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最終章
169,居場所
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エリア姫から連絡があったのはグレーさんが眠ってからしばらくしての事だった。
もっと時間がかかるかと思ったが随分早い。
そもそも王都からここまで通常の方法で移動した場合、馬車なら2週間。徒歩ならその倍以上もかかる。
それを一瞬で移動が完了してしまう座標楔設置型転移魔道具を使っているのだから移動に関しては時間はほぼ0に近い。
しかし問題は移動だけではないだろう。今回オークロードを探すために必要となる件の王子は引きこもり。
しかもオレ――正確にはアルと屋敷の使用人達だが――が調べた結果としては引きこもって随分になる。
そんな人間に何かを頼むのは大変ではないだろうか。
まぁその辺はエリア姫がうまいことやったのか、強引にやらせたのか。
とにかくオークロードの居場所は判明した。
「……トレーゼの迷宮の最下層ですか?」
「うむ。現在150階層まで到達しておる迷宮じゃな。確か『破滅の牙』じゃったか」
顎がランクSになる切欠となった迷宮だ。
やつはトレーゼの迷宮で150階層を突破してフロアボスを撃破してランクSになった。
しかし150階層は最下層ではない。
最下層だった場合、フロアボスを撃破したことよりも迷宮の核を持って帰る事の方が圧倒的に話題になる。
「最下層って何階になるんですか?」
「それはわからんのじゃ。兄上は位置を特定する事にかけてはかなりのものじゃが、横には強くても縦には弱いからのぅ」
「というか、よくもまぁこの短時間に最下層になんかいけましたね、オークロード」
「うむ、それじゃ。
妾もひっかかっておるのはそこなのじゃ。例えグレーを瀕死にまで追い込むほどの大災害級であってもこの短時間で150階層以上も迷宮を潜るのは不可能のはずじゃ」
「特殊な移動スキルでもなければ、ですね」
「その通りじゃ。妾達のような転移魔道具もしくはスキルを持っておった場合……位置特定はほとんど意味がないのじゃ……」
見つけても移動されたらまた探さねばならなくなる。
いくら位置特定のユニークスキルを持つものがこちらにいるとはいってもそこまで行くのに時間がかかる。
「例え魔道具で移動したとしても自身のスキルを使いこなせないものにグレーを追い詰める事など出来るとは思えんのじゃ。その上スキルとなると最早打つ手がないのじゃ」
オークロードは魔道具を無効化する特殊なスキルを使ってきた。
しかしそれほどのスキルの場合、自分のみを対象外とするのはまず無理だろう。しかし残念ながらオレ達が使っているように転移系魔道具は発動が一瞬。
使う場合スキルを解除した一瞬で事足りてしまう。その程度できなければグレーさんを、ランクSを追い詰める事は難しい、というのがエリア姫の見解だ。
その上、転移スキルの場合は魔道具無効化の特殊スキルは関係なくなってしまう。
まぁどちらにせよ転移を妨害する手段がなければ逃げられる可能性が高いということだ。
ちなみに転移を妨害する方法は限られる。
エリア姫が打つ手はないといっているのは転移妨害には膨大なMPが必要となる魔道具を使う必要があるからだ。
「本当に相性最悪の相手ですね」
膨大なMPが必要だが、これはオレか事前に用意すれば問題はない。まぁエリア姫はオレのMPが無限になるということは知らないから自前で用意しなければいけなくなる。
しかし問題はやはり魔道具無効化のスキルだ。
全てはコレに尽きる。
「じゃがだからといって何もしないわけにもいかんのじゃ。すでにやつは討伐しなければならない相手なのじゃ」
しかし現実的に考えてグレーさんを瀕死に追い込むような相手で、いざとなれば転移して逃げるような相手をどうやって倒すのか。
……オレなら不意打ちからの一点火力による殲滅だろうか。
どんな凶悪なスキルでも使わせなければ問題にならない。
しかし強力なユニークスキルを持っているエリア姫達転生者でもオレほどの火力を持っているとは思えない。
どうするのだろう?
