幼女と執事が異世界で

天界

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第5章

107,再々ドリル

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 屋敷の一室にはMPタンクが集められその全てにMPが満タンまで充填してある。
 スタミナ回復ポーションも屋敷にあったものは全て集めたがそれほど数があるわけではない。
 回復力強化系のスキルがスタミナ回復にも効果があるのは走りこみでわかっているので予めかけてから戦闘開始する予定ではあるが効果は30分だ。
 その間にポーションをいくつ使うかによるだろうが今ある分では足りないだろう。
 他にいくつ購入できるかで時間単位辺りの総攻撃力が大分変わってくるだろう。

 オレが魔法を連射するので接近戦をするのは巻き込みが心配なのでかなり難しい。
 レーネさんには遠距離攻撃スキルで頑張ってもらわないといけない。

 MPタンクはいちいちアイテムボックスから取り出して使うにも大型なものもあるのでアルにサポートしてもらう。
 接近されたら結界の外に退避の予定なので地面に置きっぱなしにしておくこともできないのだ。
 レーネさんはポーションなので、アイテムボックスからの使用が出来るので問題ない。

 ポーション系って結局1度も使ったことないのだけれどアイテムボックスから使えるっていうのはすごく便利だ。
 普通に使う場合は傷口にかけたり飲んだりする。かけたら濡れるし、飲んだらお腹に溜まる。
 でもアイテムボックスから使うと効果だけしかない。便利すぎるだろうアイテムボックス。
 その癖MPタンクは体の一部に接触していなければいけないのでアイテムボックス越しでは使えない。

 屋敷にあったMPタンクはやはりランカスターさんに貰った月陽の首飾りのような超性能なものは少ない。
 あっても大型になってしまっていてとてもじゃないが身につけることができる物ではない。
 それでもアイテムボックスにいれてしまえば持ち運びは楽チンだ。
 MPタンクに関しては屋敷にある分で30分くらいは威力と速度重視で魔法を撃ちまくってもなんとかなるんじゃないだろうか。
 やはり問題はポーションの方か。

 実際の所レーネさんが朱珠白塵で遠距離攻撃用のスキル――ブレイズウィングを連打できるのは4回程度が限界。
 ブレイズウィングは速度威力共に高性能なスキルで習得するのにかなり時間がかかったスキルだそうだ。
 ちなみにスキルは使用し続ける事によって新たなスキルを習得できるそうだ。
 オレの鈍器スキルも使い続ければ新しいスキルを得られるらしいのでなるべく使いたいが魔法が万能すぎるのでなかなか……。


【では安全性を重視して移動用結界を5重に張って挑みます。
 恐らく使用してくる中級風魔法で結界が一枚でも破られたら何があってもすぐに精霊様の結界の外に出て張りなおすこと。
 300m以内に入られたら同様に外に出ること。
 間違っても接近戦を挑んではいけません。
 MPタンクなども無理に回収したりせず使い捨てるくらいの気持ちでいくほうがいいです】

【了解です。
 レーネさんも無理しちゃだめですよ?】

【はい、今回は大分楽が出来ますが特殊進化個体モンスターは慎重に慎重を重ねるくらいでないとダメです】


 スタミナ回復ポーションが届くまで作戦の打ち合わせをしておく事にしたが、基本的には遠距離からひたすらに撃ちまくるという作戦だ。
 他にはどの程度まで接近されたら結界の外に退避するかなど。
 とにかく徹底して安全策を取り、余裕をもって一方的な展開にするのが前提だ。

 普通はこんな大規模な精霊の結界を利用する事なんて出来ないので今回はかなり安全だが、それでもレーネさんは過剰なまでに安全マージンを確保しようとしている。
 万が一にもオレに特殊進化個体モンスターの攻撃が当たってしまうことがないようにしているんだろう。
 まぁあの巨体の攻撃なんて受けたら障壁も耐えられないんじゃないかとは思う。

 何はともあれ取れる作戦は結界をうまく使って特殊進化個体モンスターを誘導し、一方的に遠距離攻撃で仕留める、だ。


 スタミナ回復ポーション集めは夕方ぐらいまで時間を取ってあるし、作戦も基本的には簡単なので詰めるといってもこれ以上詰められない。
 あとはせいぜいMPタンクの貯蓄量がそれぞれ違うのでどれがどの程度入っているのかアルが確認するくらいだろうか。
 MPタンクの管理はアルがするのでオレの事がオレ以上にわかるアルの用意してくれるタイミングならまず間違いあるまい。

