幼女と執事が異世界で

天界

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第7章

130,正装

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 魔結晶オークションには当然ながら正装で行く。
 正装といえばタキシードやスーツなんかが思い浮かぶが残念ながら今のオレは6歳の女児なのでそういったものは着れない。
 いや着れないことはないがドレスやなんかを着た方がそれらしくはなる。
 VIP席なので他人は別に気にしなくてもいいし、何着て行ってもよさげな雰囲気はあるがそこはやはり我らがエリザベートさんが許してくれなかった。

 ちなみに5人まで一緒に行けるので、オレ、アル、レーネさん、ユユさん、エリザベートさんというメンバーで行くことになった。
 ユユさんはアドバイザーだ。
 ゴーシュさんに最初お願いしようかと思ったのだがユユさんがぜひとも行きたいということでお願いした。
 ネーシャは残念ながら今回はお留守番だ。


 さて肝心の正装だが、今回はオレの意見を尊重してくれるということなので――あくまでもドレスという枠組みの中での尊重――可愛い系のフリフリドレスは押しのけてシックに行くことにした。
 姿見で確認してもちょっと背伸びした感じはあるがおかしくはない。
 喪服にも見えそうなほどに真っ黒で胸元に小さく花が咲いているだけのシックなドレスだ。
 髪はアップにしてうなじが見えてセクシーな感じになっている。

 エリザベートさんが非常にいぢくりたそうにしていたが、今回はなんとか自重してくれた。
 その反動なのかレーネさんとユユさんのドレスはエリザベートさん臭が全開となっていた。南無。

 ユユさんはそのありあまる残念なセンスのために自らでドレスを選ぶのを速攻で却下され、少ししょんぼりしていたがエリザベートさんの選んだフリフリのたくさんついた非常にロリータなドレスがお気に召したご様子だ。
 何度も姿見の前でくるくる回って、終いには目を回してネーシャに介抱されていた。

 レーネさんはドレスなどをほとんど着た事がないそうで、少し不安そうだった。
 エリザベートさんとはギルドで面識もあったのでエイド君との会話に比べればマシだがそれでもオレ達と会話するようにはいかない。
 そのためかエリザベートさんのぐいぐい来る性格に終始押されっぱなしで着せ替えさせられていた。
 レーネさんは大きいけど可愛いし、スタイルも悪くない。
 いや悪くないどころか鍛えているから出ているところは出ているけど、引き締まっているところは非常に引き締まっていてメリハリの効いたナイスプロポーションだ。
 この世界――ウイユベールではレーネさんのような腕力系女子でも筋肉マッチョということにはならない。
 スキルでその辺を埋められるので一見して力がなさそうでも実際はすごい、なんてことはざらだ。
 そんなレーネさんなのである程度どんなドレスを着ても似合う似合う。
 エリザベートさんが着せ替え人形にしてしまうほど良く似合う。
 本来はオレが見舞われる被害だったと思うとついつい合掌してしまう。
 すごく可愛いですよ、レーネさん。だから頑張って。

 結局エリザベートさんが選びに選んで決めたドレスは胸元が大きく開いたアダルティなドレスだった。
 一応フォローとしてケープ風のボレロを選んであげたので大丈夫だろう……たぶん。

 みんなのドレスを選んで満足しているエリザベートさんはすでに自分のドレスは決まっていたらしく、レーネさんに負けないセクシーなドレスを着ていくようだ。
 エリザベートさんのロケットは確実に重力に逆らっている危険物だ。
 その危険物の威力を十二分に発揮するセクシーアンドセクシーなワンショルダードレス。
 VIP席じゃなければ会場中の男性の視線を釘付けにできるかもしれない。

 でも当のエリザベートさんが釘付けにしたい視線はどうやらオレらしい。
 今も必死に流し目アンド両腕で挟み込んで谷間を強調した非常にエロイ――すでにセクシーというよりエロイ――ポーズを決めている。

 うん、なんだろう。やっぱり体が女だからかな……なんとも思わんね!
 エリザベートさんだから……という残念な理由ではきっとない……と思う。

 女性陣のドレスはエリザベートさんの手によってがっつり決まったが、唯一の男性――アルはといえば……いつもの執事服だ。
 まぁアルにとっての正装といえばこれだからしょうがない。
 たまにはスーツとか着てみてほしいけど……執事服のアルは非常に格好いいから問題なんて何もない。


 ちなみに今回はお留守番のネーシャは全員のドレスが決まったあとでエリザベートさんとオレによって着せ替え人形になった。
 レーネさん以上にたくさんのドレスを試着しては恥ずかしそうにしながらも嬉しそうだった。
 今回はお留守番だけど雰囲気だけでも味わえてもらえたようで何よりだった。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「じゃあ、オレ達が来た時にはキングを釣り上げている最中だったわけですか」