「ですがどうするんですか?」
「勇者の装備を全て動員するのじゃ」
「ほぅ……?」
やはり出てきたか勇者の装備。
馬鹿みたいな壊れ性能は伊達じゃないらしい。今回の決定打になるようなスキルもあるのかもしれない。
神具だから魔道具を無効化するスキルにも抵抗できるか、元々効かない可能性も高いしな。
「そういうわけじゃからわたりんとレーネには勇者の装備の試着をしてもらうのじゃ」
「あ、それならレーネさんが全部装備しますよ」
「いや、そういうわけにもいかんのじゃ。勇者の装備はインテリジェンスアイテムじゃ。自身で装備者を選ぶのじゃ。
じゃからレーネ1人で装備できるというわけでもないのじゃ」
「つまり残っている装備はアリアローゼさんを選ばなかったんですか?」
「まぁ……ありていに言えばそうじゃな」
てっきり出し惜しみか時期をみてって感じかと思ったら単純に選ばれなかっただけみたいだ。
ドリルさん勇者なのに中途半端だな。
それじゃあレーネさんが残り全部を装備できるかどうかは賭けになるな。
しかし勇者がそんな分散していいのかね。
同じ部位の装備がいっぱいあるわけでもないだろうに。
むしろ勇者の装備なんだから一式装備だろう。その辺の様式美はありそうだし。
「じゃあすぐにこっちに戻ってくるんですか? 私達はそっちにはいけませんし」
「そうじゃな。装備の用意が出来たらすぐに戻るのじゃ。
じゃが何分勇者の装備じゃからのぅ。厳重に保管しておるから、今日中に戻れるかどうか……」
「わかりました。寝てたら叩き起こして下さい」
「すまんがそうさせてもらうのじゃ。わたりん達は今のうちに出発の用意を整えておくのじゃぞ」
「心得てますよ」
「うむ、ではまたの」
通信を終えるとレーネさんの気合の入った引き締まった顔には微妙に影が差している。
気合が入っているのに影が差しているというなんとも複雑な表情だけど、勇者の装備が動員されるのが確定したからこんな表情なんだろう。お察しします。
あ、でもオレも装備することになる可能性があるんだよなぁ。出来れば全部レーネさんが選ばれてくれないかな。
「わ、ワタリさん……」
「大丈夫ですよ。きっと全部レーネさんが選ばれますから!」
「そ、そんなぁ……」
冗談で場を和ませたところでトレーゼの迷宮に必要な物をそろえることにした。
……とはいってもオレ達の必需品は各それぞれのアイテムボックスに常備してあるし、アルのアイテムボックスにはかなりの数のアイテムがぎっしり詰まっている。
しかし今回魔道具が使い物にならない可能性があるので用意すべきものがある。
それは装備だ。
さらにいえば武器だ。
この世界――ウイユベールの上位装備はほとんどが魔道具。
したがって今回は相性が悪い。なので魔道具に匹敵しつつも魔道具ではない武器が必要になる。
まぁあくまでも用意しておくというだけのつもりだ。
基本的には不意打ちによる殲滅を狙うつもりなのだし。
エリア姫達に力がばれるのは最早今更すぎる。
回復魔法の件ですでに取り返しのつかないレベルになっていると思うしね。
というわけでランカスター家に武器を取りに行く。
オークションに出す予定だった武器で魔道具ではない武器というのは実は結構ある。
今回の件では打ってつけの武器だ。
いくらランカスター家の鍛冶師達が優秀といっても大量の魔結晶を仕込む際、魔道具の武器を大量生産できたわけではない。
そもそもある程度簡単に売りさばけるように、という目的で魔道具の装備を使わなかったのも多い。
本来オークションに出す予定だった武器を根こそぎ持っていくことにしたのでゴーシュさん達は驚いたが必要だと説明すればあっさり承諾してくれた。
元々オレの物でもあるわけだしね。
むしろ心配はしてないが気をつけろよ、と激励まで貰ったくらいだ。
今回はレーネさんがいつも以上に気合が入っていたのもあってバレバレだったみたいだ。
根こそぎ持ってきたのでエリア姫達に配ってもあまりあるだろう。
