幼女と執事が異世界で

天界

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第7章

129,ハルベスタ総合武具店

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 エンタッシュにお薦めの鍛冶屋を聞くと案内してくれるということでさっそくアルと2人で馬車に乗り込む。
 いつもそうだが、さり気無く馬車の扉を開けてくれて手を取ってエスコートしてくれるその仕草は格好いい。
 なんだか今日は特に格好よく見えてしまってちょっと困る。
 顔が赤くなるほどではなかったけどちょっとアルの顔を直視できない。なんだろう、後光的なアレかな!?


 ほとんど揺れない馬車に向かい合って座るが景色ばかり見て結局アルの方は見れなかった。
 実際は10分くらいだったはずだが、オレにはとても長く感じた……気がする。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 エンタッシュが案内した鍛冶屋はラッシュの街でも1番の腕を持つ鍛冶屋らしい。
 しかし店内に飾ってある武具はランカスター魔道具店のような全品魔道具ではなく、普通の武具のようだ。
 ランカスター魔道具店は一般的なお店を表とするなら裏にあたるお店なので、1番の腕という括りには入っていないのではないだろうか。きっと表の・・鍛冶屋では1番の腕なんだろう、うん。
 まぁ今回は武具を買いに来たわけではないので別に問題ない。
 ランカスター魔道具店では出来ない魔結晶の装着が出来ればそれでいいのだから。
 ……あと鍛冶屋っていうか武具店だよね、ここ。


「これはこれはエンタッシュ様、よくおいでくださいました。
 今日はどういったご用件でございましょうか」


 入店したエンタッシュを見た店員が慌てて奥に引っ込んでしまったので、どうしようかと店内を少し眺めていると揉み手をしたチョビ髭の痩せ気味のおっさんが出てきた。


「お嬢様、こちらハルベスタ総合武具店の店主のハルベスタ殿にございます。
 ハルベスタ殿、このお方が私の新しい主にございます。以後お見知りおきを」

「これは失礼致しました。わたくし、当ハルベスタ総合武具店店主――ローグ・ハルベスタと申します。
 本日はようこそおいでくださいました」

「ワタリ・キリサキです。よろしく。
 今日は魔結晶を装備品に装着して欲しくて来たんですけど」

「そうでございましたか、ですがこの時期に魔結晶の装着をお試しになるとは……その、珍しい」


 揉み手は変わらずハルベスタさんが1拍考える仕草をした後言葉を繋ぐ。
 珍しい? この時期って、何かあるのだろうか?


「そうなんですか? 魔結晶の装着に時期が関係あるんですか?」

「いえ、近々魔結晶のオークションが行われますので通常はそのオークションが終わってから装着を試みるお客様が多いのです」

「へぇ~……。オークションなんてやるんだ」

「えぇ、半年に1度のラッシュの街最大の魔結晶オークションにございます。
 よろしければご参加なさいますか? 見学するだけでも大変見ものでございますよ」

「面白そうだねぇ。それに色んな魔結晶も見られそうだし」

「えぇ、もちろんでございます。普段あまり見ることが出来ない珍しい魔結晶も出品されますのでお勧めでございますよ」


 なんだかすごくオークション参加を推して来るな。何かあるのかな?
 あ、エンタッシュをお得意様みたいに扱ってたし、主が変わってもオレやアルの服装から金持ちであることを察知していたのかな?
 参加すれば見てるだけでは我慢できず、大抵は魔結晶を競り落とすだろう、と。そしてここで装着を試みる回数が増えるからその分お店に落ちる金額も増える、と。


「でも、急遽参加とか出来るんですか?」

「それでしたらここにちょうどVIP席のチケットが1枚ございます。この1枚で最大5人まで参加可能でございます。よろしければこちらを差し上げましょう!」

「いいんですか?」

「もちろんでございます! エンタッシュ様には当店で何度も武具を購入していただいております。最近も武具一式を大量に購入していただいておりますのでこれくらいは当然でございます」


 なんか気前がいいと思ったらそういうことか。
 戦闘用奴隷の人達のトレーニング用の武具が結構くたびれてたし、顎のPTに貸し出している奴隷達への武具についても結構購入しているはずだけど、どこで購入しているかは聞いてなかった。
 つまりはここで購入しているのだ。エンタッシュはお得意様みたいな、ではなくお得意様なのだ。
 だからその主人であるオレは自動的にお得意様でVIP席くらい安い物ってことか。
 でもこれからもこの店で買ってくださいねって意味もあるんだろう。まぁ別にここ以外に変更する理由もない。1番の店らしいしね。


「じゃあ、ありがたく頂きます」

「是非楽しんできてくださいませ。
 あぁそれと魔結晶装着の件でございますが、いかがなさいますか?」

「そうですねぇ~。とりあえずオークションが終わってからもう1度来ます。
 あ、そうだ。どうやって装着するのかとか見学とか出来ますか?」


 もし他人の魔結晶装着の見学が出来るならただでさえ少ないデータをより多く集める事が出来る。
 でも魔結晶自体が高価なので早々やる人はいないだろうからだめもとだ。


「申し訳ありません。本日魔結晶装着の注文は承っておりません。
 ですが、どういった道具を使って行うか、などといった工房見学程度でしたら問題ありませんが、いかがですか?」

