ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

文字の大きさ
225 / 308
カイ・リンデンバウムの恐ろしき計画

出会う人々 1

しおりを挟む
「ど、どうすればいいのだ・・・ど、どこも空いてないぞ?ア、アビー?い、いや駄目だ!私もレイモンド家の男、自分の力で何とかするのだ!」

 広場にごった返す人込みの中を一人、うろうろと右往左往しているエヴァンは、仲間達と座れるスペースを見つけられずに絶望した表情をその顔に浮かべていた。
 その場に溢れる人込みのほとんどは、屈強な身体を持った冒険者達だ。
 そんな場違いな場所に一人佇むエヴァンは、不安からか思わず後ろを振り返りアビーに頼ろうとしてしまう。
 しかしそれも、一瞬の事だ。
 彼はすぐにその不安を振り払うと、強く拳を握り締め決意を新たに歩き始めている。
 その決意に燃える瞳にはもはや、達成すべき目標しか見えていないだろう。
 そう、その目の前に立ち塞がる、ガラの悪い男の背中すらも。

「っ!?な、なに?」
「あぁ?いってぇなぁ・・・てめぇ、ちゃんと前見て歩きやがれ!!」
「ひ、ひぃぃぃ、すみませぇぇぇん!!」

 突然ぶつかった背中は硬く、逆にエヴァンの方が弾かれてしまう。
 その痛みに彼が戸惑っていると、ぶつかった男がゆっくりと振り向いてきていた。
 その強面の顔面は、冒険者としての経験が如実に現れている。
 しかしエヴァンからすれば、その見た目には恐怖しか感じられず、それに怒鳴りつけられれば小さく縮こまることしか出来ない。

「おい、どうした?」
「いや、こいつが急にぶつかってきてよ」
「ふ~ん・・・お!おい、見ろよこいつ。何か金持ってそうじゃね?」

 急に大声を出した男に、その仲間であろう男達も集まってくる。
 その中の一人が縮こまっているエヴァンの姿を見ては、その金の匂いを鋭く嗅ぎ分けていたのだった。

「本当だ、こりゃあれか?やっちまうか?」
「へへへ・・・任せとけって」

 一人が匂いを嗅ぎつければ、周りにもそれがすぐに伝わっていく。
 それも当然の事であろう、エヴァンがその身に纏っているのは、この辺では到底お目にかかれないほど高級品ばかりなのだから。
 それは学のない彼らからしても、金を持っていると一目で分かるほどのものであった。

「ちっ、俺は先に行くぞ」

 エヴァンを取り囲み、ニヤニヤと下品な笑みを浮かべる男達の姿に、彼にぶつかられた当人である男は、付き合いきれないとばかりにさっさと退場していく。
 それは彼の善良さを現していたのかもしれないが、同時にこの場に彼らを止める者がいなくなったことを示してもいた。

「なぁなぁ、お坊ちゃんよぅ・・・あんたにぶつけられちまったせいで、俺達の仲間が怪我しちまったじゃねぇか?この責任、どう取ってくれるんだぁ?」
「え、え?そ、そんなに強くはぶつかってないと、思うのだが・・・」
「あぁ!?俺が嘘ついてるって言うのかぁ!?」
「ひぃぃぃ!?」

 身体を器用に折り曲げては、縮こまっているエヴァンを下から覗き込むように見上げて語りかけるその男の振る舞いは、気遣いのためではなくプレッシャーを与えるためだろう。
 男の言葉にあれぐらいの衝撃で怪我などする筈がないと、恐る恐る答えたエヴァンの声は、畳み掛ける男の声にすぐに掻き消されてしまう。
 今度は上の方から声を叩きつけてきた男の振る舞いにエヴァンは再び縮こまり、それを目にした男達は彼とは対照的にニヤニヤとした笑みを、その顔に浮かべていた。

「はいはーい、そこまでそこまでー。さっさと散りなさいー、あんた達ー!」

 彼らの野蛮な振る舞いにも、周りの冒険者達は眉を顰めるばかりで助けようとはしない。
 アトハース村の住人達も、彼らの様な屈強な冒険者達を止める術など持たないだろう。
 そんな助ける者などいないと思われた空間に、間延びした声が響く。
 それは確かに、彼らを制止しようとする声であった。

「あぁん?ちっ、受付の女かよ」
「てめぇには、関係ないだろうが!口挟んでくるんじゃねぇよ!」

 拍手を鳴らすように手を叩きながら声を掛けてきたのは、先ほどまでモクモクと麺を啜っていたアシュリー・コープその人であった。
 彼女は彼らの方へと歩み寄ってくると、さっさと解散するように促している。
 その声と姿に、彼女が冒険者ギルドの受付であることに気付いた男達は、一瞬面倒臭そうな表情を見せたものの、すぐに強気な態度に戻ると彼女を追い返そうと凄んで見せていた。

「あぁ?こちとらてめぇらの資格剥奪して、指名手配することも出来るんだぞ!何なら今すぐ討伐依頼出してやろうか、あぁ!!」

 アシュリーに凄んで見せた男達も、彼女がすぐさまそれ以上の迫力で凄んでくるとは思わなかっただろう。
 穏やかな表情で近寄ってきていた彼女は、一瞬でその表情を豹変させると、まるで別人のようにがなりたて始めている。
 彼女がそうして捲くし立てている内容は、幾らなんでも越権行為に過ぎる滅茶苦茶なものであったが、その迫力を持ってすれば本気とも思わせることは出来るだろう。
 少なくとも彼女の言葉に今、生唾を飲み込んだ彼らにはそう聞こえた筈だ。

「い、いやそれは・・・へへへ、冗談だって。な、お前ら?」
「そ、そうそう!そんな悪気なんて、これっぽちもありませんて」

 彼らがもし、彼女の言っている事が無茶苦茶なことだと気づけるほどの知識があったならば、ここで引き下がる事はなかっただろう。
 しかし彼らに、その知識はない。
 そのためアシュリーの勢いだけのはったりにも、あっさりと騙されてしまい引き下がるしか出来なくなってしまっていた。

「はいはい。それじゃさっさと、どっか行きなさい!」
「そりゃ、勿論!それで、さっきの件は・・・?」
「分かった分かった、問題にはしないから。ほら、散った散った!」
「へへへ、そりゃどうも。ほら、お前達も行くぞ!」

 さっさとどっかに行けと促すアシュリーに、男達はしつこいぐらいに問題にはしないだろうなと問い掛けていた。
 それに適当に約束を返したアシュリーは、早く消えろとぞんざいに手を振っている。
 男達も彼女の言葉に満足いったのか、促されるままにさっさと立ち去っていき、後には小さく縮こまっているエヴァンだけが残されていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

処理中です...