最低でも彼女達にもアイテムボックスの枠は3つはあるわけだし、邪魔になるということはあるまい。
必要な物は揃った。
あとはエリア姫を待つばかりだ。
もっと時間がかかるかと思ったが随分早い。
そもそも王都からここまで通常の方法で移動した場合、馬車なら2週間。徒歩ならその倍以上もかかる。
それを一瞬で移動が完了してしまう座標楔設置型転移魔道具を使っているのだから移動に関しては時間はほぼ0に近い。
しかし問題は移動だけではないだろう。今回オークロードを探すために必要となる件の王子は引きこもり。
しかもオレ――正確にはアルと屋敷の使用人達だが――が調べた結果としては引きこもって随分になる。
そんな人間に何かを頼むのは大変ではないだろうか。
まぁその辺はエリア姫がうまいことやったのか、強引にやらせたのか。
とにかくオークロードの居場所は判明した。
「……トレーゼの迷宮の最下層ですか?」
「うむ。現在150階層まで到達しておる迷宮じゃな。確か『破滅の牙』じゃったか」
顎がランクSになる切欠となった迷宮だ。
やつはトレーゼの迷宮で150階層を突破してフロアボスを撃破してランクSになった。
しかし150階層は最下層ではない。
最下層だった場合、フロアボスを撃破したことよりも迷宮の核を持って帰る事の方が圧倒的に話題になる。
「最下層って何階になるんですか?」
「それはわからんのじゃ。兄上は位置を特定する事にかけてはかなりのものじゃが、横には強くても縦には弱いからのぅ」
「というか、よくもまぁこの短時間に最下層になんかいけましたね、オークロード」
「うむ、それじゃ。
妾もひっかかっておるのはそこなのじゃ。例えグレーを瀕死にまで追い込むほどの大災害級であってもこの短時間で150階層以上も迷宮を潜るのは不可能のはずじゃ」
「特殊な移動スキルでもなければ、ですね」
「その通りじゃ。妾達のような転移魔道具もしくはスキルを持っておった場合……位置特定はほとんど意味がないのじゃ……」
見つけても移動されたらまた探さねばならなくなる。
いくら位置特定のユニークスキルを持つものがこちらにいるとはいってもそこまで行くのに時間がかかる。
「例え魔道具で移動したとしても自身のスキルを使いこなせないものにグレーを追い詰める事など出来るとは思えんのじゃ。その上スキルとなると最早打つ手がないのじゃ」
オークロードは魔道具を無効化する特殊なスキルを使ってきた。
しかしそれほどのスキルの場合、自分のみを対象外とするのはまず無理だろう。しかし残念ながらオレ達が使っているように転移系魔道具は発動が一瞬。
使う場合スキルを解除した一瞬で事足りてしまう。その程度できなければグレーさんを、ランクSを追い詰める事は難しい、というのがエリア姫の見解だ。
その上、転移スキルの場合は魔道具無効化の特殊スキルは関係なくなってしまう。
まぁどちらにせよ転移を妨害する手段がなければ逃げられる可能性が高いということだ。
ちなみに転移を妨害する方法は限られる。
エリア姫が打つ手はないといっているのは転移妨害には膨大なMPが必要となる魔道具を使う必要があるからだ。
「本当に相性最悪の相手ですね」
膨大なMPが必要だが、これはオレか事前に用意すれば問題はない。まぁエリア姫はオレのMPが無限になるということは知らないから自前で用意しなければいけなくなる。
しかし問題はやはり魔道具無効化のスキルだ。
全てはコレに尽きる。
「じゃがだからといって何もしないわけにもいかんのじゃ。すでにやつは討伐しなければならない相手なのじゃ」
しかし現実的に考えてグレーさんを瀕死に追い込むような相手で、いざとなれば転移して逃げるような相手をどうやって倒すのか。
……オレなら不意打ちからの一点火力による殲滅だろうか。
どんな凶悪なスキルでも使わせなければ問題にならない。
しかし強力なユニークスキルを持っているエリア姫達転生者でもオレほどの火力を持っているとは思えない。
どうするのだろう?
