に長く展開する。
異常な防御力を誇っていてもオレの攻撃なら通ることはわかっている。そのまま突っ込んでくれるなら大ダメージは避けられないし避けるなら横に回らないといけないので多少の時間を稼げる。
もちろんレーネさんの方に誘導するために逆側に広めに展開している。
【次行きます!】
気合の入った念話と共に補給の終了したレーネさんのブレイズウィングが飛来する。
目標は槍衾を回避するために駆けるスピードを少し緩めた巨狼だ。
カーブを描いて軌道修正してくる相手に狙いすませたように吸い込まれる巨大な衝撃破の斬撃。
軌道修正中であったのも相まってそこから更なる挙動はさすがの特殊進化個体でも不可能であったようだ。
初撃同様に直撃を許し展開されていた槍衾に衝撃で突っ込まされ氷の破片が盛大に撒き散る。
【ワタリ様】
【さんきゅーアル】
2発目、3発目のブレイズウィングが槍衾に突っ込んだ特殊進化個体ごと盛大に破壊され、氷の破片は嵐のように舞い散りまくっている。
キラキラと光を反射する破片が美しい。
戦闘中だというのに、そんなことを思いながらもアルが差し出した最初のMPタンクからMPを根こそぎ回収する。
4発目のブレイズウィングが特殊進化個体の首に直撃して弾かれたように空中に舞い上がる。
光の反射に赤がそれなりに混じり、フライングキャットの特徴である背中の翼のような腕が半ばから千切れかかっているのが見えた。
もう木のような鱗はほとんど残っていない。
瞬間的に射出された12本の槍が翼のような腕の根元に集中するとソレを引き千切る。
翼のような腕を引き千切った反動で斜め上に吹き飛ぶ軌道を強制的に変更されて地面に叩きつけられながら転がっていく特殊進化個体。
3回目のバウンドでなんとか体勢を立て直し、全身に風を纏い始めるがそんなものを待ってやるほど甘くはない。
降り注ぐ氷の巨槍。数は4本。
威力を極限まで重視したため速度がかなり犠牲になっている。これを普通に撃ってもこのすばしっこい巨狼には当たらないだろうが要はタイミングの問題だ。
だが野生の勘とでも言うべきものだろうか。さすがはアサルトウルフという狼を主軸としているだけあり、完全な死角から飛来した巨槍は3本回避された。
だが1本は直撃し、右前足を肩口から抉り飛ばす事に成功した。
魔物は魔力で体内器官や構造なんかを補強しているため、血が少ない。
それでも右前足を抉り飛ばされたために出血している量はそれなりになっている。
その他にも翼のような腕が生えていた部分からも出血しており、体中に氷の螺旋槍が刺さった穴からも出血している。
どうやらこいつに再生能力はないようだ。
最初の怪我すら再生されずに出血が続いているのが良い証拠だろう。
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