「はい。討伐依頼が発行されてその日のうちにこれる距離では普通ないので油断していたそうです」


 グレーさんに会ってきたレーネさんから今回の騒動についての話を聞くと、どうやらグレーさん達もきちんと配慮してあの岩場で事を起こしたらしい。
 あの岩場はほとんど人が来ない。
 ラッシュの街からもかなり遠いし、途中に獣の窟があるので冒険者もまったく来ない場所だったらしい。
 獣の窟は雑魚しかいないので普通はあんな奥の奥にある場所には誰も来たがらない。
 その上岩場のその先にあるのは海まで荒野が続いているだけらしいので海に行くなら違うルートを通った方が近いし、経由できる村などもないので人が来ることはほとんどない。
 そういう場所だけに選んだそうだったが結果としてはデミオークの調査依頼が通っていたり、その結果の討伐依頼があったりと色々と目論見どおりにはいっていない。
 ランクSでも全てをコントロールできるわけはないので仕方ない面ではある。
 しかしそれでもオレ達のような高速な移動手段をもたなければ問題はなかったそうだ。
 高速馬車なんて普通は持っていないので考慮する必要性はほとんどない。
 ラッシュの街からあの岩場まで高速馬車を使っても2日かかっている。
 普通ならその4倍から5倍は余裕でかかるし、徒歩ならもっとかかる。
 十分に処理をしてしまえる時間はあったそうだ。


「あのクイーンの警戒鳴アラートボイスで誘導していたオークキングが引き返してしまったために様子を見ることになったそうです。
 兄様達もワタリさんの魔法にはすごく驚いていましたよ。
 ワタリさんほどの魔法使いは見たことがないそうです。
 どこで知り合ったのかとか、一緒にPTに来ないかとか、色々といわれました」

「まぁ……王族の不文律プリンセス・スマイルを使っての魔法ですからね。
 見たことない威力なのは当然でしょうねぇ」


 王族の不文律プリンセス・スマイル自体が魔眼でも最上位のものだ。
 そんなものを持っている人は早々いないだろう。

 ちなみにレーネさんと一緒でもグレーさんのPTに合流するという気はない。
 その辺はしっかりと言ってあるのでレーネさんはちゃんと断ってきてくれた。

 ランクSのPTに参加するのはいろんな面でリスクがある。もちろんその分リターンも多いだろう。
 だがオレ達はオレ達の目的があるし、かなり自由にやっている。
 なので今他人のPTに入ることはあまり得策ではないのだ。例え実力的に見合っているPTであっても、だ。


「兄様達はすぐにラッシュの街を発つそうです。まだ依頼は終わっていませんので。
 ですが終わったらまた戻ってくるそうなのでそのときはゆっくり話がしたいと言っていました」

「じゃあやっぱりラッシュの街のお偉いさんの依頼ではないようですね。
 王都辺りかな?」

「かもしれません。
 もしかしたら国の機関からの依頼かもしれません。
 オークロードなんて危険な魔物を生け捕りにする依頼ですからね……」


 それなりに大きな規模の組織からの依頼なのは確かだ。
 でなければランクSに依頼なんて出来ないだろうし、内容が内容だ。


「まぁ……どこの組織か知らないけど、オークロードを取り逃がしたりして被害が出なければなんでもいいけど」

「そうですね。
 兄様も約束してくれましたし、大丈夫だと思います」

「あの胸に手を当てるやつ、ですか?」

「はい。アレは騎士の誓いの一種です。
 心臓を捧げる、という意味合いがあり、かなり強い誓いです」


 グレーさんがレーネさんと行った問答で最後にオレに視線を向けて行った動作。
 どうやらアレは騎士の誓いだったようだ。しかもかなり強い誓い。それはつまりそれだけ重く見た答えだったのだろう。


「へぇ~……。グレーさんも騎士だったんですか?」

「はい、私は兄様に憧れて騎士になったんです。
 兄様はすごく立派な騎士だったんです。
 今は冒険者をやっていますが、王都の騎士団で兄様を知らない人はいないといえるくらい有名だったんですよ」

「それはすごいですねぇ」


 そんなすごい騎士の妹のレーネさんもきっと有名だったんだろうな。というかここでも有名か。
 今のレーネさんならランクSクラスの実力はあるだろうし、兄妹揃ってすごいもんだ。

 なんで騎士をやめて冒険者をしているのかちょっと気になったけど、あんまりいい話ではなさそうなので聞くのはやめておいた。

 グレーさんのことを話すレーネさんは誇らしげでとても嬉しそうだ。
 そんなレーネさんとの談笑は夜が更けるまで続くのだった。


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