「ですがどうするんですか?」
「勇者の装備を全て動員するのじゃ」
「ほぅ……?」
やはり出てきたか勇者の装備。
馬鹿みたいな壊れ性能は伊達じゃないらしい。今回の決定打になるようなスキルもあるのかもしれない。
神具だから魔道具を無効化するスキルにも抵抗できるか、元々効かない可能性も高いしな。
「そういうわけじゃからわたりんとレーネには勇者の装備の試着をしてもらうのじゃ」
「あ、それならレーネさんが全部装備しますよ」
「いや、そういうわけにもいかんのじゃ。勇者の装備はインテリジェンスアイテムじゃ。自身で装備者を選ぶのじゃ。
じゃからレーネ1人で装備できるというわけでもないのじゃ」
「つまり残っている装備はアリアローゼさんを選ばなかったんですか?」
「まぁ……ありていに言えばそうじゃな」
てっきり出し惜しみか時期をみてって感じかと思ったら単純に選ばれなかっただけみたいだ。
ドリルさん勇者なのに中途半端だな。
それじゃあレーネさんが残り全部を装備できるかどうかは賭けになるな。
しかし勇者がそんな分散していいのかね。
同じ部位の装備がいっぱいあるわけでもないだろうに。
むしろ勇者の装備なんだから一式装備だろう。その辺の様式美はありそうだし。
「じゃあすぐにこっちに戻ってくるんですか? 私達はそっちにはいけませんし」
「そうじゃな。装備の用意が出来たらすぐに戻るのじゃ。
じゃが何分勇者の装備じゃからのぅ。厳重に保管しておるから、今日中に戻れるかどうか……」
「わかりました。寝てたら叩き起こして下さい」
「すまんがそうさせてもらうのじゃ。わたりん達は今のうちに出発の用意を整えておくのじゃぞ」
「心得てますよ」
「うむ、ではまたの」
通信を終えるとレーネさんの気合の入った引き締まった顔には微妙に影が差している。
気合が入っているのに影が差しているというなんとも複雑な表情だけど、勇者の装備が動員されるのが確定したからこんな表情なんだろう。お察しします。
あ、でもオレも装備することになる可能性があるんだよなぁ。出来れば全部レーネさんが選ばれてくれないかな。
「わ、ワタリさん……」
「大丈夫ですよ。きっと全部レーネさんが選ばれますから!」
「そ、そんなぁ……」
冗談で場を和ませたところでトレーゼの迷宮に必要な物をそろえることにした。
……とはいってもオレ達の必需品は各それぞれのアイテムボックスに常備してあるし、アルのアイテムボックスにはかなりの数のアイテムがぎっしり詰まっている。
しかし今回魔道具が使い物にならない可能性があるので用意すべきものがある。
それは装備だ。
さらにいえば武器だ。
この世界――ウイユベールの上位装備はほとんどが魔道具。
したがって今回は相性が悪い。なので魔道具に匹敵しつつも魔道具ではない武器が必要になる。
まぁあくまでも用意しておくというだけのつもりだ。
基本的には不意打ちによる殲滅を狙うつもりなのだし。
エリア姫達に力がばれるのは最早今更すぎる。
回復魔法の件ですでに取り返しのつかないレベルになっていると思うしね。
というわけでランカスター家に武器を取りに行く。
オークションに出す予定だった武器で魔道具ではない武器というのは実は結構ある。
今回の件では打ってつけの武器だ。
いくらランカスター家の鍛冶師達が優秀といっても大量の魔結晶を仕込む際、魔道具の武器を大量生産できたわけではない。
そもそもある程度簡単に売りさばけるように、という目的で魔道具の装備を使わなかったのも多い。
本来オークションに出す予定だった武器を根こそぎ持っていくことにしたのでゴーシュさん達は驚いたが必要だと説明すればあっさり承諾してくれた。
元々オレの物でもあるわけだしね。
むしろ心配はしてないが気をつけろよ、と激励まで貰ったくらいだ。
今回はレーネさんがいつも以上に気合が入っていたのもあってバレバレだったみたいだ。
根こそぎ持ってきたのでエリア姫達に配ってもあまりあるだろう。
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