「工房見学かー。あーそれだったらネーシャ連れて来ればよかったなぁ」

「おや、鍛冶に興味がおありの方ですか?」

「えぇ、今他のところで修行している子がいるんですけど、その店では魔結晶の装着はやっていないので勉強になればいいかなぁ、と」

「なるほど。魔結晶装着は行っている所は多くはありませんので確かに勉強になるでしょう。
 でしたら、次にご来店頂く時にお連れになってはいかがでしょうか。
 職人に事前に話を通させていただければ解説などもさせることができますので」

「それは助かります。
 あ、ちなみにオークションはいつ行われるんですか?」


 VIP席のチケットは貰ったけど、チケット上には開催場所は書いてあったが開催日時は書いてなかった。
 なので一応聞いておこう。あとでエンタッシュにでも聞けば問題ないだろうけど、その後のスケジュールも決めておきたいし。


「2日後の日没後に開始となります。
 入場は昼頃から可能となっておりますので余裕を持って入場されるとよろしいかと」

「わかりました、ありがとうございます。
 じゃあオークションが終わってから3日以内に来ますので、そう職人さんに伝えておいて貰えますか?」

「畏まりました。職人には確かに伝えさせていただきます」


 恭しく腰を折る店主さんに背を向けて店を出る。
 オークションの事をエンタッシュに聞いてみると一応オークションがあることは知っていたそうだけど、顎はオークションはエンタッシュを通してではなく専用の代理人を通していたそうだ。
 なので彼はオークションに関してはノータッチだったのですっかり失念していたらしい。
 深々と頭を下げられたが別に特に問題もないので普通に許して終わりにしておいた。


 さぁ、魔結晶装着以外には特に用はなかったので屋敷に帰ろう。
 でも時間はまだまだある。ついでだから馬車ではなく歩いて戻る事にした。

 エンタッシュにそのことを伝えて先に帰ってもらう。
 馬車を見送ってからアルと手を繋いで歩いていく。
 馬車に乗るときとか降りるときとかちょっとドキドキしたアルの手だけど、こうやって歩く時に繋ぐ手はいつもと変わらない。
 それでもちょっと見上げると綺麗な銀髪を煌かせた爽やかな顔が見えてドキドキしてくる。

 いかんいかん。オレはなんでドキドキしてるんだ。アルだぞ。アルだ。アル……。
 ……ハッ。いかんいかん。

 思考がおかしくなってきたので頭を振って吹き飛ばすと町並みに視線を無理やり移してなかったことにした。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 ハルベスタ総合武具店がある街区は冒険者通りからはかなり離れていて周りに高級そうなお店が多いところだ。
 歩いている人達もどこか高級そうな服を着て品がよさそうな感じがする。
 それもそのはずこの街区は貴族の屋敷が多い、通称貴族街と呼ばれる場所の入り口付近だ。
 入り口付近なので奥に行けば行くほど高級な店が増えて全体的に値段も高く、質もよくなっていく。
 ちなみに貴族街にある武具店は装飾などに力を入れている店ばかりで実用性はあまりないらしい。
 なので実用性も考えるとハルベスタ総合武具店が表の武具店では1番になる。


 貴族街に並ぶように建っている1軒のオープンカフェでちょっとお茶をしていくことにした。
 雰囲気も良く、店内にはそれなりにお客さんもいるようだからはずれではないだろう。


「アル、アップルパイがお薦めみたいだよ」

「先ほどあった果実屋でも林檎が多く置かれておりました。旬なのでしょう」

「なるほどねー。もうすぐ夏なのに林檎が旬なのかー……。まぁいいか。
 コレ頼もうか」

「畏まりました」


 アルが近くの店員さんを呼ぶと10代後半に入ったばかりくらいの可愛い感じのウェイトレスさんが注文をとりにきた。
 アルがアップルパイと紅茶を注文をすると女の子は頬を染めつつもきちんと注文を用紙に記入して一礼してから戻っていった。
 海鳥亭でもウェイトレスのお姉さんにアタックされているアルだが、ここでも犠牲者が……。
 まぁうちのアルは格好いいから仕方ないけど……。なんだろう、ちょっと胸がもやもやする。
 これはアップルパイを大量に食べないと治らないかもしれない。
 そうだ、アルにアップルパイを作ってもらおう。そうだそれがいい。


「アル、帰りに林檎買って帰ろうか」

「畏まりました。でしたらアップルパイを屋敷で焼きましょう」

「うん、お願いね」


 まだ注文したアップルパイが来てもいないのに次のアップルパイの話に花を咲かせる。
 どう考えてもこのお店のアップルパイがアルの作るアップルパイに勝てるわけがないが、そこは気にしたら負けだ。

 アップルパイが来るまで先に来た紅茶を飲みながら、他愛もない話をアルと交わす。

 お店のアップルパイはそれなりに美味しかったが、やっぱりその後屋敷に帰って作ったアルの作ったアップルパイの方が比べる意味もないくらいに美味しかったのは言うまでもない。


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