 ちなみにネーシャには事前に話すと絶対心配して仕事が手につかなくなるから終わってから話すことにしている。
 エリザベートさんも同様だ。いえばきっと反対される。
 いくらランクSを瞬殺してみせても特殊進化個体モンスターは魔結晶を4つ持つ強力な個体だ。
 精霊の結界があるからといえど2人で挑むのは絶対反対される。
 安全策を十分に講じれるのだからもっと大戦力で挑むべきだといわれるのがオチなのだ。

 レーネさんも同じ事を言ってたけどオレはBaseLvのためにも少人数で挑みたい。
 人数は増やせば増やすだけ経験値的なものが分散してしまうようなのだ。少ないと思われるLvアップの機会を逃すわけには行かない。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







「用意できた~?」


 翌日、帰還用魔道具リリンの羽根で精霊の小川まで戻ってくると開口一番ユーウイトさんが実にまったりとしたのほほんとした声音で聞いてきた。
 精霊なのに着ている服が昨日と違う。
 昨日はサマードレスタイプの淡い水色のワンピースだったが今日は薄緑色のワンピースにケープを羽織っている。


「はい、準備は万端です」

「それはよかった~。早くあいつなんとかして~」

「とりあえず今日の作戦がうまくいかなかったらまた考えるという事になりますけど、まぁ大丈夫でしょう」

「期待してる~」


 相変わらず自分の家を荒らされているのに他人事のようにのほほんとしている精霊様。
 やっぱり人と違って精霊ともなるとこれくらいでは心を揺さぶられるということはないのだろうか。それともただ単にユーウイトさんがまったりしてるだけ?


「あら、ワタリ。おかえりなさい。
 あなた昨日どこで野営していたんですの?」

「おはようございます、アリアローゼさん、マイさん、カイトさん」

「「おはようございます」」


 精霊の小川のすぐ傍で野営していた3人が話し声を聞きつけてきたようだ。
 それにしても昨日帰ったと思ったんだけどやっぱり迷ったんだな。なんというかだんだんこの人がわかってきた。


「それよりまた迷ったんですか?」

「えぇ、迷いましたの」

「はい……。もう盛大に……」


 朝っぱらから疲労の色の濃いマイさんの苦労が偲ばれる。
 アリアローゼさんは悪びれもせずに泰然としているけれど、マイさんの様子からアリアローゼさんが先頭を突っ切って進んでいるのは聞かないでもわかるだろう。
 このマイペースで人の話を聞かない貴族様はきっとマイさんの話も聞かないのだろう。
 薬が必要だからこの森にマッドベアーを狩りに来てオレ達から譲り受けたくせにまだ帰れないとかどうなんだろうか。まぁいいけどね。


「私達はこれからユーウイトさんの依頼を受けに行きますけど、アリアローゼさんはどうするんですか?」

「あなた特殊進化個体モンスターと戦う気ですの? 無茶はやめなさいな。
 特殊進化個体モンスター殺しのストリングス様がいらっしゃるからといってたった3人では自殺行為ですのよ?」

「その辺はきっちり作戦を立ててますので大丈夫ですよ」

「ですが……」


 心配そうにしているアリアローゼさん。
 話を聞かないマイペースな貴族様だけど、結構いい人なんだよね。
 最初から感じていためんどくさい人という印象は抜けないけれど、貴族然とした傲慢さや嫌味はない。
 まぁちょっとゴーイングマイウェイすぎるけど。


「ねぇ~そろそろいい~?」


 痺れをきらしたもう1人のマイペースな人……ではなく精霊が宙にふよふよ浮きながら小首を傾げて聞いてくる。
 こういう仕草が非常に似合っていて可愛い。


「あ、はい。
 じゃあ私達は行きます。今度こそ迷わないといいですね」

「わかりましたわ。あなた達も冒険者。自分達で決めた事なら是非はありませんわ。
 がんばりなさい」

「はい、それじゃユーウイトさんお願いします」

「は~い。そりゃ~」


 気の抜ける掛け声と共に視界が変化し、結界の中で大暴れしている特殊進化個体モンスターが目に入った。
 ずっと暴れ続けているのだろうか。だとしたらすごい体力をしている。


「さてちゃちゃっと配置につこう」

【わ、ワタリさん……あの……】

「ん?」


 レーネさんが困惑気味の変な念話をしてくるので振り返るとそこには見事なドリルを2つ装備したお嬢様が先ほどの精霊の小川で別れたままの姿で立っていた。
 お供の2人はいない。


「あれ? アリアローゼさんなんで来たんですか?」

「それはわたくしが聞きたいですわ。なぜですの?」

「あれ~? なんでだろ~?」


 小首を傾げる可愛い精霊さんの声にみんなで小首を傾げて返すのだった。
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