ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

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カイ・リンデンバウムの恐ろしき計画

出会う人々 2

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「もう大丈夫ですよ、えーっと・・・」
「エ、エヴァン・レイモンドだ。その・・・助かったぞ、感謝する」
「それじゃあ、レイモンドく・・・様。私はアシュリー・コープ、冒険者ギルドの職員です」

 縮こまったままのエヴァンに対して、アシュリーはそっと手を差し出している。
 彼がその殻に篭った身体を開いたのは、彼女のそんな優しさに触れたからであろうか。
 名前が分からずに言葉に詰まっている彼女に、ぶっきらぼうに名乗ったエヴァンは、助け起こされた手をすぐに放すと、顔を背けては彼女に対して感謝の言葉を告げていた。

「レイモンドって、まさかあのレイモンド家?何か揉めてるなって、見に来ただけなんだけど・・・来といて良かった~」

 エヴァンの名前に聞き覚えのあったアシュリーは、すぐに呼称すらも改めていた。
 彼女は目の前の少年に聞こえないように、小さく独り言を呟いている。
 それは今回の騒動を見て見ぬ振りをするのではなく、ちゃんと動いた自分を褒め称える内容であった。

「・・・?どうしたんだ、コープ嬢?」
「い、いえ!何でもありません!それよりも、レイモンド様こそどうしてこんな場所にお一人で?お付の方とかは・・・?」
「そうだった!空いている席を見つけなければならないのだった!!助かったぞ、コープ嬢。この借りはいつか、必ず返すからな!」

 エヴァンのような立場の人間が、こんな場所を一人でうろうろしているのは余りにおかしい。
 それを指摘するアシュリーの言葉に、自分が何故この場所にいるかを思い出したエヴァンは、その役目を果たそうと駆け出そうとしていく。
 しかしそれを見過ごすほどに、アシュリーはぼんやりとした女性ではなかった。

「お、お待ちください、レイモンド様!!席をお探しでしたら、ここが空いてますよ!!」
「・・・?しかしそこは見たところ、この村の住民達用のスペースではないのか?私が使う訳にはいかないだろう?」
「それはそうですけど・・・ほ、ほら!他は空いてないですし、ここは使ってる人もいないんですから大丈夫ですよ!」

 あんな荒くれ者達の中に貴族のお坊ちゃまを放り込んで、問題になったら自分の責任も問われかねない。
 ましてやその彼と接触する姿を、こんなにも多くの人に目撃された後となれば尚更だ。
 自らの目の前から去っていこうとしたエヴァンを引き止めるアシュリーの声は、そうした事情もあって必死なものであった。
 しかし彼女の言い分にもエヴァンは首を捻るばかりで、その場に留まろうとはしていない。
 そんなエヴァンの姿にアシュリーは必死に、彼を引き止める手段を探している。
 その視線の中に、彼女と同じく周りをきょろきょろと窺っている、ある男の姿が映っていた。

「そ、そうだ!キルヒマンさん、キルヒマンさんもいますから!この人もこの村の人ではないですけど、ここを使ってますから!!レイモンド様もここを使って構わないんですよ!!」
「そうなのか?しかしキルヒマンというと、どこかで聞いた名前だな・・・」

 彼女が見つけたのはこの村の住民ではないパスカル・キルヒマンこと、カイ・リンデンバウムの姿であった。
 部外者である彼の事を指差しては、エヴァンもここを使ってもいいのだとアシュリーは主張する。
 その言葉に足を止めたエヴァンはしかし、その主張よりも彼女が口にした名前の方が気にかかっているようだった。

「いや、キルヒマンさんは功労者じゃん。そんな誰だか知らないガキと一緒にしたら駄目でしょ?」
「シャーーーーーラップ!!子供は黙っときなさい!!ほら、キルヒマンさんもいいですよね?ね、ね?いいっていってください!いいでしょ、ねぇ!!」

 カイが村人用のスペースで食事を取っているのは、彼がこの村の功労者であるからだ。
 その事実を空気を読まずに口にするクリスに対して、アシュリーは大声を上げてそれをすぐさま黙らせている。
 彼女はもはや形振り構わない様子で、すぐ後ろに座っていたカイの身体を揺すっては、彼から許可を貰おうとしていた。

「ん?私は別にどちらでも・・・そ、その剣はっ!?」

 とある人物を探して必死に周りへと視線を向けているカイも、そんなにも必死に身体を揺すられればいつまでも無関心ではいられない。
 仕方なしといった様子でアシュリーの方へと振り返ったカイは、適当に場を流そうと話し出す。
 しかしその目は、捉えてしまっていた。
 エヴァンの背中に括りつけられている、光り輝く大剣の存在を。

「ま、まさかっ!?あ、あなたは・・・勇者様、なのですか?」

 エヴァンがその背中に背負っている大剣は、カイが聞いた聖剣の姿に瓜二つであった。
 そしてよく見れば彼の姿もカイが聞いていた勇者の容貌と、概ね一致している。
 唯一違う点があるとすれば、彼が男性である点であったが、エヴァンのその端正な見た目と華奢な身体を見れば、女性と見間違ってしまうのも無理はない話しであろう。

「・・・ふっふっふ、ばれてしまっては仕方ないな。確かにこのエヴァン・レイモンドは、勇者と呼ばれる存在といっても過言ではない!」 

 カイの問い掛けに対して、エヴァンが僅かな間黙りこくっていたのは、その言葉に動揺してしまったからだろうか。
 しかし再び顔を上げた彼の表情には、自信に満ち溢れた笑みが浮かんでおり、その口からは自らを勇者だと話す言葉が漏れ出していた。

「いや、勇者な訳ないじゃん。今代の勇者って、確か女の子だろ?大体あの剣だって、よく見ると作りが適当―――」

 自らが勇者だと語るエヴァンに対して、クリスは疑いの目を向けると至極もっともな突込みを入れていた。
 こんな田舎の村であっても、今代の勇者が女性である事は伝わっている。
 確かにエヴァンの年頃や髪の色は伝え聞いた勇者のものと同じであったが、その性別と背負った剣の作りまでは誤魔化せない。
 見た目だけを取り繕った張りぼてであるその大剣は、本来の聖剣が持つべき圧倒的な力を感じさせない。
 それどころかよく見ると所々作りが甘い部分が見て取れるそれに、クリスの疑いはもっともなものであった。
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